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おっさん、ドラゴンを討伐する
ワイバーン襲来
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「あれって、まさか!」
セレナが結論付けるよりも、誰もが悟った。
「来やがったか、『竜部族』……ギラヴィ……!」
あれこそが『竜部族』――ワイバーンとドラゴンの、恐るべき戦闘集団であると。
ほとんど反射的に宿に戻ろうとしたダンテよりも先に、セレナやリン、オフィーリアが真っ先に動いた。
「ゴドス山まで行く必要がなくなったじゃん、ダンテ!」
「人を襲うモンスター……許せません!」
「オイ待て、お前ら!」
梯子を使わずに飛び降りた4人が宿の廊下を走っていると、すぐにグライスナー兄妹が向こうから走ってきた。
ふたりともパジャマではなく、騎士団の制服に身を包んでいる。
きっと、甲冑を纏う余裕はないと判断したのだろう。
「アル、マリー!」
「ダンテさん!」
アルフォンスはともかく、ハイデマリーもさすがに敵の襲来に焦っているようだ。
「おじ様、あれを見ましたか!?」
「間違いない、ワイバーンの群れだ! 街の被害は……」
深刻な顔で、アルフォンスがダンテの問いに答える。
「すでにかなりの宿や家が焼かれて、人が襲われています! ワイバーン相手では、自警団ではどうしようもできません!」
「わたくし達は騎士として、人命救助を優先しますわ!」
「正しい判断だな」
ワイバーンの群れの壊滅も大事だが、ユドノーの住民をひとりでも多く助けるのが、人間として最優先でやるべきことだ。
セレナ達も、幸い、利益よりなにより人助けを尊ぶ冒険者であった。
「よーし、だったらあたし達がダンテと一緒に、ワイバーンをぶっ飛ばしてくるわ! 見たところドラゴンはいないけど、ここでケリをつけてやろーじゃない!」
「まだ逃げ遅れた人もいるでしょうし、救助の手助けもできます!」
リンもふたりに挟まれて無言で意気込んでいたが、ダンテは首を横に振った。
「……いや、皆はアルとマリーのそばにいてくれ」
「え、どうして!?」
「あいつがもし俺を狙ってるなら、俺から出向いてやった方が話が早い! 少なくとも、町に被害が及ぶくらいなら、俺に注目してくれた方がましだ!」
確かにダンテが敵に突撃すれば、親玉も彼を狙ってくれるに違いない。
だからといって、彼を囮に使うような作戦は容認できない。
「ダンテさん、いくら貴方の提案でも賛同しかねます! 敵はワイバーンと、これまで目撃されたどのモンスターよりも危険なドラゴンですよ!」
「安心しろ、アル。俺ひとりで、きっちりケリをつけてくるさ」
「……そうやってまた、貴方は……」
ダンテは自分の無事を確信しているようだが、アルフォンスが本当に懸念していることにちっとも気づいていない。
しかも彼は、もう話を聞くつもりもないようだ。
「セレナ達を頼んだぞ! お前らも、救助を手伝ってもいいが、単独行動はするな!」
「あ、ちょっと、待って、待ってってば!」
セレナの制止も聞かず、ダンテは窓から宿の外へと駆け出した。
後ろから仲間の声が響いてきても、彼は足を止めるつもりはなかった。
最悪――自分ひとりが犠牲になってでも『竜部族』とギラヴィを倒せば、何もかも無事に解決すると信じているからだ。
(……これでいい。因縁はすべて話した、あとは俺がなすべきことだ)
結局、彼は最初から仲間に頼るつもりなどなかったのかもしれない。
少しばかりの罪悪感を覚えながら、燃え盛る街を走るうち、すぐに敵の姿が見えてきた。
『『ギャオオオオッ!』』
こうもり傘のような緑色の翼をはためかせる、人よりも巨大なトカゲ。
火を吹き、徒党を組み、長い足の爪で人を捕えて引き裂く邪悪なモンスター。
「ワイバーン……!」
敵の姿を見据えるのと、ダンテがホルスターからナイフを引き抜くのはほぼ同時だった。
「邪魔だァッ!」
彼はすさまじい形相でワイバーンの群れに飛び込むと、一対のナイフを振るった。
『ギオオオッ!?』
ワイバーンの首が、魚の頭を刎ねるように斬り落とされてゆく。
血しぶきが舞い、同胞の絶叫が聞こえてきたところで、ワイバーンもやっと、自分達に危害を及ぼす人間の存在に気付いたようだ。
『ゴオオォォーッ!』
モンスターはダンテを取り囲むように空を飛び、彼めがけて火を吐いた。
(円陣を組んで炎を吐いた!? こいつら、まさか連携をとるのか!?)
ナイフを高速で振り回して炎を弾くダンテに、この程度の攻撃は通じない。
だが、まるで騎士の集団戦法のようなさまに、彼は戸惑った。
(いくら群れをつくるモンスターだからって、ここまで連携が取れるわけがない! 間違いない、ドラゴンが連携戦術を仕込みやがった!)
ワイバーンを統率するのみならず、戦術まで使わせるギラヴィとは何者か。
怒りと憎しみが、ここまで知能を増幅させたのだろうか。
もっとも、ダンテを委縮させるまでには至らなかった――むしろ、彼の苛立ちを膨れ上がらせるのに貢献した。
「それでも……飛べるトカゲごときが、俺を倒せると思うなッ!」
勢いよくジャンプしたダンテが、ワイバーンの翼を斬る。
姿勢を崩したモンスターの首を斬り、さらに近くの敵の腹を裂いて心臓をもぎ取る。
『アギャアアアア!』
『ギュグエッ!?』
炎の陣形が崩れれば、もはやダンテの独壇場だ。
「俺を、舐めるなああああッ!」
彼が独楽のように回転して刃を振るうと、10匹以上はいたワイバーンの体がめちゃくちゃに切り刻まれ、まばたきの間に命が奪われていった。
『『ギャアアアース!』』
どさ、どさり、と地に臥せて死に絶えるワイバーンの亡骸。
それを踏みつけ、ダンテは歯軋りと共に吼えた。
「雑魚じゃ話にならねえよ――ギラヴィを呼べええぇッ!」
既に彼自身が、モンスター以上の恐ろしさと無慈悲さを抱いていた。
セレナが結論付けるよりも、誰もが悟った。
「来やがったか、『竜部族』……ギラヴィ……!」
あれこそが『竜部族』――ワイバーンとドラゴンの、恐るべき戦闘集団であると。
ほとんど反射的に宿に戻ろうとしたダンテよりも先に、セレナやリン、オフィーリアが真っ先に動いた。
「ゴドス山まで行く必要がなくなったじゃん、ダンテ!」
「人を襲うモンスター……許せません!」
「オイ待て、お前ら!」
梯子を使わずに飛び降りた4人が宿の廊下を走っていると、すぐにグライスナー兄妹が向こうから走ってきた。
ふたりともパジャマではなく、騎士団の制服に身を包んでいる。
きっと、甲冑を纏う余裕はないと判断したのだろう。
「アル、マリー!」
「ダンテさん!」
アルフォンスはともかく、ハイデマリーもさすがに敵の襲来に焦っているようだ。
「おじ様、あれを見ましたか!?」
「間違いない、ワイバーンの群れだ! 街の被害は……」
深刻な顔で、アルフォンスがダンテの問いに答える。
「すでにかなりの宿や家が焼かれて、人が襲われています! ワイバーン相手では、自警団ではどうしようもできません!」
「わたくし達は騎士として、人命救助を優先しますわ!」
「正しい判断だな」
ワイバーンの群れの壊滅も大事だが、ユドノーの住民をひとりでも多く助けるのが、人間として最優先でやるべきことだ。
セレナ達も、幸い、利益よりなにより人助けを尊ぶ冒険者であった。
「よーし、だったらあたし達がダンテと一緒に、ワイバーンをぶっ飛ばしてくるわ! 見たところドラゴンはいないけど、ここでケリをつけてやろーじゃない!」
「まだ逃げ遅れた人もいるでしょうし、救助の手助けもできます!」
リンもふたりに挟まれて無言で意気込んでいたが、ダンテは首を横に振った。
「……いや、皆はアルとマリーのそばにいてくれ」
「え、どうして!?」
「あいつがもし俺を狙ってるなら、俺から出向いてやった方が話が早い! 少なくとも、町に被害が及ぶくらいなら、俺に注目してくれた方がましだ!」
確かにダンテが敵に突撃すれば、親玉も彼を狙ってくれるに違いない。
だからといって、彼を囮に使うような作戦は容認できない。
「ダンテさん、いくら貴方の提案でも賛同しかねます! 敵はワイバーンと、これまで目撃されたどのモンスターよりも危険なドラゴンですよ!」
「安心しろ、アル。俺ひとりで、きっちりケリをつけてくるさ」
「……そうやってまた、貴方は……」
ダンテは自分の無事を確信しているようだが、アルフォンスが本当に懸念していることにちっとも気づいていない。
しかも彼は、もう話を聞くつもりもないようだ。
「セレナ達を頼んだぞ! お前らも、救助を手伝ってもいいが、単独行動はするな!」
「あ、ちょっと、待って、待ってってば!」
セレナの制止も聞かず、ダンテは窓から宿の外へと駆け出した。
後ろから仲間の声が響いてきても、彼は足を止めるつもりはなかった。
最悪――自分ひとりが犠牲になってでも『竜部族』とギラヴィを倒せば、何もかも無事に解決すると信じているからだ。
(……これでいい。因縁はすべて話した、あとは俺がなすべきことだ)
結局、彼は最初から仲間に頼るつもりなどなかったのかもしれない。
少しばかりの罪悪感を覚えながら、燃え盛る街を走るうち、すぐに敵の姿が見えてきた。
『『ギャオオオオッ!』』
こうもり傘のような緑色の翼をはためかせる、人よりも巨大なトカゲ。
火を吹き、徒党を組み、長い足の爪で人を捕えて引き裂く邪悪なモンスター。
「ワイバーン……!」
敵の姿を見据えるのと、ダンテがホルスターからナイフを引き抜くのはほぼ同時だった。
「邪魔だァッ!」
彼はすさまじい形相でワイバーンの群れに飛び込むと、一対のナイフを振るった。
『ギオオオッ!?』
ワイバーンの首が、魚の頭を刎ねるように斬り落とされてゆく。
血しぶきが舞い、同胞の絶叫が聞こえてきたところで、ワイバーンもやっと、自分達に危害を及ぼす人間の存在に気付いたようだ。
『ゴオオォォーッ!』
モンスターはダンテを取り囲むように空を飛び、彼めがけて火を吐いた。
(円陣を組んで炎を吐いた!? こいつら、まさか連携をとるのか!?)
ナイフを高速で振り回して炎を弾くダンテに、この程度の攻撃は通じない。
だが、まるで騎士の集団戦法のようなさまに、彼は戸惑った。
(いくら群れをつくるモンスターだからって、ここまで連携が取れるわけがない! 間違いない、ドラゴンが連携戦術を仕込みやがった!)
ワイバーンを統率するのみならず、戦術まで使わせるギラヴィとは何者か。
怒りと憎しみが、ここまで知能を増幅させたのだろうか。
もっとも、ダンテを委縮させるまでには至らなかった――むしろ、彼の苛立ちを膨れ上がらせるのに貢献した。
「それでも……飛べるトカゲごときが、俺を倒せると思うなッ!」
勢いよくジャンプしたダンテが、ワイバーンの翼を斬る。
姿勢を崩したモンスターの首を斬り、さらに近くの敵の腹を裂いて心臓をもぎ取る。
『アギャアアアア!』
『ギュグエッ!?』
炎の陣形が崩れれば、もはやダンテの独壇場だ。
「俺を、舐めるなああああッ!」
彼が独楽のように回転して刃を振るうと、10匹以上はいたワイバーンの体がめちゃくちゃに切り刻まれ、まばたきの間に命が奪われていった。
『『ギャアアアース!』』
どさ、どさり、と地に臥せて死に絶えるワイバーンの亡骸。
それを踏みつけ、ダンテは歯軋りと共に吼えた。
「雑魚じゃ話にならねえよ――ギラヴィを呼べええぇッ!」
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