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幸せの増やし方
十六
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一輝は意を決して、スマートフォンを操作する。
弥生は、すぐには応答しなかった。
呼び出し音を十回数えたところでそれは止み、代わって彼女の声が耳をくすぐった。
「はい」
その、たった二文字。二ヶ月ぶりの、彼女の声。
それだけなのに、聴いてしまえば、どうしようもないほどの愛おしさが一輝の中に込み上げてくる。思わず、スマートフォンが軋みを上げるほどに握り締めてしまう。
「弥生さん」
呼びかけても彼女の返事はなかったが、構わず続けた。完全に一輝に愛想を尽かしていたら、声も聞きたくないに違いない。
少なくとも、電話には出てくれたのだ――望みはある。
「今は何も釈明しません。でも、お逢いしたいんです。逢って、お話したいことがたくさんあるんです。あのネックレスを着けてくださっていますか? ええ、そう、あれです。すみません、それを使わせていただきます」
丁度、エレベーターが駐車場のある地下に着き、弥生の返事を確かめることもせず、一輝は通話を切った。
一度目を閉じ、また、開く。
ほんの少し声を聴いただけで、実感した。
弥生を手放すなんて、やはり、彼には不可能なことだった。
多分、こうなることが無意識のうちに判っていたから、頑なに彼女の声を聴くことを避けていたのだろう。
何ていうことはない、ただ、彼女と過ごせた貴重な二ヶ月を無駄にしただけだ。
弥生には、自分の隣で笑っていて欲しい。
泣く時には、自分の手が届く場所にいて欲しい。
ずっとそう思ってきたのに、何故、今更迷ってしまったのだろう。
一輝は、小さく笑った。
「一輝様?」
「何でもない。ただ、自分のバカさ加減を笑っただけだ」
迷いは消えない――当然だ。
大事に想う人のことで、迷わないわけがない。
きっと、一生、最善の道を手探りしながら進んで行くのだろう。だが、その労苦を厭う気持ちはない。自分の力が及ばないかもしれないから、と安易に人に任せようとしたことが、間違いだったのだ。
今回のことに、まだ答えは出ていない。
だが、そもそも、弥生の言葉もまだ、聴いていないではないか。
彼女がどう思っているのか、どうしたいのか、何が彼女の幸せなのか。
それを、聴いていない。
父親を喪ってから、一輝は常に決断を下す立場にあった。家のことも会社のことも、彼が何が正しいかを判断し、最適の道を選んできた。
ずっと、そうしてきて、それでうまくいっていた。
だが、弥生との関係は、そんな一方的なものでは駄目なのだろう。
まずは彼女ときちんと言葉を交わしてみよう。
今更ながら、一輝はそんなことを決意する。
車に乗り込むと、一輝はモニターで弥生の現在位置を確認した。彼女は、今、自宅の最寄り駅を出た辺りにいる。彼が追いつくのは大石家の近くになりそうだった。
駐車場内を通り抜け、出口のバーをくぐる。地下から外へと出ようとしたところで――車は急停止した。
「どうした?」
一輝の問いかけに、運転手は困ったような顔で振り向いた。
「それが――」
前方に目をやると、だらしない格好の男が、ヒラヒラと手を振っている。
「例の記者ですね」
スッと細めた橘のその目の中に、不穏な光が宿る。
「私が話をしてきましょう」
そう言って車を降りようとした橘を、一輝は制した。
「いや、僕が行こう」
「え!? 一輝様!」
慌てる橘を置き去りに、一輝は車から出て坂の上に立つ小金井の元まで足を進める。
「やあ、御曹司」
へらへら笑いながら、記者は手にしていたA4大の茶封筒を一輝に向けて振った。
「いい写真が撮れたんだけど、見る?」
一輝は答えない。ただ、黙って立っているだけだ。そんな彼に、小金井は物足りなそうな顔をしたが、気を取り直したようにまた笑みを浮かべた。そして、封筒を開ける。
「どうよ」
取り出したのは大きく引き伸ばした、写真。
写っているのは、抱き合う男女。背景は海のように見える。
その二人が誰なのかは、考えなくてもすぐに判った。
「よく撮れてるだろ?」
小金井が、一輝の表情の動きを探るように視線を注いでくる。だが、数枚の写真を見つめる彼の顔は、ピクリとも動かなかった。
「で?」
計五枚の写真全てに目を通した一輝は、それを小金井に返しながら、そう問うた。何も動きのない一輝に、小金井は落胆を覚えたようだ。当てが外れたような声を出す。
「何も感じねぇの?」
それは、大いに感じた。
こうやって、写真で弥生が他の男の腕の中にいるのを見るだけでも耐え難いというのに、彼女を誰かに譲ることなどとてもできることではないということを、実感した。
二ヶ月前は、一輝自身が混乱していたせいで宮川と弥生の姿を直視できず、思わず逃げ出してしまった。時間を遡ることができれば、今すぐにでもあの場に戻るのに。
「それをどうするつもりです?」
「この子、あんたの彼女なんだろ?」
散々かわしてきた質問を、小金井が繰り返す。恐らく、質問した当人もまた、答えが得られるとは思っていなかったのだろう。
「そうですね」
写真を袋にしまっていた小金井が、その台詞を耳に入れ、優に数秒間は経ってからピタリと止まる。
「……え?」
一輝は、言葉を変えて同じ内容を繰り返した。
「彼女は、僕の大事なひとです」
ごまかしのない一輝の言葉に、小金井は呆気に取られている。
一輝は笑みを浮かべたが、それは決して心が温まるものではなかったようだ。その表情を目にした小金井が、顔を引きつらせてピシリと固まった。
「だいぶ、彼女に迷惑をかけてくれたようですね? 今後も彼女に関わるようでしたら、それ相応の覚悟をしてください。僕はどんな手を使っても、彼女を護りますよ? ええ、どんな手を使っても」
そこで彼はフッと笑った。
「新藤商事は、更に大きく成長させます。誰にも、手が出せないほどにね」
その時、下手を打てば自分はジャーナリストとしてやっていけなくなるかもしれない、と小金井が感じたのは、決して錯覚ではなかっただろう。穏やかこの上ないというのに、一輝から発せられるのは獰猛な肉食獣もかくや、という威圧感だった。
踵を返して車に戻る一輝を呼び止める声は、もう、ない。
「出せ」
シートに腰を落ち着かせてそう指示を出す。
車が走り出すと、その通り道をあけるために、小金井はのろのろと後ずさっていった。
時間を無駄にしてしまったが、その分、弥生に逢っても怯まずに済む覚悟はできた。あの写真を見せられたことで、いっそう、彼女を手放すことができないということが身に染みたとも言える。
むしろ、小金井に感謝してもいいくらいかもしれない。
あんなに彼女には逢ってはいけないと思っていたのに、今は一刻も早くその声を聴き、その肌に触れたいと願って止まなかった。
――もしかしたら、弥生は許してくれないかもしれない。
そんな気持ちもよぎったが、それならば、許してくれるまで、できる限りの言葉を尽くそうと、一輝は心に決めていた。
弥生は、すぐには応答しなかった。
呼び出し音を十回数えたところでそれは止み、代わって彼女の声が耳をくすぐった。
「はい」
その、たった二文字。二ヶ月ぶりの、彼女の声。
それだけなのに、聴いてしまえば、どうしようもないほどの愛おしさが一輝の中に込み上げてくる。思わず、スマートフォンが軋みを上げるほどに握り締めてしまう。
「弥生さん」
呼びかけても彼女の返事はなかったが、構わず続けた。完全に一輝に愛想を尽かしていたら、声も聞きたくないに違いない。
少なくとも、電話には出てくれたのだ――望みはある。
「今は何も釈明しません。でも、お逢いしたいんです。逢って、お話したいことがたくさんあるんです。あのネックレスを着けてくださっていますか? ええ、そう、あれです。すみません、それを使わせていただきます」
丁度、エレベーターが駐車場のある地下に着き、弥生の返事を確かめることもせず、一輝は通話を切った。
一度目を閉じ、また、開く。
ほんの少し声を聴いただけで、実感した。
弥生を手放すなんて、やはり、彼には不可能なことだった。
多分、こうなることが無意識のうちに判っていたから、頑なに彼女の声を聴くことを避けていたのだろう。
何ていうことはない、ただ、彼女と過ごせた貴重な二ヶ月を無駄にしただけだ。
弥生には、自分の隣で笑っていて欲しい。
泣く時には、自分の手が届く場所にいて欲しい。
ずっとそう思ってきたのに、何故、今更迷ってしまったのだろう。
一輝は、小さく笑った。
「一輝様?」
「何でもない。ただ、自分のバカさ加減を笑っただけだ」
迷いは消えない――当然だ。
大事に想う人のことで、迷わないわけがない。
きっと、一生、最善の道を手探りしながら進んで行くのだろう。だが、その労苦を厭う気持ちはない。自分の力が及ばないかもしれないから、と安易に人に任せようとしたことが、間違いだったのだ。
今回のことに、まだ答えは出ていない。
だが、そもそも、弥生の言葉もまだ、聴いていないではないか。
彼女がどう思っているのか、どうしたいのか、何が彼女の幸せなのか。
それを、聴いていない。
父親を喪ってから、一輝は常に決断を下す立場にあった。家のことも会社のことも、彼が何が正しいかを判断し、最適の道を選んできた。
ずっと、そうしてきて、それでうまくいっていた。
だが、弥生との関係は、そんな一方的なものでは駄目なのだろう。
まずは彼女ときちんと言葉を交わしてみよう。
今更ながら、一輝はそんなことを決意する。
車に乗り込むと、一輝はモニターで弥生の現在位置を確認した。彼女は、今、自宅の最寄り駅を出た辺りにいる。彼が追いつくのは大石家の近くになりそうだった。
駐車場内を通り抜け、出口のバーをくぐる。地下から外へと出ようとしたところで――車は急停止した。
「どうした?」
一輝の問いかけに、運転手は困ったような顔で振り向いた。
「それが――」
前方に目をやると、だらしない格好の男が、ヒラヒラと手を振っている。
「例の記者ですね」
スッと細めた橘のその目の中に、不穏な光が宿る。
「私が話をしてきましょう」
そう言って車を降りようとした橘を、一輝は制した。
「いや、僕が行こう」
「え!? 一輝様!」
慌てる橘を置き去りに、一輝は車から出て坂の上に立つ小金井の元まで足を進める。
「やあ、御曹司」
へらへら笑いながら、記者は手にしていたA4大の茶封筒を一輝に向けて振った。
「いい写真が撮れたんだけど、見る?」
一輝は答えない。ただ、黙って立っているだけだ。そんな彼に、小金井は物足りなそうな顔をしたが、気を取り直したようにまた笑みを浮かべた。そして、封筒を開ける。
「どうよ」
取り出したのは大きく引き伸ばした、写真。
写っているのは、抱き合う男女。背景は海のように見える。
その二人が誰なのかは、考えなくてもすぐに判った。
「よく撮れてるだろ?」
小金井が、一輝の表情の動きを探るように視線を注いでくる。だが、数枚の写真を見つめる彼の顔は、ピクリとも動かなかった。
「で?」
計五枚の写真全てに目を通した一輝は、それを小金井に返しながら、そう問うた。何も動きのない一輝に、小金井は落胆を覚えたようだ。当てが外れたような声を出す。
「何も感じねぇの?」
それは、大いに感じた。
こうやって、写真で弥生が他の男の腕の中にいるのを見るだけでも耐え難いというのに、彼女を誰かに譲ることなどとてもできることではないということを、実感した。
二ヶ月前は、一輝自身が混乱していたせいで宮川と弥生の姿を直視できず、思わず逃げ出してしまった。時間を遡ることができれば、今すぐにでもあの場に戻るのに。
「それをどうするつもりです?」
「この子、あんたの彼女なんだろ?」
散々かわしてきた質問を、小金井が繰り返す。恐らく、質問した当人もまた、答えが得られるとは思っていなかったのだろう。
「そうですね」
写真を袋にしまっていた小金井が、その台詞を耳に入れ、優に数秒間は経ってからピタリと止まる。
「……え?」
一輝は、言葉を変えて同じ内容を繰り返した。
「彼女は、僕の大事なひとです」
ごまかしのない一輝の言葉に、小金井は呆気に取られている。
一輝は笑みを浮かべたが、それは決して心が温まるものではなかったようだ。その表情を目にした小金井が、顔を引きつらせてピシリと固まった。
「だいぶ、彼女に迷惑をかけてくれたようですね? 今後も彼女に関わるようでしたら、それ相応の覚悟をしてください。僕はどんな手を使っても、彼女を護りますよ? ええ、どんな手を使っても」
そこで彼はフッと笑った。
「新藤商事は、更に大きく成長させます。誰にも、手が出せないほどにね」
その時、下手を打てば自分はジャーナリストとしてやっていけなくなるかもしれない、と小金井が感じたのは、決して錯覚ではなかっただろう。穏やかこの上ないというのに、一輝から発せられるのは獰猛な肉食獣もかくや、という威圧感だった。
踵を返して車に戻る一輝を呼び止める声は、もう、ない。
「出せ」
シートに腰を落ち着かせてそう指示を出す。
車が走り出すと、その通り道をあけるために、小金井はのろのろと後ずさっていった。
時間を無駄にしてしまったが、その分、弥生に逢っても怯まずに済む覚悟はできた。あの写真を見せられたことで、いっそう、彼女を手放すことができないということが身に染みたとも言える。
むしろ、小金井に感謝してもいいくらいかもしれない。
あんなに彼女には逢ってはいけないと思っていたのに、今は一刻も早くその声を聴き、その肌に触れたいと願って止まなかった。
――もしかしたら、弥生は許してくれないかもしれない。
そんな気持ちもよぎったが、それならば、許してくれるまで、できる限りの言葉を尽くそうと、一輝は心に決めていた。
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