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幸せの増やし方
六
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残された二人の間には、気まずい沈黙が横たわった。一輝のところに行かなければ、と気は焦るが、このまま「さよなら」とはいかない雰囲気になってしまった。
かといって、弥生には弁明する言葉もなく。
先に口火を切ったのは、宮川の方だ。
「なあ、お前の相手って、もしかして――」
お願いだから、言わないで。
弥生の切なる願いも虚しく、彼はその名を口にしてしまう。
「――新藤一輝……?」
恋人と滅多に会えないくらいバリバリ働いていて、ゴシップネタを餌にしているようなフリージャーナリストが虎視眈々と狙う、『新藤か――』につながる人物など、そうはいない。
言い逃れるための言葉が見つからなくて顔を伏せたまま黙り込んだ弥生に、ジッと見下ろしてくる宮川の視線が突き刺さる。一輝との約束の時間はとっくに過ぎていたけれど、弥生はその視線を振り切ることができなかった。
不意に、彼女の両肩が温かくなる。そこに乗せられた宮川の両手には、痛みを与えるか与えないかの、ギリギリの力が込められていた。顔を上げた弥生の目を、宮川の真剣な眼差しが射抜く。
「そうなのか?」
念押しに、首を振ることは容易だった。けれど、それでごまかすことができないことも、解っていた。
無言のままの弥生に、宮川が少し俯いて深いため息をつく。
「無理が、あるんじゃないのか?」
「え……?」
「だって、『あの』新藤一輝、なんだろ?」
「『あの』って……」
珍獣を評するような言い方に、弥生はムッと口を尖らせる。けれど、宮川はそんな彼女の立腹には取り合わず、真剣な面持ちのまま、続けた。
「お前、そいつとのこと、どこまで考えてるんだよ?」
「どこまでって、ちゃんと、真面目にお付き合いしています」
「でも、お前は保育士になるんだろ? 新藤一輝とこれからも付き合っていくなら、無理じゃないのか?」
「そんなこと、ないですよ」
何を言い出すのかと、宮川を睨んだけれど、彼は怯まない。
「二人の仲が知られていない今でも、ああやって嗅ぎつけてくるヤツがいるじゃないか。新藤一輝と付き合ってるって知られてみろ、大騒ぎで仕事なんかしてられないぜ。それとも、ずっと、隠したままで付き合っていくのか?」
弥生の肩を掴む宮川の手に、力がこもる。
「彼とお前じゃ、『違いすぎる』んじゃないのか?」
その言葉に、弥生はグッと唇を噛んだ。
そんなことは、とうの昔に思い知った。けれども、それでも、一輝と一緒に生きていこうと決めたのだ。弥生は、身体を震わせて宮川の手を振り払う。
「そんなの心配してもらわなくても、大丈夫です! 第一、宮川さんには私と一輝君のことなんて、関係ないじゃないですか!」
とっさにそう言い放って、身を翻して立ち去ろうとする。が、彼に背を向けた瞬間強い力で腕を引かれ、思わずよろめいた。直後に全身を締め付けられた弥生は、一瞬、状況が理解できなくなる。頬に感じる温かさと力強い鼓動に、ようやく、どんなことになっているのかを悟った。
「宮川さん――宮川さん!」
名前を呼んでも、弥生の頭と背中の少し下あたりに置かれた大きな手の力は緩まない。
腕を突っ張って押しやろうとすると、より一層、きつく抱き締められた。
一輝よりもがっしりとした、身体。その違いは、怖くなるほどに明らかだった。
――なんで、こんな……。
もがきながら、そう、思った時だった。その答えが耳元で囁かれる。
「……え?」
思わず、弥生はピタリと動きを止めてしまう。
多くはない言葉を鼓膜に吹き込まれても、すぐに理解することはできなかった。
――今、この人は何て言ったの?
その自問から数拍遅れて、耳から脳へとジワジワ染み込んでくる。
「だから、お前のことが好きだって言ってるだろ」
「うそ」
「なんで、嘘なんだよ。」
苛立たしげにそう言った宮川に両腕の上の方を掴まれてグイと引き上げられ、殆ど爪先立ちのようになってしまった弥生は、踏ん張りがきかなくなる。
「お前のこと、ずっと見ていたんだ。初めのうちはただの後輩だったよ。だけど、見ているうちに……。女の子を見ていてこんなふうに感じるのは、初めてなんだ。お前が笑っているのを見ると、心地良いのに、苦しくてたまらない。それを俺に向けてくれるなら何でもしてやるって気になるんだよ」
どこか苦しげにそう言った宮川は、弥生の頬に片手を添え、首を傾ける。その唇が触れようとした時、弥生はハッと我に返った。
「イヤッ! ダメッ!」
悲鳴にも似たその響きに、宮川の力がわずかに緩む。その隙を逃さず、弥生は彼の腕を振り払った。勢いで地面に座りこんだ彼女の耳に、唐突に、車のエンジン音が届く。
振り返った弥生の目に入ったのは、見慣れた車の走り去る姿。
――うそ、あれって……。
呆然と、見送ってしまう。
『彼』に全て見られていたのだろうか。
いったい、いつから?
もしや、小金井と揉めているあたりも、見られてしまったのだろうか。宮川とのことよりも、そちらの方が、気になった。
ちゃんと、一輝に相談しようと思ってた。
けれども、先にこんな形で知られてしまったら、どうやっても言い繕えない。
一輝のことを気遣った筈が、余計に彼を傷つけてしまった気がする。
――こんなつもりじゃなかったのに。
後悔先に立たずとは、このことだった。
座り込んだままの弥生の目の前に、手が差し伸べられる。見上げると、気まずそうな宮川の顔が目に入った。
「……悪い。こんなふうに伝えるつもりはなかった」
たった今、自分の心の中に浮かんだものと同じ台詞を耳にして、弥生は思わず小さな笑みを漏らしてしまう。
「大石?」
いぶかしそうに眉をひそめる宮川に、小さく首を振って。
弥生は自分独りで立ち上がり、一歩だけ後ずさると、スカートについてしまった砂をポンポンと払い落とす。
そうやって、少し心を落ち着かせて。
弥生は真っ直ぐに宮川を見上げ、ペコリと一つ、頭を下げた。そして、再び彼を見つめて、揺らぎない想いを伝える。
「わたしは一輝君のことが好きで、ずっと、大事にしてあげたいんです。こういうふうに特別に『好き』って想うのは、多分、一生、一輝君だけです」
宮川からの返事はない。ただ、弥生に静かな眼差しを向けている。彼女も目を逸らすことなくそれを受け止めた。
やがて、宮川が口を開く。
「俺は諦めない」
「宮川さん……」
宮川は、肩を竦めて続ける。
「さっきのあの車、新藤一輝が乗ってたんじゃないのか?」
弥生は一瞬視線を揺るがせ、逡巡した後に頷いた。それを受けた宮川は深く溜息をつく。
「いつから見ていたのかは知らないが、あの状況で、お前を助けに来ないわけだろ? まあ、あの小金井ってヤツがいた時は仕方がないかもしれないが、その後はどうなんだよ」
「それは……」
「俺だったら、自分の彼女が他の男に抱き締められて、黙ってなんかいられない」
それは違うのだと、宮川に言いたかった。きっと、一輝は何かを考えてあの行動を取ったのだと。けれども、それはあくまでも弥生の推測にしか過ぎなくて、そこにはこの強い眼差しをした宮川を納得させるだけの根拠を与えることができなかった。
「付け入る隙があるなら、俺は諦めないよ」
彼は、そう、言い切る。力を込めた視線をわずかも揺らすことなく。
弥生は、今すぐ一輝に会いたかった。会って、声を聞きたかった。そうすれば、そんな『隙』などわずかもないのだと、宮川を納得させるだけのものが得られると思った。
今この時も、一輝の『気持ち』は信じている。
けれども、もしかしたら。
その『気持ち』の為に彼が離れて行ってしまうかもしれないという考えが、ほんの一瞬だけ頭をよぎったことは、事実だった。
かといって、弥生には弁明する言葉もなく。
先に口火を切ったのは、宮川の方だ。
「なあ、お前の相手って、もしかして――」
お願いだから、言わないで。
弥生の切なる願いも虚しく、彼はその名を口にしてしまう。
「――新藤一輝……?」
恋人と滅多に会えないくらいバリバリ働いていて、ゴシップネタを餌にしているようなフリージャーナリストが虎視眈々と狙う、『新藤か――』につながる人物など、そうはいない。
言い逃れるための言葉が見つからなくて顔を伏せたまま黙り込んだ弥生に、ジッと見下ろしてくる宮川の視線が突き刺さる。一輝との約束の時間はとっくに過ぎていたけれど、弥生はその視線を振り切ることができなかった。
不意に、彼女の両肩が温かくなる。そこに乗せられた宮川の両手には、痛みを与えるか与えないかの、ギリギリの力が込められていた。顔を上げた弥生の目を、宮川の真剣な眼差しが射抜く。
「そうなのか?」
念押しに、首を振ることは容易だった。けれど、それでごまかすことができないことも、解っていた。
無言のままの弥生に、宮川が少し俯いて深いため息をつく。
「無理が、あるんじゃないのか?」
「え……?」
「だって、『あの』新藤一輝、なんだろ?」
「『あの』って……」
珍獣を評するような言い方に、弥生はムッと口を尖らせる。けれど、宮川はそんな彼女の立腹には取り合わず、真剣な面持ちのまま、続けた。
「お前、そいつとのこと、どこまで考えてるんだよ?」
「どこまでって、ちゃんと、真面目にお付き合いしています」
「でも、お前は保育士になるんだろ? 新藤一輝とこれからも付き合っていくなら、無理じゃないのか?」
「そんなこと、ないですよ」
何を言い出すのかと、宮川を睨んだけれど、彼は怯まない。
「二人の仲が知られていない今でも、ああやって嗅ぎつけてくるヤツがいるじゃないか。新藤一輝と付き合ってるって知られてみろ、大騒ぎで仕事なんかしてられないぜ。それとも、ずっと、隠したままで付き合っていくのか?」
弥生の肩を掴む宮川の手に、力がこもる。
「彼とお前じゃ、『違いすぎる』んじゃないのか?」
その言葉に、弥生はグッと唇を噛んだ。
そんなことは、とうの昔に思い知った。けれども、それでも、一輝と一緒に生きていこうと決めたのだ。弥生は、身体を震わせて宮川の手を振り払う。
「そんなの心配してもらわなくても、大丈夫です! 第一、宮川さんには私と一輝君のことなんて、関係ないじゃないですか!」
とっさにそう言い放って、身を翻して立ち去ろうとする。が、彼に背を向けた瞬間強い力で腕を引かれ、思わずよろめいた。直後に全身を締め付けられた弥生は、一瞬、状況が理解できなくなる。頬に感じる温かさと力強い鼓動に、ようやく、どんなことになっているのかを悟った。
「宮川さん――宮川さん!」
名前を呼んでも、弥生の頭と背中の少し下あたりに置かれた大きな手の力は緩まない。
腕を突っ張って押しやろうとすると、より一層、きつく抱き締められた。
一輝よりもがっしりとした、身体。その違いは、怖くなるほどに明らかだった。
――なんで、こんな……。
もがきながら、そう、思った時だった。その答えが耳元で囁かれる。
「……え?」
思わず、弥生はピタリと動きを止めてしまう。
多くはない言葉を鼓膜に吹き込まれても、すぐに理解することはできなかった。
――今、この人は何て言ったの?
その自問から数拍遅れて、耳から脳へとジワジワ染み込んでくる。
「だから、お前のことが好きだって言ってるだろ」
「うそ」
「なんで、嘘なんだよ。」
苛立たしげにそう言った宮川に両腕の上の方を掴まれてグイと引き上げられ、殆ど爪先立ちのようになってしまった弥生は、踏ん張りがきかなくなる。
「お前のこと、ずっと見ていたんだ。初めのうちはただの後輩だったよ。だけど、見ているうちに……。女の子を見ていてこんなふうに感じるのは、初めてなんだ。お前が笑っているのを見ると、心地良いのに、苦しくてたまらない。それを俺に向けてくれるなら何でもしてやるって気になるんだよ」
どこか苦しげにそう言った宮川は、弥生の頬に片手を添え、首を傾ける。その唇が触れようとした時、弥生はハッと我に返った。
「イヤッ! ダメッ!」
悲鳴にも似たその響きに、宮川の力がわずかに緩む。その隙を逃さず、弥生は彼の腕を振り払った。勢いで地面に座りこんだ彼女の耳に、唐突に、車のエンジン音が届く。
振り返った弥生の目に入ったのは、見慣れた車の走り去る姿。
――うそ、あれって……。
呆然と、見送ってしまう。
『彼』に全て見られていたのだろうか。
いったい、いつから?
もしや、小金井と揉めているあたりも、見られてしまったのだろうか。宮川とのことよりも、そちらの方が、気になった。
ちゃんと、一輝に相談しようと思ってた。
けれども、先にこんな形で知られてしまったら、どうやっても言い繕えない。
一輝のことを気遣った筈が、余計に彼を傷つけてしまった気がする。
――こんなつもりじゃなかったのに。
後悔先に立たずとは、このことだった。
座り込んだままの弥生の目の前に、手が差し伸べられる。見上げると、気まずそうな宮川の顔が目に入った。
「……悪い。こんなふうに伝えるつもりはなかった」
たった今、自分の心の中に浮かんだものと同じ台詞を耳にして、弥生は思わず小さな笑みを漏らしてしまう。
「大石?」
いぶかしそうに眉をひそめる宮川に、小さく首を振って。
弥生は自分独りで立ち上がり、一歩だけ後ずさると、スカートについてしまった砂をポンポンと払い落とす。
そうやって、少し心を落ち着かせて。
弥生は真っ直ぐに宮川を見上げ、ペコリと一つ、頭を下げた。そして、再び彼を見つめて、揺らぎない想いを伝える。
「わたしは一輝君のことが好きで、ずっと、大事にしてあげたいんです。こういうふうに特別に『好き』って想うのは、多分、一生、一輝君だけです」
宮川からの返事はない。ただ、弥生に静かな眼差しを向けている。彼女も目を逸らすことなくそれを受け止めた。
やがて、宮川が口を開く。
「俺は諦めない」
「宮川さん……」
宮川は、肩を竦めて続ける。
「さっきのあの車、新藤一輝が乗ってたんじゃないのか?」
弥生は一瞬視線を揺るがせ、逡巡した後に頷いた。それを受けた宮川は深く溜息をつく。
「いつから見ていたのかは知らないが、あの状況で、お前を助けに来ないわけだろ? まあ、あの小金井ってヤツがいた時は仕方がないかもしれないが、その後はどうなんだよ」
「それは……」
「俺だったら、自分の彼女が他の男に抱き締められて、黙ってなんかいられない」
それは違うのだと、宮川に言いたかった。きっと、一輝は何かを考えてあの行動を取ったのだと。けれども、それはあくまでも弥生の推測にしか過ぎなくて、そこにはこの強い眼差しをした宮川を納得させるだけの根拠を与えることができなかった。
「付け入る隙があるなら、俺は諦めないよ」
彼は、そう、言い切る。力を込めた視線をわずかも揺らすことなく。
弥生は、今すぐ一輝に会いたかった。会って、声を聞きたかった。そうすれば、そんな『隙』などわずかもないのだと、宮川を納得させるだけのものが得られると思った。
今この時も、一輝の『気持ち』は信じている。
けれども、もしかしたら。
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