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第二章:すれちがい
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「で、行くんだ? 同窓会」
昼休みの食堂で、萌と先輩看護師中野リコ――そして何故か整形外科医の有田朗は昼食を摂っていた。
頬杖をついたリコに訊かれて、萌はおすすめ定食をつつきながら答える。
「行く……ことになっちゃってるみたいで……勤務表もチェックされました」
一美から彼の大学の同窓会に誘われて、萌はその日の勤務がどうなっているか判らないから、と断ろうとしたのだが、翌日にはその言い訳は却下されてしまった。同窓会の当日は勤務無し、翌日は夜勤で、夜更かしにも最適な日程だったのだ。
――気は、進まない。
萌は小さくため息をつく。
医者の集まりなんて、彼女にとっては場違いもいいところだ。
きっと、孔雀の群れの中に迷い込んだ雀にでもなった気分になるに違いない。
「まあまあ、気楽にやったらいいよ。人数多いからねぇ、誰が誰を連れてこようが、気にするヤツはいないって」
萌の心中を察してそう宥めた朗に、リコがボソリと呟く。
「でも、岩崎先生が袖にした人たちがてぐすね引いて待ってそうですよね」
「あはは、それはあるかも」
気楽な朗の言いように、萌の胸にはずんと重石が圧し掛かる。
ガクリと項垂れた彼女に朗が笑った。
「まあ、ある意味、驚かれるかもしれないけど、そんなに身構えなくても大丈夫さ。一美が一緒なんだから」
ある意味とはどういう意味なのか。
――やっぱり、あまりに似合っていない、とか……?
至極当たり前のその事実に、反論なんて思い浮かばない。
深みにはまりそうになるのを振り払い、萌はニコリと笑顔を浮かべた。
「そういえば、有田先生も行かれるんですか?」
「オレ? 行くよ、もちろん。会いたい人もたくさんいるしね」
彼のその台詞に、すかさずリコが茶々を入れる。
「それって、九十九パーセント、女の人でしょ?」
「いや、百パーセント」
厭味だった筈の彼女の言葉に、朗は笑顔と共にそう返した。
昼休みの食堂で、萌と先輩看護師中野リコ――そして何故か整形外科医の有田朗は昼食を摂っていた。
頬杖をついたリコに訊かれて、萌はおすすめ定食をつつきながら答える。
「行く……ことになっちゃってるみたいで……勤務表もチェックされました」
一美から彼の大学の同窓会に誘われて、萌はその日の勤務がどうなっているか判らないから、と断ろうとしたのだが、翌日にはその言い訳は却下されてしまった。同窓会の当日は勤務無し、翌日は夜勤で、夜更かしにも最適な日程だったのだ。
――気は、進まない。
萌は小さくため息をつく。
医者の集まりなんて、彼女にとっては場違いもいいところだ。
きっと、孔雀の群れの中に迷い込んだ雀にでもなった気分になるに違いない。
「まあまあ、気楽にやったらいいよ。人数多いからねぇ、誰が誰を連れてこようが、気にするヤツはいないって」
萌の心中を察してそう宥めた朗に、リコがボソリと呟く。
「でも、岩崎先生が袖にした人たちがてぐすね引いて待ってそうですよね」
「あはは、それはあるかも」
気楽な朗の言いように、萌の胸にはずんと重石が圧し掛かる。
ガクリと項垂れた彼女に朗が笑った。
「まあ、ある意味、驚かれるかもしれないけど、そんなに身構えなくても大丈夫さ。一美が一緒なんだから」
ある意味とはどういう意味なのか。
――やっぱり、あまりに似合っていない、とか……?
至極当たり前のその事実に、反論なんて思い浮かばない。
深みにはまりそうになるのを振り払い、萌はニコリと笑顔を浮かべた。
「そういえば、有田先生も行かれるんですか?」
「オレ? 行くよ、もちろん。会いたい人もたくさんいるしね」
彼のその台詞に、すかさずリコが茶々を入れる。
「それって、九十九パーセント、女の人でしょ?」
「いや、百パーセント」
厭味だった筈の彼女の言葉に、朗は笑顔と共にそう返した。
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