謎の乗客

久手堅悠作

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謎の乗客

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 平日の11時の電車の乗客は私一人だった。真ん中の席に座りスマホを弄っていると、突然私の隣に人が座ってきた。他の席はたくさん空いているのになんで私の隣に?と思っていると、女の子は私に声を掛けてきた。

「久しぶりだね。久美子ちゃん」

 なんで私の名前を知っているんだ、この子。女の子は制服を着ており、かなり小柄で童顔で中学1年生ぐらいに見えた。対する私は26歳の社会人。接点なんてどこにもない。今日は休みで社員証もぶら下げていないのに、なんで私の名前がわかるんだ。私の世代からすると、久美子なんてありふれた名前じゃないし……。

「今は社会人?」

「うん。一応ね。あの、一つ聞きたいんだけどいい?」

「いいよ」

「私たちどこかで会ったことあるの?」

「あるよ。ていうか私たち親友だったじゃん」

「へ?」

 私の親友はこの世で一人しかいない。でも、あの子は13年前にいじめを苦にして自殺して死んでしまったはず。

「もしかして七海?」

「そうだよ~」

「……良かった。元気そうで。でも、もう11時だけど学校は大丈夫なの?」

「今日は行かないよ。それに、久美子だって平日なのに会社行ってないじゃん」

「私はサービス業だから毎週土日が休みなわけじゃないの。そういや、七海はなんで学校行かないのに制服なんて着てるの?」

「今日は1年1組の同窓会に行くの。この容姿でパーティードレスなんて着たら怪しまれるだろうけど、同窓会だから制服着てきましたって言ったらおかしくないでしょ?」

 その言葉を聞いてハッとした。七海が着ている制服は、彼女が前世で通っていた中学の制服だったのだ。多分、ジモティーかなにかで買ったのだろう。

「な、なんで今日、同窓会があるってわかるの?」

「主犯の由美を殺して、私が幹事やってるからね」

「クラスの皆を殺すつもりなの?」

「もちろん。だって、あんなことした奴らがのうのうと生きてるなんて許せないじゃん」

 せっかく生まれ変わったんだから、復讐なんてしないで幸せに生きなよ。と言いたかったが、そんなのは私のエゴだと思い、言葉を飲み込んだ。それから、私は七海に向かってこう言った。

「がんばってね」

 七海は私の言葉を聞いて驚いたような顔をしていたが、すぐに目に涙を浮かべ、私に抱きついた。

「ありがとう、久美子」
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