孤塁の縁 第二章 ~死装束の少年~

上野たすく

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5〈現在 孤視点〉

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 朝日が顔に当たり、孤は目を覚ました。
 知らぬ間に、眠っていたらしい。
 亜麻色の髪の少年は、まだ、孤の肩に寄りかかっている。
 瑠璃色の小鳥がこちらへと飛んでくる。
 少年が人差し指を差し出した。
 起きていたのか。
 孤は驚きながらも、小鳥が少年の細い指にとまるのを見守った。
 少年は、軽やかに鳴く小鳥を、孤に近づけた。
 宝物を共有するような仕草だった。
 しばらくすると、同じ色の小鳥がやってきて、少年の指にいた小鳥はその一匹と共に、飛び立っていった。
 人が恋しいと言わんばかりに、少年は孤から離れようとしない。
「あの鳥のように、孤にも、迎えに来てくれる人達が、いるんだったね」
 そよ風のように心地良い声だった。
 エニシが叫んだ孤の名を、少年が覚えていたことに、戸惑った。
「大丈夫。ちゃんと、帰してあげるよ。でも、今すぐはできない」
「どうして?」
 少年はゆっくりと孤から距離をとり、切なげに微笑んだ。
「ソロでは許しもえないまま、噛みついちゃってごめん」
「いえ。……あの、傷は大丈夫ですか?」
 少年はきょとんとしてから、眩しそうに唇を伸ばした。
「孤はすごいな」
 何がすごいのか分からなかった。
 思いが表情に出ていたのだろう。
 少年はくすりと笑った。
「傷は治ったよ。ありがとう」
 孤はほっと胸を撫で下ろした。
「よかった……」
 少年は微笑みながら、額を孤の肩にのせた。
「ああ、本当、孤はすごいね。生きている間に、孤に会えていたなら、僕も、もっとマシな生き方ができていたかもしれないな」
 少年は死んでいない。
 孤の複雑な感情を受けとったのか、少年は首を傾げてみせた。
「僕は一度、命を失った。白装束は、この辺りじゃ、死者に着せる服なんだ。僕の記憶だけじゃなく、対外的にも、死んだってことが証明されているってことだね」
「生き返ったってことですか?」
「う~ん。棺を押しのけて、この世界に関わる機会は得たけど、どうだろ? 僕は生き返ったのかな?」
「じゃなきゃ、今、俺と話しなんてできません」
 フッと少年が微笑む。
「そうだね。じゃあ、生き返ったってことにしとこうか」
 孤は生返事をした。
 少年は自分のことを、他人事のように話す。
 自分の行いに責任を持とうとしないという意味ではない。
 たぶん、彼は自分を諦めている。
 少年が立ち上がる。
「そろそろ、行こうか?」
「どこへ?」
 亜麻色の髪が風になびく。
「僕の命を使いきりに」
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