捨て猫を拾った日

トウリン

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捨て猫を拾った日

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「……これだと、少しやりにくいな……」
 更に真白ましろに触れようとして、孝一こういちはふと呟いた。

「え?」
 顔を上げた彼女に軽くキスをして、孝一は身体を起こして胡坐をかく。キョトンと目を丸くしている真白の両脇に手を挿し入れてクルリとひっくり返し、彼に寄りかからせる形で座らせた。

「や……」
 反射的に膝を閉じようとするのを、脚を絡めて阻止する。
「こんな格好、恥ずかしいよ、お布団を――」
「俺からはそんなに見えない。いつもよりも見えにくいくらいだ」
 つまり、それは、いつもはもっとまともに見られているということで、それに気付いた真白が耳まで熟れきったトマトのように紅くする。

「この方が、お前を楽にできるんだよ」
 大きく開かせた脚の間は、充分に潤っている。孝一は柔らかな茂みの中を触れるか触れないかという加減で探った。
「んん……」
 くすぐったそうに身をよじる真白の両手を孝一はもう片方の手で拘束し、そのまま腕を押し付けるようにしてあまり動けないようにする。

「コウ……?」
 微かに不安げな色を帯びた眼差しで振り返った真白の耳朶をそっと噛み、孝一は囁いた。
「大丈夫、ひどい事はしない」
 届く範囲全てに軽いキスを繰り返しつつ、和毛を掻き分け紅く膨れた小さな粒を見つけ出す。すでに溢れ始めている蜜を指先でたっぷりとすくい取り、花芽の上でゆるゆると円を描いた。
「ふ、ぁ、あ……」
 ビクビクと跳ねそうになる細い腰を押さえ込み、一定の速度で続ける。
「や、ぁん……」
 真白の身体には散々快楽を覚え込ませている。より強い刺激を求めて腰が揺れ始めたことに、彼女自身気付いていないようだった。

(真白が『俺』を求めることはないかもしれないが、俺が与えるモノは求めている)
 ならば、望むままに与えてやる。そうして、離れられなくしてやればいい。

 孝一は蕾を覆うものを爪の先で引っ掻くようにして押し上げ、より敏感な芯を暴き出す。直接それを撫でるようにこすってやれば、孝一の脚に縫い止められている真白の太腿がガクガクと痙攣し始めた。

「ダメ、ダメ、それ、強すぎ、おかしくな――ッ」
「大丈夫、おかしくなんかならない。ただ良くなるだけだ」
 声をかけながらも手は休めることなく、孝一は真白を追い上げていく。
「あ、あ、や……ぁッ」
「ほら、抵抗するなよ」
 いやいやをするように首を振る彼女の耳の中に吹き込むようにして、彼がそう囁いた時だった。

「ふぅッ、んん」
 忙しなかった真白の息が、不意に詰まる。
「んッ、ぅん」
 身体を強張らせ、喉の奥で声を呑み込み、そしてクタリと寄りかかってきたわずかな重みを孝一は受け止めた。完全に彼の為すがままな真白を、骨が軋むほどに抱き締めて、抱き潰してしまいたくなる。
 こんなふうに無防備に自分に身を任せてくる真白が、孝一は愛おしくてならない。そうして、もっともっとこんな彼女が見たくてならないのだ。

 ドクドクと痛いほどに脈打つ下半身を宥めつつ、真白の耳元に口を寄せた。
「まだ、イけるだろ?」
 笑いを含んだ声で孝一がそう言うと、彼女は朦朧とした目を彷徨わせた。
「ま、だ……?」
 真白がその意味を理解する前に、蜜が滴るその場所にツプリと指を忍ばせる。途端、彼女はビクリと背を反らせた。
「ひぅッ!」
 喉を鳴らして孝一の腕から逃れようとするが、彼の力に勝てるわけもない。

「ダメ、まだ、触っちゃ、ダメ!」
 悲鳴のような彼女の声とは裏腹に、孝一の指を包み込む達したばかりの内襞は、彼を誘うようにヒクついている。その感触を楽しみながら、彼はもう一本、侵入させた。
「ふぁ……あ、あ」
 クチュクチュとわざと水音を立てながら、二本の指で浅いところをくすぐる。
「や、だぁ、め……」
「お前のイイ場所全部でイかせてやろうか?」
 そう囁きかけると、真白の中は孝一の指をキュッと締め付けた。素直なその反応に忍び笑いを漏らしながら、孝一は彼女の内壁を恥骨に沿って指を沈めていく。

 半ばほどまで埋まったところで孝一は指を止め、揉むようにして刺激を加え始めた。途端、小刻みだった真白の身体の震えが痙攣じみたものへと変わる。
「あ、ぁん、んん、んぁッ、ゃぁあん、あッ」
 真白は懸命に声を抑えようとしているが、孝一の指の動きと強さに合わせて消しきれない喘ぎが漏れ出した。彼女の身体はビクビクと引きつり、奥深くからとめどなく溢れ出す蜜は孝一の手をしとどに濡らしていく。

「や、やぁ、あ、ん――んッ」
 不意に真白の啼き声がくぐもり、見れば赤い唇が硬く噛み締められていた。
「シロ、唇噛むな。切れるだろ」
 真白の両手を捉えていた手を解き、孝一は彼女の唇に指を滑らせる。柔らかなそれに食い込んだ前歯をそっとこじ開け、口腔内に人差し指を挿し入れた。指先に触れる柔らかな舌をくすぐる。ビロードのような感触が心地良くてまさぐるうちに、小さな唇の端から雫が零れ落ちた。

「んぁ……」
 彼の指を噛んでしまわないように、真白が懸命に力を抜こうとしているのが伝わってくる。そんな彼女を愛おしく思う気持ちが溢れ、そしてもっといじめてやりたくなる。
「ほら、またイけるよな? 力を抜いて、俺に任せろよ」
 言いながら華奢な首筋を甘噛みする。

 刹那。

「ふ――ぅんッ」
 くわえさせていた孝一の指に微かに歯が食い込む。それと同時に真白の胎内が何度もうねり、繰り返し彼の指を締め付けた。彼女の中の蠕動はなかなか止まず、さざ波が押し寄せるように小刻みに何度も達しているのが判った。
 口を閉じさせてやらなかったせいで唇の端からこぼれてしまった唾液を親指で拭ってやりながら、孝一は真白の口腔内から指を引き抜く。
 そっと小さな顎を持ち上げると、一拍遅れてトロンと蕩けた眼差しが彼を見返してきた。

「もっと欲しいか? だが、すまないな、俺の方もそろそろ限界だ」
 昂ぶりきった彼自身はこれまでになく硬く熱く張り詰めている。あと二、三回は真白がイくところを見たかったが、もうもちそうにない。
 ぐったりと力の抜けた真白の身体に腕を回したまま、孝一は身を乗り出してベッドサイドの引き出しから避妊具を取り出す。

 一瞬――そのまましてしまおうかという考えがよぎった。真白を直接感じたいと思ったのだ。そしてその胎内に全てを放ち、本当の意味で彼女を自分のものにしてしまいたい、と。

 真白は、きっと拒まない。
 だが、自分本位なその考えを、孝一は振り払った。今の真白は殆どまともに考えることができない。そんな状態の彼女にそんなことをしてしまっては、だまし討ちみたいなものだ。

 孝一は手早く避妊具を着け、真白を向かい合わせに抱き直す。真白の中に入っていく時は、彼女の顔を見ていたかった。
「真白、俺の首に腕を回して」
「首……? ん……」
 ボウッとしながらも真白は言われるがままに彼の首にすがりついてきた。その腰を掴んで持ち上げ、ゆっくりと屹立の上に下ろしていく。
 勃ち上がった彼の先端が温かな蜜を溢れさせる源泉を押し開いた瞬間、真白がハッと息を呑んだ。
「あ……あッ」
 何度もほぐした彼女の身体は、きつく締め付けながらもいきり立つ昂ぶりを受け入れていく。だが、いつもよりも圧迫が強いのか、真白が戸惑いと不安を滲ませた眼差しを彼に向けた。

「きついか? お前に煽られ過ぎたんだよ。ほら、ゆっくり息を吐いて」
「ん……」
 彼の言葉に素直に従った真白が、孝一の首にしがみ付いて言われたとおりに熱い吐息を漏らす。それが耳の後ろをくすぐって、彼の腰の辺りがゾクゾクした。

「……上手だよ」
 わずかに締め付けが和らぎ、剛直が柔らかな粘膜を押し広げてゆるゆると進んでいく。
 やがてズプリと濡れた音を立てて全てが埋めこまれた。
 繰り返し与えられた絶頂で、真白の子宮はその位置を下げている。その彼女の最奥を、孝一の剛直が押し上げた。

「ふぁ……ッ」
 浮き上がりそうになる真白の腰を、彼は押さえ付ける。
「逃げるな。本番はこれからだろう? ……まあ、俺もいつまでもつか判らないけどな」
 今こうしてただ彼女の中にいるだけで、キュウキュウと締め付けてくる感触で爆発してしまいそうなのだ。

 孝一は抱き締めた真白の身体をそっと揺する。

「んあッ」
「!」
 敏感になっている上にただでも最も感じる奥深くを刺激され、真白が即座に反応する。うねるように強く収縮した内襞に、孝一の腰から背筋を強烈な快感が走り抜けた。

「こりゃ、やばいな」
「な、にが……?」
「お前が、良すぎるって、こと」
 言いながら、孝一は優しく真白の身体を揺らす。
「やぅ、ダメ、奥――ッ」
 真白は快感から逃げようと身をよじるが、それがまた新たな愉悦を引きずり出したのか、彼女の中は孝一の怒張をこれでもかとばかりに引き絞る。

「少し、力抜けよ」
 このままではろくに動かさないうちに果ててしまいそうだった。孝一は奥歯を噛み締めて呻くように言ったが、真白は彼の肩口に顔を埋めて首を振る。
「ムリ……でき、ない……」
 揺れた真白の長い髪が肌をくすぐる感触さえ、解放への引き金になりそうだった。
 燃えるような息を肺の中から吐き出すと、孝一は真白を仰向けに倒し、少し身体を引く。

「は……ふ」
 体内の圧迫が和らいだのか、真白がホッとしたように小さな息をついた。その様子が可愛らしくて、孝一は頭を下げてキスをする。
 最初は、軽く。次第に深めていき、やがてゆっくりと抽送を開始した。

「ぁ……あ、あ、ん」
 激しい突き上げではなく、緩やかに押し上げるように腰を送ると、キスの合間で真白の口から甘い声が漏れる。夢見るような彼女の眼差しからは、絶え間ない快感に満たされているのが見て取れた。

「ゃ、や、あ」

 こぼれるあえかな声。

 真白の背が反り返り、孝一を包み込む襞は彼をもっと奥へ引き込もうとするかのように収斂する。
 孝一の中に、彼女を守る為なら世界中を敵に回しても構わないと思えるほどの庇護欲と、彼女の全てを手の中に包み込んで力いっぱい握りつぶしてしまいたいという凶暴な衝動とが溢れかえる。

(頭がおかしくなりそうだ)
 彼自身、その欲求のどちらの方が強いのか、よく判らなかった。
 こうやって、真白の中に包まれて、彼女の熱に締め付けられているとたまらなく心地良い。滅茶苦茶に腰を振りたくり、思う様に突き上げてしまえば、あっという間に快楽の頂点を極められるだろう。
 だが、孝一は、まだその時を迎えたくはなかった。
 でき得るなら、永遠にこのままでいたいとすら思う。

「コウ、コウ、大好き……」
 悦楽に霞む頭に舌足らずな呼びかけが入り込み、孝一は我に返った。
 真白がとろりと潤んだ目で彼を見上げ、両手を差し伸べてくる。その仕草は、餌を欲しがる仔猫を思わせた。快感という餌を求める、仔猫を。

「コウ、好き、コウ――」
 真白は何度も繰り返す。
 それは、愉悦によって麻痺した頭が言わせているのかもしれない。だが、今この瞬間、真白の中には孝一しかいない。孝一が、彼女の全てを満たしている。

(ああ、こいつは俺のものなんだ)
 孝一は真白を抱きすくめ、グッと彼女の奥深くに分け入った。

「あっ」
 真白が上げたのは、明らかに苦痛とは違う響きを含んだ声。
 孝一は真白の中に自分の存在を刻み込むように、深々と抽送を重ねていく。一突きするたびに彼の全身には痺れるほどの喜悦が走り、速さを増すごとに真白の声は高くなっていった。
 が、不意に、真白の声がフツリと止み、同時に孝一は肩に鋭い痛みを覚える。気もそぞろにそちらを見遣れば、真白がそこに歯を立てていた。

 我を失っている真白のそんな行動に煽られて、孝一は何度も何度も彼女の最奥へと自身を送り込む。
「真白……真白」
 浮かされたように彼女の名を口ずさみながら、栗色の髪を掻き上げてさらけ出した細い首筋を、唇で愛撫した。
「ふ、ぅうん!」
 孝一に噛み付いたまま、真白の喉が鳴る。

 と、その瞬間。

 ビクビクと彼女の身体が跳ね上がり、彼を包み込む壁がこれまで以上に激しく蠕動する――直後糸が切れたように弛緩した華奢な四肢とは、まるで別の生き物のように。
「クッ!」
 唐突に与えられた息が詰まりそうなほどの刺激に、孝一の怒張はさらに膨れ上がった。そして、直後一気に弾け飛ぶ。その時彼の全身を支配した、激しい快感――それは、肉体的な愉悦や快楽だけではなかった。
 たとえようのない幸福感と充足感。
 時折ヒクリ、ヒクリと震える真白の身体を抱き締めた孝一は、コントロールできない震えに身体を強張らせながら、初めて味わうその感覚に恍惚となる。

 真白は彼のものであり――彼も真白のものだった。
 たとえ彼女が要らないと言っても、孝一が抱き締める相手が真白でなければならない以上、彼はもう他の誰のものにもなれやしない。

 孝一は未だ真白の中に留まったまま、朦朧とした彼女を抱き締める。火照った頬に手を添えて顔を上向かせると、二度、三度と柔らかな唇をついばんだ。

「シロ……真白。お前は俺のものだ」
 その囁きに、焦点の定まらない真白の目が彼に向けられる。
「わ、たし……?」
「ああ……俺のものなんだ」
 繰り返した孝一に、彼女はゆっくりと一つ、瞬きをした。
「わたしは、コウの……」
「そうだ」
 反論を許さぬ口調で、きっぱりと断言する――イヤだと言われたら、次にどうすれば良いのかわからなかったが。

 真白の返事を恐れる気持ちを押し隠し、孝一は彼女を見つめる。真白はそんな彼を無言で見つめ返し、そして不意にその顔をふわりとほころばせた。

「うれしい」

 真白はただ一言だけそう答え、そっと孝一に身を寄せる。彼女の全てがしっくりと彼に嵌まった。

 真白との間に、もう見えない紗はない。ピタリと触れ合う肌の温もりは、そのまま二人の距離を表わしていた。
 孝一は真白の身体をきつく抱き締める。まだ彼は彼女の中にいたが、それが可能なことであるならば、彼女を彼の中に閉じ込めてしまいたかった。

 真白が欲しい。今、差し出された彼女の全てを受け取ったばかりだというのに、欲求はまだくすぶっていた。

 滑らかな背中をそっと撫でる。

 と。

 ピクンと真白が身じろぎする。
 それが、彼が触れたからではないことは、孝一にも判っていた。

「あ……コウの、が……」
 そう呟きながら戸惑ったように離れようとするのを、引き止める。
「お前の中が気持ち良すぎるのがいけないんだよ」
 再び力を取り戻した身体をそっと揺すると、真白がヒクリと息を呑んだ。
「も、ムリ……だよ?」
 おずおずとそう言った彼女に、孝一はニッと笑って返す。
「お前は何もしなくてもいいさ」
「や、でも――」
 慌てる真白の唇を奪って、反論ごと封じ込める。

 彼の全身が緩やかな律動を刻み始めた時、彼女の口からこぼれるのは甘い吐息ばかりだった。
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