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知ってしまった孤独と寂しさ
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サンドウィッチとスープをのせた台車を押して、フラウは足取り重くアストールがいる書斎に向かう。
扉の前まで来ると、フラウは小さな深呼吸を一つしてから息を吸い込んだ。
「アストールさま?」
呼び掛けに、返事はない。
フラウは少し待ってから、そっと書斎の扉を叩いた。
が、それに応える声もない。
アストールがその扉の奥にいることは確かなのだ。その証拠に、かすかな物音が、中から聞こえてきている。
「アストールさま、ここにお食事を置いておきますから、召し上がってくださいね?」
やっぱり、無言。
フラウは再びためいきを一つこぼした。
台車の上にあるのは、アストールの夕食だ。今日も食堂に姿を現してくれなかった彼のために、ブツブツ文句を言いながらゼスが作ってくれたものだ。
サンドウィッチは野菜とハムと卵を挟んである。すぐに食べてもらえるとは思っていないから、カボチャのスープは冷製だ。だいぶ冷え込みがきつくなってきたのだし、本当は、温かなものを身体に入れて欲しい。けれど、いつの間にか器が空になってはいるものの、一日三回運んでいる食事は、一刻以上放置されていることが殆どだった。
(ちょっとだけでいいから、お元気なところを見たいのに)
フラウはそっと扉に額を押し付けた。目蓋を閉じて、その向こうにいるはずのアストールの顔を思い浮かべる。
この二日ほど、アストールは食堂はおろか寝室にも姿を現していない。フラウがこの塔に来てからの十年間、ほとんど片時も離れることなく一緒にいたのに、この二日間はチラリと顔を見せてもくれないのだ。
たった二日アストールを見ていないというだけで、まるでぐずぐずの泥沼の上にいるようにフラウの足元はおぼつかないものになってしまっている。
(でも、どうしてなんだろう)
フラウは唇を噛む。
どうして、アストールは部屋から出てこなくなってしまったのか。
二日前――それはつまり、八百屋のカールが配達に来てくれた日から、だ。あの日あったことと言えば、思い当たることは一つしかない。
(やっぱり、あの花束のことが原因なのかな)
フラウは広げた両手をじっと見下ろした。
あの時、この手の中で突然弾けた花束。
あの時、その光景を目にしたアストールの顔からは、血の気が引いていた。
いつもの黒曜石のような輝きが失せた漆黒の瞳は、まるで深い虚《うろ》のようだった。
その虚の中から溢れんばかりに渦巻いていたものは、フラウの目には、『恐怖』に見えた。
彼は何をそんなに怖がっていたのだろう。
フラウの手を見つめて微動だにしなかったから、誰か、フラウとアストール以外の者がそれをしたとは思っていなかったはずだ。フラウたち以外の者がいると思ったなら、アストールは、警戒してとっさに周囲を見回していたはずだ。
それをしなかったということは。
(どうしてああなったのか、誰がしたのか、アストールさまは知っていたから?)
何か、アストールが考案した魔術具の調子がおかしくなったとか。
けれど、それなら、あんなに愕然とはしていなかったのではないだろうか。
あの時、アストールは、触れようとしたフラウから後ずさった。まるで、彼女に触れられることを恐れたかのように。
(じゃあ、わたしがやったの……?)
どうやってかは、さっぱりわからない。
けれど、もしかしたら。
フラウは胸の前で固く両手を握り締めた。
もしも、あんなふうに花束を散らしてしまったのがフラウの仕業だったのなら。
(わたしは、ここにいてはいけないのかもしれない)
そう思った瞬間、フラウの全身が冷えた。まるで、氷が浮かぶ淵に飛び込んだかのように。
そんなのは嫌だと、心の底から思った。そんなのは耐えられない、と。
けれど、もしもフラウが無自覚で花束を粉々にしてしまうようなことをしてしまうのならば、アストールの傍にいるわけにはいかないだろう。そんな危険なものを、彼の近くに置いておくわけにはいかない。
(でも、わたしは……)
視界が滲んで、フラウは目をこする。
と、その時。
「フラウ?」
気づかわしげな声が、かかった。
びくりと肩を震わせ振り返ると、眉をひそめたゼスがそこに立っていた。
「フラウ、泣いているのかい?」
ゼスは言い、食事がのった台車から閉ざされたままの扉へと視線を移し、ため息をつく。
「まったく、うちのお坊ちゃまは仕方ない人だよな」
ぼやいたゼスが歩み寄ってきて、握った拳で扉を叩こうとした。
「ゼスさん、ダメです、お邪魔しちゃ……」
「フラウ、アストール様を甘やかし過ぎたらいけないよ? 会いたいんだろ?」
「いえ、いいんです」
かぶりを振ったフラウを、ゼスが眉尻を下げて見下ろしてくる。彼は彼女の頭に手を伸ばしかけ、やめた。
申し訳なさそうな顔になったゼスに、フラウは微笑んだ。
フラウは二日間、一人で寝ている。つまり、アストールから魔力を受け取っていないということだ。今のフラウに触れたら、きっとゼスは倒れてしまうに違いない。
ゼスはフラウに微笑み返し、腰に手を当て軽い口調で言う。
「まあ、でも、ちょうど良かったんじゃないか? この年までアストール様の我が侭に付き合わせてしまったけど、君ももうそろそろ一人で寝る方がいいとか思ってたんじゃないのかい?」
「いいえ。わたしが一緒がいいと言ったので……」
「そりゃ、君が五歳の時だろ?」
「違います。十二歳の誕生日をお祝いしてくださったときです」
フラウの言葉にゼスが目を丸くする。
「本当かい?」
念を押すゼスに、フラウはこくりと頷いた。
フラウは、自分の生まれた日を知らない。だから、アストールは彼女がこの塔に来た日を『誕生日』にしてくれて、毎年ゼスと一緒に祝ってくれるようになったのだ。
アストールが彼と寝台を共にすることについてどうするか訊いてきたのは、フラウが塔に来て七年目のことだった。
「僕は昼も夜も君を傍に置いておきたい。君はどうしたい?」
誕生日の夜にそう問われ、フラウはひと欠片も迷うことなくずっと一緒がいいと答えたのだ。あの時、アストールは嬉しそうに笑って、フラウを抱き締めてくれたのに。
また、目の奥が熱くなってきた。
滲む涙を見せたくなくて顔を伏せたフラウに、小さなため息が降ってくる。
「まったく、あの人は……」
ゼスが呟き、フラウの前にしゃがみこんだ。
「もう寝なよ。どうせ、何か新しい魔術具でも作ってるんだろ」
彼が言う通り、ただそれだけのことなのかもしれない。今まで、どんなに研究に没頭していてもフラウを傍に置きたがっていたけれど、今回は、いつも以上に作業にのめり込んでいるだけなのかもしれない。
(そう、ならいいな)
微笑みながら「な?」と促すゼスに、フラウはこくりと頷いた。
フラウは頭の上に重い荷物をのせている気持で歩き出し、アストールが書斎から出てこなくなってから彼女が寝る場所になっている一階の使用人部屋へと向かった。
うなだれたままお仕着せを着替え、寝台に潜り込む。布団の中はゼスがくれた温石で温めておいたはずなのに、全然温かく感じられない。
フラウは毛布を精一杯きつく身体に巻き付けて、ギュッと縮こまった。
独りで寝るのは、こんなにも寒いものだっただろうか。
もしも、この塔を出て行くことになったら、フラウの息は止まってしまうかもしれない。
そんなことを思ったとき、ふと、記憶の断片が脳裏によみがえった。
轟が空気をふるわせる雷の夜。
風が壁を揺らす嵐の夜。
しんと静まり返った雪の夜。
――どんな時も、フラウは独りきりだった。
それは、その光景を上から眺めているような、どこか他人事のような『記憶』だ。そんなふうに独りでも、フラウは特に何も感じていなかった。つらいとも、寂しいとも。
なのに、今、こんなにも心許なく感じられるのは、きっと、アストールが与えてくれる温もりを知ってしまった後だからだ。
誰かが触れてくれる心地良さを知ることがなければ、どんな孤独でも平気でいられたのに。
与えられてから取り上げられるのは、とても、つらい。
「アストールさま……」
名前を呼んでも、今、その人は傍にいない。フラウが再び彼とまみえることができたのは、それから更に二日が過ぎた日の夜のことだった。
扉の前まで来ると、フラウは小さな深呼吸を一つしてから息を吸い込んだ。
「アストールさま?」
呼び掛けに、返事はない。
フラウは少し待ってから、そっと書斎の扉を叩いた。
が、それに応える声もない。
アストールがその扉の奥にいることは確かなのだ。その証拠に、かすかな物音が、中から聞こえてきている。
「アストールさま、ここにお食事を置いておきますから、召し上がってくださいね?」
やっぱり、無言。
フラウは再びためいきを一つこぼした。
台車の上にあるのは、アストールの夕食だ。今日も食堂に姿を現してくれなかった彼のために、ブツブツ文句を言いながらゼスが作ってくれたものだ。
サンドウィッチは野菜とハムと卵を挟んである。すぐに食べてもらえるとは思っていないから、カボチャのスープは冷製だ。だいぶ冷え込みがきつくなってきたのだし、本当は、温かなものを身体に入れて欲しい。けれど、いつの間にか器が空になってはいるものの、一日三回運んでいる食事は、一刻以上放置されていることが殆どだった。
(ちょっとだけでいいから、お元気なところを見たいのに)
フラウはそっと扉に額を押し付けた。目蓋を閉じて、その向こうにいるはずのアストールの顔を思い浮かべる。
この二日ほど、アストールは食堂はおろか寝室にも姿を現していない。フラウがこの塔に来てからの十年間、ほとんど片時も離れることなく一緒にいたのに、この二日間はチラリと顔を見せてもくれないのだ。
たった二日アストールを見ていないというだけで、まるでぐずぐずの泥沼の上にいるようにフラウの足元はおぼつかないものになってしまっている。
(でも、どうしてなんだろう)
フラウは唇を噛む。
どうして、アストールは部屋から出てこなくなってしまったのか。
二日前――それはつまり、八百屋のカールが配達に来てくれた日から、だ。あの日あったことと言えば、思い当たることは一つしかない。
(やっぱり、あの花束のことが原因なのかな)
フラウは広げた両手をじっと見下ろした。
あの時、この手の中で突然弾けた花束。
あの時、その光景を目にしたアストールの顔からは、血の気が引いていた。
いつもの黒曜石のような輝きが失せた漆黒の瞳は、まるで深い虚《うろ》のようだった。
その虚の中から溢れんばかりに渦巻いていたものは、フラウの目には、『恐怖』に見えた。
彼は何をそんなに怖がっていたのだろう。
フラウの手を見つめて微動だにしなかったから、誰か、フラウとアストール以外の者がそれをしたとは思っていなかったはずだ。フラウたち以外の者がいると思ったなら、アストールは、警戒してとっさに周囲を見回していたはずだ。
それをしなかったということは。
(どうしてああなったのか、誰がしたのか、アストールさまは知っていたから?)
何か、アストールが考案した魔術具の調子がおかしくなったとか。
けれど、それなら、あんなに愕然とはしていなかったのではないだろうか。
あの時、アストールは、触れようとしたフラウから後ずさった。まるで、彼女に触れられることを恐れたかのように。
(じゃあ、わたしがやったの……?)
どうやってかは、さっぱりわからない。
けれど、もしかしたら。
フラウは胸の前で固く両手を握り締めた。
もしも、あんなふうに花束を散らしてしまったのがフラウの仕業だったのなら。
(わたしは、ここにいてはいけないのかもしれない)
そう思った瞬間、フラウの全身が冷えた。まるで、氷が浮かぶ淵に飛び込んだかのように。
そんなのは嫌だと、心の底から思った。そんなのは耐えられない、と。
けれど、もしもフラウが無自覚で花束を粉々にしてしまうようなことをしてしまうのならば、アストールの傍にいるわけにはいかないだろう。そんな危険なものを、彼の近くに置いておくわけにはいかない。
(でも、わたしは……)
視界が滲んで、フラウは目をこする。
と、その時。
「フラウ?」
気づかわしげな声が、かかった。
びくりと肩を震わせ振り返ると、眉をひそめたゼスがそこに立っていた。
「フラウ、泣いているのかい?」
ゼスは言い、食事がのった台車から閉ざされたままの扉へと視線を移し、ため息をつく。
「まったく、うちのお坊ちゃまは仕方ない人だよな」
ぼやいたゼスが歩み寄ってきて、握った拳で扉を叩こうとした。
「ゼスさん、ダメです、お邪魔しちゃ……」
「フラウ、アストール様を甘やかし過ぎたらいけないよ? 会いたいんだろ?」
「いえ、いいんです」
かぶりを振ったフラウを、ゼスが眉尻を下げて見下ろしてくる。彼は彼女の頭に手を伸ばしかけ、やめた。
申し訳なさそうな顔になったゼスに、フラウは微笑んだ。
フラウは二日間、一人で寝ている。つまり、アストールから魔力を受け取っていないということだ。今のフラウに触れたら、きっとゼスは倒れてしまうに違いない。
ゼスはフラウに微笑み返し、腰に手を当て軽い口調で言う。
「まあ、でも、ちょうど良かったんじゃないか? この年までアストール様の我が侭に付き合わせてしまったけど、君ももうそろそろ一人で寝る方がいいとか思ってたんじゃないのかい?」
「いいえ。わたしが一緒がいいと言ったので……」
「そりゃ、君が五歳の時だろ?」
「違います。十二歳の誕生日をお祝いしてくださったときです」
フラウの言葉にゼスが目を丸くする。
「本当かい?」
念を押すゼスに、フラウはこくりと頷いた。
フラウは、自分の生まれた日を知らない。だから、アストールは彼女がこの塔に来た日を『誕生日』にしてくれて、毎年ゼスと一緒に祝ってくれるようになったのだ。
アストールが彼と寝台を共にすることについてどうするか訊いてきたのは、フラウが塔に来て七年目のことだった。
「僕は昼も夜も君を傍に置いておきたい。君はどうしたい?」
誕生日の夜にそう問われ、フラウはひと欠片も迷うことなくずっと一緒がいいと答えたのだ。あの時、アストールは嬉しそうに笑って、フラウを抱き締めてくれたのに。
また、目の奥が熱くなってきた。
滲む涙を見せたくなくて顔を伏せたフラウに、小さなため息が降ってくる。
「まったく、あの人は……」
ゼスが呟き、フラウの前にしゃがみこんだ。
「もう寝なよ。どうせ、何か新しい魔術具でも作ってるんだろ」
彼が言う通り、ただそれだけのことなのかもしれない。今まで、どんなに研究に没頭していてもフラウを傍に置きたがっていたけれど、今回は、いつも以上に作業にのめり込んでいるだけなのかもしれない。
(そう、ならいいな)
微笑みながら「な?」と促すゼスに、フラウはこくりと頷いた。
フラウは頭の上に重い荷物をのせている気持で歩き出し、アストールが書斎から出てこなくなってから彼女が寝る場所になっている一階の使用人部屋へと向かった。
うなだれたままお仕着せを着替え、寝台に潜り込む。布団の中はゼスがくれた温石で温めておいたはずなのに、全然温かく感じられない。
フラウは毛布を精一杯きつく身体に巻き付けて、ギュッと縮こまった。
独りで寝るのは、こんなにも寒いものだっただろうか。
もしも、この塔を出て行くことになったら、フラウの息は止まってしまうかもしれない。
そんなことを思ったとき、ふと、記憶の断片が脳裏によみがえった。
轟が空気をふるわせる雷の夜。
風が壁を揺らす嵐の夜。
しんと静まり返った雪の夜。
――どんな時も、フラウは独りきりだった。
それは、その光景を上から眺めているような、どこか他人事のような『記憶』だ。そんなふうに独りでも、フラウは特に何も感じていなかった。つらいとも、寂しいとも。
なのに、今、こんなにも心許なく感じられるのは、きっと、アストールが与えてくれる温もりを知ってしまった後だからだ。
誰かが触れてくれる心地良さを知ることがなければ、どんな孤独でも平気でいられたのに。
与えられてから取り上げられるのは、とても、つらい。
「アストールさま……」
名前を呼んでも、今、その人は傍にいない。フラウが再び彼とまみえることができたのは、それから更に二日が過ぎた日の夜のことだった。
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