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共同戦線
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春日小春はスタスタと賢人の前までやってくると、何か怒っているのだろうかと思ってしまうほど真剣な眼差しで、彼のことをねめ上げてきた。春日は雛姫よりも小柄で、眼鏡越しにそうされると、チワワか何かを思い浮かべてしまう。
賢人のそんな頭の中は知る由もなく、春日は口を開いた。
「あんまり時間がないから単刀直入に訊くけど、舘君って、本気なの? 本気で、雛姫ちゃんのことが好きなの?」
確かに、単刀直入だ。
「はぁ?」
気の抜けた声を返した賢人に、春日は不満そうな、いや、不信そうな顔になる。
「梁川先生は、舘君のことひとまず信じてみることにしてみたみたいだけど」
「梁川先生が?」
賢人は繰り返した。数日前の彼の様子は、あまりそんなふうには見えなかったが。
疑わしげに眉をひそめた賢人に、春日はそれ以上に胡乱そうな眼差しを注ぐ。
「舘君って、いつも女の子に囲まれてるじゃない? 放っておいても女の子が寄ってくるのに、なんで雛姫ちゃんなの? 雛姫ちゃん、ぶすぅってしてるじゃない。舘君のお取り巻きの中には可愛い子だってたくさんいるのに、なんで? そういう子たちだったら、放っておいてもちやほやいちゃいちゃしてくれるでしょ?」
彼女の眼と声は、言外に、遊ぶならその子らにしておけよ、と漂わせている。
こんなことを言われてしまうということは、毎朝のアプローチは、さっぱり功を奏していないということなのか。
「言ってるだろ、雛姫のことが好きなんだって」
憮然とした口調で賢人がそう答えると、春日の目がスッと細くなった。
「はっきり言って、胡散臭いよ。本気だとは思えない」
「これ以上ないってほど、マジなの。別に、からかったり遊んだりしてるわけじゃない」
本来なら、雛姫本人に面と向かって言いたいところだ。だが、春日は雛姫の親友で、ないがしろにはできない。
(大将を落とすなら馬を殺せっていうよな)
内心でつぶやき、賢人は貫くような春日の視線を真っ向から受け止めた。
束の間の、睨み合い。
と、不意に春日がその眼を逸らし、床に落とす。
「……この間の、ちょっと聞こえたから」
「この間のって?」
何のことだと問い返した賢人を、微かに眉間にしわを寄せた春日が睨みつけてくる。
「中庭で。雛姫ちゃんと一緒にいたでしょ?」
「ああ」
草むしりの時かと、賢人はうなずいた。
あれは、貴重な記憶だ。
思い出して若干頬が緩んだ彼の前で、春日がためらいがちに口を開きかけ、閉じた。一度きゅっと唇を引き結んでから、言う。
「あのさ、雛姫ちゃんのこと可愛いって言ってたけど……見た目じゃないの?」
「見た目?」
それは、どういう意味での『見た目』だろう。目・口・鼻の形や配置ということだろうか。
確かに雛姫は並外れた美少女だが、顔かたちが整っているというだけのものであれば、ネットで検索すればいくらでも見つかる。他の美女美少女にも同じように心惹かれるかと言われれば、それは、全くない。これほど自分のものにしたいと思うのは、雛姫だけだ。
では、なぜ雛姫なのか、どうして雛姫に惹かれたのかと問われれば――
「まあ、見た目っちゃ見た目かな」
瞬間、春日の目が冷やかになった。
「それって、雛姫ちゃんがいわゆる美少女だから? それだけ?」
「いや……どっちかっていうと、あのときはあんまり『美少女』って感じじゃなかったな」
思い出して、賢人は思わず忍び笑いを漏らす。彼の言う『あのとき』は、中庭の件でなく、あの雨の日のことだ。
紅くなった目と鼻、腫れた目蓋――あのときの雛姫の顔は、まだはっきりと記憶に刻まれている。
多分、彼女は泣くのを我慢していたから、余計にちょっと微妙な顔になってしまったのだろう。
「舘君?」
クスクスと笑う賢人をいぶかしげに見上げてきた春日に、彼は手短に雨の日のことを話す。
けっして可愛くはなかったあの愛らしい泣き顔に、あのとき賢人は、なんというか、そう――
「心臓を射抜かれたんだ」
女子の泣き顔は、今までにも見たことがある。
たとえば、告白を断った時とか。
そんなとき、皆、とてもきれいな涙を、白い頬に伝わらせて。
多分両手両足の指の数でも足りないほど賢人はその顔を見てきたけれど、どれ一つとして、あのときの雛姫のように彼の心を動かしたものはなかった。なりふり構わず欲しいと思わせ、滅茶苦茶に抱き締めたくなったのは、彼女だけ、だ。
ふと視線を感じてそちらを見下ろすと、いかがわしいものを見るような春日の眼差しがあった。
「何だよ?」
「舘君って、エスなの……?」
「あ?」
「サドマゾの、S。だって、女の子を泣かしたいんでしょ?」
「ちげぇよ。オレだって、雛姫が笑ってる方がいいしオレが笑わしてやりたいよ。ただ、最初に好きになったときの雛姫は泣き顔だったってだけだ」
春日はその言葉の真意を読み解こうとするかのように、賢人をしげしげと見つめる。賢人も、その視線を受け止め、見返した。
ややして。
「……協力してあげる」
「協力?」
春日がコクリとうなずく。
「今の雛姫ちゃんに寄ってきたのは、この三年間で舘君だけだよ」
この三年間で、ということは、それ以前はそうではなかったということか。
賢人は眉間にしわを刻む。
雛姫に群がる野郎どものことを想像すると、ムカついた。
もしも、雛姫が誰かを好きになったことがあって、そのせいで、今のような彼女になったのだとしたら――更に、ムカついた。
険しい顔になった賢人には全く気付いたふうもなく、視線を床に落とした春日が、小さな声で続ける。
「それにね、雛姫ちゃんの方から声をかけたのも……興味を示したのも、この三年間で舘君だけなんだ」
消え入りそうにそうつぶやいた後、彼女は勢いよく顔を上げた。挑むように賢人を見据え、言う。
「舘君が雛姫ちゃんのこと本気なら――絶対に傷付けないって言うなら、私は舘君に協力する」
「傷つけるって、どうやって?」
賢人は、こんなに彼女のことを大事にしたいと思っているというのに。
逃げられるのが怖くて、彼らしくもなく近寄ることすら亀、いや、ナメクジ並の歩みなのだ。
傷つけるどころか、まだ、かすることすらできていない。
軽く首をかしげた彼を春日は唇を引き結んで見つめ、そうして、ゆるゆると吐息をこぼした。
「わたしは、雛姫ちゃんに、殻から出て来て欲しいの。本当の雛姫ちゃんは、良く笑って、誰にでも打ち解けて――そういう子なの。わたしは、昔の雛姫ちゃんに戻って欲しい」
そう言った春日の顔には、その声と同じくらい強い決意の色が現れていた。それが、ふと、曇る。
「……あのときは、わたし、何もできなかったから……」
「あのとき?」
春日のつぶやきの意味を賢人が尋ねようとした、その時、ためらいがちなノックの音が部屋に響く。
「梁川先生?」
外から届いたのは、紛れもなく、雛姫の声だ。
反射的に返事をしようとした賢人の袖が、引かれる。そちらに目を落とすと、春日が鋭い眼差しを向けてきた。
「先に言っておくけど、雛姫に『可愛い』は禁句だからね」
「え?」
眉をひそめた賢人が問い返す間を与えることなく、春日は彼から離れると小走りでドアに向かいそれを開ける。
「あ、小春ちゃん、お兄ちゃんは――」
ガラス玉が転がるような声が、ふと止まった。部屋に入ってきた雛姫は先客がもう一人いることに気づいて立ちすくんでいる。
多分、前髪に隠された目は大きく見開かれていることだろう。
天敵に遭遇した仔猫さながらにジリ、と一歩後ずさり、ドアに背を預けるようにして固まった雛姫に向けて、取り敢えず賢人は満面の笑みと共にヒラヒラと片手を振った。
賢人のそんな頭の中は知る由もなく、春日は口を開いた。
「あんまり時間がないから単刀直入に訊くけど、舘君って、本気なの? 本気で、雛姫ちゃんのことが好きなの?」
確かに、単刀直入だ。
「はぁ?」
気の抜けた声を返した賢人に、春日は不満そうな、いや、不信そうな顔になる。
「梁川先生は、舘君のことひとまず信じてみることにしてみたみたいだけど」
「梁川先生が?」
賢人は繰り返した。数日前の彼の様子は、あまりそんなふうには見えなかったが。
疑わしげに眉をひそめた賢人に、春日はそれ以上に胡乱そうな眼差しを注ぐ。
「舘君って、いつも女の子に囲まれてるじゃない? 放っておいても女の子が寄ってくるのに、なんで雛姫ちゃんなの? 雛姫ちゃん、ぶすぅってしてるじゃない。舘君のお取り巻きの中には可愛い子だってたくさんいるのに、なんで? そういう子たちだったら、放っておいてもちやほやいちゃいちゃしてくれるでしょ?」
彼女の眼と声は、言外に、遊ぶならその子らにしておけよ、と漂わせている。
こんなことを言われてしまうということは、毎朝のアプローチは、さっぱり功を奏していないということなのか。
「言ってるだろ、雛姫のことが好きなんだって」
憮然とした口調で賢人がそう答えると、春日の目がスッと細くなった。
「はっきり言って、胡散臭いよ。本気だとは思えない」
「これ以上ないってほど、マジなの。別に、からかったり遊んだりしてるわけじゃない」
本来なら、雛姫本人に面と向かって言いたいところだ。だが、春日は雛姫の親友で、ないがしろにはできない。
(大将を落とすなら馬を殺せっていうよな)
内心でつぶやき、賢人は貫くような春日の視線を真っ向から受け止めた。
束の間の、睨み合い。
と、不意に春日がその眼を逸らし、床に落とす。
「……この間の、ちょっと聞こえたから」
「この間のって?」
何のことだと問い返した賢人を、微かに眉間にしわを寄せた春日が睨みつけてくる。
「中庭で。雛姫ちゃんと一緒にいたでしょ?」
「ああ」
草むしりの時かと、賢人はうなずいた。
あれは、貴重な記憶だ。
思い出して若干頬が緩んだ彼の前で、春日がためらいがちに口を開きかけ、閉じた。一度きゅっと唇を引き結んでから、言う。
「あのさ、雛姫ちゃんのこと可愛いって言ってたけど……見た目じゃないの?」
「見た目?」
それは、どういう意味での『見た目』だろう。目・口・鼻の形や配置ということだろうか。
確かに雛姫は並外れた美少女だが、顔かたちが整っているというだけのものであれば、ネットで検索すればいくらでも見つかる。他の美女美少女にも同じように心惹かれるかと言われれば、それは、全くない。これほど自分のものにしたいと思うのは、雛姫だけだ。
では、なぜ雛姫なのか、どうして雛姫に惹かれたのかと問われれば――
「まあ、見た目っちゃ見た目かな」
瞬間、春日の目が冷やかになった。
「それって、雛姫ちゃんがいわゆる美少女だから? それだけ?」
「いや……どっちかっていうと、あのときはあんまり『美少女』って感じじゃなかったな」
思い出して、賢人は思わず忍び笑いを漏らす。彼の言う『あのとき』は、中庭の件でなく、あの雨の日のことだ。
紅くなった目と鼻、腫れた目蓋――あのときの雛姫の顔は、まだはっきりと記憶に刻まれている。
多分、彼女は泣くのを我慢していたから、余計にちょっと微妙な顔になってしまったのだろう。
「舘君?」
クスクスと笑う賢人をいぶかしげに見上げてきた春日に、彼は手短に雨の日のことを話す。
けっして可愛くはなかったあの愛らしい泣き顔に、あのとき賢人は、なんというか、そう――
「心臓を射抜かれたんだ」
女子の泣き顔は、今までにも見たことがある。
たとえば、告白を断った時とか。
そんなとき、皆、とてもきれいな涙を、白い頬に伝わらせて。
多分両手両足の指の数でも足りないほど賢人はその顔を見てきたけれど、どれ一つとして、あのときの雛姫のように彼の心を動かしたものはなかった。なりふり構わず欲しいと思わせ、滅茶苦茶に抱き締めたくなったのは、彼女だけ、だ。
ふと視線を感じてそちらを見下ろすと、いかがわしいものを見るような春日の眼差しがあった。
「何だよ?」
「舘君って、エスなの……?」
「あ?」
「サドマゾの、S。だって、女の子を泣かしたいんでしょ?」
「ちげぇよ。オレだって、雛姫が笑ってる方がいいしオレが笑わしてやりたいよ。ただ、最初に好きになったときの雛姫は泣き顔だったってだけだ」
春日はその言葉の真意を読み解こうとするかのように、賢人をしげしげと見つめる。賢人も、その視線を受け止め、見返した。
ややして。
「……協力してあげる」
「協力?」
春日がコクリとうなずく。
「今の雛姫ちゃんに寄ってきたのは、この三年間で舘君だけだよ」
この三年間で、ということは、それ以前はそうではなかったということか。
賢人は眉間にしわを刻む。
雛姫に群がる野郎どものことを想像すると、ムカついた。
もしも、雛姫が誰かを好きになったことがあって、そのせいで、今のような彼女になったのだとしたら――更に、ムカついた。
険しい顔になった賢人には全く気付いたふうもなく、視線を床に落とした春日が、小さな声で続ける。
「それにね、雛姫ちゃんの方から声をかけたのも……興味を示したのも、この三年間で舘君だけなんだ」
消え入りそうにそうつぶやいた後、彼女は勢いよく顔を上げた。挑むように賢人を見据え、言う。
「舘君が雛姫ちゃんのこと本気なら――絶対に傷付けないって言うなら、私は舘君に協力する」
「傷つけるって、どうやって?」
賢人は、こんなに彼女のことを大事にしたいと思っているというのに。
逃げられるのが怖くて、彼らしくもなく近寄ることすら亀、いや、ナメクジ並の歩みなのだ。
傷つけるどころか、まだ、かすることすらできていない。
軽く首をかしげた彼を春日は唇を引き結んで見つめ、そうして、ゆるゆると吐息をこぼした。
「わたしは、雛姫ちゃんに、殻から出て来て欲しいの。本当の雛姫ちゃんは、良く笑って、誰にでも打ち解けて――そういう子なの。わたしは、昔の雛姫ちゃんに戻って欲しい」
そう言った春日の顔には、その声と同じくらい強い決意の色が現れていた。それが、ふと、曇る。
「……あのときは、わたし、何もできなかったから……」
「あのとき?」
春日のつぶやきの意味を賢人が尋ねようとした、その時、ためらいがちなノックの音が部屋に響く。
「梁川先生?」
外から届いたのは、紛れもなく、雛姫の声だ。
反射的に返事をしようとした賢人の袖が、引かれる。そちらに目を落とすと、春日が鋭い眼差しを向けてきた。
「先に言っておくけど、雛姫に『可愛い』は禁句だからね」
「え?」
眉をひそめた賢人が問い返す間を与えることなく、春日は彼から離れると小走りでドアに向かいそれを開ける。
「あ、小春ちゃん、お兄ちゃんは――」
ガラス玉が転がるような声が、ふと止まった。部屋に入ってきた雛姫は先客がもう一人いることに気づいて立ちすくんでいる。
多分、前髪に隠された目は大きく見開かれていることだろう。
天敵に遭遇した仔猫さながらにジリ、と一歩後ずさり、ドアに背を預けるようにして固まった雛姫に向けて、取り敢えず賢人は満面の笑みと共にヒラヒラと片手を振った。
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