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眠り姫の起こし方
十一
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弥生は、自宅の居間の三倍はありそうな広々とした和室の真ん中に、独りでポツリと座らされていた。
この部屋で待つように言われて、もう十分ほどにはなる。
――まだかな……
葉月の保育園のお迎えは睦月に頼んであるからいいとしても、あんまり遅くなると夕食の支度に差し障りが出てくる。
弥生はこの屋敷に着いた時に切った携帯電話の電源を入れ、時刻を確認し、再度切る。そうして、グルリと部屋の中を見回した。
水墨画が掛けられ、綺麗に活けられた花が飾られた床の間。
生きているような鳥と花が彫られている欄間。
ホームセンターで買ってきて弥生自ら貼り換えているようなものとはレベルが違う、芸術品のような絵が描かれた襖。
同じ和室でも、全てが弥生の家とは段違いだった。
「ここが、一輝君のお家」
弥生はポツリとつぶやく。
そうしてみても、実感が湧かない。
「よく『住む世界が違う』っていうけど、これがまさにそうだよね」
思わず力のない笑みを漏らしてしまう。
今、弥生は一輝の家に来ているわけだけれど、迎えに来たのは彼ではなく、その祖父、一智の遣いだった。
確かに、いずれ引き合わせるから、とだいぶ前から一輝には言われていた。でもそれが、彼がいない状態でということになろうとは。
いったいどんな用件なのかも知らされておらず、弥生は不安だけが膨らんでいく。
時刻を確認してから、更に五分ほどが過ぎた頃であろうか。
力強い足音が近付いてきたかと思うと静かに襖が開き、和服を身に付けた、威風堂々とした初老の男性が入ってくる。
「待たせて悪かったな」
そう言いながら彼は床の間の前にドカリと胡坐をかくと、脇息に肘を突いて下目使いの眼差しを弥生に向けてきた。
気さくというか、傲慢というか。
まるでもう何度も会ったことがあるかのようなその振る舞いに、弥生はポカンと彼を見つめてしまう。
「一輝がいつも世話になっている。祖父の一智だ」
男の容貌もそうだけれど、低い声も、一輝のものとよく似ている。
そう思うと同時にハッと我に返った弥生は、慌てて三つ指を突いた。
「あ、大石弥生です。こちらこそ、一輝君には、大変お世話になりました」
顔を上げると、真っ直ぐに向けられている鋭い視線が突き刺さる。
それは、一輝とよく似ている筈なのに、全く違う。いつも彼から向けられる眼差しがどんなに優しいものであったかを、弥生はつくづくと実感させられた。
心持ち肩をすぼめた彼女を一智はしばらく無言で見つめていたけれど、やがてまた口を開いた。
「今日来てもらったのは、他でもない。一輝とあなたとの関係の件だ」
「一輝君との、関係……?」
戸惑いながら、弥生は一智の言葉を繰り返した。
彼は真っ直ぐに伸ばした人差し指でこめかみを叩きつつ、言う。
「逢引きしておるだろう?」
――逢引き……?
一瞬、弥生はそれがどんな意味を持つ単語か考えてしまった。
そしてすぐに理解し、慌てて目いっぱい首を振る。
「あ、いえ、わたしと一輝君は、そんな……」
「付き合いではない、と?」
スッと、一智の目が細くなった。
元々鋭かった眼差しが一層鋭く、まさに弥生を射抜かんばかりになる――まるで、彼女の答えが気に入らなかったかのように。
弥生は、入試の面接を受けているような心持ちになってしまう。
どう答えたらいいのか、一智が期待している答えはどういうものなのかが、まったくわからない。
不安に駆られながらも、弥生は頷く。
「はい」
と、彼女の返事を受けて、一智の目が冷える。
「では、あいつが他の女性と関係を持っても、構わないのだな?」
「え……」
束の間、弥生の頭は真っ白になった。そしてまた動き出し、彼の言葉を十二分に理解すると、鋭い痛みが胸をチクチクと刺し始める。
とげをたくさんつけた手袋で心臓をギュッと掴まれているような、そんな痛み。
弥生は、それを無視した。
込み上げてくる何か苦いものを飲み下しながら、答える。
「はい。それは……一輝君が、選ぶことです」
そうするつもりではなかったのに、弥生の視線はいつの間にか畳に向けられていた。
うつむいた彼女に、一輝によく似た、彼よりも渋みのある声が届く。
「まあ、そうだな。一輝が、というよりはあいつの背負うものが、だがな。最近、一輝が親しくしている女性のことは知っているかな?」
一智の問いに、弥生の胸の痛みが強くなる。
――あの、週刊誌の女性のこと……? やっぱり、お付き合いしてるんだ……。
弥生の脳裏にあの写真がよみがえる。
一輝の隣に立って、全く見劣りがしなかったあの女性。
弥生とは全く違う、美しい女性。
弥生は重い頭を上げて、何とか一智に目を戻す。
「あの、モデルだった方、ですか? 園城寺建設の……?」
「そうだ。あいつとは良く似合っていただろう? ちと年は離れているがな」
「……はい」
確かに、よく似合っていた。少なくとも、『姉と弟』ですらない、『兄と妹』のように見える自分よりは、遥かに。
「この新藤商事は、もう政略結婚は必要無い。充分に成長しているからな。だが、連れて歩く伴侶には、それなりの見栄えが必要だ。ある意味、装飾品のようなものでな――彼女であれば、その役割を果たせる」
朗らかと言ってもいいほどの声で発せられた一智の台詞に、弥生はグッと息を呑んだ。
顔を上げて、ここに来て初めて、まともに一智の顔を見た。
「でも、結婚っていうのは、幸せな家庭を築くのが一番ではないのですか?」
結婚というのは人生を大きく変えてしまう出来事で、一番大事なことは、それで一輝が幸せになれるのかどうか、ということの筈だ。
それだけは譲れない。
真っ直ぐに一智を見つめた弥生に、彼は何故か妙に嬉しそうに目を煌めかせた。
一見、彼女の意見に共感したかのようだった。
けれど、違う。
一転して冷ややかになったその目が、ヒタと弥生を見据えてくる。
「普通の家庭であれば、な。だが、一輝はこの新藤商事を背負って立つ男だ。可愛く温かな妻よりも、共に新藤商事の看板となれる者が必要なのだ。あいつには何よりもまず新藤商事が優先される。新藤商事を栄えさせることがあいつの存在意義であり、そうする事があいつの幸せでもある。『新藤商事の』新藤一輝にとっては、結婚とはその業務の一つだよ。園城寺薫子には、容姿、財産、家柄、立ち居振る舞い、全てがある。一輝の妻として『必要』なものが揃っている女性だ。あなたには、何があるかな?」
問われて、弥生は言葉に詰まる。
――わたしには、何もない。
彼女にとっての夫婦とは、お互いに支え合い、温かな家庭を作るために結ばれるものだ。
何よりも、心のつながりが大事。
愛し、愛され、離れている時でも互いのことを想い合う。
そんな人に夫になって欲しいし、相手にとっても自分がそんな存在でいたい。
結婚とは、その先にお互いの幸福があるもの。お互いを想い合う心さえあれば、それで充分。
それが弥生の結婚観だった。
けれど、新藤家に――一輝にとっては、そうではないのかもしれない。
――わたしの幸せと、一輝君の幸せとは、違うものなの?
うつむいた弥生は、自分に注がれる観察するような視線に気付いていなかった。
やがて一智が口を開く。
「自分と一輝にとって最善の道がどんなものなのか、よく考えてみなさい」
弥生が顔を上げると、一智はもう立ち上がっていた。
後はもう彼女に一瞥もくれずに彼が部屋を出て行くと、入れ替わりで弥生をここまで連れてきた男性が顔を覗かせる。帰りの車の準備ができていると言われ、弥生はのろのろと立ち上がると、彼について歩き出した。
玄関へ向かう長い廊下を歩きながら、弥生は飽和状態の頭で考えようとする。
けれど、今日一日、次から次へと彼女の能力外のことに襲われて、もう、頭がうまく働かなかった。
一輝のことは幸せになって欲しいと――その助けになるのならばどんなことでもしてあげたいと、思っていた。けれども、幸せのあり方が自分と違うというのならば、何をどうしてあげたらよいのかが判らない。
一輝は、弥生といると、よく笑った。
テレビや週刊誌で見せるような冷笑じみたものではなく、自然に、心から零れるように。
――一緒にいるときに笑ってくれたのは、嬉しかったから……幸せだったからではなかったの?
自分だけが嬉しかったのだろうか。
一輝は、ただ、自分に合わせてくれていただけなのだろうか。彼は優しいから、そうだったのかもしれない。本当は、こんな子どもっぽい自分に付き合うのはうんざりしていたのかも。
弥生には、もう何が何だか解らない。
数日前までは、一輝に会ってあんなに楽しかったのに、今は会うのが怖かった。
それなのに。
玄関を出て、送りの車に乗ろうとした時。
「弥生さん!」
弥生は、一番聞きたくて、一番聞きたくない声に呼び止められた。
この部屋で待つように言われて、もう十分ほどにはなる。
――まだかな……
葉月の保育園のお迎えは睦月に頼んであるからいいとしても、あんまり遅くなると夕食の支度に差し障りが出てくる。
弥生はこの屋敷に着いた時に切った携帯電話の電源を入れ、時刻を確認し、再度切る。そうして、グルリと部屋の中を見回した。
水墨画が掛けられ、綺麗に活けられた花が飾られた床の間。
生きているような鳥と花が彫られている欄間。
ホームセンターで買ってきて弥生自ら貼り換えているようなものとはレベルが違う、芸術品のような絵が描かれた襖。
同じ和室でも、全てが弥生の家とは段違いだった。
「ここが、一輝君のお家」
弥生はポツリとつぶやく。
そうしてみても、実感が湧かない。
「よく『住む世界が違う』っていうけど、これがまさにそうだよね」
思わず力のない笑みを漏らしてしまう。
今、弥生は一輝の家に来ているわけだけれど、迎えに来たのは彼ではなく、その祖父、一智の遣いだった。
確かに、いずれ引き合わせるから、とだいぶ前から一輝には言われていた。でもそれが、彼がいない状態でということになろうとは。
いったいどんな用件なのかも知らされておらず、弥生は不安だけが膨らんでいく。
時刻を確認してから、更に五分ほどが過ぎた頃であろうか。
力強い足音が近付いてきたかと思うと静かに襖が開き、和服を身に付けた、威風堂々とした初老の男性が入ってくる。
「待たせて悪かったな」
そう言いながら彼は床の間の前にドカリと胡坐をかくと、脇息に肘を突いて下目使いの眼差しを弥生に向けてきた。
気さくというか、傲慢というか。
まるでもう何度も会ったことがあるかのようなその振る舞いに、弥生はポカンと彼を見つめてしまう。
「一輝がいつも世話になっている。祖父の一智だ」
男の容貌もそうだけれど、低い声も、一輝のものとよく似ている。
そう思うと同時にハッと我に返った弥生は、慌てて三つ指を突いた。
「あ、大石弥生です。こちらこそ、一輝君には、大変お世話になりました」
顔を上げると、真っ直ぐに向けられている鋭い視線が突き刺さる。
それは、一輝とよく似ている筈なのに、全く違う。いつも彼から向けられる眼差しがどんなに優しいものであったかを、弥生はつくづくと実感させられた。
心持ち肩をすぼめた彼女を一智はしばらく無言で見つめていたけれど、やがてまた口を開いた。
「今日来てもらったのは、他でもない。一輝とあなたとの関係の件だ」
「一輝君との、関係……?」
戸惑いながら、弥生は一智の言葉を繰り返した。
彼は真っ直ぐに伸ばした人差し指でこめかみを叩きつつ、言う。
「逢引きしておるだろう?」
――逢引き……?
一瞬、弥生はそれがどんな意味を持つ単語か考えてしまった。
そしてすぐに理解し、慌てて目いっぱい首を振る。
「あ、いえ、わたしと一輝君は、そんな……」
「付き合いではない、と?」
スッと、一智の目が細くなった。
元々鋭かった眼差しが一層鋭く、まさに弥生を射抜かんばかりになる――まるで、彼女の答えが気に入らなかったかのように。
弥生は、入試の面接を受けているような心持ちになってしまう。
どう答えたらいいのか、一智が期待している答えはどういうものなのかが、まったくわからない。
不安に駆られながらも、弥生は頷く。
「はい」
と、彼女の返事を受けて、一智の目が冷える。
「では、あいつが他の女性と関係を持っても、構わないのだな?」
「え……」
束の間、弥生の頭は真っ白になった。そしてまた動き出し、彼の言葉を十二分に理解すると、鋭い痛みが胸をチクチクと刺し始める。
とげをたくさんつけた手袋で心臓をギュッと掴まれているような、そんな痛み。
弥生は、それを無視した。
込み上げてくる何か苦いものを飲み下しながら、答える。
「はい。それは……一輝君が、選ぶことです」
そうするつもりではなかったのに、弥生の視線はいつの間にか畳に向けられていた。
うつむいた彼女に、一輝によく似た、彼よりも渋みのある声が届く。
「まあ、そうだな。一輝が、というよりはあいつの背負うものが、だがな。最近、一輝が親しくしている女性のことは知っているかな?」
一智の問いに、弥生の胸の痛みが強くなる。
――あの、週刊誌の女性のこと……? やっぱり、お付き合いしてるんだ……。
弥生の脳裏にあの写真がよみがえる。
一輝の隣に立って、全く見劣りがしなかったあの女性。
弥生とは全く違う、美しい女性。
弥生は重い頭を上げて、何とか一智に目を戻す。
「あの、モデルだった方、ですか? 園城寺建設の……?」
「そうだ。あいつとは良く似合っていただろう? ちと年は離れているがな」
「……はい」
確かに、よく似合っていた。少なくとも、『姉と弟』ですらない、『兄と妹』のように見える自分よりは、遥かに。
「この新藤商事は、もう政略結婚は必要無い。充分に成長しているからな。だが、連れて歩く伴侶には、それなりの見栄えが必要だ。ある意味、装飾品のようなものでな――彼女であれば、その役割を果たせる」
朗らかと言ってもいいほどの声で発せられた一智の台詞に、弥生はグッと息を呑んだ。
顔を上げて、ここに来て初めて、まともに一智の顔を見た。
「でも、結婚っていうのは、幸せな家庭を築くのが一番ではないのですか?」
結婚というのは人生を大きく変えてしまう出来事で、一番大事なことは、それで一輝が幸せになれるのかどうか、ということの筈だ。
それだけは譲れない。
真っ直ぐに一智を見つめた弥生に、彼は何故か妙に嬉しそうに目を煌めかせた。
一見、彼女の意見に共感したかのようだった。
けれど、違う。
一転して冷ややかになったその目が、ヒタと弥生を見据えてくる。
「普通の家庭であれば、な。だが、一輝はこの新藤商事を背負って立つ男だ。可愛く温かな妻よりも、共に新藤商事の看板となれる者が必要なのだ。あいつには何よりもまず新藤商事が優先される。新藤商事を栄えさせることがあいつの存在意義であり、そうする事があいつの幸せでもある。『新藤商事の』新藤一輝にとっては、結婚とはその業務の一つだよ。園城寺薫子には、容姿、財産、家柄、立ち居振る舞い、全てがある。一輝の妻として『必要』なものが揃っている女性だ。あなたには、何があるかな?」
問われて、弥生は言葉に詰まる。
――わたしには、何もない。
彼女にとっての夫婦とは、お互いに支え合い、温かな家庭を作るために結ばれるものだ。
何よりも、心のつながりが大事。
愛し、愛され、離れている時でも互いのことを想い合う。
そんな人に夫になって欲しいし、相手にとっても自分がそんな存在でいたい。
結婚とは、その先にお互いの幸福があるもの。お互いを想い合う心さえあれば、それで充分。
それが弥生の結婚観だった。
けれど、新藤家に――一輝にとっては、そうではないのかもしれない。
――わたしの幸せと、一輝君の幸せとは、違うものなの?
うつむいた弥生は、自分に注がれる観察するような視線に気付いていなかった。
やがて一智が口を開く。
「自分と一輝にとって最善の道がどんなものなのか、よく考えてみなさい」
弥生が顔を上げると、一智はもう立ち上がっていた。
後はもう彼女に一瞥もくれずに彼が部屋を出て行くと、入れ替わりで弥生をここまで連れてきた男性が顔を覗かせる。帰りの車の準備ができていると言われ、弥生はのろのろと立ち上がると、彼について歩き出した。
玄関へ向かう長い廊下を歩きながら、弥生は飽和状態の頭で考えようとする。
けれど、今日一日、次から次へと彼女の能力外のことに襲われて、もう、頭がうまく働かなかった。
一輝のことは幸せになって欲しいと――その助けになるのならばどんなことでもしてあげたいと、思っていた。けれども、幸せのあり方が自分と違うというのならば、何をどうしてあげたらよいのかが判らない。
一輝は、弥生といると、よく笑った。
テレビや週刊誌で見せるような冷笑じみたものではなく、自然に、心から零れるように。
――一緒にいるときに笑ってくれたのは、嬉しかったから……幸せだったからではなかったの?
自分だけが嬉しかったのだろうか。
一輝は、ただ、自分に合わせてくれていただけなのだろうか。彼は優しいから、そうだったのかもしれない。本当は、こんな子どもっぽい自分に付き合うのはうんざりしていたのかも。
弥生には、もう何が何だか解らない。
数日前までは、一輝に会ってあんなに楽しかったのに、今は会うのが怖かった。
それなのに。
玄関を出て、送りの車に乗ろうとした時。
「弥生さん!」
弥生は、一番聞きたくて、一番聞きたくない声に呼び止められた。
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