3 / 50
第1章
3話
しおりを挟む
この国、グリフォード王国には五人の王子と三人の王女がいる。
第一王子は王太子として国王の補佐をしながら内政を学んでいる。
第二王子は自身の社交性を活かし、外交のトップとして手腕を発揮している。
第四、第五王子と三人の王女たちは国外の王女、王子や国内の有力貴族に外交や内政の切り札として、嫁ぎ先が既に決まっている。
今回、私が関わることになった第三王子。この人は、兄二人にもしも不幸が訪れた場合の控えとして、表立った事は一切せず、有事に備えて生き残る、というのが与えられた仕事なのだ。
名目上は全騎士団の統括という位置づけになっているが、実質表立った仕事をしているのは、また別の人物。つまり第一騎士団長が統括長ということになっている。
さて、今一度、お母様から渡された書類に目を通しながら、各騎士団について復習しておこう。
この国には六つの騎士団が存在する。
第一騎士団。ここはニコラスが先日まで勤務していた職場だ。別名近衛騎士団とも呼ばれ、王族の警護が主な仕事。もう一つは国内にいる贈収賄や犯罪に手を染める貴族たちの取り締まり。
エリート中のエリートが集まる団で、全ての貴族の憧れの場所だ。
第二騎士団から第五騎士団までは、地方騎士団とも呼ばれ、第二は北方騎士団、第三は東方騎士団、第四は南方騎士団、第五は西方騎士団として、そのエリアを警備及び管理している。
そして第六騎士団。
主な仕事は王都の庶民同士のトラブル回避。
最初は平民の中でも統率力のある者が結成した自警団だったのだが、そこに貴族を何人か入れて騎士団にしてしまった。
通称『第三王子のお守り騎士団』
第三王子を団長として据え、貴族の中でも厄介者のレッテルを貼られた者が放り込まれる場所として有名だ。 なんでこんなところが開設されたかというと、世間体のために仕事をしているように見せかける必要がある者を集めて管理する場所が欲しかったワケで……
要は仕事ができない貴族の溜まり場ってとこなのだ。
「第六ねぇ。ニコラスってばどんなヘマやらかしたんだか。近衛から地方へ飛ばされるんならまだしも、よりによって第六なんて閑職に甘んじるなんて」
書類をクルクル纏めておデコをトントンと叩きながら考えを巡らす。
「普通、プライドの高い男なら名誉除隊を申請するはず。それをしないで、どんなに酷い環境でも仕事を続けるってことは、ヤツの性根は腐っていないわね、いいことだわ。まあ、自分が悪くないと思うなら絶対辞めないんだろうけど。問題はその仕事を放ってまでフィオナちゃんを追わなければいけない理由よね。お母様が知ってるかしら?」
そんなことを考えていたら、何やら玄関先が騒々しいことになっている。
玄関の扉が思いきり開け放たれ、豪快な音と共に勢いよくひとりの人物が飛び出してきた。
第一王子は王太子として国王の補佐をしながら内政を学んでいる。
第二王子は自身の社交性を活かし、外交のトップとして手腕を発揮している。
第四、第五王子と三人の王女たちは国外の王女、王子や国内の有力貴族に外交や内政の切り札として、嫁ぎ先が既に決まっている。
今回、私が関わることになった第三王子。この人は、兄二人にもしも不幸が訪れた場合の控えとして、表立った事は一切せず、有事に備えて生き残る、というのが与えられた仕事なのだ。
名目上は全騎士団の統括という位置づけになっているが、実質表立った仕事をしているのは、また別の人物。つまり第一騎士団長が統括長ということになっている。
さて、今一度、お母様から渡された書類に目を通しながら、各騎士団について復習しておこう。
この国には六つの騎士団が存在する。
第一騎士団。ここはニコラスが先日まで勤務していた職場だ。別名近衛騎士団とも呼ばれ、王族の警護が主な仕事。もう一つは国内にいる贈収賄や犯罪に手を染める貴族たちの取り締まり。
エリート中のエリートが集まる団で、全ての貴族の憧れの場所だ。
第二騎士団から第五騎士団までは、地方騎士団とも呼ばれ、第二は北方騎士団、第三は東方騎士団、第四は南方騎士団、第五は西方騎士団として、そのエリアを警備及び管理している。
そして第六騎士団。
主な仕事は王都の庶民同士のトラブル回避。
最初は平民の中でも統率力のある者が結成した自警団だったのだが、そこに貴族を何人か入れて騎士団にしてしまった。
通称『第三王子のお守り騎士団』
第三王子を団長として据え、貴族の中でも厄介者のレッテルを貼られた者が放り込まれる場所として有名だ。 なんでこんなところが開設されたかというと、世間体のために仕事をしているように見せかける必要がある者を集めて管理する場所が欲しかったワケで……
要は仕事ができない貴族の溜まり場ってとこなのだ。
「第六ねぇ。ニコラスってばどんなヘマやらかしたんだか。近衛から地方へ飛ばされるんならまだしも、よりによって第六なんて閑職に甘んじるなんて」
書類をクルクル纏めておデコをトントンと叩きながら考えを巡らす。
「普通、プライドの高い男なら名誉除隊を申請するはず。それをしないで、どんなに酷い環境でも仕事を続けるってことは、ヤツの性根は腐っていないわね、いいことだわ。まあ、自分が悪くないと思うなら絶対辞めないんだろうけど。問題はその仕事を放ってまでフィオナちゃんを追わなければいけない理由よね。お母様が知ってるかしら?」
そんなことを考えていたら、何やら玄関先が騒々しいことになっている。
玄関の扉が思いきり開け放たれ、豪快な音と共に勢いよくひとりの人物が飛び出してきた。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました
しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。
自分のことも誰のことも覚えていない。
王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。
聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。
なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる