146 / 249
王宮編
74の1.強過ぎ!
しおりを挟む
カシャーン、カシャーーン……
ゆっくりとハサミが交差する音が響く度、自分の命が削られていくみたいで、全身から嫌な汗が流れてくる。
ツツーっと冷たい汗が背筋を流れたと感じた瞬間だった。サソリがグッと沈んでから尻尾を振り上げ、迷いもなく私たちの頭の上から振り下ろしてきた。
ミリィちゃんの防御陣にマトモに突き刺さり、そのままそれを突き抜けて地面に刺さっている。
陣に当たった衝撃で、わずかに私たちのカラダから外れたようだった。
「きゃあっ……」
攻撃をマトモに食らったのと、防御陣が破られた衝撃で、ミリィちゃんは尻もちをついたまま動けないでいる。
「うん、その防御もいい感じだよ。ただ、正面だけ強化してるから、上の方の守りがイマイチだったかな? 次は頑張って。もっとも次があればの話しだけど」
シンはまるで戦闘を教える先生のように、ハルとミリィちゃんを評価しながらその場に佇んでいる。
私は、必死にハイハイしながらミリィちゃんの側まで近寄って、自分の背中にミリィちゃんを隠して敵を睨んだ。
その間も、ハルが援護のために第二、第三波の光の矢を仕掛けるが、ほとんどが堅い表面に当たって弾かれてしまう。運良く隙間に数本刺さっていても、深刻なダメージを与える程には至らない。
シンの様子からは、自分の方が『完全に格上です』というオーラをバンバン出していて、私たちが抵抗する気力を全て奪っていくかのようだ。
事実、ミリィちゃんは攻撃を受けたショックで、呆然としたまま固まっている。このままでは一番最初に餌食になるのはミリィちゃんになってしまう。
今日たまたま散歩に付き合ったせいで、彼女が殺されるなんてことは、絶対にあってはならない。シンとサソリの標的を私に絞ってもらう必要があった。
もともとこの世界に居なかった自分だ。この私が消えたとしても、今まで通りの、私がいなかった時の生活に戻るだけだろう。
その考えにたどり着いたら、気分的に吹っ切れたのか、今この場で殺されてしまうかも、というパニックからは脱出できたみたいだった。
私は震える足をバンバン叩きながら、頑張って立ち上がり、シンに向かって言い返す。
「いたぶることなんかしないで、正々堂々と勝負しにくればいいじゃん。さっさと私を殺したら二人には生きててもらってもいいでしょ?」
「うーん、どうしよっかなぁ。君、魔力ないよね? むしろ他の人の魔力が入り混じってるような……面白いよね、殺すのも惜しい気がしてきたし……」
シンは闘うことをそっちのけで真剣に考え始めている。
こちらは、いつ死への一撃を食らうのかと生きた心地もしないでいるのに、シンの方は殺気のカケラも見せずに、腕組みして悩んでいる。
「ケンのために、サーラちゃんの首を持って行ってあげようと思ってたんだけど。もう少し知りたくなってきたなぁ。予定変更したら怒られるかなぁ」
ブツブツと独り言のように喋り続けるシン。
サソリはシンからの指示があれば、すぐにでも尻尾を振り下ろせるように、油断なく身構えている。
ヒュンーーと耳元で風を感じたと思ったら、黒ヒョウがサソリの左側面、ヘビが右側面から次々に体当たりを仕掛けていく。しかし堅い表面にぶつかるだけで、傷ひとつ負わせることすら叶わない。
チマチマした体当たりをうるさがったのか、サソリが尻尾を大きく回して一回転する。その動きにヒョウもヘビも見事なくらい吹っ飛ばされ、しばらく動けない程にダメージを受けている。
いつも大事なところで守ってくれていたヒョウとヘビが、いとも簡単に吹っ飛ばされてしまったことに、衝撃を受け言葉を失ってしまった。
サソリの圧倒的な強さに、ただ萎縮して呆然とするしかないことを思いしらされる。
たぶん、次のサソリの攻撃で毒を受けるよね。
あ、でもさっき綺麗に死ねるって言ってた。ということは『眠りの森のーー』的な感じで逝っちゃうのかしらん? え? 美人薄命だって? やっぱ若くて美しい人は早く亡くなるとかって、自分で証明しちゃう?
ゆっくりとハサミが交差する音が響く度、自分の命が削られていくみたいで、全身から嫌な汗が流れてくる。
ツツーっと冷たい汗が背筋を流れたと感じた瞬間だった。サソリがグッと沈んでから尻尾を振り上げ、迷いもなく私たちの頭の上から振り下ろしてきた。
ミリィちゃんの防御陣にマトモに突き刺さり、そのままそれを突き抜けて地面に刺さっている。
陣に当たった衝撃で、わずかに私たちのカラダから外れたようだった。
「きゃあっ……」
攻撃をマトモに食らったのと、防御陣が破られた衝撃で、ミリィちゃんは尻もちをついたまま動けないでいる。
「うん、その防御もいい感じだよ。ただ、正面だけ強化してるから、上の方の守りがイマイチだったかな? 次は頑張って。もっとも次があればの話しだけど」
シンはまるで戦闘を教える先生のように、ハルとミリィちゃんを評価しながらその場に佇んでいる。
私は、必死にハイハイしながらミリィちゃんの側まで近寄って、自分の背中にミリィちゃんを隠して敵を睨んだ。
その間も、ハルが援護のために第二、第三波の光の矢を仕掛けるが、ほとんどが堅い表面に当たって弾かれてしまう。運良く隙間に数本刺さっていても、深刻なダメージを与える程には至らない。
シンの様子からは、自分の方が『完全に格上です』というオーラをバンバン出していて、私たちが抵抗する気力を全て奪っていくかのようだ。
事実、ミリィちゃんは攻撃を受けたショックで、呆然としたまま固まっている。このままでは一番最初に餌食になるのはミリィちゃんになってしまう。
今日たまたま散歩に付き合ったせいで、彼女が殺されるなんてことは、絶対にあってはならない。シンとサソリの標的を私に絞ってもらう必要があった。
もともとこの世界に居なかった自分だ。この私が消えたとしても、今まで通りの、私がいなかった時の生活に戻るだけだろう。
その考えにたどり着いたら、気分的に吹っ切れたのか、今この場で殺されてしまうかも、というパニックからは脱出できたみたいだった。
私は震える足をバンバン叩きながら、頑張って立ち上がり、シンに向かって言い返す。
「いたぶることなんかしないで、正々堂々と勝負しにくればいいじゃん。さっさと私を殺したら二人には生きててもらってもいいでしょ?」
「うーん、どうしよっかなぁ。君、魔力ないよね? むしろ他の人の魔力が入り混じってるような……面白いよね、殺すのも惜しい気がしてきたし……」
シンは闘うことをそっちのけで真剣に考え始めている。
こちらは、いつ死への一撃を食らうのかと生きた心地もしないでいるのに、シンの方は殺気のカケラも見せずに、腕組みして悩んでいる。
「ケンのために、サーラちゃんの首を持って行ってあげようと思ってたんだけど。もう少し知りたくなってきたなぁ。予定変更したら怒られるかなぁ」
ブツブツと独り言のように喋り続けるシン。
サソリはシンからの指示があれば、すぐにでも尻尾を振り下ろせるように、油断なく身構えている。
ヒュンーーと耳元で風を感じたと思ったら、黒ヒョウがサソリの左側面、ヘビが右側面から次々に体当たりを仕掛けていく。しかし堅い表面にぶつかるだけで、傷ひとつ負わせることすら叶わない。
チマチマした体当たりをうるさがったのか、サソリが尻尾を大きく回して一回転する。その動きにヒョウもヘビも見事なくらい吹っ飛ばされ、しばらく動けない程にダメージを受けている。
いつも大事なところで守ってくれていたヒョウとヘビが、いとも簡単に吹っ飛ばされてしまったことに、衝撃を受け言葉を失ってしまった。
サソリの圧倒的な強さに、ただ萎縮して呆然とするしかないことを思いしらされる。
たぶん、次のサソリの攻撃で毒を受けるよね。
あ、でもさっき綺麗に死ねるって言ってた。ということは『眠りの森のーー』的な感じで逝っちゃうのかしらん? え? 美人薄命だって? やっぱ若くて美しい人は早く亡くなるとかって、自分で証明しちゃう?
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
錬金術師カレンはもう妥協しません
山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」
前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。
病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。
自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。
それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。
依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。
王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。
前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。
ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。
仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。
錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。
※小説家になろうにも投稿中。
前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!
yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。
だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。
創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。
そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。
この魔術師様、地雷系につき取り扱い注意
甘寧
恋愛
「まったく…貴女はいつになったら俺の言う事を聞いてくれるのやら」
瞳孔が開きっぱなしの男に押し倒され、首にはいつでも絞めれるようにと手を置かれた状態で迫られる。首に添えられた手を外し顎を持ち上げると、強引に唇を奪ってくる。唇を奪われた衝撃よりも、獰猛な瞳で妖艶に微笑む男に冷や汗が止まらない…
そんな歪んだ愛を持つ男…魔術師団長であり婚約者のダリウス。
主人公のアンネリリーは、悪女として有名な令嬢だったが、それも今日まで─
前世を思い出したアンネリリーは、自身の婚約者が地雷系男子だと言うことを知る。
悪女から足を洗い、人生矯正しつつ、ダリウスの地雷を踏み抜かないように生きていくことを決めた。
そんな矢先、仮面舞踏会が行なわれ、その先で出会った男のことが気になってしまうアンネリリー。
家に住み着いている妖精に愚痴ったら、国が滅びました
猿喰 森繁 (さるばみ もりしげ)
ファンタジー
【書籍化決定しました!】
11月中旬刊行予定です。
これも多くの方が、お気に入り登録してくださったおかげです
ありがとうございます。
【あらすじ】
精霊の加護なくして魔法は使えない。
私は、生まれながらにして、加護を受けることが出来なかった。
加護なしは、周りに不幸をもたらすと言われ、家族だけでなく、使用人たちからも虐げられていた。
王子からも婚約を破棄されてしまい、これからどうしたらいいのか、友人の屋敷妖精に愚痴ったら、隣の国に知り合いがいるということで、私は夜逃げをすることにした。
まさか、屋敷妖精の一声で、精霊の信頼がなくなり、国が滅ぶことになるとは、思いもしなかった。
白紙にする約束だった婚約を破棄されました
あお
恋愛
幼い頃に王族の婚約者となり、人生を捧げされていたアマーリエは、白紙にすると約束されていた婚約が、婚姻予定の半年前になっても白紙にならないことに焦りを覚えていた。
その矢先、学園の卒業パーティで婚約者である第一王子から婚約破棄を宣言される。
破棄だの解消だの白紙だのは後の話し合いでどうにでもなる。まずは婚約がなくなることが先だと婚約破棄を了承したら、王子の浮気相手を虐めた罪で捕まりそうになるところを華麗に躱すアマーリエ。
恩を仇で返した第一王子には、自分の立場をよおく分かって貰わないといけないわね。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。
実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので!
おじいちゃんと孫じゃないよ!
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる