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転移編
5の2.今度は借金取りかっ!
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「ねぇお客人、アンタ誰? サランディアさんの知り合い? どんな関係なの?」
「俺か? 俺はハルムート、魔術師の見習いってとこかな。サーラに弟子入りしようと思ったけど断られまくってた。だから何日かに一回、薬草や必要なものを届けて顔売ってた所さ」
なるほど、彼女の身の回りの世話係はいたんだね。なら、私も便乗して彼に頼るしかないってことかな。彼に片付けやらこの世界のことを少しずつ教わって、順応しなければならない。
何せネコのままではあらゆることに不便を感じてしまう。ここは何としても彼を私の側に引き込まなければ。
「私は紗羅、月宮紗羅です。訳あって遠くからこちらに来ることになったんですが、サランディアさんの魔法で今はネコになってます。水鏡に月と自分を映せば、その月が隠れるまでは人間になれると聞きました。まだ試してませんけどね」
それで、と言葉を繋げながらハルムートさんに、この家の始末と私の現状を説明し、ここでの生活をスタートさせるサポートをお願いしてみた。
ハルムートさんは私の身に起こったことに物凄く興味を示し、サポートをすることを快く引き受けてくれた。
最初、生活拠点は自分の家に、と勧誘されたが、私が頑なにお断りした結果、渋々ではあるが、この場に留まることで決着がついた。
だって、私の人生で男性と同居なんてプランはなかったもの……まだまだ羞恥心は捨てられませんからっ!
「ふーん、お前もサーラなんだな、よろしく。俺のことはハルでいいよ。ところで、ネコになってる間は魔法使えないだろ? 人間に戻りゃ使えんのか?」
「はい? 人間に戻ったって魔法なんか使えるワケないじゃん、アンタ達と違って魔法使いじゃないんだから」
ハルがキョトンとした顔で私をみる。なぜそんな顔されるのかわからないので、ちょっとイラッとした声で問いかける。
「何よ、魔女の家にいるから魔法を使えるネコってことないからね」
「あ、いや、そういうことじゃない。人って生活魔法使えるだろ? だからネコの間は使えるのかどうかって聞いてたんだが……」
あ? 生活魔法? 何だそりゃ?
聞き慣れない言葉にかえって訝しげに首をひねる。
ハルがふうっとひとつ息を吐いて、詳しく教えてくれた。
このルシーン王国の住人及び周辺の住民、つまりはこの世界のみんなってことなんだけど、ある程度の魔力を持って生まれてくるらしい。生活していく上で必要な魔法、火、水、風の魔法はほぼ全員が子供の頃から使っているのだそうだ。
「掃除、洗濯、メシ炊き、沐浴なんかも魔法を使うぞ。お前、魔法使えないんなら一人で暮らすことなんて出来ないじゃん」
「ええっ、何でそんなにファンタジー世界なのよ……私が暮らしていた所は魔法なんて誰ひとり使えなかったわ。その分、科学が発達したけどね」
呆然としながらこれからどうやって生活していこうかと考えながら呟く。
「そのかが……何とかってのはネコのままでも使えるのか? それとも人間に戻れば使えるか?」
「どっちでも無理だよ、機械を作るなんて技術もなければ知識もないもの」
ガックリと床にうずくまって、途方に暮れた声で小さく、どうしよう……という声が出てしまった。
「そうか……それならやっぱり俺と暮らすことになるな。俺がサーラの面倒をみてやるよ。安心しろ、朝から晩まで常に一緒にいてやるからな?」
だからぁ! 朝から晩までなんて私のプライベートはどうなるのよっ!
……でも生活できないんだったら、すがるしかないよね。とりあえずこの世界を把握するまでの我慢だ。
ここの常識を習得して、日本へ帰る、この目標を掲げて生きるしかない。
ウジウジしてても何も変わらないなら、思い切った行動をとるべきだ。
この瞬間、私の腹は決まった。
考えてみれば、サランディアさんのせいだよね、この状況……
「くっそーー! サランディアめーー! 生き返って私を日本へ返せーーーー!」
今はいない人に向かって絶叫した。
「俺か? 俺はハルムート、魔術師の見習いってとこかな。サーラに弟子入りしようと思ったけど断られまくってた。だから何日かに一回、薬草や必要なものを届けて顔売ってた所さ」
なるほど、彼女の身の回りの世話係はいたんだね。なら、私も便乗して彼に頼るしかないってことかな。彼に片付けやらこの世界のことを少しずつ教わって、順応しなければならない。
何せネコのままではあらゆることに不便を感じてしまう。ここは何としても彼を私の側に引き込まなければ。
「私は紗羅、月宮紗羅です。訳あって遠くからこちらに来ることになったんですが、サランディアさんの魔法で今はネコになってます。水鏡に月と自分を映せば、その月が隠れるまでは人間になれると聞きました。まだ試してませんけどね」
それで、と言葉を繋げながらハルムートさんに、この家の始末と私の現状を説明し、ここでの生活をスタートさせるサポートをお願いしてみた。
ハルムートさんは私の身に起こったことに物凄く興味を示し、サポートをすることを快く引き受けてくれた。
最初、生活拠点は自分の家に、と勧誘されたが、私が頑なにお断りした結果、渋々ではあるが、この場に留まることで決着がついた。
だって、私の人生で男性と同居なんてプランはなかったもの……まだまだ羞恥心は捨てられませんからっ!
「ふーん、お前もサーラなんだな、よろしく。俺のことはハルでいいよ。ところで、ネコになってる間は魔法使えないだろ? 人間に戻りゃ使えんのか?」
「はい? 人間に戻ったって魔法なんか使えるワケないじゃん、アンタ達と違って魔法使いじゃないんだから」
ハルがキョトンとした顔で私をみる。なぜそんな顔されるのかわからないので、ちょっとイラッとした声で問いかける。
「何よ、魔女の家にいるから魔法を使えるネコってことないからね」
「あ、いや、そういうことじゃない。人って生活魔法使えるだろ? だからネコの間は使えるのかどうかって聞いてたんだが……」
あ? 生活魔法? 何だそりゃ?
聞き慣れない言葉にかえって訝しげに首をひねる。
ハルがふうっとひとつ息を吐いて、詳しく教えてくれた。
このルシーン王国の住人及び周辺の住民、つまりはこの世界のみんなってことなんだけど、ある程度の魔力を持って生まれてくるらしい。生活していく上で必要な魔法、火、水、風の魔法はほぼ全員が子供の頃から使っているのだそうだ。
「掃除、洗濯、メシ炊き、沐浴なんかも魔法を使うぞ。お前、魔法使えないんなら一人で暮らすことなんて出来ないじゃん」
「ええっ、何でそんなにファンタジー世界なのよ……私が暮らしていた所は魔法なんて誰ひとり使えなかったわ。その分、科学が発達したけどね」
呆然としながらこれからどうやって生活していこうかと考えながら呟く。
「そのかが……何とかってのはネコのままでも使えるのか? それとも人間に戻れば使えるか?」
「どっちでも無理だよ、機械を作るなんて技術もなければ知識もないもの」
ガックリと床にうずくまって、途方に暮れた声で小さく、どうしよう……という声が出てしまった。
「そうか……それならやっぱり俺と暮らすことになるな。俺がサーラの面倒をみてやるよ。安心しろ、朝から晩まで常に一緒にいてやるからな?」
だからぁ! 朝から晩までなんて私のプライベートはどうなるのよっ!
……でも生活できないんだったら、すがるしかないよね。とりあえずこの世界を把握するまでの我慢だ。
ここの常識を習得して、日本へ帰る、この目標を掲げて生きるしかない。
ウジウジしてても何も変わらないなら、思い切った行動をとるべきだ。
この瞬間、私の腹は決まった。
考えてみれば、サランディアさんのせいだよね、この状況……
「くっそーー! サランディアめーー! 生き返って私を日本へ返せーーーー!」
今はいない人に向かって絶叫した。
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