5 / 46
5〈現在 孤視点〉
しおりを挟む
朝日が顔に当たり、孤は目を覚ました。
知らぬ間に、眠っていたらしい。
亜麻色の髪の少年は、まだ、孤の肩に寄りかかっている。
瑠璃色の小鳥がこちらへと飛んでくる。
少年が人差し指を差し出した。
起きていたのか。
孤は驚きながらも、小鳥が少年の細い指にとまるのを見守った。
少年は、軽やかに鳴く小鳥を、孤に近づけた。
宝物を共有するような仕草だった。
しばらくすると、同じ色の小鳥がやってきて、少年の指にいた小鳥はその一匹と共に、飛び立っていった。
人が恋しいと言わんばかりに、少年は孤から離れようとしない。
「あの鳥のように、孤にも、迎えに来てくれる人達が、いるんだったね」
そよ風のように心地良い声だった。
エニシが叫んだ孤の名を、少年が覚えていたことに、戸惑った。
「大丈夫。ちゃんと、帰してあげるよ。でも、今すぐはできない」
「どうして?」
少年はゆっくりと孤から距離をとり、切なげに微笑んだ。
「ソロでは許しもえないまま、噛みついちゃってごめん」
「いえ。……あの、傷は大丈夫ですか?」
少年はきょとんとしてから、眩しそうに唇を伸ばした。
「孤はすごいな」
何がすごいのか分からなかった。
思いが表情に出ていたのだろう。
少年はくすりと笑った。
「傷は治ったよ。ありがとう」
孤はほっと胸を撫で下ろした。
「よかった……」
少年は微笑みながら、額を孤の肩にのせた。
「ああ、本当、孤はすごいね。生きている間に、孤に会えていたなら、僕も、もっとマシな生き方ができていたかもしれないな」
少年は死んでいない。
孤の複雑な感情を受けとったのか、少年は首を傾げてみせた。
「僕は一度、命を失った。白装束は、この辺りじゃ、死者に着せる服なんだ。僕の記憶だけじゃなく、対外的にも、死んだってことが証明されているってことだね」
「生き返ったってことですか?」
「う~ん。棺を押しのけて、この世界に関わる機会は得たけど、どうだろ? 僕は生き返ったのかな?」
「じゃなきゃ、今、俺と話しなんてできません」
フッと少年が微笑む。
「そうだね。じゃあ、生き返ったってことにしとこうか」
孤は生返事をした。
少年は自分のことを、他人事のように話す。
自分の行いに責任を持とうとしないという意味ではない。
たぶん、彼は自分を諦めている。
少年が立ち上がる。
「そろそろ、行こうか?」
「どこへ?」
亜麻色の髪が風になびく。
「僕の命を使いきりに」
知らぬ間に、眠っていたらしい。
亜麻色の髪の少年は、まだ、孤の肩に寄りかかっている。
瑠璃色の小鳥がこちらへと飛んでくる。
少年が人差し指を差し出した。
起きていたのか。
孤は驚きながらも、小鳥が少年の細い指にとまるのを見守った。
少年は、軽やかに鳴く小鳥を、孤に近づけた。
宝物を共有するような仕草だった。
しばらくすると、同じ色の小鳥がやってきて、少年の指にいた小鳥はその一匹と共に、飛び立っていった。
人が恋しいと言わんばかりに、少年は孤から離れようとしない。
「あの鳥のように、孤にも、迎えに来てくれる人達が、いるんだったね」
そよ風のように心地良い声だった。
エニシが叫んだ孤の名を、少年が覚えていたことに、戸惑った。
「大丈夫。ちゃんと、帰してあげるよ。でも、今すぐはできない」
「どうして?」
少年はゆっくりと孤から距離をとり、切なげに微笑んだ。
「ソロでは許しもえないまま、噛みついちゃってごめん」
「いえ。……あの、傷は大丈夫ですか?」
少年はきょとんとしてから、眩しそうに唇を伸ばした。
「孤はすごいな」
何がすごいのか分からなかった。
思いが表情に出ていたのだろう。
少年はくすりと笑った。
「傷は治ったよ。ありがとう」
孤はほっと胸を撫で下ろした。
「よかった……」
少年は微笑みながら、額を孤の肩にのせた。
「ああ、本当、孤はすごいね。生きている間に、孤に会えていたなら、僕も、もっとマシな生き方ができていたかもしれないな」
少年は死んでいない。
孤の複雑な感情を受けとったのか、少年は首を傾げてみせた。
「僕は一度、命を失った。白装束は、この辺りじゃ、死者に着せる服なんだ。僕の記憶だけじゃなく、対外的にも、死んだってことが証明されているってことだね」
「生き返ったってことですか?」
「う~ん。棺を押しのけて、この世界に関わる機会は得たけど、どうだろ? 僕は生き返ったのかな?」
「じゃなきゃ、今、俺と話しなんてできません」
フッと少年が微笑む。
「そうだね。じゃあ、生き返ったってことにしとこうか」
孤は生返事をした。
少年は自分のことを、他人事のように話す。
自分の行いに責任を持とうとしないという意味ではない。
たぶん、彼は自分を諦めている。
少年が立ち上がる。
「そろそろ、行こうか?」
「どこへ?」
亜麻色の髪が風になびく。
「僕の命を使いきりに」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる