大事なあなた

トウリン

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眠り姫の起こし方

プロローグ

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 弟みたいな子だと思ってた。

 まだ子どもなのに、知らない間に我慢して。
 とっても賢いのに、何も知らなくて。
 たくさんのものを持っているのに、幸せそうには見えなくて。

 もっともっと、色々なことを教えてあげたくなった。

 楽しい事も、嬉しい事も。

 段々と、柔らかくなっていくところを見るのは、嬉しかった。

 もっと、幸せになって欲しいと思った。

 ――やっぱり、弟みたいな子だと思っていて。

 でも、あの時。

 まだ子どもだと思っていた腕に抱き締められて。

 彼の腕は細いのに力強くて、堪えていたものが抑えきれなくなった。

 頬に、唇が触れて。

 わたしの中で、何かがざわめいた。

 けれど、わたしは、今のままがいい。

 ――変わってしまうのは、怖い。

 何故なら――
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