君が目覚めるその時に

トウリン

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君の目覚めを待ちながら-1

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 ここは、どこだろう。
 周りを見回しても真っ暗で、自分が目を開けているのか、それとも閉じているのかも、判らない。
 もしかしたら、暗いのでもないのかもしれない。
 ただ、何もなくて、視線を下げても自分の身体も見えなかった。
 その空間に全てが溶けてしまったかのように、何もない。
 とにかく、とても、心地良かった。
 苦しさも痛みも不安もなくて、手足指の先まで力が抜けて、ふわふわとたゆたっている。

 ――終わったのかな。

 もう、あの重い肉体から解放されたのだろうか。
 もう、頑張らなくてもいいのだろうか。

 その問いに答える声は無い。
 そこには、彼女しかいなかったから。
 誰もいない、何もない、ただ心地良いだけの空間で、このまま眠って、眠って、眠り続ける。
 それは、堪らない誘惑。
 何もかも放り出してそこに浸ってしまえば、きっと、終わりという名の解放を手に入れることができる。
 苦しみも、痛みも、不安も、喜びも、愛しさも、全て放り出してしまえば。

 けれど。

 ――本当に、そうしたい?

 小さな声が、囁いた。
 あなたは本当にそれを望むの? と。
 問いかけられても、彼女には判らなかった。
 ただ今は、休んでいたかった。何もかも忘れて、安らぎに満ちたこの空間に身を任せていたかった。
 だから、彼女は、考えることを放棄する。
 
 そうしてひっそりと吐息をこぼして、深みへと潜り込んでいった。
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