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「で、ど根性大会なんだけどね」
西山が一枚の用紙を、俺の机にのせる。
二年C組は、ど根性大会のチラシを持った生徒ばかりで、エントリーの話が、もっぱらの話題だ。
「林君は強制参加だから」
汚い字で、エントリー申請、と書かれている。
「俺は良いけど。景品が向井って、どうなんですかね。お前ら、ゴーサイン、いただいたんだろうな、本人から?」
ちらりと、横にいる向井を、見上げる。
「了承いただきましたよ、ついさっき」
脇田が、向井の首に腕を回す。
なぜだか、カチンと頭の血管が脈打ち、俺は立ち上がって、向井を、脇田から引き剥がした。
きょとんとする脇田と西山と向井。
俺は席に座り、エントリーシートに名前を書く。
脇田と西山が、顔を見合わせた。
「本人が良いなら、否定するつもりはないけど、景品ってことは、何をされても、抵抗できないんだろ?」
「まあ、いちおう、景品って名目だからね。犯罪行為以外は、引き受けて欲しいかな」
脇田が気の抜けた声を出す。
「じゃあ、優勝した野郎がやりたいって言ってきたら、向井はその願いを叶えてやるんだ?」
「え?」
景品殿が呆ける。
俺は西山にエントリーシートを突き出した。
「お前、そんな簡単な予想もできないで、引き受けたのかよ?」
「考えすぎだ。俺となんて、誰も望まないだろ? 林は俺が女に見えるのか?」
俺は教室を視線で一周し、わざとらしく、目を逸らした生徒の数を、数えた。
ざっと十五人。
「林君に賛同するのは不本意だけど、僕も向井君となら、やりたいって熱望する奴らって、山ほどいると思う」
西山が申請用紙を折りたたむ。
向井は考え込むように、眉を歪めた。
心当たりがないわけでは、ないのだ。
「俺はしないぞ」
ぼそりと呟く。
周囲が息を呑んだ。
「景品でも、俺は俺だ。嫌なことは、嫌だって言う」
あっけらかんな物言いだった。
良いよな、と向井は西山と脇田を確認した。
「むろん、任せる」
親指を立てる二人。
俺は唇に触れ、それから、向井を見た。
「俺は?」
「え?」
「俺とも、嫌か?」
返事をしない相手の手を掴む。
「最後まで、してみる?」
場を保とうともせず、口を閉ざすクラスメート。
向井が息を吸い、そして、
「断る」
西山と脇田が、馬鹿笑いしだし、それは教室中に蔓延した。
「ふられた。新聞部、いないの? ネタあるよ、ネタ」
「うけるわ。マジ最高。馬鹿だろ。調子こいてるからだ!」
お前ら、本当に俺の親友なの?
教室中が失笑している今こそ、慰めるのが親友ってもんじゃねえの?
向井にいたっては、
「ちなみに、最後って何?」
お前の脳みそは、大人への一歩を、拒んでいるのか?
西山が一枚の用紙を、俺の机にのせる。
二年C組は、ど根性大会のチラシを持った生徒ばかりで、エントリーの話が、もっぱらの話題だ。
「林君は強制参加だから」
汚い字で、エントリー申請、と書かれている。
「俺は良いけど。景品が向井って、どうなんですかね。お前ら、ゴーサイン、いただいたんだろうな、本人から?」
ちらりと、横にいる向井を、見上げる。
「了承いただきましたよ、ついさっき」
脇田が、向井の首に腕を回す。
なぜだか、カチンと頭の血管が脈打ち、俺は立ち上がって、向井を、脇田から引き剥がした。
きょとんとする脇田と西山と向井。
俺は席に座り、エントリーシートに名前を書く。
脇田と西山が、顔を見合わせた。
「本人が良いなら、否定するつもりはないけど、景品ってことは、何をされても、抵抗できないんだろ?」
「まあ、いちおう、景品って名目だからね。犯罪行為以外は、引き受けて欲しいかな」
脇田が気の抜けた声を出す。
「じゃあ、優勝した野郎がやりたいって言ってきたら、向井はその願いを叶えてやるんだ?」
「え?」
景品殿が呆ける。
俺は西山にエントリーシートを突き出した。
「お前、そんな簡単な予想もできないで、引き受けたのかよ?」
「考えすぎだ。俺となんて、誰も望まないだろ? 林は俺が女に見えるのか?」
俺は教室を視線で一周し、わざとらしく、目を逸らした生徒の数を、数えた。
ざっと十五人。
「林君に賛同するのは不本意だけど、僕も向井君となら、やりたいって熱望する奴らって、山ほどいると思う」
西山が申請用紙を折りたたむ。
向井は考え込むように、眉を歪めた。
心当たりがないわけでは、ないのだ。
「俺はしないぞ」
ぼそりと呟く。
周囲が息を呑んだ。
「景品でも、俺は俺だ。嫌なことは、嫌だって言う」
あっけらかんな物言いだった。
良いよな、と向井は西山と脇田を確認した。
「むろん、任せる」
親指を立てる二人。
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「俺は?」
「え?」
「俺とも、嫌か?」
返事をしない相手の手を掴む。
「最後まで、してみる?」
場を保とうともせず、口を閉ざすクラスメート。
向井が息を吸い、そして、
「断る」
西山と脇田が、馬鹿笑いしだし、それは教室中に蔓延した。
「ふられた。新聞部、いないの? ネタあるよ、ネタ」
「うけるわ。マジ最高。馬鹿だろ。調子こいてるからだ!」
お前ら、本当に俺の親友なの?
教室中が失笑している今こそ、慰めるのが親友ってもんじゃねえの?
向井にいたっては、
「ちなみに、最後って何?」
お前の脳みそは、大人への一歩を、拒んでいるのか?
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