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彼女&彼Side
彼side22 屋上にて
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「———お母さんがまた小林くん連れておいでって」
あの衝撃の日から翌週、人目につかないように、二人で屋上にいた。
佐藤の表情が少し柔らかい。
「いや、しばらく遠慮するわ」
佐藤姉の豹変ぶりはトラウマになりそう。
「お姉ちゃんが結婚式にも小林呼ぼうかなって言ってたよ」
行きたくない。
ほんっとに行きたくない。
招待状貰っても行かない。
「…バレちゃったんだけど…ちょっとホッとしてるんだ。まぁ貴典さんがあんな人だったとは知らなかったんだけど…」
あの浮気癖にちょっとはショックを受けてる様子。
まぁ長年の片想いの相手、しかも初体験の相手があれなら衝撃だろう。
「ロリコンで浮気性ってマジできっついわ。佐藤の事、小2の頃から知ってる子があんなにおっぱいデカくなって…って興奮してたよ。これからも気をつけろ」
だいぶ脚色してやった。
佐藤がゾワっと身震いをして自分を抱きしめた。
「ちょっと男性不信になりそう」
そのままあいつの事嫌いになっちゃえばいい。
俺は佐藤に見えないように舌を出した。
「でも…小林の言う通りだった。断らないのは優しさじゃないんだよね…。断らずにどの子にも優しいから実際に浮気性なんだし。…私の為に怒ってくれてありがとう」
佐藤が恥ずかしそうに、でも俺を見て言った。
「…うん」
なんかいい雰囲気じゃないか?これ。
照れ隠しで俺は足を投げ出して、手を後ろについた空を見上げた。
「あれ…カップ、買いに行ってくれたの?」
「…あぁ」
佐藤姉にまんまと騙されたけど。
「ピンク、好きってよく分かったね…」
ちょっと恥ずかしそうに言った。
「あんなかわいいの、ガラじゃないのに」
「そう?」
佐藤なら水色でもピンクでもかわいいけど。
「ま、本人が好きなら周りから何て言われてもいいんじゃない?」
「…うん」
そう、結局は本人が好きならいいのだ。
まわりからどう見られようと。
好きなもの好き。
それを我慢したり遠慮する必要はない。
だって好きでそれを使ったり身につけたり、触れたり、はたまた付き合ったりするのは自分なのだから。
俺は周りからどう見られようと佐藤の事が好きだ。
誰かの物を奪おうとしていたその過ちさえも二人なら乗り越えて、これからの人生にとってプラスに変えていけると思う。
ずっと、そしていつも正しい人間なんていない。
過ちは過ちとして受け止めて、学んで前に進んで行けばいいんだ。
その手を取り合って、お互いに正すべきところは伝えて寄り添って、たまにはどちらかが譲り合って。
佐藤、お前はどう思ってる?
いい雰囲気だったのに、佐藤がいきなり大人しく黙りこんでしまった。
何か悪い事言っただろうか。
…言うなら今だ。
俺は意を決してずっと考えていた事を伝えようと口を開けた。
「佐藤」
「あのね」
二人の言葉が重なる。
「…」
「…」
ちょっとの間見つめ合う。
ずっと考えていた事があった。
父親とのこと。これからの事。進路の事。佐藤との事。
俺が再び口を開きかけた時
「ごめんね。週の内2日も私に付き合ってもらって。もう、いろいろ教えてくれなくても私は大丈夫だから。…今回の事でふっきれた。お姉ちゃんには敵わないしね」
と佐藤が言った。
週2日?
教えるってセックスの話?
「山林が言ってたよ。一年の女子から最近ものすごくモテてるって。可愛い子いるらしいじゃん。あんた、黙ってたらそこそこなんだから、調子乗んないで下ネタ封印しないと」
笑って佐藤が言った。
「…好きな子がいるなら応援するから」
瞬きしたその一瞬、佐藤の瞳が上を向いた。
「———」俺は言葉を失った。
え?ちょっと待ってよ。
今いい感じだっただろ。
何、好きな子って。
大体応援するなんて今の嘘だろ?
何でそんな事言うんだよ。
「戻るね」
サッと立ち上がり、屋上のドアを開ける。
俺は慌ててその後を追った。
「佐藤…!」
階段を降りかけている佐藤を呼んだ時、振り返る佐藤のさらに下の踊り場に、和幸と山林が壁に寄りかかっているのが目に入った。
「…」
佐藤も山林達に気づいて、そのまま山林達の横をすり抜けて階段を降りて行った。
二人が俺を見上げる。
「…」
手すりが冷たく感じる。
「…そろそろホントの事教えてくれてもいんじゃね?」
山林が口を尖らす。
「…」
俺はそのまま何も言えずに階段に座った。
和幸が一段一段とゆっくり上がって来た。
「敦史、佐藤さんと付き合ってる?」
「…付き合ってない」
「いや、だってこの前の事といい…」
山林が言いかけるのを遮って、「でもエッチはしてる」と言った。
二人がビックリして黙った。
「じゃ、じゃあ妊娠してるかもって言ってたのは…」
「妊娠はしてない。佐藤のねーちゃんがつわりで苦しんでるからうつったみたいな感じ。本人も違うって言ってた」
「え。で、付き合ってはないワケ…?」
「付き合って、って俺は言ったよ。でも結局返事はもらってないし、スルーされてる」
二人の許容範囲を超えているのか、何も言わない。
「でも、佐藤ん家行ったりしてたのは…」
「あれはちょっといろいろ事情があって彼氏のフリ頼まれたから、嘘で挨拶に行っただけ。俺は本当の彼氏になりたいけど、佐藤がイヤみたい」
笑ってみたけど、自虐ネタみたいだった。
ハァとため息をつく。
「俺、すげー頑張ってんだけどなぁ…」
ここまで拒まれるともう本当なダメなんじゃないかと思う。
なんであんなに拒否するんだろう。
好きな子がいるなら応援って。
俺が好きなのは佐藤なんだけど。
どうやったら付き合ってくれるんだろう。
あの衝撃の日から翌週、人目につかないように、二人で屋上にいた。
佐藤の表情が少し柔らかい。
「いや、しばらく遠慮するわ」
佐藤姉の豹変ぶりはトラウマになりそう。
「お姉ちゃんが結婚式にも小林呼ぼうかなって言ってたよ」
行きたくない。
ほんっとに行きたくない。
招待状貰っても行かない。
「…バレちゃったんだけど…ちょっとホッとしてるんだ。まぁ貴典さんがあんな人だったとは知らなかったんだけど…」
あの浮気癖にちょっとはショックを受けてる様子。
まぁ長年の片想いの相手、しかも初体験の相手があれなら衝撃だろう。
「ロリコンで浮気性ってマジできっついわ。佐藤の事、小2の頃から知ってる子があんなにおっぱいデカくなって…って興奮してたよ。これからも気をつけろ」
だいぶ脚色してやった。
佐藤がゾワっと身震いをして自分を抱きしめた。
「ちょっと男性不信になりそう」
そのままあいつの事嫌いになっちゃえばいい。
俺は佐藤に見えないように舌を出した。
「でも…小林の言う通りだった。断らないのは優しさじゃないんだよね…。断らずにどの子にも優しいから実際に浮気性なんだし。…私の為に怒ってくれてありがとう」
佐藤が恥ずかしそうに、でも俺を見て言った。
「…うん」
なんかいい雰囲気じゃないか?これ。
照れ隠しで俺は足を投げ出して、手を後ろについた空を見上げた。
「あれ…カップ、買いに行ってくれたの?」
「…あぁ」
佐藤姉にまんまと騙されたけど。
「ピンク、好きってよく分かったね…」
ちょっと恥ずかしそうに言った。
「あんなかわいいの、ガラじゃないのに」
「そう?」
佐藤なら水色でもピンクでもかわいいけど。
「ま、本人が好きなら周りから何て言われてもいいんじゃない?」
「…うん」
そう、結局は本人が好きならいいのだ。
まわりからどう見られようと。
好きなもの好き。
それを我慢したり遠慮する必要はない。
だって好きでそれを使ったり身につけたり、触れたり、はたまた付き合ったりするのは自分なのだから。
俺は周りからどう見られようと佐藤の事が好きだ。
誰かの物を奪おうとしていたその過ちさえも二人なら乗り越えて、これからの人生にとってプラスに変えていけると思う。
ずっと、そしていつも正しい人間なんていない。
過ちは過ちとして受け止めて、学んで前に進んで行けばいいんだ。
その手を取り合って、お互いに正すべきところは伝えて寄り添って、たまにはどちらかが譲り合って。
佐藤、お前はどう思ってる?
いい雰囲気だったのに、佐藤がいきなり大人しく黙りこんでしまった。
何か悪い事言っただろうか。
…言うなら今だ。
俺は意を決してずっと考えていた事を伝えようと口を開けた。
「佐藤」
「あのね」
二人の言葉が重なる。
「…」
「…」
ちょっとの間見つめ合う。
ずっと考えていた事があった。
父親とのこと。これからの事。進路の事。佐藤との事。
俺が再び口を開きかけた時
「ごめんね。週の内2日も私に付き合ってもらって。もう、いろいろ教えてくれなくても私は大丈夫だから。…今回の事でふっきれた。お姉ちゃんには敵わないしね」
と佐藤が言った。
週2日?
教えるってセックスの話?
「山林が言ってたよ。一年の女子から最近ものすごくモテてるって。可愛い子いるらしいじゃん。あんた、黙ってたらそこそこなんだから、調子乗んないで下ネタ封印しないと」
笑って佐藤が言った。
「…好きな子がいるなら応援するから」
瞬きしたその一瞬、佐藤の瞳が上を向いた。
「———」俺は言葉を失った。
え?ちょっと待ってよ。
今いい感じだっただろ。
何、好きな子って。
大体応援するなんて今の嘘だろ?
何でそんな事言うんだよ。
「戻るね」
サッと立ち上がり、屋上のドアを開ける。
俺は慌ててその後を追った。
「佐藤…!」
階段を降りかけている佐藤を呼んだ時、振り返る佐藤のさらに下の踊り場に、和幸と山林が壁に寄りかかっているのが目に入った。
「…」
佐藤も山林達に気づいて、そのまま山林達の横をすり抜けて階段を降りて行った。
二人が俺を見上げる。
「…」
手すりが冷たく感じる。
「…そろそろホントの事教えてくれてもいんじゃね?」
山林が口を尖らす。
「…」
俺はそのまま何も言えずに階段に座った。
和幸が一段一段とゆっくり上がって来た。
「敦史、佐藤さんと付き合ってる?」
「…付き合ってない」
「いや、だってこの前の事といい…」
山林が言いかけるのを遮って、「でもエッチはしてる」と言った。
二人がビックリして黙った。
「じゃ、じゃあ妊娠してるかもって言ってたのは…」
「妊娠はしてない。佐藤のねーちゃんがつわりで苦しんでるからうつったみたいな感じ。本人も違うって言ってた」
「え。で、付き合ってはないワケ…?」
「付き合って、って俺は言ったよ。でも結局返事はもらってないし、スルーされてる」
二人の許容範囲を超えているのか、何も言わない。
「でも、佐藤ん家行ったりしてたのは…」
「あれはちょっといろいろ事情があって彼氏のフリ頼まれたから、嘘で挨拶に行っただけ。俺は本当の彼氏になりたいけど、佐藤がイヤみたい」
笑ってみたけど、自虐ネタみたいだった。
ハァとため息をつく。
「俺、すげー頑張ってんだけどなぁ…」
ここまで拒まれるともう本当なダメなんじゃないかと思う。
なんであんなに拒否するんだろう。
好きな子がいるなら応援って。
俺が好きなのは佐藤なんだけど。
どうやったら付き合ってくれるんだろう。
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