捨て猫を拾った日

トウリン

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愛猫日記

彼と彼女と彼⑧

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 大きく広げた孝一こういちの手が、真白ましろのカタチを辿っていく。
 火照った頬から速いリズムで脈を刻む首筋、彼の手にちょうどよく納まる二つの双丘から手で掴み切れてしまいそうなウェスト、そして平らな腹から柔らかく丸みを帯びてきた腰。
 ピクリと真白が身体を震わせる場所を見つけると、焦らすようにそこをくすぐり、キスで印を残す。
 その度に、彼女の喉からは甘い声が漏れた。

 孝一は更に下げていった手で真白の太腿の外側を一撫でし、止まる。
「コウ?」
 動きのなくなった孝一に、彼女が肘をついて起き上がろうとした。

 が。

「きゃっ!?」
 彼が真白の両脚を掴んで肩に担ぎ上げた反動で、彼女の上半身がボスッと枕に埋まる。今、真白の秘めるべき場所は、孝一の目の前に晒されていた。
 何度も繰り返されてきた経験から、彼女にはこれから何が起きるのか――彼が何をしようとしているのか、悟ったようだ。

「や、コウ、それはダメ――ッ」
 バタバタと足をもがかせて逃げようとするけれど、それを赦す孝一ではない。
「駄目?」
 孝一は笑顔でそう問い返しながら、肩を揺すって真白の身体を更に近付ける。少し頭を傾けて、肩の上に載せた彼女の腿の内側、柔らかな皮膚に紅い痕を残した。

「んんッ」
 右と左に交互に同じことを繰り返す度、彼女のつま先がピンと跳ね上がる。
 孝一のキスは徐々に上がっていって、やがて左右が合流するところまで到達した。そこで彼は少し顔を上げ、胸元まで真っ赤に染めて目を潤ませている真白に笑いかける。
「お前がこれをイヤだというのは、感じ過ぎるからだろう?」
「ぁ、あッ、や、ぁ……そこで、しゃべっちゃ……」
 彼の吐息が和毛をそよがせ、真白が身をよじって逃れようとするが当然叶う筈もない。未だに腕も解けておらず、今の彼女は孝一にされるがまま、なのだ。

「わかった。じゃあ、何も言わない」
 真白が望む通りそう答えた孝一に、彼女は少し不安げな顔になった。
「コウ、あの――ひぅッ」
 孝一に何かを言いかけた真白の声が、途中で悲鳴じみたものに変わる。彼の舌が、茂みに隠された赤く膨らんだ芯を探し当てたからだ。下から上へ、一番敏感な部分を包んでいるものを剥ぐように、押し上げるようにして、ねぶる。

 真白の花芯は、プクリと腫れ上がっていても、小さい。
 小さいそれを舌の先で突き、包み込むようにして舐め上げ、今度はチュッとワザと音を立てて吸う。

「ぁあ、あぅッ」
 指よりも柔らかい、けれど指よりも執拗に絡み付くそれに、真白の全身がビクビクと反応した。孝一がすること一つ一つに艶を帯びた声が響く。恥ずかしがっている筈の彼女の腰が上がり、快感を生み出すその場所を彼の口元に押し付けてくる。

 無意識の真白の反応を更に煽り立てるように、孝一は、丁寧に、何度もそこをなぶった。

 乱れる真白の息。

「あ、あ、ダメ、ダメッ! また、……ぁ、ああッ」

 ひときわ高い、嬌声。
 再び達した彼女の声が、寝室に響いた。

 ガクガクと途切れることのなかった痙攣は、やがてピクン、ピクンという引きつるような動きに変わる。
 孝一が顔を少し離してみると、いじられ充血しきった紅色の粒と、その下で甘やかな蜜を滴らせている蕾が見て取れた。愉悦を続けざまに引き出された蕾はヒクヒクと痙攣していて、まるで孝一を誘っているように見える。
 そのヒク付きが止まらぬうちに、彼は蜜が溢れるその場所へと指を一本挿し入れた。

「ふぁ、あ、ダメ、今は、まだ、触っちゃ――ッ」
 達したばかりの身体に更に加えられた刺激に、真白がのけ反った。どうやら、続けざまにもう一度、軽くイッたようだ。
 奥深くまで挿入すると、真白の中がキュッと締め付けてくる。もう何度も、指よりも遥かに太い孝一の身体を受け入れているというのに、そこは狭かった。彼の指を一分の隙もなくピタリと包み込み、絡み付く。

 孝一の身体も、すでに充分過ぎるほどに高まっていた。
 張り詰めた彼の屹立を柔らかく潤った彼女のそこに埋めることを考えると、脈動は更に強くなり、ズキズキとした痛みで要求を主張してくる。

(入れた途端にイキそうだ)
 そう思っただけで、その瞬間に似た快感が彼の背筋を駆け上っていった。
 まさか入れずして放出してしまうわけにはいかない。男の沽券に係わる。
 孝一は荒く深呼吸をして、何とか気を逸らそうと試みた。
 暴れ馬を制御しているのにも似た思いで自分自身の欲望を抑え込むのに成功すると、孝一は挿し入れた指で丹念に真白の中を探る。その場所のどこをどうすれば彼女に甘い声を上げさせることができるのか、彼は知り尽くしていた。
 その一つ一つを、孝一は真白の顔を見つめながら辿っていく。彼女の目は開いていたけれど、その焦点は茫洋として定まらない。彼を見ているようでも、その眼差しはどこか夢の中を彷徨っているかのようだった。

 うっとりとしたその顔は、まぎれもなく、快感に浮かされているものだ。
 真白のそんな反応を見ていると、孝一の中には満足感が込み上げてくる。
 そして、もっと、彼女を乱れさせてやりたくなってしまう。

「んんッ」
 命を育む大切な場所に近い奥深くや、浅い場所にある少しざらつくしこり――随所にある感じる場所を孝一の指が優しく揉みしだくと、真白の身体がピクリと震え、奥からはトロリとした蜜が溢れ出した。
「真白」
 手を止めることなく呼びかけると、彼女は何度か瞬きをして、快感にけぶった眼差しを彼に向けてくる。
「コ……ゥ」
 かすれた声が、孝一の名を囁く。それと同時にキュッと真白の中が収縮し、彼の指を締め付ける。
「俺にどうして欲しい?」
「コウ、に……? わたし……」
 言葉は、そこで消えた。だが、ヒク付く彼女の内部が、言葉よりも雄弁に何を望んでいるのかを訴えてくる。
 まだ恥じらいを残している真白に、孝一の中には少し彼女をいじめてやりたい気持ちが生じてきてしまう。

「俺は超能力者じゃないからな、何をして欲しいのか言ってもらわないとわからない」
 優しげに微笑みながらそう告げて、真白を刺激している力を強める。感じる場所にグッグッと指を押し込むようにしてやると、途端に彼女の全身に緊張が走った。
「やッあ、そんな、されると、また――ッ」
 高まる真白の声。
 つま先に力が入り、太腿が震えだす。
 彼女が息を詰めて背を反らした瞬間――孝一はフッと力を抜いた。
「ッ」

 達する直前で放置され、真白が息を呑む。戸惑いを含んだ問いかけるような目を向けてきた彼女に、無言でにっこりと笑いかけた。
 そしてまた、始める。

 同じことを三度、いや、四度ほど繰り返した時だろうか。
「もう、ヤダ、コウ、お願い……」
 懇願する眼差しと声。
 孝一は中途半端な状態で止めたまま、彼女の中から指を引き抜いた。そうして、とめどなく蜜を溢れさせる入口をそっとなぞりながら、問いかける。
「お願いって、何を?」
「お願い、コウが……コウが欲しいの」
 躊躇いを拭い去った、切羽詰まった囁き。

 望む言葉を手に入れて、孝一は笑みを浮かべて身を乗り出すと、真白に口付けた。目蓋に、頬に、唇に。
 そうしながら彼は自らの服を脱ぎ去り、硬く張り詰めた高まりを、ゆっくりと彼女の中に埋めていく。孝一は、彼を受け入れていく彼女の様を、見つめた。

「ふ……ぅっ」
 大きな彼を受け止める真白は、喉を反らして全身を震わせる。露わになった脈打つ場所にキスで紅い痕を残しつつ、彼はジリジリとした動きで、時間をかけて彼女の最奥に辿り着く。
 しばらく、そのまま体を重ねていた。触れ合う肌には、ピリピリと電気が走っているようだった。
 真白の小刻みな震えが鎮まりかけたところで孝一は起き上がり、そして彼女の腰を掴んで引き起こす。

「んぁッ」
 真白がビクリと震えて声を上げる。
 胡坐をかいた孝一の上に跨る形で座らされ、真白自身の重みでつながりが深まったのだ。彼女は孝一の肩に顔を埋め、無意識なのか、そこに歯を立てる。甘い痛みに、孝一の背筋に震えが走る。
「シロ……ッ」
 呻いて、孝一は真白の身体を抱きすくめた。柔らかな温もりを胸に押し付けて、触れる場所全てで彼女を感じたかった。

「お願い、コウ、腕、解いて……」
 喉元でそんな囁きが聞こえる。ボウッとしていた彼は、一瞬自分が締め付けすぎたのかと力を緩めかけた。だがすぐに真白が言いたいのは彼女自身の腕のことだと思い当たる。
 そうした張本人の彼自身が、真白の腕を縛っていたことを忘れていたのだ。彼女の身体を掻き立てることに夢中になり過ぎて。

「悪い」
 謝りながら、背中に回した手でトレーナーをほぐしてやる。袖から腕を引き抜くなり、真白は彼にすがり付いてきた。その儚い力に、孝一の頭がくらくらする。溢れんばかりに胸の中にこみ上げてきた想いは、何と表現したらよいものか、彼自身にもよく解からなかった。

 一番近いものは、保護欲、だろうか。あるいは、独占欲か。
 彼から彼女を奪おうとする全てのものから、守りたかった。悪いものはもちろん――たとえそれが良いものであろうとも。

 孝一は真白を抱き締める。と、力を入れ過ぎたらしい。
「んんっ」
 小さく呻いた真白に、孝一は腕を緩める。
「悪い、苦しかったか?」
「少し……でも、だいじょうぶ」
 真白は顔を覗き込んで問いかけた孝一にかぶりを振ると、彼の胸に頬をすり寄せてきた。
 信頼しきったその仕草に、孝一はもう一度彼女を抱え直す。
 そうやって抱き合って、孝一は彼女の中にいることを、彼女が彼自身を包み込んでいるその感触を、味わう。彼の先端が彼女の奥深くを突き上げているのが感じられ、真白がほんの少し身じろぎをするだけでそこがこすられて、孝一の背筋に痺れるような快感が走った。
 思い出したように、彼女のうなじや肩にキスを落とす。彼がそうするとふるりと震える身体が、愛おしい。

「コウ、わたし、何だかヘンなの……」
 孝一の首筋に顔を埋めたまま、真白が呟く。彼女の中は絶えず緩やかな収縮を繰り返していた。ジッとしていると、いっそうその動きが伝わってくる。
「変、て、どんなふうに?」
「わからない……わからないけど、でも……ぁッ」
 小さな喘ぎと共に、真白の身体がビクビクと痙攣した。
「イキそうなのか?」
 返事はない。返事はないが、時折孝一の昂ぶりを締め付けてくる力は強く、周期は短くなってきている。真白の肌はしっとりと汗ばみ、合わせた胸から伝わる鼓動は速かった。

「イキたかったら、いつでもイケよ」
 そう囁いて、真白の背中を撫で下ろす。腰の少し上あたりをさすってやると、彼女は小さな喘ぎを漏らした。
「や、だめ、そこ……ッ」
 そう言いながら、彼女の中がキュッと縮まる。孝一自身、与えられる快感に汗をにじませながら、囁く。まったく動いていないというのに、彼もそろそろ限界を迎えそうだった。

「お前は、ここも弱いんだ。それに……ここも」
 孝一は頭を傾け、真白の耳の後ろの柔らかい所に舌を這わせる。
「んぁっああっ」
 舌の先でえぐるように刺激を与えると、真白が小さな悲鳴をあげる。と、次の瞬間、ピンと身体を突っ張った。
「クッ」
 突然、脈打つ彼の剛直がきつく締め付けられる。いや、それだけではなかった。激しい攣縮が絶え間なく襲い掛かり、孝一はめまいを覚えるほどの悦楽に見舞われる。

(もう、限界だ)
 達した余韻に震えている真白を、孝一は静かに押し倒す。
「え……あ、ああッ」
 彼女の蠕動を殺すことのないように、ゆっくりと抽送を開始した。
「やぁっ今は、ダメッ、ぁッ、あぅ!」
 高まる声と共に、再び真白がガクガクと痙攣する。しがみ付いている孝一の腰の辺りに、彼女はキリ、と薄い爪を立てた。
「ん、あ、ああッ」
 喘ぎと共に、彼をより奥深くへと誘うかのように背が反らされ、腰が上がる。
 孝一を包み込む彼女の蠕動は、先ほどよりも更に激しかった。受け入れた屹立を引き絞るようなその動きに、堪らず彼も昇り詰める。

「真白……真白ッ!」
 呻くような声で何度も彼女の名前を呼びながら、彼も自分の快楽を解き放った。真白の奥深くで、自身がドクドクと脈打っているのが、感じられる。
「ふぁ」
 迸る彼の飛沫を受け止めて、真白が蕩けるような吐息を漏らした。弛緩した彼女をしっかりと抱き締め、孝一は最後の一滴ひとしずくまで残さぬように、腰を押し付ける。
 ピタリと重なり合った身体のどこまでが孝一で、どこからが真白なのか、判らなくなりそうだった。

 快楽と満足感と、幸福感。
 それらがない交ぜになった愉悦に、浸る。

 孝一は、腕の力を緩めぬまま、辛うじて届く場所――真白の頭の天辺に、幾度もキスを落とした。
 何度彼女を抱いても、そのたびに酔いしれてしまう。
 自分が感じている快感と幸せの百分の一でもいいから、真白にも与えることができていることを願った。できることなら彼が得ているもの以上のものを感じさせたかったが、そんなことが可能だとは思えない。
 たゆたうように、悦楽の余韻がゆるりと薄れていく。孝一は自身と真白の呼吸が治まるのを待って、そっと彼女の名前を呼ぶ。

「シロ?」
 ――返事がない。
 少し身体を離して胸元に目をやると、真白の目蓋は下りていて、頬を紅潮させたまま穏やかな寝息を立てていた。
 唇は、少し開かれている。

 幼い子どものような、あどけない寝顔だ。あどけないのに――見つめていると、彼女の中に留まった彼自身が、力を取り戻しかけてしまう。
「流石に、な」
 ぼやいて、孝一は真白を起こさないように、そっと彼女の中から抜け出した。そうして、自分が変な気を起こしてしまわぬうちに真白を毛布で包み込み、引き寄せる。

 抱き締めると、真白の身体はパズルのピースのように孝一にピタリと寄り添った。
 こうやって、彼女が腕の中にいる、幸せ。
 孝一は、もう一度彼女の髪に口付けてから目を閉じる。

 眠れやしないだろうと思っていたが、穏やかな真白の寝息に誘われて、いつしか彼も充足した夢の世界へと引き入れられていた。
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