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第2章
26話
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書類は明日からの護衛日程と注意点ね。
アルベリアからの使者の不穏な動きを見かけたら、すぐに報告を、だと? 何かあるの?
「お父様、ニコラスは明日から第二王子の身辺警護だったんです。アルベリアとの外交がからんでるでしょ? 大丈夫ですかね?」
私は書類をお父様の前に広げ『不穏な動き』という文字を指差しながら話し続けた。
「ウチの国はアルベリアとはあまり仲良い関係ではないですよね? 向こうは好戦的な国の体質だと聞いてますけれど」
んー、と唸りながらその書類を受け取り、眉をひそめながら話す。
「あまり大丈夫とも言えんな。向こうの情勢がきな臭くなって来てる。また昔のように、どっかの小役人に賄賂を掴ませて、こちらの内乱を煽りそうな感じ……って何でニコルが聞いてるんだっ。お前には関係ないからっ」
ふ~ん、ジェイクが王宮に戻るのもこれが理由だよね、たぶん。
ってことは……
第二王子に引っ付いていれば、アルベリアの内情とか使者の顔覚えるよねえ。もしかしたら、貴族の裏取引きとか探れちゃったりするねぇ。これって私の出番あるんじゃない?
「お父様、私、ニコラスの代わりに第二王子の身辺警護につきますよ。怪しい動きを通報するだけですよね? 公式の場で怪しい動きなんかする人なんて滅多にいないですから、私はお飾りで立ってますよ」
その言葉を受け、お父様はギョッと目を剥き、ブンブン首を横に振りながら「絶対にダメだっ、余計なことに手をだすな」と全力拒否をする。なんて失礼な。
「やっぱりダメですか? わかりました、仕方ないですね。ニコラスの休暇申請は私が届けておきますよ」
「ああ、私はエリン公国の視察が入っているから、しばらく連絡がとれん。何かあったらミレーユに連絡を入れなさい。今はスラー伯爵夫人と温泉巡りのはずだ」
出張の支度をしたらすぐ出かけるそうだ。
少し待ってお父様を送り出すため、再び玄関へと顔をだす。
ニッコリ笑って「行ってらっしゃい」と明るく手を振って送り出した。パタンと扉を閉めた途端、私は嬉し過ぎて大きな声を上げてしまった。
「やったあ、行ってらっしゃい、お父様。申請は明日、私が一日だけ警護のお仕事させてもらった後に出してくるわ。たっのしみ~」
あ、でも制服をどうするかなぁ。きっとニコラスのを借りてもダブダブで違和感あるよねぇ。
「ニコルお嬢様、近衛の制服は前回、第六騎士団の制服と一緒に、ニコル様専用のものをお作りしておりますのでご安心ください。ウイッグも、今回は、すぐには外れないよう、バージョンアップしております。名付けて『ニコラスヘア二号』」
小躍りしている私の横から、サーラがツツツと側に寄ってきて、かしこまった風に腰を折る。
何事かと振り返ると、明日の変装準備について、待ってましたとばかりに流暢な説明をし始めた。
目の前に出された制服とウイッグに、思わずタジタジっとしてしまった。
しかしなぁ、『ニコラスヘア二号』って……まんまやないかい。
前回ウイッグが簡単に外れたのがよほど不納得だったのか、何点かの改良を加えたことを、こと細やかに説明してくれた。
もう、私がいつニコラスに変装しても全然動揺しないみたい。というより、早く変装して欲しかったように思うんだが。まあ、それは気のせいだとして。さすがサーラよね、だてにお母様とタッグを組んでるワケじゃないのね。
今回は一日だけだし、ジェイクと鉢合わせにならなければ、絶対にバレない自信がある。
私はニコラスの書類をもう一度読み、明日の日程を頭に叩き込みながら、気を引き締めた。
アルベリアからの使者の不穏な動きを見かけたら、すぐに報告を、だと? 何かあるの?
「お父様、ニコラスは明日から第二王子の身辺警護だったんです。アルベリアとの外交がからんでるでしょ? 大丈夫ですかね?」
私は書類をお父様の前に広げ『不穏な動き』という文字を指差しながら話し続けた。
「ウチの国はアルベリアとはあまり仲良い関係ではないですよね? 向こうは好戦的な国の体質だと聞いてますけれど」
んー、と唸りながらその書類を受け取り、眉をひそめながら話す。
「あまり大丈夫とも言えんな。向こうの情勢がきな臭くなって来てる。また昔のように、どっかの小役人に賄賂を掴ませて、こちらの内乱を煽りそうな感じ……って何でニコルが聞いてるんだっ。お前には関係ないからっ」
ふ~ん、ジェイクが王宮に戻るのもこれが理由だよね、たぶん。
ってことは……
第二王子に引っ付いていれば、アルベリアの内情とか使者の顔覚えるよねえ。もしかしたら、貴族の裏取引きとか探れちゃったりするねぇ。これって私の出番あるんじゃない?
「お父様、私、ニコラスの代わりに第二王子の身辺警護につきますよ。怪しい動きを通報するだけですよね? 公式の場で怪しい動きなんかする人なんて滅多にいないですから、私はお飾りで立ってますよ」
その言葉を受け、お父様はギョッと目を剥き、ブンブン首を横に振りながら「絶対にダメだっ、余計なことに手をだすな」と全力拒否をする。なんて失礼な。
「やっぱりダメですか? わかりました、仕方ないですね。ニコラスの休暇申請は私が届けておきますよ」
「ああ、私はエリン公国の視察が入っているから、しばらく連絡がとれん。何かあったらミレーユに連絡を入れなさい。今はスラー伯爵夫人と温泉巡りのはずだ」
出張の支度をしたらすぐ出かけるそうだ。
少し待ってお父様を送り出すため、再び玄関へと顔をだす。
ニッコリ笑って「行ってらっしゃい」と明るく手を振って送り出した。パタンと扉を閉めた途端、私は嬉し過ぎて大きな声を上げてしまった。
「やったあ、行ってらっしゃい、お父様。申請は明日、私が一日だけ警護のお仕事させてもらった後に出してくるわ。たっのしみ~」
あ、でも制服をどうするかなぁ。きっとニコラスのを借りてもダブダブで違和感あるよねぇ。
「ニコルお嬢様、近衛の制服は前回、第六騎士団の制服と一緒に、ニコル様専用のものをお作りしておりますのでご安心ください。ウイッグも、今回は、すぐには外れないよう、バージョンアップしております。名付けて『ニコラスヘア二号』」
小躍りしている私の横から、サーラがツツツと側に寄ってきて、かしこまった風に腰を折る。
何事かと振り返ると、明日の変装準備について、待ってましたとばかりに流暢な説明をし始めた。
目の前に出された制服とウイッグに、思わずタジタジっとしてしまった。
しかしなぁ、『ニコラスヘア二号』って……まんまやないかい。
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今回は一日だけだし、ジェイクと鉢合わせにならなければ、絶対にバレない自信がある。
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