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ツキヤ
手に入れたもの
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「ふ、ぅん、ッく」
ツキヤはシイナの奥深くに指を挿し入れたまま、ちらりと彼女の顔を見遣った。下腹をうねらせ彼の指を締め付けてくるのは、達した証だ。二本の指をゆっくり出し入れしてやると、そこはまた、キュンキュンとヒクついた。
シイナの真っ赤に染まった頬は、羞恥のためか、愉悦のためか。
もう三度はイかせたから、多分後者だろう。その証拠に、彼の視線に気づいて見返してきた彼女の目は、とろりと蕩け切って焦点が合っていない。
だが、そうやって快楽でドロドロに蕩けているにも拘らず、シイナは両手をきつく口元に押し付けて懸命に声をかみ殺していた。
ツキヤは感極まったシイナの声を聴きたいが、彼女こらえてしまう。きっと、隣がアサヒと暮らしている部屋だからだ。そこには今誰もいないのに、シイナは声が響くことを頑なに拒む。
本当は、シイナのためにも姉を完全に切り離した場で彼女を抱くべきなのだろう。だが、ツキヤは敢えて隣り合わせの自室を選んだ。
この形でシイナを手に入れたのはツキヤだけなのだという事実に驕っていたいからかもしれない。
あるいは、アサヒが立ち入ることもあるこの部屋で抱くことで、そして、すぐ隣に彼女たちが暮らす空間があるこの部屋で抱くことで、シイナに何かを刻み込みたいのかもしれない。
いずれにせよ、そこにあるのはツキヤの勝手さだけだ。彼自身、それを嫌というほど自覚している。
――もしかしたら、自虐も含んでいるのかもしれない。
「アサヒに黙っている代わりに、これからも君が欲しい」
あの雷の夜、そう告げたツキヤにシイナは大きく目を見開いた。
目の前にいるのは彼女の処女を無理矢理奪った男だというのに、そんな卑劣なことを言うわけがないと信じ切っていたかのように。
「え、でも……」
不安げに揺れる困惑の眼差しに、ツキヤは危うく彼女を抱き寄せそうになった。そうする代わりにソファから下り、服を整えた。
「俺がいいと言うまで君が俺に抱かれ続けるなら、アサヒには言わない」
もう一度そう言うと、シイナは絶句していた。虚ろになった彼女の眼差しが、未だにツキヤの胸に突き刺さって一向に褪せる気配がない。
だが、当然だろう。
多分、シイナは、ツキヤのことを兄か何かのように思っていたに違いないのだから。
その彼に襲われるとは頭をよぎったことすらなかっただろうし、悪びれもせず更に身体を要求してくるなど夢にも思わなかったに違いない。
だが、ツキヤはそうした。
彼のシイナに向ける想いは、兄が妹に向けるものとはほど遠かったから。
最近になってバイトを増やしたアサヒは、週に三日帰りが遅い。
その週三日、必ずシイナを彼の部屋に呼びつけ、抱いた。時間が許す、ギリギリまで。
(クソだな、俺は)
ツキヤは自らを嘲ると、頭を下げて和毛の茂みの中から慎ましく覗く充血しきった花芽に吸い付く。そうしながら、シイナの中の奥深くを曲げた指先でぐりぐりと抉ってやる。
刹那、彼女が楽なようにと尻の下においてやったクッションから浮き上がるほど、背が反り返った。
「ひ、ぁ」
逃げ出そうとしているかのように暴れ始めた腰を片腕で押さえ込んで、ツキヤは責め続ける。
快楽にうねるシイナの中はドロドロで、まさに汲めども尽きぬ蜜壺だ。
指に吸い付いてくる粘膜に、ツキヤは自分の昂ぶりがそこに包まれる時を想像してしまう。ズクリと脈打つ下腹部に急き立てられるようにして、彼は尖らせた舌で花芯をこすり上げた。
と、シイナの下肢がピンと突っ張る。
「ふ、く、……ひ、あぁん」
小さな悲鳴じみた声と共に彼女の内側がうねり、締め付け、次いでベッドの上に放り出されるように四肢が落ちた。
ツキヤは手を引き、滴る蜜を指から舐め取る。そうしながら痛いほどに張り詰めた彼自身で前触れなくシイナを貫いた。
「はぅ」
ずぶずぶと一気に奥まで突き進んでも、シイナの身体は何の抵抗もなく呑み込んでくれる――彼女のその心とは裏腹に。
華奢な身体を折りたたみ、上からのしかかるようにしてシイナの最奥を突き上げた。
彼女は自分の顔の両側に突かれた腕にすがりつき、あえかな声で訴える。
「あ、ぅ、ダメ、そこ、は……ぁ、あ」
ダメ、と言いつつ、喘ぎは甘い。
最初のうちは、そこまで侵すと痛みを覚えていたようだったが、今のシイナの喉から漏れるのは苦痛ではなく悦楽の声だ。
激しく突き上げ、シイナの中が蠢きだすとぴたりと止まる。
ややしてまた突き上げ、そして止まる。
達する直前に押し上げられては引き戻されてを繰り返すうち、シイナの喉からすすり泣きが漏れ始める。
ジッととどまり、彼女の内側の筋肉が彼をしゃぶるようにヒクつくのを味わうツキヤの肩にすがりつき、シイナは爪を立てる。
「も、やだ……おねがい、だからぁ」
涙混じりの、甘い声。
こんなとき、シイナは、自分が何を言っているか解っていない。
自分がツキヤを求めていることを、彼女を奪うことを彼にねだっていることを解っていない。
懇願する眼差しを注いでくるシイナに、ツキヤの中には暗い喜びが込み上げてくる。
シイナの頭と心はツキヤのことを受け入れていなくても、彼女の身体だけは彼のことを求めているのだ。
(何も手に入らないより、マシだ)
そうやって自らを欺き、ツキヤは求められるがままに唇を重ね、与えられるがままに貪る。
そして、それまでとは打って変わってゆっくりと、彼女の中の一番感じる場所を丹念にこすり上げる。
やがてシイナはいつ果てるとも知れぬ絶頂を迎え、ツキヤをきつく搾り上げてくるその中で、彼も果てる。
半ば失神した状態のシイナを胸の上に乗せ、汗に濡れた髪に頬を埋めて抱き締める。
シイナはツキヤに身体を預けるようにしてもたれかかってくるけれど、それは彼女が意図したことではない。それが解っていても、彼は彼女を放せなかった。この温もりを、今だけでも、自分だけのものにしていたかった。
だが。
ツキヤの中には常に不安が渦巻いている。
(いったい、これはいつまで続けられるんだ?)
力の限りに彼女を抱き締め自問したところで、答えは見つかるはずもなかった。
ツキヤはシイナの奥深くに指を挿し入れたまま、ちらりと彼女の顔を見遣った。下腹をうねらせ彼の指を締め付けてくるのは、達した証だ。二本の指をゆっくり出し入れしてやると、そこはまた、キュンキュンとヒクついた。
シイナの真っ赤に染まった頬は、羞恥のためか、愉悦のためか。
もう三度はイかせたから、多分後者だろう。その証拠に、彼の視線に気づいて見返してきた彼女の目は、とろりと蕩け切って焦点が合っていない。
だが、そうやって快楽でドロドロに蕩けているにも拘らず、シイナは両手をきつく口元に押し付けて懸命に声をかみ殺していた。
ツキヤは感極まったシイナの声を聴きたいが、彼女こらえてしまう。きっと、隣がアサヒと暮らしている部屋だからだ。そこには今誰もいないのに、シイナは声が響くことを頑なに拒む。
本当は、シイナのためにも姉を完全に切り離した場で彼女を抱くべきなのだろう。だが、ツキヤは敢えて隣り合わせの自室を選んだ。
この形でシイナを手に入れたのはツキヤだけなのだという事実に驕っていたいからかもしれない。
あるいは、アサヒが立ち入ることもあるこの部屋で抱くことで、そして、すぐ隣に彼女たちが暮らす空間があるこの部屋で抱くことで、シイナに何かを刻み込みたいのかもしれない。
いずれにせよ、そこにあるのはツキヤの勝手さだけだ。彼自身、それを嫌というほど自覚している。
――もしかしたら、自虐も含んでいるのかもしれない。
「アサヒに黙っている代わりに、これからも君が欲しい」
あの雷の夜、そう告げたツキヤにシイナは大きく目を見開いた。
目の前にいるのは彼女の処女を無理矢理奪った男だというのに、そんな卑劣なことを言うわけがないと信じ切っていたかのように。
「え、でも……」
不安げに揺れる困惑の眼差しに、ツキヤは危うく彼女を抱き寄せそうになった。そうする代わりにソファから下り、服を整えた。
「俺がいいと言うまで君が俺に抱かれ続けるなら、アサヒには言わない」
もう一度そう言うと、シイナは絶句していた。虚ろになった彼女の眼差しが、未だにツキヤの胸に突き刺さって一向に褪せる気配がない。
だが、当然だろう。
多分、シイナは、ツキヤのことを兄か何かのように思っていたに違いないのだから。
その彼に襲われるとは頭をよぎったことすらなかっただろうし、悪びれもせず更に身体を要求してくるなど夢にも思わなかったに違いない。
だが、ツキヤはそうした。
彼のシイナに向ける想いは、兄が妹に向けるものとはほど遠かったから。
最近になってバイトを増やしたアサヒは、週に三日帰りが遅い。
その週三日、必ずシイナを彼の部屋に呼びつけ、抱いた。時間が許す、ギリギリまで。
(クソだな、俺は)
ツキヤは自らを嘲ると、頭を下げて和毛の茂みの中から慎ましく覗く充血しきった花芽に吸い付く。そうしながら、シイナの中の奥深くを曲げた指先でぐりぐりと抉ってやる。
刹那、彼女が楽なようにと尻の下においてやったクッションから浮き上がるほど、背が反り返った。
「ひ、ぁ」
逃げ出そうとしているかのように暴れ始めた腰を片腕で押さえ込んで、ツキヤは責め続ける。
快楽にうねるシイナの中はドロドロで、まさに汲めども尽きぬ蜜壺だ。
指に吸い付いてくる粘膜に、ツキヤは自分の昂ぶりがそこに包まれる時を想像してしまう。ズクリと脈打つ下腹部に急き立てられるようにして、彼は尖らせた舌で花芯をこすり上げた。
と、シイナの下肢がピンと突っ張る。
「ふ、く、……ひ、あぁん」
小さな悲鳴じみた声と共に彼女の内側がうねり、締め付け、次いでベッドの上に放り出されるように四肢が落ちた。
ツキヤは手を引き、滴る蜜を指から舐め取る。そうしながら痛いほどに張り詰めた彼自身で前触れなくシイナを貫いた。
「はぅ」
ずぶずぶと一気に奥まで突き進んでも、シイナの身体は何の抵抗もなく呑み込んでくれる――彼女のその心とは裏腹に。
華奢な身体を折りたたみ、上からのしかかるようにしてシイナの最奥を突き上げた。
彼女は自分の顔の両側に突かれた腕にすがりつき、あえかな声で訴える。
「あ、ぅ、ダメ、そこ、は……ぁ、あ」
ダメ、と言いつつ、喘ぎは甘い。
最初のうちは、そこまで侵すと痛みを覚えていたようだったが、今のシイナの喉から漏れるのは苦痛ではなく悦楽の声だ。
激しく突き上げ、シイナの中が蠢きだすとぴたりと止まる。
ややしてまた突き上げ、そして止まる。
達する直前に押し上げられては引き戻されてを繰り返すうち、シイナの喉からすすり泣きが漏れ始める。
ジッととどまり、彼女の内側の筋肉が彼をしゃぶるようにヒクつくのを味わうツキヤの肩にすがりつき、シイナは爪を立てる。
「も、やだ……おねがい、だからぁ」
涙混じりの、甘い声。
こんなとき、シイナは、自分が何を言っているか解っていない。
自分がツキヤを求めていることを、彼女を奪うことを彼にねだっていることを解っていない。
懇願する眼差しを注いでくるシイナに、ツキヤの中には暗い喜びが込み上げてくる。
シイナの頭と心はツキヤのことを受け入れていなくても、彼女の身体だけは彼のことを求めているのだ。
(何も手に入らないより、マシだ)
そうやって自らを欺き、ツキヤは求められるがままに唇を重ね、与えられるがままに貪る。
そして、それまでとは打って変わってゆっくりと、彼女の中の一番感じる場所を丹念にこすり上げる。
やがてシイナはいつ果てるとも知れぬ絶頂を迎え、ツキヤをきつく搾り上げてくるその中で、彼も果てる。
半ば失神した状態のシイナを胸の上に乗せ、汗に濡れた髪に頬を埋めて抱き締める。
シイナはツキヤに身体を預けるようにしてもたれかかってくるけれど、それは彼女が意図したことではない。それが解っていても、彼は彼女を放せなかった。この温もりを、今だけでも、自分だけのものにしていたかった。
だが。
ツキヤの中には常に不安が渦巻いている。
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