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Ⅲ:捨てられ王子の綺羅星
橋渡し:予想外の展開
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道を決めたなら、後は進むだけだった。
アレッサンドロは決心が揺らがぬうちにと、ステラと兄をディアスタ村へ送ると決めたその日のうちにジーノとの面会を取り付けた。
「お前から会いたいと言ってくれるなど、珍しいことだね」
昼食後、ジーノの私室に足を踏み入れたアレッサンドロを、穏やかな声が迎える。
兄の私室に入るのは、この八年間で初めてだ。想像していたよりも質素な室内を、アレッサンドロは意外に思った。財政難から廊下などの装飾品は必要最低限に整理したが、ジーノの私物には特に何も指示を出していないのだ。
「で、何の用だい? 必要がなければ、お前は私のところになど来ないだろう?」
苦笑混じりの兄のその言葉にニコリともせず、アレッサンドロは用件を切り出す。
「最近、体調がよろしいようですね」
「ん? ああ、そうだね。お前が尽力してくれたからね。あとはステラのお陰でもあるかな」
そう言って微笑んだジーノから、アレッサンドロは眼を逸らした。今の彼の台詞の中に特別な感情が含まれているのかは、判らない。だが、少なくとも、『弟の恩人』という間接的なつながり以上があることは、確かなのだろう。
ステラを遠ざけようと決めたのは彼自身だというのに、胸の奥がジリジリと焦げるようだ。
その不快な炎を押し潰そうと、アレッサンドロはゆっくりと息を吐き出した。
消え去りはしないが、耐えられる程度には、小さくなったか。
取り敢えず、ジーノの方から彼女の名前を出してくれたことで生まれた話の接ぎ穂を回収する。
「兄上は彼女のことをどう思っているんですか」
余計な前置きはせず硬い口調で訊いたアレッサンドロに、ジーノが軽く眉を上げる。
「彼女? ステラかい?」
今の話の流れで他に誰がいるというのか。
アレッサンドロはムッツリと頷く。
「はい」
「そうだな……可愛い子だね。それに温かくて優しい」
そんなありきたりで判りきったことを聞きたいのではない。
と、アレッサンドロの不満そうな顔に気付いたのか、ジーノが小さく笑った。そして、その笑みを消して続ける。
「彼女は世話焼きだが、そうすることで自分の居場所を保っているように感じられる時があるね。もちろん、人の役に立つこと自体が好きなのは確かだろうが、同じくらい、他者から求められることを求めているようにも見える――まるで、生きる為にソレがなければならないように、ね」
ジーノの口から淡々と語られたステラ像に、アレッサンドロは唇を引き結ぶ。
(生きる為に、他者から求められることを求めている、だと……?)
アレッサンドロは、彼女のことをそんなふうに見たことは、なかった。
いつも朗らかに笑っていて、満ち足りていて、他者から何かを得る必要などない人だと、思っていた。
(兄上の方が、彼女のことを理解しているのか?)
そんなことはない、と断言したかった。
兄よりも、自分の方がステラのことを解っているのだと。
だが、できなかった。
教会にいた頃の、常に子どもたちに取り囲まれていたステラの姿が脳裏によみがえる。
彼らの世話をすることを、彼女は楽しんでいたと思う。
しかし、世話をすることそのものを喜びとしていたのか、それとも、世話をすることで神父や子どもたちに感謝され慕われることを喜びとしていたのか、そのどちらが彼女にとってより重みがあるものなのかは、アレッサンドロには判らなかった。
(もしも、感謝されることがステラの存在意義となっているのなら、それは彼女にとって良いことなのか? 彼女が幸せなら、それでも良いのか?)
仮にステラがそれでも幸せなのだと答えたとしても、本当に、それは純然たる彼女の幸せだと言えるのだろうか。
ステラ自身が、それが自分の幸せなのだと思い込んでいるということはないのだろうか。
判らない。
当惑の眼差しを兄に向けると、ジーノは深みを見通すような眼差しをアレッサンドロに向けていた。その視線に胸の底に隠そうとしているものを暴かれてしまいそうな気がして、彼は目を逸らす。
床の模様を見据えながら、アレッサンドロはジーノの言葉の裏にあるものに思いを巡らせた。
ジーノがそんな考えに至ったのは、ステラのことをより深く理解しようとしたからに違いない。人が人を理解したいと思うのは、相手に特別な感情を抱いているからだ。
つまり――
「兄上は、ステラのことを――好いて、おられるのですか」
束の間言い淀んだアレッサンドロには気付かぬ様子で、ジーノは軽く首をかしげる。
「まあ、そうだね」
それは、重さのない肯定だった。
兄の目は静かな湖面のようで、『好きだ』という言葉に格別な感情が込められているようには思えない。だが、元々、ジーノは真意を読み取らせない男なのだ。穏やかな顔の下に隠しているものを、アレッサンドロは見抜くことができない。
アレッサンドロはうつむき奥歯を食いしばる。
「彼女には、幸せであって欲しいんだ」
「そうだね、私もそう思うよ」
頷いたジーノに、アレッサンドロは口早に畳みかける。ここに来るまでに何度も頭の中でそらんじてきた台詞だ。
「彼女は、ここにいるよりもディアスタ村に帰った方がいい。あそこは静かなところだから、兄上のお身体にも良い。療養の為にステラと一緒に行かれてはどうかと思う」
「まあ、そうかもしれないが……お前は?」
不意に投げられた問いかけに、アレッサンドロは突かれたように顔を上げる。
「え?」
アレッサンドロとよく似たジーノの深い青の瞳が、ヒタと据えられていた。
「お前は、ステラと離れてもいいのかい? 再び彼女を手放すことになっても? ……彼女と結ばれたいとは、思わないのかい?」
最後の問いに、アレッサンドロはグッと拳を握り締めた。
この人は、何を馬鹿げたことを言い出すのか。
「ステラは平民だ」
食いしばった歯の隙間から、それだけ絞り出した。
平民の身で王の子どもを産むことになった者の末路を、アレッサンドロは嫌というほど知っている。
ステラが同じような目に遭うなど、想像すらしたくない。
と、彼のその心中を読み取ったかのように、ジーノは微笑んだ。
「実質、今はお前が王なんだ。あの時のようなことは二度と起きないよ。お前には、彼女を守れるだけの力がある……私とは違って」
きっぱりと告げ、彼は肩をすくめる。
「確かにステラは平民で孤児で有力者の後ろ盾もない。だが、本当に、血筋なんてどうでもいいものだよ。ある意味母上のお陰でもあるのかな、上に立つ者は血統よりも人柄と能力の方を重視すべきだという空気になっているしね」
そう言って、ジーノは自嘲混じりの笑みを浮かべた。
「私をご覧。血筋ばかりを大事にして、王としての役割を果たせぬ身体に生まれ付いた。由緒正しい貴族である母上は王冠にばかり目が行って、王が何を為す者なのかなど、まるで考えはしなかった。お前が王として立つようになってからの五年ほどの間に成し遂げたことに、皆、救われた。お前が望むことに否と言う者はいないよ」
だから、望むものに手を伸ばせばいい――言葉でも眼差しでも、ジーノがそう告げてくる。
今日はこんな話をするはずではなかった。
むしろ、これとは真逆の話をするはずだったのに。
アレッサンドロはまるで蜘蛛の糸に囚われた羽虫のような心持ちになる。
「ステラの幸せは、ここにはない。ステラにとっての幸せはもっと平凡なものなんだ。振り向けば大事な人がすぐに目に飛び込んでくるような小さな家で、子どもたちと笑い合って……そういうのが、彼女の幸せなんだ」
かろうじて絞り出したその台詞を、ジーノが笑う。
「それは、ステラ自身が言った望みか? 彼女が、そう望んだか?」
問われて、アレッサンドロは返事に詰まる。この部屋に入る前であれば、何ら疑うことなくそうだと答えていただろう。
だが、ジーノから見たステラの姿を聞かされて、その確信が揺らいでいた。
耐え切れず、アレッサンドロは鏡に映った自身の瞳のような青い目から、視線を逸らす。
「……彼女の幸せは、お前が定義できるものではないよ」
静かに告げられたその言葉に、アレッサンドロは抗することができなかった。
アレッサンドロは決心が揺らがぬうちにと、ステラと兄をディアスタ村へ送ると決めたその日のうちにジーノとの面会を取り付けた。
「お前から会いたいと言ってくれるなど、珍しいことだね」
昼食後、ジーノの私室に足を踏み入れたアレッサンドロを、穏やかな声が迎える。
兄の私室に入るのは、この八年間で初めてだ。想像していたよりも質素な室内を、アレッサンドロは意外に思った。財政難から廊下などの装飾品は必要最低限に整理したが、ジーノの私物には特に何も指示を出していないのだ。
「で、何の用だい? 必要がなければ、お前は私のところになど来ないだろう?」
苦笑混じりの兄のその言葉にニコリともせず、アレッサンドロは用件を切り出す。
「最近、体調がよろしいようですね」
「ん? ああ、そうだね。お前が尽力してくれたからね。あとはステラのお陰でもあるかな」
そう言って微笑んだジーノから、アレッサンドロは眼を逸らした。今の彼の台詞の中に特別な感情が含まれているのかは、判らない。だが、少なくとも、『弟の恩人』という間接的なつながり以上があることは、確かなのだろう。
ステラを遠ざけようと決めたのは彼自身だというのに、胸の奥がジリジリと焦げるようだ。
その不快な炎を押し潰そうと、アレッサンドロはゆっくりと息を吐き出した。
消え去りはしないが、耐えられる程度には、小さくなったか。
取り敢えず、ジーノの方から彼女の名前を出してくれたことで生まれた話の接ぎ穂を回収する。
「兄上は彼女のことをどう思っているんですか」
余計な前置きはせず硬い口調で訊いたアレッサンドロに、ジーノが軽く眉を上げる。
「彼女? ステラかい?」
今の話の流れで他に誰がいるというのか。
アレッサンドロはムッツリと頷く。
「はい」
「そうだな……可愛い子だね。それに温かくて優しい」
そんなありきたりで判りきったことを聞きたいのではない。
と、アレッサンドロの不満そうな顔に気付いたのか、ジーノが小さく笑った。そして、その笑みを消して続ける。
「彼女は世話焼きだが、そうすることで自分の居場所を保っているように感じられる時があるね。もちろん、人の役に立つこと自体が好きなのは確かだろうが、同じくらい、他者から求められることを求めているようにも見える――まるで、生きる為にソレがなければならないように、ね」
ジーノの口から淡々と語られたステラ像に、アレッサンドロは唇を引き結ぶ。
(生きる為に、他者から求められることを求めている、だと……?)
アレッサンドロは、彼女のことをそんなふうに見たことは、なかった。
いつも朗らかに笑っていて、満ち足りていて、他者から何かを得る必要などない人だと、思っていた。
(兄上の方が、彼女のことを理解しているのか?)
そんなことはない、と断言したかった。
兄よりも、自分の方がステラのことを解っているのだと。
だが、できなかった。
教会にいた頃の、常に子どもたちに取り囲まれていたステラの姿が脳裏によみがえる。
彼らの世話をすることを、彼女は楽しんでいたと思う。
しかし、世話をすることそのものを喜びとしていたのか、それとも、世話をすることで神父や子どもたちに感謝され慕われることを喜びとしていたのか、そのどちらが彼女にとってより重みがあるものなのかは、アレッサンドロには判らなかった。
(もしも、感謝されることがステラの存在意義となっているのなら、それは彼女にとって良いことなのか? 彼女が幸せなら、それでも良いのか?)
仮にステラがそれでも幸せなのだと答えたとしても、本当に、それは純然たる彼女の幸せだと言えるのだろうか。
ステラ自身が、それが自分の幸せなのだと思い込んでいるということはないのだろうか。
判らない。
当惑の眼差しを兄に向けると、ジーノは深みを見通すような眼差しをアレッサンドロに向けていた。その視線に胸の底に隠そうとしているものを暴かれてしまいそうな気がして、彼は目を逸らす。
床の模様を見据えながら、アレッサンドロはジーノの言葉の裏にあるものに思いを巡らせた。
ジーノがそんな考えに至ったのは、ステラのことをより深く理解しようとしたからに違いない。人が人を理解したいと思うのは、相手に特別な感情を抱いているからだ。
つまり――
「兄上は、ステラのことを――好いて、おられるのですか」
束の間言い淀んだアレッサンドロには気付かぬ様子で、ジーノは軽く首をかしげる。
「まあ、そうだね」
それは、重さのない肯定だった。
兄の目は静かな湖面のようで、『好きだ』という言葉に格別な感情が込められているようには思えない。だが、元々、ジーノは真意を読み取らせない男なのだ。穏やかな顔の下に隠しているものを、アレッサンドロは見抜くことができない。
アレッサンドロはうつむき奥歯を食いしばる。
「彼女には、幸せであって欲しいんだ」
「そうだね、私もそう思うよ」
頷いたジーノに、アレッサンドロは口早に畳みかける。ここに来るまでに何度も頭の中でそらんじてきた台詞だ。
「彼女は、ここにいるよりもディアスタ村に帰った方がいい。あそこは静かなところだから、兄上のお身体にも良い。療養の為にステラと一緒に行かれてはどうかと思う」
「まあ、そうかもしれないが……お前は?」
不意に投げられた問いかけに、アレッサンドロは突かれたように顔を上げる。
「え?」
アレッサンドロとよく似たジーノの深い青の瞳が、ヒタと据えられていた。
「お前は、ステラと離れてもいいのかい? 再び彼女を手放すことになっても? ……彼女と結ばれたいとは、思わないのかい?」
最後の問いに、アレッサンドロはグッと拳を握り締めた。
この人は、何を馬鹿げたことを言い出すのか。
「ステラは平民だ」
食いしばった歯の隙間から、それだけ絞り出した。
平民の身で王の子どもを産むことになった者の末路を、アレッサンドロは嫌というほど知っている。
ステラが同じような目に遭うなど、想像すらしたくない。
と、彼のその心中を読み取ったかのように、ジーノは微笑んだ。
「実質、今はお前が王なんだ。あの時のようなことは二度と起きないよ。お前には、彼女を守れるだけの力がある……私とは違って」
きっぱりと告げ、彼は肩をすくめる。
「確かにステラは平民で孤児で有力者の後ろ盾もない。だが、本当に、血筋なんてどうでもいいものだよ。ある意味母上のお陰でもあるのかな、上に立つ者は血統よりも人柄と能力の方を重視すべきだという空気になっているしね」
そう言って、ジーノは自嘲混じりの笑みを浮かべた。
「私をご覧。血筋ばかりを大事にして、王としての役割を果たせぬ身体に生まれ付いた。由緒正しい貴族である母上は王冠にばかり目が行って、王が何を為す者なのかなど、まるで考えはしなかった。お前が王として立つようになってからの五年ほどの間に成し遂げたことに、皆、救われた。お前が望むことに否と言う者はいないよ」
だから、望むものに手を伸ばせばいい――言葉でも眼差しでも、ジーノがそう告げてくる。
今日はこんな話をするはずではなかった。
むしろ、これとは真逆の話をするはずだったのに。
アレッサンドロはまるで蜘蛛の糸に囚われた羽虫のような心持ちになる。
「ステラの幸せは、ここにはない。ステラにとっての幸せはもっと平凡なものなんだ。振り向けば大事な人がすぐに目に飛び込んでくるような小さな家で、子どもたちと笑い合って……そういうのが、彼女の幸せなんだ」
かろうじて絞り出したその台詞を、ジーノが笑う。
「それは、ステラ自身が言った望みか? 彼女が、そう望んだか?」
問われて、アレッサンドロは返事に詰まる。この部屋に入る前であれば、何ら疑うことなくそうだと答えていただろう。
だが、ジーノから見たステラの姿を聞かされて、その確信が揺らいでいた。
耐え切れず、アレッサンドロは鏡に映った自身の瞳のような青い目から、視線を逸らす。
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