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魔術師団編
43の1.むっちゃヤバいっす!
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「私はね、この街のスラムに捨てられた子だったの」
そう言ってミリィちゃんが俯向きがちに顔の表情を曇らせながら話しをしてくれた。
どこの国にもスラム街というのは存在するようで、このルシーン国も例外ではなかった。
王都から流れる排泄物を処理するドブ川の側に作られた小さな集落。ここは身寄りのない者や悪事を働いて表の世界に顔を出せなくなった者など、さまざまな事情を抱えた者たちが集まって暮らす場所なのだそうだ。そして、たまに不義の子として捨て子が捨てられる時もある。
「運良く、赤ん坊を育てることに興味を持ったバカな女に拾われて死なずに済んだけど。あの方に出会うまでの毎日は、そりゃ地獄の日々だったわ。アンタにはわからない世界だろうね。残飯を漁るのさえも力のある浮浪児だけだから、私みたいな小さくて力の弱い者は、生きるために盗むしか道がないの」
ある日、店の商品を盗むのにも失敗し、その店の商人にボコボコにされた日があったらしい。既に何日も食べ物を口にしない日が続いていて、これ以上食べないと、動くことすらままならない状況になると考えた彼女は危険な賭けにでる。
強い浮浪児たちの目をかいくぐって残飯漁りに手を出すという行動に出たのだ。
見つかれば容赦ない制裁をされ、スラムにも居続けることができないような危険。普段ならそんな危ない橋は渡らないであろう彼女でも、空腹で頭の回らない状況の中では、何が危険で何が安全かなどわかるはずがなかった。
最初はほんのすこしだけ、わからない程度に掠め取るつもりだったらしいが、目の前のご馳走を途中で諦めることができなかったらしい。案の定、浮浪児たちに見つかって、動くこともできない程殴られ続けたんだそうだ。
「こんな思いするくらいなら、死んだっていいだろうって。生きる、ということに意味なんてない、私は価値のない人間だから。そう考えて目を閉じかけた時だったわ。ジュノー様が私に手を差し伸べてくれたの」
「ジュノー……ジュノー・リンスター。前の魔術師団長か」
前の魔術師団長? ハルの言葉がボーっとする頭に響いてきた。
「そう、ジュノー様は誰に対してもお優しい方だった。ボロ雑巾のような私を拾って、立派なお屋敷に住まわせてくれた。メイドの仕事も与えてくれたし、私は、一生ジュノー様に仕える決心をしたわ。ジュノー様が私に生きる意味を与えてくれたの」
うっとりと、まるで神を崇拝しているような顔つきで喋り続ける。ミリィちゃんの目は、こちらを見てるワケではなく、頭の中でジュノー様を思い浮かべて、それをジッと見ているようだ。
「それなのに……アンタのあの事故で全てが狂ったのよ! ジュノー様は王家預かりの幽閉状態、各隊長は左遷や降格、解任までなって。あの方が連行されたあの日から私の心は空っぽになってしまったのよ。私のジュノー様と幸せを奪ったアンタが許せない」
急に目の焦点があってきたかと思うと、燃えるような目でハルを睨みつけ、悲痛な声で尚も喋り続ける。ハルの方は、と目を動かせば、呆然としてその話しをただ聞いているようで身動きひとつしていない。
「あの事故でアンタが死んだと聞いた。この国を守るために、ジュノー様が幽閉されるのも致し方ないと無理やり納得したわ。そう、あの方に何度も説得されて。私も付いて行くって言ったのに、拘束される身にはメイドは不要だと」
嗚咽混じりの話しを聞くと、私まで胸が苦しくなってくる。
そう言ってミリィちゃんが俯向きがちに顔の表情を曇らせながら話しをしてくれた。
どこの国にもスラム街というのは存在するようで、このルシーン国も例外ではなかった。
王都から流れる排泄物を処理するドブ川の側に作られた小さな集落。ここは身寄りのない者や悪事を働いて表の世界に顔を出せなくなった者など、さまざまな事情を抱えた者たちが集まって暮らす場所なのだそうだ。そして、たまに不義の子として捨て子が捨てられる時もある。
「運良く、赤ん坊を育てることに興味を持ったバカな女に拾われて死なずに済んだけど。あの方に出会うまでの毎日は、そりゃ地獄の日々だったわ。アンタにはわからない世界だろうね。残飯を漁るのさえも力のある浮浪児だけだから、私みたいな小さくて力の弱い者は、生きるために盗むしか道がないの」
ある日、店の商品を盗むのにも失敗し、その店の商人にボコボコにされた日があったらしい。既に何日も食べ物を口にしない日が続いていて、これ以上食べないと、動くことすらままならない状況になると考えた彼女は危険な賭けにでる。
強い浮浪児たちの目をかいくぐって残飯漁りに手を出すという行動に出たのだ。
見つかれば容赦ない制裁をされ、スラムにも居続けることができないような危険。普段ならそんな危ない橋は渡らないであろう彼女でも、空腹で頭の回らない状況の中では、何が危険で何が安全かなどわかるはずがなかった。
最初はほんのすこしだけ、わからない程度に掠め取るつもりだったらしいが、目の前のご馳走を途中で諦めることができなかったらしい。案の定、浮浪児たちに見つかって、動くこともできない程殴られ続けたんだそうだ。
「こんな思いするくらいなら、死んだっていいだろうって。生きる、ということに意味なんてない、私は価値のない人間だから。そう考えて目を閉じかけた時だったわ。ジュノー様が私に手を差し伸べてくれたの」
「ジュノー……ジュノー・リンスター。前の魔術師団長か」
前の魔術師団長? ハルの言葉がボーっとする頭に響いてきた。
「そう、ジュノー様は誰に対してもお優しい方だった。ボロ雑巾のような私を拾って、立派なお屋敷に住まわせてくれた。メイドの仕事も与えてくれたし、私は、一生ジュノー様に仕える決心をしたわ。ジュノー様が私に生きる意味を与えてくれたの」
うっとりと、まるで神を崇拝しているような顔つきで喋り続ける。ミリィちゃんの目は、こちらを見てるワケではなく、頭の中でジュノー様を思い浮かべて、それをジッと見ているようだ。
「それなのに……アンタのあの事故で全てが狂ったのよ! ジュノー様は王家預かりの幽閉状態、各隊長は左遷や降格、解任までなって。あの方が連行されたあの日から私の心は空っぽになってしまったのよ。私のジュノー様と幸せを奪ったアンタが許せない」
急に目の焦点があってきたかと思うと、燃えるような目でハルを睨みつけ、悲痛な声で尚も喋り続ける。ハルの方は、と目を動かせば、呆然としてその話しをただ聞いているようで身動きひとつしていない。
「あの事故でアンタが死んだと聞いた。この国を守るために、ジュノー様が幽閉されるのも致し方ないと無理やり納得したわ。そう、あの方に何度も説得されて。私も付いて行くって言ったのに、拘束される身にはメイドは不要だと」
嗚咽混じりの話しを聞くと、私まで胸が苦しくなってくる。
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