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王宮編
57の1.ア、アタマがライダー!
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あー、泣いた泣いた。結構スッキリしたわ。
なんか知らないうちに寝かしつけられてたみたい。
朝、早めに目が覚めてボーっとしてたら、レイニーさんに抱きしめられた。それまでは水中でヘルメットでも被ってるかのようだった頭の気だるさがスッと抜け、おかげでもう一度寝た後には、何ごともなかったかのように普段と同じ朝を迎えた。
「お目覚めか? 気分はどうかな?」
レイニーさんに声をかけられ、ベッドの上からノロノロと首を動かす。
「えへへ、泣いちゃってたみたい。ホームシックかなあ」
適当に理由をつけてレイニーさんを心配させないように空元気をだして話しをする。
彼女は何も言わずに笑顔だけ見せて、私の身支度を手伝ってくれた。
さんざん泣きつくしてたどり着いた答え。
『もう恋はしない』
苦しくなるなら、哀しくなるなら、もう恋なんてしない。それならば私の心が傷つくこともなくなるだろう。
「おっはよー、サーラ。今朝はブッサイクな顔をレイニーさんに治してもらったんだって?」
身支度が終わってひと息ついたところで、毎度元気なルディが、朝の打ち合わせのために部屋へと入ってきた。
「少しは美人になったのかよ……って、どわぁぁぁ……」
私に喋ってる途中、レイニーさんの怒りが彼に爆裂した。
お尻に見事な回し蹴りを喰らわした後、腕を取っての背負い投げが綺麗に決まる。トドメは腹にエルボーを一発ドスン。
身動き取れずにヒクヒクとしているルディに対して、ドレスのシワをパンッと伸ばし、何事もなかったのようにその場で私に向かって一礼するレイニーさん。
完璧な仕留め方に、思わず拍手を送ってしまった。
「っでぇ、痛えっつーの。何すんだっ」
痛みを堪えて立ち上がったルディが、腹をさすりながらレイニーさんに噛み付く。
対して、彼女は胸元から取り出した小さな杖を元の大きさに戻してから、ルディの頭を一発ゴンと殴る。
「少しは空気を読めっ。この万年頭花畑小僧がっ」
「空気って……そんなモン、本じゃねえんだから読めるわけねぇだろがっ」
「はぁ……このド阿呆。ロイズはいったいこのバカに何を教えてるんだか……」
二人の、この漫才のようなやりとりを見ているうちに、私も普段の自分に戻れたようだ。間に入って、また取っ組み合いを始めそうな二人をなだめる。
「まあまあ、レイニーさん、気を遣ってくれてありがとうございます。ルディもワンコじゃないんだから、そこまで吠えない」
二人に向かって居住まいを正し、軽く頭を下げてからこう言った。
「私の方はもう平気です。これからも、普段どおりに接してくださいね?」
「殿下からプロポーズされて、動揺して大泣きしたって聞いたぜ? なんだかんだでサーラも女だったってことだよな。っでぃっ」
ルディが茶化しながら喋ってる途中に、レイニーさんがもう一度その頭に一発ゲンコツを落とす。直撃部分を抱えてのけ反る彼を見ながら、私はクスクスと笑い続けた。
「笑えるようになったなら、それで良いと思うぞ。小僧、お前はもう喋るな。今日の茶会はどうする? 断って、私がサーラに添い寝してあげるのも有りだが?」
レイニーさんが笑顔の隙間からキラッと目を光らせ、グググっと迫ってきたと思ったら、私のアゴに手をかけて軽めのウィンクをする。
「お、お茶会行きますよ。添い寝はまたの機会に」
「そうか、いつでも声をかけてくれ。素敵な夜を一緒に過ごそうではないか」
も、もう危険な香りしか感じられん……
若干引き気味に応対し、手元に置いてあった本でガードしながら椅子に座り、意識を持っている本へと切り替えることにした。
「……ーラ、サーラ。図書館寄ってから茶会なんだろ? そろそろ出ようぜ」
ルディに呼びかけられて、ようやく意識がこちらに戻ってきた。本に集中しているうちに、いつの間にか眠っていたんだろう。頭を軽く振って意識をハッキリさせた。
なんか知らないうちに寝かしつけられてたみたい。
朝、早めに目が覚めてボーっとしてたら、レイニーさんに抱きしめられた。それまでは水中でヘルメットでも被ってるかのようだった頭の気だるさがスッと抜け、おかげでもう一度寝た後には、何ごともなかったかのように普段と同じ朝を迎えた。
「お目覚めか? 気分はどうかな?」
レイニーさんに声をかけられ、ベッドの上からノロノロと首を動かす。
「えへへ、泣いちゃってたみたい。ホームシックかなあ」
適当に理由をつけてレイニーさんを心配させないように空元気をだして話しをする。
彼女は何も言わずに笑顔だけ見せて、私の身支度を手伝ってくれた。
さんざん泣きつくしてたどり着いた答え。
『もう恋はしない』
苦しくなるなら、哀しくなるなら、もう恋なんてしない。それならば私の心が傷つくこともなくなるだろう。
「おっはよー、サーラ。今朝はブッサイクな顔をレイニーさんに治してもらったんだって?」
身支度が終わってひと息ついたところで、毎度元気なルディが、朝の打ち合わせのために部屋へと入ってきた。
「少しは美人になったのかよ……って、どわぁぁぁ……」
私に喋ってる途中、レイニーさんの怒りが彼に爆裂した。
お尻に見事な回し蹴りを喰らわした後、腕を取っての背負い投げが綺麗に決まる。トドメは腹にエルボーを一発ドスン。
身動き取れずにヒクヒクとしているルディに対して、ドレスのシワをパンッと伸ばし、何事もなかったのようにその場で私に向かって一礼するレイニーさん。
完璧な仕留め方に、思わず拍手を送ってしまった。
「っでぇ、痛えっつーの。何すんだっ」
痛みを堪えて立ち上がったルディが、腹をさすりながらレイニーさんに噛み付く。
対して、彼女は胸元から取り出した小さな杖を元の大きさに戻してから、ルディの頭を一発ゴンと殴る。
「少しは空気を読めっ。この万年頭花畑小僧がっ」
「空気って……そんなモン、本じゃねえんだから読めるわけねぇだろがっ」
「はぁ……このド阿呆。ロイズはいったいこのバカに何を教えてるんだか……」
二人の、この漫才のようなやりとりを見ているうちに、私も普段の自分に戻れたようだ。間に入って、また取っ組み合いを始めそうな二人をなだめる。
「まあまあ、レイニーさん、気を遣ってくれてありがとうございます。ルディもワンコじゃないんだから、そこまで吠えない」
二人に向かって居住まいを正し、軽く頭を下げてからこう言った。
「私の方はもう平気です。これからも、普段どおりに接してくださいね?」
「殿下からプロポーズされて、動揺して大泣きしたって聞いたぜ? なんだかんだでサーラも女だったってことだよな。っでぃっ」
ルディが茶化しながら喋ってる途中に、レイニーさんがもう一度その頭に一発ゲンコツを落とす。直撃部分を抱えてのけ反る彼を見ながら、私はクスクスと笑い続けた。
「笑えるようになったなら、それで良いと思うぞ。小僧、お前はもう喋るな。今日の茶会はどうする? 断って、私がサーラに添い寝してあげるのも有りだが?」
レイニーさんが笑顔の隙間からキラッと目を光らせ、グググっと迫ってきたと思ったら、私のアゴに手をかけて軽めのウィンクをする。
「お、お茶会行きますよ。添い寝はまたの機会に」
「そうか、いつでも声をかけてくれ。素敵な夜を一緒に過ごそうではないか」
も、もう危険な香りしか感じられん……
若干引き気味に応対し、手元に置いてあった本でガードしながら椅子に座り、意識を持っている本へと切り替えることにした。
「……ーラ、サーラ。図書館寄ってから茶会なんだろ? そろそろ出ようぜ」
ルディに呼びかけられて、ようやく意識がこちらに戻ってきた。本に集中しているうちに、いつの間にか眠っていたんだろう。頭を軽く振って意識をハッキリさせた。
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