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Ⅲ:捨てられ王子の綺羅星
ディアスタ村にて:報せ
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ステラは、もう何度読み直したか判らない文に、もう一度、目を走らせた。
アレッサンドロが金色の馬車に乗って行ってしまってから、八年。
その間、都からの荷が届く度、ステラは彼への手紙を御者に委ねていた。けれども、その手紙に彼からの返事がよこされたことは、無かったのだ。八年間、一度も。
なのに。
今、ステラの手の中にある一枚の便箋は、今日到着した定期便の御者から渡されたものだった。
「ステラ?」
文を手にして立ち尽くしていたステラに、穏やかな声がかけられる。コラーノ神父だ。
「神父さま……」
ステラは便箋に注いでいた当惑の眼差しをそのままコラーノ神父に向けた。彼はステラの手元をチラリと見遣る。
「それはアレッサンドロからの手紙だろう?」
「はい」
「何か良くないことでも書いてあったのかい?」
訊ねたコラーノ神父の温かな微笑みが曇った。優しい神父を心配させてしまったことに気付いて、ステラは慌ててかぶりを振る。
「あ、いいえ、そうじゃないんです。そうじゃなくて――あの、王都に来て欲しいって、あって……」
「王都に?」
「はい」
頷きながら、ステラは手紙を神父に差し出した。彼は受け取ったそれに目を通し、眉をひそめる。呼吸三回分ほどのわずかな時間で、ステラ同様少なくとも三度はそこに書かれた文章を読み返したはずだ――その時間で、三度は読み返せるほど短い一文が記されているだけなのだ。
「ええと、これだけかい?」
そう訊ねてきた神父の気持ちはよく理解できる。最初に読んだとき、ステラもそう思ってしまったから。
手紙には、七日後に着く馬車で王都に赴くようにとだけあったのだ。アレッサンドロが元気だとも、教会の皆は元気かとも書かれておらずに、一方的に命じる語調で。
「これは、アレックスが書いたものではないのでしょうか」
もしかしたら、と思った。
こんなふうな物言いは、ステラの知るアレッサンドロらしくなかったから。
「押されている紋章は、確かにあの子を迎えに来たお家のものだよ。馬車にも同じものがあったしね」
コラーノ神父は便箋を矯めつ眇めつしてから答え、視線を落とした。思案に沈む彼に、ステラは明るさを装って笑う。
「でも、こんな急に呼ばれても、子どもたちがいますし、迎えに来ちゃった人には申し訳ないですけど、お断りしますね」
口早にそう言って手紙をたたもうとしたステラの手を、コラーノ神父がそっと押さえた。
「神父さま?」
「行ってらっしゃい」
聞こえたその一言に、ステラは眉根を寄せる。
「え?」
コラーノ神父はいつもの優しい微笑みを浮かべ、繰り返す。
「行ってらっしゃい。これは良い機会かもしれないよ」
「だけど、子どもたちの世話が――」
「アレッサンドロのお陰で大きな子どもたちを残せるようになったし、確かにステラのようにはできないかもしれないけれど、何、皆が少しずつでも助け合ったら大丈夫だよ」
だから行きなさい、と続けたコラーノ神父を、ステラは大きく目を見開いて見上げた。両手を、胸の前で固く握り合わせる。
「で、でも……」
こんなに急に自分がいなくなっても構わないのだろうか。
王都ラムバルディアまで行ったら、とんぼ返りでも半月はかかる。その間、ステラがいなくても大丈夫だと、子どもたちだけでもやっていけるのだと、神父は言っている。
――つまり、ここにはもう自分は必要ないということなのだろうか。
確かに、今は十歳をいくつか越えた子も数人いて、以前のように幼い子どもばかりというわけではない。年上の子が下の子の面倒を見たりもしている。
けれど、子どもたちの世話をすることは、コラーノ神父の手助けをすることは、ステラの人生の大半を占めていた。存在意義だとさえ言えるかもしれない。
それを要らないと言われると、ステラは、自分の居場所を失ってしまうような不安に襲われる。
(そんなの……)
うつむいたステラの頬に、コラーノ神父の温かな手が添えられた。
「ステラ」
目だけを上げると、神父の穏やかな眼差しと行き合う。彼はステラの目を覗き込むようにして視線を合わせ、深みのある声で告げる。
「お前はここに必要な存在だよ」
ステラの不安を見抜いた言葉に、不意に、目の奥が熱くなった。
「神父さま」
瞬きをいくつかしたステラにコラーノ神父が微笑み、優しく彼女の頬を叩く。
「お前はここに必要だよ。だけどね、これは良い機会だと思う」
再び神父が口にしたその言葉に、ステラは眉根を寄せる。
「良い、機会?」
「そうだ」
頷き、神父はステラの頬に添えていた手を下ろし、彼女の両肩に置いた。
「行ってきなさい、ステラ。このままでは、お前の人生はここで私を助けるだけで終わってしまう」
静かな声でのその言葉で、ステラはハッと顔を上げる。
「わたしはそれでもいいんです。そうしたいんです」
「それは、お前が他を知らないからだよ。私がお前に甘えたばかりに、お前をここに縛り付けてしまったからだ」
「そんなこと――」
「あるんだよ。本当は、他の子らと同じように、お前も村にやるべきだった」
「わたしは好きでここに残ったんです」
声を上げたステラに、コラーノ神父は宥めるように微笑んだ。
「そうだね。だから、私の方から行きなさいと言うべきだったのだよ。ずいぶんと遅れてしまったが、今からでも、まだ遅くはない。もっと広い世界を見て来なさい。見て、それでもここが良いと言うのなら、ここに戻ってきたらいい」
穏やかに、だが、確固たる口調で説く彼の台詞に、ステラは既視感を覚える。
(わたしも、同じことを言ってアレックスを送り出した)
あの時、ステラは、アレッサンドロの幸せだけを考えていた。アレッサンドロと一緒にいたかったけれども、彼により良いようにと思って、兄の元へ赴くよう促したのだ。
ステラはコラーノ神父の目を見上げる。そして、そこに浮かんでいるものに気付き、思った。
(神父さまも、同じなんだ)
コラーノ神父は、ステラのことを想って、言ってくれている。それが、彼の眼差しからも、肩に置かれた大きな手からも、それがヒシヒシと伝わってくる。
けれど、コラーノ神父が自分の為を想って言ってくれているということが判っても、やっぱり、すぐには頷けない。
(あの時、アレックスもこんな気持ちだったのかな)
だったら、彼はあの時どんな気持ちで「行く」と答えたのだろう。
ステラは目を伏せ、唇を噛んだ。
「……少し、考えさせてください」
「まだ迎えが来るまで日があるから、焦らず、自分が一番したいようにしなさい」
コラーノ神父はそう言うと、励ますようにステラの肩を叩いてから去っていった。
アレッサンドロが金色の馬車に乗って行ってしまってから、八年。
その間、都からの荷が届く度、ステラは彼への手紙を御者に委ねていた。けれども、その手紙に彼からの返事がよこされたことは、無かったのだ。八年間、一度も。
なのに。
今、ステラの手の中にある一枚の便箋は、今日到着した定期便の御者から渡されたものだった。
「ステラ?」
文を手にして立ち尽くしていたステラに、穏やかな声がかけられる。コラーノ神父だ。
「神父さま……」
ステラは便箋に注いでいた当惑の眼差しをそのままコラーノ神父に向けた。彼はステラの手元をチラリと見遣る。
「それはアレッサンドロからの手紙だろう?」
「はい」
「何か良くないことでも書いてあったのかい?」
訊ねたコラーノ神父の温かな微笑みが曇った。優しい神父を心配させてしまったことに気付いて、ステラは慌ててかぶりを振る。
「あ、いいえ、そうじゃないんです。そうじゃなくて――あの、王都に来て欲しいって、あって……」
「王都に?」
「はい」
頷きながら、ステラは手紙を神父に差し出した。彼は受け取ったそれに目を通し、眉をひそめる。呼吸三回分ほどのわずかな時間で、ステラ同様少なくとも三度はそこに書かれた文章を読み返したはずだ――その時間で、三度は読み返せるほど短い一文が記されているだけなのだ。
「ええと、これだけかい?」
そう訊ねてきた神父の気持ちはよく理解できる。最初に読んだとき、ステラもそう思ってしまったから。
手紙には、七日後に着く馬車で王都に赴くようにとだけあったのだ。アレッサンドロが元気だとも、教会の皆は元気かとも書かれておらずに、一方的に命じる語調で。
「これは、アレックスが書いたものではないのでしょうか」
もしかしたら、と思った。
こんなふうな物言いは、ステラの知るアレッサンドロらしくなかったから。
「押されている紋章は、確かにあの子を迎えに来たお家のものだよ。馬車にも同じものがあったしね」
コラーノ神父は便箋を矯めつ眇めつしてから答え、視線を落とした。思案に沈む彼に、ステラは明るさを装って笑う。
「でも、こんな急に呼ばれても、子どもたちがいますし、迎えに来ちゃった人には申し訳ないですけど、お断りしますね」
口早にそう言って手紙をたたもうとしたステラの手を、コラーノ神父がそっと押さえた。
「神父さま?」
「行ってらっしゃい」
聞こえたその一言に、ステラは眉根を寄せる。
「え?」
コラーノ神父はいつもの優しい微笑みを浮かべ、繰り返す。
「行ってらっしゃい。これは良い機会かもしれないよ」
「だけど、子どもたちの世話が――」
「アレッサンドロのお陰で大きな子どもたちを残せるようになったし、確かにステラのようにはできないかもしれないけれど、何、皆が少しずつでも助け合ったら大丈夫だよ」
だから行きなさい、と続けたコラーノ神父を、ステラは大きく目を見開いて見上げた。両手を、胸の前で固く握り合わせる。
「で、でも……」
こんなに急に自分がいなくなっても構わないのだろうか。
王都ラムバルディアまで行ったら、とんぼ返りでも半月はかかる。その間、ステラがいなくても大丈夫だと、子どもたちだけでもやっていけるのだと、神父は言っている。
――つまり、ここにはもう自分は必要ないということなのだろうか。
確かに、今は十歳をいくつか越えた子も数人いて、以前のように幼い子どもばかりというわけではない。年上の子が下の子の面倒を見たりもしている。
けれど、子どもたちの世話をすることは、コラーノ神父の手助けをすることは、ステラの人生の大半を占めていた。存在意義だとさえ言えるかもしれない。
それを要らないと言われると、ステラは、自分の居場所を失ってしまうような不安に襲われる。
(そんなの……)
うつむいたステラの頬に、コラーノ神父の温かな手が添えられた。
「ステラ」
目だけを上げると、神父の穏やかな眼差しと行き合う。彼はステラの目を覗き込むようにして視線を合わせ、深みのある声で告げる。
「お前はここに必要な存在だよ」
ステラの不安を見抜いた言葉に、不意に、目の奥が熱くなった。
「神父さま」
瞬きをいくつかしたステラにコラーノ神父が微笑み、優しく彼女の頬を叩く。
「お前はここに必要だよ。だけどね、これは良い機会だと思う」
再び神父が口にしたその言葉に、ステラは眉根を寄せる。
「良い、機会?」
「そうだ」
頷き、神父はステラの頬に添えていた手を下ろし、彼女の両肩に置いた。
「行ってきなさい、ステラ。このままでは、お前の人生はここで私を助けるだけで終わってしまう」
静かな声でのその言葉で、ステラはハッと顔を上げる。
「わたしはそれでもいいんです。そうしたいんです」
「それは、お前が他を知らないからだよ。私がお前に甘えたばかりに、お前をここに縛り付けてしまったからだ」
「そんなこと――」
「あるんだよ。本当は、他の子らと同じように、お前も村にやるべきだった」
「わたしは好きでここに残ったんです」
声を上げたステラに、コラーノ神父は宥めるように微笑んだ。
「そうだね。だから、私の方から行きなさいと言うべきだったのだよ。ずいぶんと遅れてしまったが、今からでも、まだ遅くはない。もっと広い世界を見て来なさい。見て、それでもここが良いと言うのなら、ここに戻ってきたらいい」
穏やかに、だが、確固たる口調で説く彼の台詞に、ステラは既視感を覚える。
(わたしも、同じことを言ってアレックスを送り出した)
あの時、ステラは、アレッサンドロの幸せだけを考えていた。アレッサンドロと一緒にいたかったけれども、彼により良いようにと思って、兄の元へ赴くよう促したのだ。
ステラはコラーノ神父の目を見上げる。そして、そこに浮かんでいるものに気付き、思った。
(神父さまも、同じなんだ)
コラーノ神父は、ステラのことを想って、言ってくれている。それが、彼の眼差しからも、肩に置かれた大きな手からも、それがヒシヒシと伝わってくる。
けれど、コラーノ神父が自分の為を想って言ってくれているということが判っても、やっぱり、すぐには頷けない。
(あの時、アレックスもこんな気持ちだったのかな)
だったら、彼はあの時どんな気持ちで「行く」と答えたのだろう。
ステラは目を伏せ、唇を噛んだ。
「……少し、考えさせてください」
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