59 / 73
幸せの増やし方
六
しおりを挟む
残された二人の間には、気まずい沈黙が横たわった。一輝のところに行かなければ、と気は焦るが、このまま「さよなら」とはいかない雰囲気になってしまった。
かといって、弥生には弁明する言葉もなく。
先に口火を切ったのは、宮川の方だ。
「なあ、お前の相手って、もしかして――」
お願いだから、言わないで。
弥生の切なる願いも虚しく、彼はその名を口にしてしまう。
「――新藤一輝……?」
恋人と滅多に会えないくらいバリバリ働いていて、ゴシップネタを餌にしているようなフリージャーナリストが虎視眈々と狙う、『新藤か――』につながる人物など、そうはいない。
言い逃れるための言葉が見つからなくて顔を伏せたまま黙り込んだ弥生に、ジッと見下ろしてくる宮川の視線が突き刺さる。一輝との約束の時間はとっくに過ぎていたけれど、弥生はその視線を振り切ることができなかった。
不意に、彼女の両肩が温かくなる。そこに乗せられた宮川の両手には、痛みを与えるか与えないかの、ギリギリの力が込められていた。顔を上げた弥生の目を、宮川の真剣な眼差しが射抜く。
「そうなのか?」
念押しに、首を振ることは容易だった。けれど、それでごまかすことができないことも、解っていた。
無言のままの弥生に、宮川が少し俯いて深いため息をつく。
「無理が、あるんじゃないのか?」
「え……?」
「だって、『あの』新藤一輝、なんだろ?」
「『あの』って……」
珍獣を評するような言い方に、弥生はムッと口を尖らせる。けれど、宮川はそんな彼女の立腹には取り合わず、真剣な面持ちのまま、続けた。
「お前、そいつとのこと、どこまで考えてるんだよ?」
「どこまでって、ちゃんと、真面目にお付き合いしています」
「でも、お前は保育士になるんだろ? 新藤一輝とこれからも付き合っていくなら、無理じゃないのか?」
「そんなこと、ないですよ」
何を言い出すのかと、宮川を睨んだけれど、彼は怯まない。
「二人の仲が知られていない今でも、ああやって嗅ぎつけてくるヤツがいるじゃないか。新藤一輝と付き合ってるって知られてみろ、大騒ぎで仕事なんかしてられないぜ。それとも、ずっと、隠したままで付き合っていくのか?」
弥生の肩を掴む宮川の手に、力がこもる。
「彼とお前じゃ、『違いすぎる』んじゃないのか?」
その言葉に、弥生はグッと唇を噛んだ。
そんなことは、とうの昔に思い知った。けれども、それでも、一輝と一緒に生きていこうと決めたのだ。弥生は、身体を震わせて宮川の手を振り払う。
「そんなの心配してもらわなくても、大丈夫です! 第一、宮川さんには私と一輝君のことなんて、関係ないじゃないですか!」
とっさにそう言い放って、身を翻して立ち去ろうとする。が、彼に背を向けた瞬間強い力で腕を引かれ、思わずよろめいた。直後に全身を締め付けられた弥生は、一瞬、状況が理解できなくなる。頬に感じる温かさと力強い鼓動に、ようやく、どんなことになっているのかを悟った。
「宮川さん――宮川さん!」
名前を呼んでも、弥生の頭と背中の少し下あたりに置かれた大きな手の力は緩まない。
腕を突っ張って押しやろうとすると、より一層、きつく抱き締められた。
一輝よりもがっしりとした、身体。その違いは、怖くなるほどに明らかだった。
――なんで、こんな……。
もがきながら、そう、思った時だった。その答えが耳元で囁かれる。
「……え?」
思わず、弥生はピタリと動きを止めてしまう。
多くはない言葉を鼓膜に吹き込まれても、すぐに理解することはできなかった。
――今、この人は何て言ったの?
その自問から数拍遅れて、耳から脳へとジワジワ染み込んでくる。
「だから、お前のことが好きだって言ってるだろ」
「うそ」
「なんで、嘘なんだよ。」
苛立たしげにそう言った宮川に両腕の上の方を掴まれてグイと引き上げられ、殆ど爪先立ちのようになってしまった弥生は、踏ん張りがきかなくなる。
「お前のこと、ずっと見ていたんだ。初めのうちはただの後輩だったよ。だけど、見ているうちに……。女の子を見ていてこんなふうに感じるのは、初めてなんだ。お前が笑っているのを見ると、心地良いのに、苦しくてたまらない。それを俺に向けてくれるなら何でもしてやるって気になるんだよ」
どこか苦しげにそう言った宮川は、弥生の頬に片手を添え、首を傾ける。その唇が触れようとした時、弥生はハッと我に返った。
「イヤッ! ダメッ!」
悲鳴にも似たその響きに、宮川の力がわずかに緩む。その隙を逃さず、弥生は彼の腕を振り払った。勢いで地面に座りこんだ彼女の耳に、唐突に、車のエンジン音が届く。
振り返った弥生の目に入ったのは、見慣れた車の走り去る姿。
――うそ、あれって……。
呆然と、見送ってしまう。
『彼』に全て見られていたのだろうか。
いったい、いつから?
もしや、小金井と揉めているあたりも、見られてしまったのだろうか。宮川とのことよりも、そちらの方が、気になった。
ちゃんと、一輝に相談しようと思ってた。
けれども、先にこんな形で知られてしまったら、どうやっても言い繕えない。
一輝のことを気遣った筈が、余計に彼を傷つけてしまった気がする。
――こんなつもりじゃなかったのに。
後悔先に立たずとは、このことだった。
座り込んだままの弥生の目の前に、手が差し伸べられる。見上げると、気まずそうな宮川の顔が目に入った。
「……悪い。こんなふうに伝えるつもりはなかった」
たった今、自分の心の中に浮かんだものと同じ台詞を耳にして、弥生は思わず小さな笑みを漏らしてしまう。
「大石?」
いぶかしそうに眉をひそめる宮川に、小さく首を振って。
弥生は自分独りで立ち上がり、一歩だけ後ずさると、スカートについてしまった砂をポンポンと払い落とす。
そうやって、少し心を落ち着かせて。
弥生は真っ直ぐに宮川を見上げ、ペコリと一つ、頭を下げた。そして、再び彼を見つめて、揺らぎない想いを伝える。
「わたしは一輝君のことが好きで、ずっと、大事にしてあげたいんです。こういうふうに特別に『好き』って想うのは、多分、一生、一輝君だけです」
宮川からの返事はない。ただ、弥生に静かな眼差しを向けている。彼女も目を逸らすことなくそれを受け止めた。
やがて、宮川が口を開く。
「俺は諦めない」
「宮川さん……」
宮川は、肩を竦めて続ける。
「さっきのあの車、新藤一輝が乗ってたんじゃないのか?」
弥生は一瞬視線を揺るがせ、逡巡した後に頷いた。それを受けた宮川は深く溜息をつく。
「いつから見ていたのかは知らないが、あの状況で、お前を助けに来ないわけだろ? まあ、あの小金井ってヤツがいた時は仕方がないかもしれないが、その後はどうなんだよ」
「それは……」
「俺だったら、自分の彼女が他の男に抱き締められて、黙ってなんかいられない」
それは違うのだと、宮川に言いたかった。きっと、一輝は何かを考えてあの行動を取ったのだと。けれども、それはあくまでも弥生の推測にしか過ぎなくて、そこにはこの強い眼差しをした宮川を納得させるだけの根拠を与えることができなかった。
「付け入る隙があるなら、俺は諦めないよ」
彼は、そう、言い切る。力を込めた視線をわずかも揺らすことなく。
弥生は、今すぐ一輝に会いたかった。会って、声を聞きたかった。そうすれば、そんな『隙』などわずかもないのだと、宮川を納得させるだけのものが得られると思った。
今この時も、一輝の『気持ち』は信じている。
けれども、もしかしたら。
その『気持ち』の為に彼が離れて行ってしまうかもしれないという考えが、ほんの一瞬だけ頭をよぎったことは、事実だった。
かといって、弥生には弁明する言葉もなく。
先に口火を切ったのは、宮川の方だ。
「なあ、お前の相手って、もしかして――」
お願いだから、言わないで。
弥生の切なる願いも虚しく、彼はその名を口にしてしまう。
「――新藤一輝……?」
恋人と滅多に会えないくらいバリバリ働いていて、ゴシップネタを餌にしているようなフリージャーナリストが虎視眈々と狙う、『新藤か――』につながる人物など、そうはいない。
言い逃れるための言葉が見つからなくて顔を伏せたまま黙り込んだ弥生に、ジッと見下ろしてくる宮川の視線が突き刺さる。一輝との約束の時間はとっくに過ぎていたけれど、弥生はその視線を振り切ることができなかった。
不意に、彼女の両肩が温かくなる。そこに乗せられた宮川の両手には、痛みを与えるか与えないかの、ギリギリの力が込められていた。顔を上げた弥生の目を、宮川の真剣な眼差しが射抜く。
「そうなのか?」
念押しに、首を振ることは容易だった。けれど、それでごまかすことができないことも、解っていた。
無言のままの弥生に、宮川が少し俯いて深いため息をつく。
「無理が、あるんじゃないのか?」
「え……?」
「だって、『あの』新藤一輝、なんだろ?」
「『あの』って……」
珍獣を評するような言い方に、弥生はムッと口を尖らせる。けれど、宮川はそんな彼女の立腹には取り合わず、真剣な面持ちのまま、続けた。
「お前、そいつとのこと、どこまで考えてるんだよ?」
「どこまでって、ちゃんと、真面目にお付き合いしています」
「でも、お前は保育士になるんだろ? 新藤一輝とこれからも付き合っていくなら、無理じゃないのか?」
「そんなこと、ないですよ」
何を言い出すのかと、宮川を睨んだけれど、彼は怯まない。
「二人の仲が知られていない今でも、ああやって嗅ぎつけてくるヤツがいるじゃないか。新藤一輝と付き合ってるって知られてみろ、大騒ぎで仕事なんかしてられないぜ。それとも、ずっと、隠したままで付き合っていくのか?」
弥生の肩を掴む宮川の手に、力がこもる。
「彼とお前じゃ、『違いすぎる』んじゃないのか?」
その言葉に、弥生はグッと唇を噛んだ。
そんなことは、とうの昔に思い知った。けれども、それでも、一輝と一緒に生きていこうと決めたのだ。弥生は、身体を震わせて宮川の手を振り払う。
「そんなの心配してもらわなくても、大丈夫です! 第一、宮川さんには私と一輝君のことなんて、関係ないじゃないですか!」
とっさにそう言い放って、身を翻して立ち去ろうとする。が、彼に背を向けた瞬間強い力で腕を引かれ、思わずよろめいた。直後に全身を締め付けられた弥生は、一瞬、状況が理解できなくなる。頬に感じる温かさと力強い鼓動に、ようやく、どんなことになっているのかを悟った。
「宮川さん――宮川さん!」
名前を呼んでも、弥生の頭と背中の少し下あたりに置かれた大きな手の力は緩まない。
腕を突っ張って押しやろうとすると、より一層、きつく抱き締められた。
一輝よりもがっしりとした、身体。その違いは、怖くなるほどに明らかだった。
――なんで、こんな……。
もがきながら、そう、思った時だった。その答えが耳元で囁かれる。
「……え?」
思わず、弥生はピタリと動きを止めてしまう。
多くはない言葉を鼓膜に吹き込まれても、すぐに理解することはできなかった。
――今、この人は何て言ったの?
その自問から数拍遅れて、耳から脳へとジワジワ染み込んでくる。
「だから、お前のことが好きだって言ってるだろ」
「うそ」
「なんで、嘘なんだよ。」
苛立たしげにそう言った宮川に両腕の上の方を掴まれてグイと引き上げられ、殆ど爪先立ちのようになってしまった弥生は、踏ん張りがきかなくなる。
「お前のこと、ずっと見ていたんだ。初めのうちはただの後輩だったよ。だけど、見ているうちに……。女の子を見ていてこんなふうに感じるのは、初めてなんだ。お前が笑っているのを見ると、心地良いのに、苦しくてたまらない。それを俺に向けてくれるなら何でもしてやるって気になるんだよ」
どこか苦しげにそう言った宮川は、弥生の頬に片手を添え、首を傾ける。その唇が触れようとした時、弥生はハッと我に返った。
「イヤッ! ダメッ!」
悲鳴にも似たその響きに、宮川の力がわずかに緩む。その隙を逃さず、弥生は彼の腕を振り払った。勢いで地面に座りこんだ彼女の耳に、唐突に、車のエンジン音が届く。
振り返った弥生の目に入ったのは、見慣れた車の走り去る姿。
――うそ、あれって……。
呆然と、見送ってしまう。
『彼』に全て見られていたのだろうか。
いったい、いつから?
もしや、小金井と揉めているあたりも、見られてしまったのだろうか。宮川とのことよりも、そちらの方が、気になった。
ちゃんと、一輝に相談しようと思ってた。
けれども、先にこんな形で知られてしまったら、どうやっても言い繕えない。
一輝のことを気遣った筈が、余計に彼を傷つけてしまった気がする。
――こんなつもりじゃなかったのに。
後悔先に立たずとは、このことだった。
座り込んだままの弥生の目の前に、手が差し伸べられる。見上げると、気まずそうな宮川の顔が目に入った。
「……悪い。こんなふうに伝えるつもりはなかった」
たった今、自分の心の中に浮かんだものと同じ台詞を耳にして、弥生は思わず小さな笑みを漏らしてしまう。
「大石?」
いぶかしそうに眉をひそめる宮川に、小さく首を振って。
弥生は自分独りで立ち上がり、一歩だけ後ずさると、スカートについてしまった砂をポンポンと払い落とす。
そうやって、少し心を落ち着かせて。
弥生は真っ直ぐに宮川を見上げ、ペコリと一つ、頭を下げた。そして、再び彼を見つめて、揺らぎない想いを伝える。
「わたしは一輝君のことが好きで、ずっと、大事にしてあげたいんです。こういうふうに特別に『好き』って想うのは、多分、一生、一輝君だけです」
宮川からの返事はない。ただ、弥生に静かな眼差しを向けている。彼女も目を逸らすことなくそれを受け止めた。
やがて、宮川が口を開く。
「俺は諦めない」
「宮川さん……」
宮川は、肩を竦めて続ける。
「さっきのあの車、新藤一輝が乗ってたんじゃないのか?」
弥生は一瞬視線を揺るがせ、逡巡した後に頷いた。それを受けた宮川は深く溜息をつく。
「いつから見ていたのかは知らないが、あの状況で、お前を助けに来ないわけだろ? まあ、あの小金井ってヤツがいた時は仕方がないかもしれないが、その後はどうなんだよ」
「それは……」
「俺だったら、自分の彼女が他の男に抱き締められて、黙ってなんかいられない」
それは違うのだと、宮川に言いたかった。きっと、一輝は何かを考えてあの行動を取ったのだと。けれども、それはあくまでも弥生の推測にしか過ぎなくて、そこにはこの強い眼差しをした宮川を納得させるだけの根拠を与えることができなかった。
「付け入る隙があるなら、俺は諦めないよ」
彼は、そう、言い切る。力を込めた視線をわずかも揺らすことなく。
弥生は、今すぐ一輝に会いたかった。会って、声を聞きたかった。そうすれば、そんな『隙』などわずかもないのだと、宮川を納得させるだけのものが得られると思った。
今この時も、一輝の『気持ち』は信じている。
けれども、もしかしたら。
その『気持ち』の為に彼が離れて行ってしまうかもしれないという考えが、ほんの一瞬だけ頭をよぎったことは、事実だった。
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる