30 / 46
25 〈現在・オーガスト視点〉
しおりを挟む
オーガストはぼう然とした。
昔、治癒の力が使えるようになったルイを、神のように祭り上げた。ルイにしかない力。ルイにしかできない救済。オーガストはそう言い、ルイを傷つけた。
自己犠牲を教え込んだのは、紛れもなく自分だ。
死ねばいいと思っていたから。苦しめばいいと願ったから。すべてを、奪って絶望させてやりたかったから。
結果、ルイは自分の幸福より他者への幸福を選ぶ人間に成長した。
喜べ、お前の教育の賜だ。
ルイがオーガストの横を歩いて行く。
俺のせいだ。俺のせい。俺が望んだから。俺の。
オーガストは俯き、歯を食いしばりながら、ルイの腕を掴んだ。
指が震える。
拒絶されるのが恐ろしい。
でも、それ以上に、自分の今を伝えたい。過去を塗り替えられなくとも、未来を変えることなら、できるかもしれないから、今、最善を尽くしたい。
戸惑うルイの腕を引き、抱きしめる。
「愛している」
「え?」
「返事をくれ」
ソロの町の住人が非難の声をあげる。
「ルイ。俺に、お前を愛するチャンスをくれないか?」
「あなたが好きなのは、人を救い続けるルイだ」
オーガストはルイの両肩に手をのせ、首を左右した。
「俺が愛しているのは、俺の故郷の歌を聞いてくれていたルイだ。いつも傍で笑っていてくれたルイだ。人を救っているからじゃない。お前はお前であることに価値がある」
オーガストは、愛していると控えめに笑んだ。
「ルイは?」
色違いの瞳から涙が零れ落ちる。
ルイの指がオーガストの袖をそっと掴む。
オーガストはある決意を固め、ルイの頬に手を当てた。
「君を彼らから奪う。この地では平穏に生きられなくなる」
ルイがじっと見つめてくる。
「心配するな。俺達は俺達の居場所を見つけに行けばいい。ついてきてくれるか?」
オーガストはルイの唇を人差し指でなぞった。
亜麻色の髪の少年が頷く。
オーガストは微笑み、ルイの唇にキスをした。
ソロの男達が顔を引きつらせる。
ルイを守る一歩が成功し、オーガストは目を細めた。
昔、治癒の力が使えるようになったルイを、神のように祭り上げた。ルイにしかない力。ルイにしかできない救済。オーガストはそう言い、ルイを傷つけた。
自己犠牲を教え込んだのは、紛れもなく自分だ。
死ねばいいと思っていたから。苦しめばいいと願ったから。すべてを、奪って絶望させてやりたかったから。
結果、ルイは自分の幸福より他者への幸福を選ぶ人間に成長した。
喜べ、お前の教育の賜だ。
ルイがオーガストの横を歩いて行く。
俺のせいだ。俺のせい。俺が望んだから。俺の。
オーガストは俯き、歯を食いしばりながら、ルイの腕を掴んだ。
指が震える。
拒絶されるのが恐ろしい。
でも、それ以上に、自分の今を伝えたい。過去を塗り替えられなくとも、未来を変えることなら、できるかもしれないから、今、最善を尽くしたい。
戸惑うルイの腕を引き、抱きしめる。
「愛している」
「え?」
「返事をくれ」
ソロの町の住人が非難の声をあげる。
「ルイ。俺に、お前を愛するチャンスをくれないか?」
「あなたが好きなのは、人を救い続けるルイだ」
オーガストはルイの両肩に手をのせ、首を左右した。
「俺が愛しているのは、俺の故郷の歌を聞いてくれていたルイだ。いつも傍で笑っていてくれたルイだ。人を救っているからじゃない。お前はお前であることに価値がある」
オーガストは、愛していると控えめに笑んだ。
「ルイは?」
色違いの瞳から涙が零れ落ちる。
ルイの指がオーガストの袖をそっと掴む。
オーガストはある決意を固め、ルイの頬に手を当てた。
「君を彼らから奪う。この地では平穏に生きられなくなる」
ルイがじっと見つめてくる。
「心配するな。俺達は俺達の居場所を見つけに行けばいい。ついてきてくれるか?」
オーガストはルイの唇を人差し指でなぞった。
亜麻色の髪の少年が頷く。
オーガストは微笑み、ルイの唇にキスをした。
ソロの男達が顔を引きつらせる。
ルイを守る一歩が成功し、オーガストは目を細めた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる