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魔術師団編
47の1.あり得ないしっ!
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晩餐会の事件から一週間ほど過ぎた。
会場で毒を飲んで体調が悪くなった人たちも、レイニーさんとロイズ隊長の迅速な対応のおかげで、危険な状態にはならなかったようだ。
学校に在籍している生徒は速やかに返され、次の日からは何ごともなかったように通常の生活に戻っている。もちろんハルやフィルのクラスもきちんと授業が行われているらしい。
フィルは臨時の休みとはならなかったゆ不満を延々とハルに漏らしていた、と後から聞いた。
ミリィちゃんは、一旦隔離施設へと収監されたが、事件の事情聴取が済んだ後に、ジュノー様の元で彼の死期を迎えるまで付き添うことになった。
晩餐会で様子のおかしかった伯爵は、ミリィちゃんの言いなりになるように、毎日少しずつ薬で洗脳されていたらしい。
晩餐会の直前、薬が切れかかっていたために、伯爵はなんとか危険から参加者を守ろうとこの場から立ち去るように促したのだが、肝心の私たちがその意図を汲み取れず、多くの人たちが被害にあってしまった。
あの時、ルディが引っかかっていたことをもう少し追求しておけば、未然に防げたかもしれない事態に、二人揃ってラッセルからかなりキツいお説教をくらった。
あの嫌味がネチネチ続くお説教はもう二度くらいたくない。心底からそう思った。
ルディは更にロイズ隊長やレイニーさんからもお説教を食らったらしく、見かける度に憔悴しきった様子だった。
私がルディに考えることをやめさせてしまったのもあった手前、悪かったなぁと反省したので、あとで盛大に奢ってやろう、と心に誓った。
まあ、誓うだけで、実際に奢るかどうかは改めて考えるとしようかな。
今回のミリィちゃんの行動で、不可解な点がいくつかあったらしく、ラッセルとコークス先生が頻繁に彼女への聴取を行なっているようだ。
どんな内容か私も気になっていたので、ラッセルの怒りと嫌味が静まりかけたのを見計らって少しだけ探りを入れてみた。
「ねえ、今日もミリィちゃんのところへ行って来たんでしょう? 彼女の処分はそんなに重くないって聞いたんだけど、なぜそんなに彼女に会う必要があるの?」
机に向かって作業をしていたラッセルは、顔をあげると意外そうにしたが、次の瞬間ニヤリと笑ってこう言った。
「なんだ、私が女性と頻繁に会っているのが気になるのか?」
「なっ、なに言ってるのよっ。そんなの気にしないわ、アンタに興味ないし!」
喉の奥でククッと小さく笑うと「冗談だ」と返される。
はあ? なんなの? 私をからかうとか。ちょっと顔が熱くなっちゃたじゃないっ。私の反応みて笑うとか、ホントふざけないでよね。
口の先を尖らせて不満を態度で表していたら、ムギュッと摘まれて呆れられる。
「これはレディのとる態度ではないな、改めるように」
「まぁ、まぁにふるのぉ、ふぁなひれ」
なんだろ、最近のこの人ってば、行動が意外過ぎて読めないわ。パッと離された口元をまた摘まれないように両手で隠し、キツく睨んで対抗した。
ラッセルはその視線をアッサリとスルーして本題へと入る。
「ミリアル嬢のことだが……例の虫と伯爵へ使った洗脳の薬について問い合わせをしているのだ」
「虫と薬……」
ラッセルはコクリと頷くと更に詳しく話してくれた。
「彼女がリンスター殿の屋敷から伯爵家に移るまでは、ほんの数日しかなかったはずなのだ。ならばどうやってあの虫と薬を手に入れたのか、と疑問に思ってな」
確かに、ミリィちゃんが呪術や毒薬を作る技術を習得するには時間が足りなさ過ぎる。それにあのドール。あの機械のような人間にするには、私がやられたように、虫を仕込んでしばらくしないと無理なはず。それに連れ歩かなければ自分の指示通りに動かすこともできないと思う。
会場で毒を飲んで体調が悪くなった人たちも、レイニーさんとロイズ隊長の迅速な対応のおかげで、危険な状態にはならなかったようだ。
学校に在籍している生徒は速やかに返され、次の日からは何ごともなかったように通常の生活に戻っている。もちろんハルやフィルのクラスもきちんと授業が行われているらしい。
フィルは臨時の休みとはならなかったゆ不満を延々とハルに漏らしていた、と後から聞いた。
ミリィちゃんは、一旦隔離施設へと収監されたが、事件の事情聴取が済んだ後に、ジュノー様の元で彼の死期を迎えるまで付き添うことになった。
晩餐会で様子のおかしかった伯爵は、ミリィちゃんの言いなりになるように、毎日少しずつ薬で洗脳されていたらしい。
晩餐会の直前、薬が切れかかっていたために、伯爵はなんとか危険から参加者を守ろうとこの場から立ち去るように促したのだが、肝心の私たちがその意図を汲み取れず、多くの人たちが被害にあってしまった。
あの時、ルディが引っかかっていたことをもう少し追求しておけば、未然に防げたかもしれない事態に、二人揃ってラッセルからかなりキツいお説教をくらった。
あの嫌味がネチネチ続くお説教はもう二度くらいたくない。心底からそう思った。
ルディは更にロイズ隊長やレイニーさんからもお説教を食らったらしく、見かける度に憔悴しきった様子だった。
私がルディに考えることをやめさせてしまったのもあった手前、悪かったなぁと反省したので、あとで盛大に奢ってやろう、と心に誓った。
まあ、誓うだけで、実際に奢るかどうかは改めて考えるとしようかな。
今回のミリィちゃんの行動で、不可解な点がいくつかあったらしく、ラッセルとコークス先生が頻繁に彼女への聴取を行なっているようだ。
どんな内容か私も気になっていたので、ラッセルの怒りと嫌味が静まりかけたのを見計らって少しだけ探りを入れてみた。
「ねえ、今日もミリィちゃんのところへ行って来たんでしょう? 彼女の処分はそんなに重くないって聞いたんだけど、なぜそんなに彼女に会う必要があるの?」
机に向かって作業をしていたラッセルは、顔をあげると意外そうにしたが、次の瞬間ニヤリと笑ってこう言った。
「なんだ、私が女性と頻繁に会っているのが気になるのか?」
「なっ、なに言ってるのよっ。そんなの気にしないわ、アンタに興味ないし!」
喉の奥でククッと小さく笑うと「冗談だ」と返される。
はあ? なんなの? 私をからかうとか。ちょっと顔が熱くなっちゃたじゃないっ。私の反応みて笑うとか、ホントふざけないでよね。
口の先を尖らせて不満を態度で表していたら、ムギュッと摘まれて呆れられる。
「これはレディのとる態度ではないな、改めるように」
「まぁ、まぁにふるのぉ、ふぁなひれ」
なんだろ、最近のこの人ってば、行動が意外過ぎて読めないわ。パッと離された口元をまた摘まれないように両手で隠し、キツく睨んで対抗した。
ラッセルはその視線をアッサリとスルーして本題へと入る。
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「虫と薬……」
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