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第一部『地上に舞い降りた天使は護り手など必要としない。』
垣間見えた天使の横顔②
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アンジェリカは瞬きもせずにブライアンを見つめている。
その真っ直ぐな眼差しにブライアンは居た堪れなくなるけれど、かといって、それから目を逸らすこともできないから、彼もまた見つめ返すしかない。
寂しそう、とか。
(何を言っているんだよ、僕は?)
こんなにアンジェリカが凝視してきていなければ、ブライアンは禿げるまで髪を掻きむしりたい気分だった。
「寂しそうだね、どうしたの?」
そんなセリフは、今までに何度も繰り返してきた。だが、それは、相手を案じたり、相手の気持ちを慮ったりしてのものではない。
女性に対してそう声をかければ相手は「じゃあ、慰めて」としなだれかかってきて、そのまま暗がりにもつれ込むのが常だった。
それは、単なる言葉遊び。お互いにそういう意図だと解って交わす、お決まりの遣り取りに過ぎなかった。
もちろん、今はそんなことを意図したわけではない。
断じて、適当にアンジェリカの気を引くために口にしたセリフでは、ない。
実際にそう感じたから思わずこぼれてしまった純然たる思いやりの気持ちからの言葉だ。
だが、ブライアンは無性に恥ずかしくてならなかった。
さんざん恋の戯れに用いてきた言葉をアンジェリカに投げてしまったことが、本当はこんな気持ちから零れるべきである言葉を恋の戯れなどに浪費してきたことが、恥ずかしくてたまらなかった。
何か、何か別の話題を。
焦って思考を巡らせても、出てこない。そもそもブライアンは、女性相手に会話らしい会話をしたことがないのだ。
彼にできることといえば、美辞麗句を尽くして髪を褒めるとか瞳を褒めるとか。
――そんなことをしたら、アンジェリカからは気でも違ったのかという眼差しを向けられそうだ。
息を詰め、顔には一つも出さずに真っ白になった頭を懸命に復活させようとしているブライアンを、アンジェリカは無言で見つめ続けている。その澄んだ菫色の眼差しが、自分のダメなところにグサグサと突き刺さってくるような気がする。
(もう、無理だ)
どうにも耐えきれなくなってその場から駆け出そうと腰を浮かしかけたブライアンから、不意に、アンジェリカの視線が外れた。そのとたん彼の身体から力が抜けて、またペタリとベンチに尻が落ちる。
首を巡らせた彼女は、また、子どもたちをその視界に収めている。いや、その視線はどこか遠くて、子どもたちの方に向けていながら、そこにはない何かを見つめているようにも見えた。
そうすると漂っていた翳が一層濃くなって、今はもうはっきりとそこにある思いが見て取れる。
何故、そんな目をしているのか教えて欲しい。
ブライアンはそう願ったが、彼女を促すための言葉が見つからない。
(何て言ったらいいんだ? 僕にあなたの全てを教えてくれとか?)
駆け引きもへったくれもない、本心丸出しのみっともない台詞だ。
だが、今、彼に思い付くのはそれだけだった。
と、まるでブライアンの心の中の声が届いたかのように、アンジェリカがポツリと呟く。
「私も、昔、あの子たちと同じように孤児院に預けられたことがある」
「え?」
「九歳の時に両親が亡くなって、それから一年間ほど」
淡々と告げられた、短いけれども彼女の過去のほとんど全てを表す言葉。
ブライアンは小さく息を呑む。そうして、今までそのことに思い至らなかった自分を殴りたくなった。
アンジェリカは小さい頃から猫の目亭に住み込んでいるのだ。彼女を庇護する者がもういないということには、とうに気づいて然るべきだった。
「すまない」
他に言うことが見つからなくて、悲しいことを思い出させてしまったことだけを謝ると、彼女は不思議そうな目をブライアンに向け、そして微笑んだ。
「やっぱり、あなたは優しい。が、気を回し過ぎだ」
彼女のその笑みは大人びていて、目にした瞬間、ブライアンの心臓がドクリと強く打つ。とっさに胸元を押さえた彼に気付くことなく、アンジェリカはけぶるような睫毛を心持ち伏せて続ける。
「孤児院でも良くしてもらったし、一年後には私の両親が亡くなったことを知ったポーリーンたちが迎えに来てくれたから」
ただ、とアンジェリカは呟く。
「私には八つ年上の兄がいて、両親の死と共に音信不通になってしまったんだ」
「音信不通?」
「そう。兄はもうその時には見習いとしてだけれども職に就いていて、私たちとは離れて暮らしていたから。それきり会えなかったらどうしようかと、毎日が不安だった」
そう言ったアンジェリカは淡く笑みを浮かべていたけれど、その笑みに重なって、ブライアンの脳裏には幼い頃の彼女が孤独と不安に潤む瞳で佇む姿が浮かぶ。
その場に駆け付けてその少女を抱き締めてやりたい。
絶対に不可能なことだと判っていても、ブライアンは、そうすることを心の底から望んだ。
もしも人知を超えた力が何か一つ願いを叶えてくれると言ったなら、彼は迷うことなくそれを乞うただろう。
痛ましい想いでアンジェリカを見つめるブライアンに返されるのは、静謐な眼差しだ。
強い彼女は、きっともう、悲しみも寂しさも乗り越えている。
だが、今のアンジェリカに成れるまで、いったいどれほど孤独な夜を過ごしたことか。
強くなったのは、成るべくして成ったのか、それとも、成らざるを得ず成ったのか。
もしもアンジェリカの両親が亡くなることなく、平穏に、ごく普通の少女として育っていたら、どんな女性になっていただろう。
ブライアンはその姿を思い描いた。
きっと、根本的なところは変わらない。
だが、もしかしたらもう少し柔らかな、こんなふうに頑張らなくてもいい彼女になっていたかもしれない。
そんなふうに思ってしまったブライアンは、過去の彼女だけでなく、今の彼女も抱き締めて慰めたいという強い衝動に駆られた。彼は両手を握り締めることでその想いを押し潰し、続きを促す。
「それで、兄上は見つかったのかい?」
「ああ。猫の目亭に引き取られてから半年後に、会いに来てくれた」
そう言って、アンジェリカはにこりと笑う。
「すぐに会いに来られなくてゴメンと謝り倒す彼を宥めるのが大変だった。兄は、とても優しい人なんだ」
兄を思う彼女はあどけなく、ブライアンの中には泉が湧き出るように愛おしさが込み上げた。きっと、自分とセレスティアとは違って、とても親密な兄妹なのだろう。
「兄上は何をしている人なんだい?」
「私もよく知らないのだけれど、国中を回って色々こなしているらしい」
小首をかしげたアンジェリカは、適当にごまかしているようには見えない。
(国中……行商人か何かか?)
ブライアンに思いつくのはそのくらいだが。
「兄はとても忙しい人だけれど、何とか都合をつけて、年に数回ロンディウムに寄ってくれる。私は彼からたくさん学んだ」
「学んだ――たとえば?」
「まだ兄が私たちと一緒にいた頃は、勉学を教えてもらった。あと、護身術も。今でも、ここを訪れた時には必ず稽古をつけてくれる。それに処世術……特に念を押されたのは、知らない人には決して笑いかけてはいけないということだった」
「笑い――?」
眉をひそめて繰り返したブライアンに、アンジェリカがこくりと頷いた。
「今でも、会うたびに言われる。それは一番大事なことで、絶対に守るようにと。コニーも兄の言うことは正しい、と。だから……すまない。最初のころ、私はあなたにもとても無愛想だったと思う」
彼女からの謝罪の言葉に、ブライアンは何と返すべきか判らなかった。
(ちょっと待て。それは、処世術なのか……?)
明らかに、違うと思うのだけれども。
しかし、アンジェリカのこの美しさ、愛らしさに惜しみない笑顔が加わったら、確かに危険極まりないかもしれない。
ブライアンはしばし無言で考えた。
知らない人には笑いかけるなというならば、親しい相手には笑ってくれるということで、実際、打ち解けてからの彼女はブライアンにもしばしば笑みを向けてくれるのだから。
「――うん、それは、兄上のおっしゃる通りだと思うよ」
真顔でブライアンが肯定すると、またアンジェリカが嬉しそうに顔を綻ばせた。
その真っ直ぐな眼差しにブライアンは居た堪れなくなるけれど、かといって、それから目を逸らすこともできないから、彼もまた見つめ返すしかない。
寂しそう、とか。
(何を言っているんだよ、僕は?)
こんなにアンジェリカが凝視してきていなければ、ブライアンは禿げるまで髪を掻きむしりたい気分だった。
「寂しそうだね、どうしたの?」
そんなセリフは、今までに何度も繰り返してきた。だが、それは、相手を案じたり、相手の気持ちを慮ったりしてのものではない。
女性に対してそう声をかければ相手は「じゃあ、慰めて」としなだれかかってきて、そのまま暗がりにもつれ込むのが常だった。
それは、単なる言葉遊び。お互いにそういう意図だと解って交わす、お決まりの遣り取りに過ぎなかった。
もちろん、今はそんなことを意図したわけではない。
断じて、適当にアンジェリカの気を引くために口にしたセリフでは、ない。
実際にそう感じたから思わずこぼれてしまった純然たる思いやりの気持ちからの言葉だ。
だが、ブライアンは無性に恥ずかしくてならなかった。
さんざん恋の戯れに用いてきた言葉をアンジェリカに投げてしまったことが、本当はこんな気持ちから零れるべきである言葉を恋の戯れなどに浪費してきたことが、恥ずかしくてたまらなかった。
何か、何か別の話題を。
焦って思考を巡らせても、出てこない。そもそもブライアンは、女性相手に会話らしい会話をしたことがないのだ。
彼にできることといえば、美辞麗句を尽くして髪を褒めるとか瞳を褒めるとか。
――そんなことをしたら、アンジェリカからは気でも違ったのかという眼差しを向けられそうだ。
息を詰め、顔には一つも出さずに真っ白になった頭を懸命に復活させようとしているブライアンを、アンジェリカは無言で見つめ続けている。その澄んだ菫色の眼差しが、自分のダメなところにグサグサと突き刺さってくるような気がする。
(もう、無理だ)
どうにも耐えきれなくなってその場から駆け出そうと腰を浮かしかけたブライアンから、不意に、アンジェリカの視線が外れた。そのとたん彼の身体から力が抜けて、またペタリとベンチに尻が落ちる。
首を巡らせた彼女は、また、子どもたちをその視界に収めている。いや、その視線はどこか遠くて、子どもたちの方に向けていながら、そこにはない何かを見つめているようにも見えた。
そうすると漂っていた翳が一層濃くなって、今はもうはっきりとそこにある思いが見て取れる。
何故、そんな目をしているのか教えて欲しい。
ブライアンはそう願ったが、彼女を促すための言葉が見つからない。
(何て言ったらいいんだ? 僕にあなたの全てを教えてくれとか?)
駆け引きもへったくれもない、本心丸出しのみっともない台詞だ。
だが、今、彼に思い付くのはそれだけだった。
と、まるでブライアンの心の中の声が届いたかのように、アンジェリカがポツリと呟く。
「私も、昔、あの子たちと同じように孤児院に預けられたことがある」
「え?」
「九歳の時に両親が亡くなって、それから一年間ほど」
淡々と告げられた、短いけれども彼女の過去のほとんど全てを表す言葉。
ブライアンは小さく息を呑む。そうして、今までそのことに思い至らなかった自分を殴りたくなった。
アンジェリカは小さい頃から猫の目亭に住み込んでいるのだ。彼女を庇護する者がもういないということには、とうに気づいて然るべきだった。
「すまない」
他に言うことが見つからなくて、悲しいことを思い出させてしまったことだけを謝ると、彼女は不思議そうな目をブライアンに向け、そして微笑んだ。
「やっぱり、あなたは優しい。が、気を回し過ぎだ」
彼女のその笑みは大人びていて、目にした瞬間、ブライアンの心臓がドクリと強く打つ。とっさに胸元を押さえた彼に気付くことなく、アンジェリカはけぶるような睫毛を心持ち伏せて続ける。
「孤児院でも良くしてもらったし、一年後には私の両親が亡くなったことを知ったポーリーンたちが迎えに来てくれたから」
ただ、とアンジェリカは呟く。
「私には八つ年上の兄がいて、両親の死と共に音信不通になってしまったんだ」
「音信不通?」
「そう。兄はもうその時には見習いとしてだけれども職に就いていて、私たちとは離れて暮らしていたから。それきり会えなかったらどうしようかと、毎日が不安だった」
そう言ったアンジェリカは淡く笑みを浮かべていたけれど、その笑みに重なって、ブライアンの脳裏には幼い頃の彼女が孤独と不安に潤む瞳で佇む姿が浮かぶ。
その場に駆け付けてその少女を抱き締めてやりたい。
絶対に不可能なことだと判っていても、ブライアンは、そうすることを心の底から望んだ。
もしも人知を超えた力が何か一つ願いを叶えてくれると言ったなら、彼は迷うことなくそれを乞うただろう。
痛ましい想いでアンジェリカを見つめるブライアンに返されるのは、静謐な眼差しだ。
強い彼女は、きっともう、悲しみも寂しさも乗り越えている。
だが、今のアンジェリカに成れるまで、いったいどれほど孤独な夜を過ごしたことか。
強くなったのは、成るべくして成ったのか、それとも、成らざるを得ず成ったのか。
もしもアンジェリカの両親が亡くなることなく、平穏に、ごく普通の少女として育っていたら、どんな女性になっていただろう。
ブライアンはその姿を思い描いた。
きっと、根本的なところは変わらない。
だが、もしかしたらもう少し柔らかな、こんなふうに頑張らなくてもいい彼女になっていたかもしれない。
そんなふうに思ってしまったブライアンは、過去の彼女だけでなく、今の彼女も抱き締めて慰めたいという強い衝動に駆られた。彼は両手を握り締めることでその想いを押し潰し、続きを促す。
「それで、兄上は見つかったのかい?」
「ああ。猫の目亭に引き取られてから半年後に、会いに来てくれた」
そう言って、アンジェリカはにこりと笑う。
「すぐに会いに来られなくてゴメンと謝り倒す彼を宥めるのが大変だった。兄は、とても優しい人なんだ」
兄を思う彼女はあどけなく、ブライアンの中には泉が湧き出るように愛おしさが込み上げた。きっと、自分とセレスティアとは違って、とても親密な兄妹なのだろう。
「兄上は何をしている人なんだい?」
「私もよく知らないのだけれど、国中を回って色々こなしているらしい」
小首をかしげたアンジェリカは、適当にごまかしているようには見えない。
(国中……行商人か何かか?)
ブライアンに思いつくのはそのくらいだが。
「兄はとても忙しい人だけれど、何とか都合をつけて、年に数回ロンディウムに寄ってくれる。私は彼からたくさん学んだ」
「学んだ――たとえば?」
「まだ兄が私たちと一緒にいた頃は、勉学を教えてもらった。あと、護身術も。今でも、ここを訪れた時には必ず稽古をつけてくれる。それに処世術……特に念を押されたのは、知らない人には決して笑いかけてはいけないということだった」
「笑い――?」
眉をひそめて繰り返したブライアンに、アンジェリカがこくりと頷いた。
「今でも、会うたびに言われる。それは一番大事なことで、絶対に守るようにと。コニーも兄の言うことは正しい、と。だから……すまない。最初のころ、私はあなたにもとても無愛想だったと思う」
彼女からの謝罪の言葉に、ブライアンは何と返すべきか判らなかった。
(ちょっと待て。それは、処世術なのか……?)
明らかに、違うと思うのだけれども。
しかし、アンジェリカのこの美しさ、愛らしさに惜しみない笑顔が加わったら、確かに危険極まりないかもしれない。
ブライアンはしばし無言で考えた。
知らない人には笑いかけるなというならば、親しい相手には笑ってくれるということで、実際、打ち解けてからの彼女はブライアンにもしばしば笑みを向けてくれるのだから。
「――うん、それは、兄上のおっしゃる通りだと思うよ」
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