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27〈現在・縁視点〉

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 オーガストが口づけをやめると、ソロの住人が槍を構えた。
 エニシからのアリサへの提案に、気持ちを引きずられながらも、縁は地上へと意識を集中させた。
「なんてことをしてくれたんだ」
 町長が憤る。
「お前達の文化では、俺達は汚れだ。ルイの血を浴びることは、汚れを受け入れるということ」
「減らず口を! 地獄で懺悔しろ!」
 町長が腕をあげる。
 縁は糸トンボを孤に近づけた。
 警戒した縁の耳に呻き声が聞こえる。
 池の周囲の木々から何かが落ちる音がした。
 かと思うと、槍を手にしていた男達が倒れていく。
 縁には彼らを貫く細い電流が見えた。
 町長が慌てふためく。
「なんだ? 何をした?」
 孤達に集中していた意識が、エニシの吐息で乱される。
 エニシは浮島の部屋で、孤達が映る画面を見つめていた。
 その指の先が機械のボタンに乗っている。
 彼がそれを押すと、町長が倒れた。
「殺してはいない。軽い電気ショックだ。機械の落下地点にジェットを用意する」
 エニシは目前の画像をジェットの収納庫へと変え、キーボードを操った。
「ありがとうございます」
 エニシが手を軽くあげる。
 結局、エニシの手を借りている。縁は自分の不甲斐なさに目を伏せたが、すぐさま孤達へと意識を戻した。
「落下したロボットのところに、エニシがジェットを準備してくれる。町の人達が目を覚ます前に浮島へ帰ろう」
 孤達を先導するべく、糸トンボを操る。
 月の明かりを頼りに、森を突き進んだ。
 まもなく、ジェットが見えてきた。破壊されたロボットを回収している。
 孤達がジェットに乗り込んだのを確認し、縁は孤に操作方法を伝えた。
 ジェットが浮き上がる。
 森を抜けると、夜空を支配するような月が見えた。エンジンが温まったジェットが一気に浮島へと加速する。
 浮島の地下の一室で、縁は孤たちの音を注意深く聞きながら、作業をするエニシとそんな彼を複雑な表情で見つめるアリサに視線を向けた。
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