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気がついた時には日の入り方が変わっていた。
一彰は真っ白なカーテンで仕切られたベッドの上にいた。
スツールに腰掛けた相津知が微笑んでいる。
「もう昼休みだよ。ご飯食べられそう?」
「泣いていたんじゃなかったのか?」
相津知が眉をひそめる。
「どうして僕が泣かなくちゃいけないのさ」
心底不思議そうだった。
「目をこすっていただろう?」
相津知は暫く黙ってから目を瞬かせた。
「ああ、あれはね。昨日、遅くまでテスト勉強をしようと努力していたから、眠たくて欠伸しちゃったんだ。そうしたら、木更津君が泣きそうな顔で去って行くじゃない? 悪い事でも言っちゃったかなって思って、後を追いかけたんだ」
そうだったそうだった、と満足げに頷く相津知に一彰は苦笑いした。
気分がよくなったことを保険の先生に告げ、二人で外に出た。
グラウンドに設置されたタイヤの飛び箱に二人して腰かける。
相津知は持っていた弁当をこちらによこして、自分はビニール袋からメロンパンを取り出した。
そこでようやく、一彰は今日が週に一度あるお弁当給食なる日だと思い出した。
いつもはコンビニで適当に購入してくるのだが、今日は食にまで考えが回らなかった。
布をほどいて箱を外す。
海苔の巻かれた握り飯二個に焼いた豚肉やプチトマトなどが詰め込まれていた。
「お前が作ったのか?」
「惚けていないで食べたら? 時間なくなるよ」
懸命に食べ出した相津知にせかされ、箸でホウレン草を口に運んだ。
バターがホウレン草と上手くフィットしている。
胃に染みた。
欲求に正直に口を動かしながら、一彰は上目遣いに相津知を窺った。
こちらを見ながらほころぶ彼女の瞳に胸が空っぽになる。
痛みじゃない。
焦燥感でもない。
これは。
一彰は真っ白なカーテンで仕切られたベッドの上にいた。
スツールに腰掛けた相津知が微笑んでいる。
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「泣いていたんじゃなかったのか?」
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そうだったそうだった、と満足げに頷く相津知に一彰は苦笑いした。
気分がよくなったことを保険の先生に告げ、二人で外に出た。
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そこでようやく、一彰は今日が週に一度あるお弁当給食なる日だと思い出した。
いつもはコンビニで適当に購入してくるのだが、今日は食にまで考えが回らなかった。
布をほどいて箱を外す。
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「お前が作ったのか?」
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懸命に食べ出した相津知にせかされ、箸でホウレン草を口に運んだ。
バターがホウレン草と上手くフィットしている。
胃に染みた。
欲求に正直に口を動かしながら、一彰は上目遣いに相津知を窺った。
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