58 / 73
幸せの増やし方
五
しおりを挟む
「ねえ、そろそろ『彼』に相談してみたら?」
小声でそう弥生に提案してきたのは、加山美香。高校からの友人で、弥生と一輝のことを知っている数少ない者のうちの一人だ。その隣にいるのは森口裕輔で、美香と同様に、一輝と面識がある。彼も、無言で頷いていた。
『相談』のネタは、当然、小金井健のことだ。
「うん……」
確かに、そろそろ限界かもしれない。
じわじわとその自覚が頭の中を満たし始めていた弥生は、小さなため息をこぼした。
この間なんて、小金井のことが気になって、せっかくの一輝の誘いも断ってしまった。海外への出張から帰ってきた彼と、一週間ぶりに逢えるところだったのに。
――これって、本末転倒、だよね。
肩を落とした弥生に、友人二人が心配そうな眼差しを向けている。
もしかしたら、一輝も何か気付いているのかもしれない。断りの電話を入れた時、携帯電話の向こうの彼は、何か言いたげだったから。
――わたしから言うのを、待ってくれてるんだよね……。
何かあったら、弥生から一輝に相談する。そうすることが、彼に対する信頼の表れでもある筈だ。これ以上黙っていたら、きっと、もっと一輝を傷付けることになる。
それは、良くない。
一輝の邪魔をするのと一輝を傷付けるのとでは、圧倒的に前者の方がマシだ。
弥生は覚悟を決めて顔を上げると、美香と森口にニコッと笑いかけた。
「相談、してみるよ」
彼女の笑顔に、二人も、ホッとしたように頬を緩める。
「うん、絶対その方がいいって」
「ああ。男としても、何も言ってくれない方が、つらいし、悔しいよ」
親友たちの力強い後押しを受けて、弥生も深く頷いた。
「今日、バイトが終わったら会えるかどうか、訊いてみる」
さっそく携帯電話を取り出して、橘宛にメールを送る。さほど待つことなく、返信メールが入った。
「どう?」
「今日、会えるって」
「そっか。良かったね」
「うん」
弥生は心底から頷く。現金なもので、気持ちと一緒に、身体も軽くなったような気がした。
――そうだよね。二人のことなんだもの、ちゃんと、相談するべきだよね。
そう決めてしまえば、一輝に会えるのが待ち遠しい。この間も逢いたくてたまらなかったのに、絶えず視界をちらつく小金井の姿に、泣く泣く約束を断ったのだ。
「じゃあ、わたし、バイトに行くね!」
バイバイ、と美香と森口に手を振って、弥生は園に向かう。
大学の正門を出る彼女に気付いた小金井が、いつものように柵に寄りかかってニッと笑いかけてきたけれど、これまでと同じように無視を決め込んだ。
――あれは電信柱。もしくは看板。
口の中でそう唱えて、弥生はブラブラと付いてくる男の姿を頭から追いやった。
こども園の中に足を踏み入れた途端、荷物を置く間もなく、いつものように子どもたちが押し寄せてくる。
「やよいちゃん、あそんで」
「やよいちゃん、だっこ」
「やよいちゃん、おしっこ」
一秒ごとに、そんな声が追いかけてきた。
昔、高校の修学旅行で奈良公園の鹿に餌をあげたことがあるけれど、あの状況に似ているかもしれない――手ぶらであることを除けば。あの時、せんべいを持った彼女は鹿の群れに襲われて、友人に助け出される羽目になったのだ。
末の弟の葉月《はづき》はほとんど弥生が育てたようなものなのだけれど、彼は大人しい子だったので、こんなふうに走り回ったり弥生によじ登ってきたりするようなことはしなかった。
一瞬たりともジッとしていない子どもたちの体力に、弥生は改めて驚くばかりだ。一人を抱き上げると、ぼくもわたしもと群がってくる。
そんなふうに息をつく間もないような状況だったから、時間はあっという間に過ぎていった。
気付けば、十六時五分前。
アルバイトが終わるまでのあと五分を、そわそわしながら待ちかねて。
時間になると、保育士達の「また明日」を背中で聞きながら園を後にした。
正門には小金井が陣取っているので、彼がいない裏門を出て、橘との待ち合わせ場所に向かう。
が、出てすぐのところで、別の人物に呼び止められてしまった。
「大石!」
その声に振り返ると、そこに立っていたのは宮川寛之――園に出入りしている臨床心理士だ。
「宮川さん。こんにちは」
彼に向き直った弥生は、笑顔で会釈する。
宮川は小走りに近寄ってくると、A4サイズの紙袋に包まれた物を彼女に差し出した。
「これ、前に言ってた児童心理学の本。読み易くて面白いよ」
「わあ、ありがとうございます! 楽しみにしてました」
弥生は、顔を輝かせてそれを受け取る。いくつか質問したい事もあったのだけれど、残念ながら、一輝との約束の時間まで、あまりない。この先の路地で、橘が手配してくれた車が待っている筈だった。
時計を気にする弥生の様子に気付いたのか、宮川が眉をひそめる。
「これから、予定が?」
「あ、ええ、はい」
適当にごまかせばよかったのかもしれないけれど、それができないのが、弥生だ。詳しくは教えたくない、という気持ちが露骨に顔に出てしまう。
「例の、彼?」
案の定、窺うような面持ちで、宮川がそう尋ねてきた。
さすがに話を聴くのがうまい彼は、弥生からもチョコチョコ情報を引き出していた。いつの間にか、彼女が『とても忙しくて滅多に逢えない男と数年来の付き合いだ』というところまで知られてしまっている。
「ええっと……――はい」
言い繕おうとして果たせず、弥生は若干目を逸らしつつ、結局頷いた。できたらこれ以上突っ込まず、解放して欲しい。そう願ったが、それは叶わなかった。
何やら考え込んでいた宮川が、不意に言った。
「会ってみたいな」
「ええ!?」
「別に、いいだろ? 女の子って、普通、彼氏を見せびらかせたがるじゃないか」
それは、彼氏が『普通の人』の場合に違いない。なぜ、宮川はこんなに他人の恋人のことに拘るのだろうかと困惑しながら、弥生は何とか逃げ切ろうと試みる。
「あ……ちょっと、無理、です」
「なんで?」
彼の眼差しが、少し尖る。
――ああ、もう、どうしよう。
と、その時。
約束の時間も刻々と迫り、気ばかり焦る弥生の背後から、更なる厄介の種の声がかかった。今この瞬間、この世で一番聞きたくない声だ。
「みぃつけた。ひどいじゃないか、こっそりいなくなるなんて」
ため息をつきつつ視線を投げた先にいるのは、当然、小金井である。大いに誤解を招く物言いに、恐る恐る隣を見上げると、宮川は険しい眼差しを彼に注いでいた。
「これが、大石の彼氏?」
「違います!」
そこは、力いっぱい否定しておく。話題の渦中の人物は、相も変わらずヘラヘラとしながら目を輝かせた。
「おお、いいねぇ。第三の男登場? 弥生ちゃん、見かけに寄らず、モテるじゃない」
「何なんだ、彼は?」
あって然るべき質問が宮川から発せられる。それは、弥生も言いたい台詞だ。
場の空気も読まず、小金井は軽い口調で自己紹介を披露する。
「ああ、オレ、小金井健って言います」
宮川に、ヒョイッと名刺を渡されてしまった。
「フリージャーナリスト……?」
宮川の怪訝な声は、至極もっともなものだ。
状況は、どんどん収拾がつかなくなってくる。
――ああ、もう!
内心で頭を抱えた彼女だけれど、頭上で勝手に話が進みそうになっていることに気付き、我に返った。
「おたくさぁ、この子の彼氏のこと、なんか知ってる?」
「大石の?」
「そうそう。新藤か――」
「小金井さん!」
鋭く制してキッと睨み付けると、彼はおどけたように両手をあげた。
「悪い、悪い。この彼氏にはナイショなわけね」
小金井は、全く悪いと思っていなそうな口調で、更に事態をこじらせるようなことを口にした。
「もう、帰ってください」
「ゴメン、ゴメン。怒らせちゃった? じゃ、今日は退散するわ」
地を這うような弥生の声に流石に引き時だと察したのか、引っ掻き回すだけ引っ掻き回した小金井は、鼻歌混じりに去っていく。
小声でそう弥生に提案してきたのは、加山美香。高校からの友人で、弥生と一輝のことを知っている数少ない者のうちの一人だ。その隣にいるのは森口裕輔で、美香と同様に、一輝と面識がある。彼も、無言で頷いていた。
『相談』のネタは、当然、小金井健のことだ。
「うん……」
確かに、そろそろ限界かもしれない。
じわじわとその自覚が頭の中を満たし始めていた弥生は、小さなため息をこぼした。
この間なんて、小金井のことが気になって、せっかくの一輝の誘いも断ってしまった。海外への出張から帰ってきた彼と、一週間ぶりに逢えるところだったのに。
――これって、本末転倒、だよね。
肩を落とした弥生に、友人二人が心配そうな眼差しを向けている。
もしかしたら、一輝も何か気付いているのかもしれない。断りの電話を入れた時、携帯電話の向こうの彼は、何か言いたげだったから。
――わたしから言うのを、待ってくれてるんだよね……。
何かあったら、弥生から一輝に相談する。そうすることが、彼に対する信頼の表れでもある筈だ。これ以上黙っていたら、きっと、もっと一輝を傷付けることになる。
それは、良くない。
一輝の邪魔をするのと一輝を傷付けるのとでは、圧倒的に前者の方がマシだ。
弥生は覚悟を決めて顔を上げると、美香と森口にニコッと笑いかけた。
「相談、してみるよ」
彼女の笑顔に、二人も、ホッとしたように頬を緩める。
「うん、絶対その方がいいって」
「ああ。男としても、何も言ってくれない方が、つらいし、悔しいよ」
親友たちの力強い後押しを受けて、弥生も深く頷いた。
「今日、バイトが終わったら会えるかどうか、訊いてみる」
さっそく携帯電話を取り出して、橘宛にメールを送る。さほど待つことなく、返信メールが入った。
「どう?」
「今日、会えるって」
「そっか。良かったね」
「うん」
弥生は心底から頷く。現金なもので、気持ちと一緒に、身体も軽くなったような気がした。
――そうだよね。二人のことなんだもの、ちゃんと、相談するべきだよね。
そう決めてしまえば、一輝に会えるのが待ち遠しい。この間も逢いたくてたまらなかったのに、絶えず視界をちらつく小金井の姿に、泣く泣く約束を断ったのだ。
「じゃあ、わたし、バイトに行くね!」
バイバイ、と美香と森口に手を振って、弥生は園に向かう。
大学の正門を出る彼女に気付いた小金井が、いつものように柵に寄りかかってニッと笑いかけてきたけれど、これまでと同じように無視を決め込んだ。
――あれは電信柱。もしくは看板。
口の中でそう唱えて、弥生はブラブラと付いてくる男の姿を頭から追いやった。
こども園の中に足を踏み入れた途端、荷物を置く間もなく、いつものように子どもたちが押し寄せてくる。
「やよいちゃん、あそんで」
「やよいちゃん、だっこ」
「やよいちゃん、おしっこ」
一秒ごとに、そんな声が追いかけてきた。
昔、高校の修学旅行で奈良公園の鹿に餌をあげたことがあるけれど、あの状況に似ているかもしれない――手ぶらであることを除けば。あの時、せんべいを持った彼女は鹿の群れに襲われて、友人に助け出される羽目になったのだ。
末の弟の葉月《はづき》はほとんど弥生が育てたようなものなのだけれど、彼は大人しい子だったので、こんなふうに走り回ったり弥生によじ登ってきたりするようなことはしなかった。
一瞬たりともジッとしていない子どもたちの体力に、弥生は改めて驚くばかりだ。一人を抱き上げると、ぼくもわたしもと群がってくる。
そんなふうに息をつく間もないような状況だったから、時間はあっという間に過ぎていった。
気付けば、十六時五分前。
アルバイトが終わるまでのあと五分を、そわそわしながら待ちかねて。
時間になると、保育士達の「また明日」を背中で聞きながら園を後にした。
正門には小金井が陣取っているので、彼がいない裏門を出て、橘との待ち合わせ場所に向かう。
が、出てすぐのところで、別の人物に呼び止められてしまった。
「大石!」
その声に振り返ると、そこに立っていたのは宮川寛之――園に出入りしている臨床心理士だ。
「宮川さん。こんにちは」
彼に向き直った弥生は、笑顔で会釈する。
宮川は小走りに近寄ってくると、A4サイズの紙袋に包まれた物を彼女に差し出した。
「これ、前に言ってた児童心理学の本。読み易くて面白いよ」
「わあ、ありがとうございます! 楽しみにしてました」
弥生は、顔を輝かせてそれを受け取る。いくつか質問したい事もあったのだけれど、残念ながら、一輝との約束の時間まで、あまりない。この先の路地で、橘が手配してくれた車が待っている筈だった。
時計を気にする弥生の様子に気付いたのか、宮川が眉をひそめる。
「これから、予定が?」
「あ、ええ、はい」
適当にごまかせばよかったのかもしれないけれど、それができないのが、弥生だ。詳しくは教えたくない、という気持ちが露骨に顔に出てしまう。
「例の、彼?」
案の定、窺うような面持ちで、宮川がそう尋ねてきた。
さすがに話を聴くのがうまい彼は、弥生からもチョコチョコ情報を引き出していた。いつの間にか、彼女が『とても忙しくて滅多に逢えない男と数年来の付き合いだ』というところまで知られてしまっている。
「ええっと……――はい」
言い繕おうとして果たせず、弥生は若干目を逸らしつつ、結局頷いた。できたらこれ以上突っ込まず、解放して欲しい。そう願ったが、それは叶わなかった。
何やら考え込んでいた宮川が、不意に言った。
「会ってみたいな」
「ええ!?」
「別に、いいだろ? 女の子って、普通、彼氏を見せびらかせたがるじゃないか」
それは、彼氏が『普通の人』の場合に違いない。なぜ、宮川はこんなに他人の恋人のことに拘るのだろうかと困惑しながら、弥生は何とか逃げ切ろうと試みる。
「あ……ちょっと、無理、です」
「なんで?」
彼の眼差しが、少し尖る。
――ああ、もう、どうしよう。
と、その時。
約束の時間も刻々と迫り、気ばかり焦る弥生の背後から、更なる厄介の種の声がかかった。今この瞬間、この世で一番聞きたくない声だ。
「みぃつけた。ひどいじゃないか、こっそりいなくなるなんて」
ため息をつきつつ視線を投げた先にいるのは、当然、小金井である。大いに誤解を招く物言いに、恐る恐る隣を見上げると、宮川は険しい眼差しを彼に注いでいた。
「これが、大石の彼氏?」
「違います!」
そこは、力いっぱい否定しておく。話題の渦中の人物は、相も変わらずヘラヘラとしながら目を輝かせた。
「おお、いいねぇ。第三の男登場? 弥生ちゃん、見かけに寄らず、モテるじゃない」
「何なんだ、彼は?」
あって然るべき質問が宮川から発せられる。それは、弥生も言いたい台詞だ。
場の空気も読まず、小金井は軽い口調で自己紹介を披露する。
「ああ、オレ、小金井健って言います」
宮川に、ヒョイッと名刺を渡されてしまった。
「フリージャーナリスト……?」
宮川の怪訝な声は、至極もっともなものだ。
状況は、どんどん収拾がつかなくなってくる。
――ああ、もう!
内心で頭を抱えた彼女だけれど、頭上で勝手に話が進みそうになっていることに気付き、我に返った。
「おたくさぁ、この子の彼氏のこと、なんか知ってる?」
「大石の?」
「そうそう。新藤か――」
「小金井さん!」
鋭く制してキッと睨み付けると、彼はおどけたように両手をあげた。
「悪い、悪い。この彼氏にはナイショなわけね」
小金井は、全く悪いと思っていなそうな口調で、更に事態をこじらせるようなことを口にした。
「もう、帰ってください」
「ゴメン、ゴメン。怒らせちゃった? じゃ、今日は退散するわ」
地を這うような弥生の声に流石に引き時だと察したのか、引っ掻き回すだけ引っ掻き回した小金井は、鼻歌混じりに去っていく。
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
天才外科医は仮初の妻を手放したくない
夢幻惠
恋愛
ホテルのフリントに勤務している澪(みお)は、ある日突然見知らぬ男性、陽斗(はると)に頼まれて結婚式に出ることになる。新婦が来るまでのピンチヒッターとして了承するも、新婦は現れなかった。陽斗に頼まれて仮初の夫婦となってしまうが、陽斗は天才と呼ばれる凄腕外科医だったのだ。しかし、澪を好きな男は他にもいたのだ。幼馴染の、前坂 理久(まえさか りく)は幼い頃から澪をずっと思い続けている。
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる