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おっさん、ドラゴンを討伐する
脅威の格差
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一方その頃、男湯の隣、女湯。
防音の魔法がかけられたこの空間では、男性の視線や声を気にせず、いくつもの温泉を楽しめる。
「ふう……温泉は初めてですが、これはやみつきになりますね……♪」
オフィーリアが浸かっている白いお湯も、そのうちのひとつだ。
髪を結った彼女の肌を伝う温泉は、ただ色がついているだけではない。
「女湯の方は疲労回復だけでなく、美肌や保湿効果もあるそうですよ。ユドノーにお住いの方々の肌が卵のようだったのは、これが理由だったんですね」
高級レストランの中庭のような風景と、白みつつある夜空の美しさと、程よく体を温めてくれる温泉。
特に、修業時代から水浴びを好んでいたオフィーリアにとっては、まさに至福の体現だ。
これほどの贅沢を味わってよいものかと、彼女は思っていた。
「隣にはかけ流しの湯もありますし、泡が出てくる湯船もあるみたいです。どうですか、ここを堪能したら、次はそちらに……」
ただ、彼女と一緒にいるはずの3人は、どうにも複雑な顔をしていた。
同じように白い湯に浸かっているのだが、満足感を表情から感じ取れないのだ。
「……あの、どうかしましたか……?」
おずおずとオフィーリアが問いかけると、セレナが口を開いた。
「……ずるい」
「え?」
「オフィーリア、ずるいよ! なんでそんなに、おっぱいがおっきいのさーっ!」
あまりに唐突なセレナの言い分に、オフィーリアは目を丸くした。
「ちょ、ちょっとセレナさん!? 女の子がお、おっぱいとか、気軽に言うものでは……」
「とぼけちゃって! リン裁判長、被告はごまかすつもりだよ!」
「そうはいかない。証拠があるからね、ほら」
セレナとリンが、両隣からオフィーリアの乳房を持ち上げた。
「きゃああっ!?」
湯の中から出てきたそれは、ふたりが両手で持ち上げないと零れてしまうほど大きい。
信じられないくらい大きなものを目の当たりにしたふたりの瞳孔が開き、オフィーリアが顔を真っ赤にした。
「見てよこれ、あたしとリンのふたりがかりじゃないと持ち上がらないって、そんなことある!? ぶるんぶるんのばるんばるんじゃん!」
わざとらしくセレナが手を上下すると、抱えたものも追従する。
オフィーリアからすれば、とんだ羞恥プレイだ。
「重さだってほら、片方でメロンと同じくらいずっしりくるよ!」
「ボクの顔よりおっきい。ずるいよ、オフィーリア」
「ず、ずるいと言われましても困ります!」
セレナ達からそそくさと離れたオフィーリアの顔は、別の意味で真っ赤だ。
「何か秘訣とかあるの? 食べてるものとか、毎日やってるルーティンとか?」
「特に皆さんと変わったことは、してないですが……」
オフィーリアの胸が大きい理由はいろいろあるだろうが、生まれつきと言ってしまえばそこまでだし、セレナやリンにはどうこうできないだろう。
ただ、正直に話したところで、またも怒りを買うに違いない。
だから彼女は、セレナ達にもいいところがあるのだと教えて、目を覚まさせることにした。
「それはそうと、私は皆さんの可愛らしいところが、とても良いと思いますよ?」
「なにぃ~っ?」
「第一、大きくても困ることばかりで、いいことなんてありません! 足元は見えませんし、肩はこります! 服や下着だって地味なものしか買えませんし、男性の視線は集まりますし! セレナさん達がとても羨ましいです!」
ところが、彼女の言葉選びは、完全に過ちであった。
「「イヤミかこんにゃろーっ!」」
「ひゃあああああ!」
怒り心頭のセレナとリンに、前後左右から胸をもみくちゃにされるオフィーリア。
女性同士だから笑っていられる光景であって、いくら彼女が優しいからと言って、異性がやれば聖霊の鉄拳の餌食になると男性諸氏は覚えておいてほしい。
「……はあ、くだらないことでいつまでも騒がないでほしいですわね」
そんな3人のやり取りを、少し離れたところでハイデマリーが見ていた。
言葉遣いから察せるように、すっかり児戯に呆れているようだ。
「ここはユドノー、品位ある方が心身ともに癒されに来る場所ですのよ。子供のお遊びがしたいのなら、湯船を出て街の外の川で、水のかけあいでもしてなさいな」
「ぐぬぬ、さっきまでダンテとお風呂に入りたいってごねてたでしょ!」
「ハイデマリーだって、オフィーリアのおっぱいが気になるくせに」
セレナ達に指摘されると、ハイデマリーはざばーん、と立ち上がった。
「そんなことはありませんわ! わたくしは貴方達と違って、おじ様もメロメロになる立派なものがありましてよ!」
確かにハイデマリーは、背丈こそセレナとそう変わらないが、バストに関しては彼女よりもずっと大きい。
いわゆるトランジスタグラマー的な体系であるハイデマリーからすれば、ふたりほどオフィーリアに嫉妬する必要もないのだろう。
「……だ、だから、ちっともうらやましくなんて……」
しかし、彼女はざばざばと湯を横切って歩いてきたオフィーリアを見てしまった。
自分より高い背に、自分よりふたまわりほど巨大な――規格外。
なのにそれをひけらかさず、むしろ邪魔だと言い張る無自覚さ。
「どうかしましたか、ハイデマリーさん?」
「なんでもありませんわ! ふんっ!」
なんとなく敗北感を覚えてしまったハイデマリーは、つっけんどんな態度のまま、背を向けて肩まで湯に沈み込んでしまった。
(お、おじ様は胸の大きさだけで人を評価するようなお方ではありませんわ! でも、もしもあんなので誘惑されたら……うぅ~!)
そんな彼女の変化に気付かないふりをしてやるほど、セレナは善人ではない。
「絶対気にしてるでしょ~? ひひひ~!」
「下品な笑い方をしないでくださいましっ!」
口に手を当ててにやにやと笑うセレナに、ハイデマリーが湯をかけた。
防音の魔法がかけられたこの空間では、男性の視線や声を気にせず、いくつもの温泉を楽しめる。
「ふう……温泉は初めてですが、これはやみつきになりますね……♪」
オフィーリアが浸かっている白いお湯も、そのうちのひとつだ。
髪を結った彼女の肌を伝う温泉は、ただ色がついているだけではない。
「女湯の方は疲労回復だけでなく、美肌や保湿効果もあるそうですよ。ユドノーにお住いの方々の肌が卵のようだったのは、これが理由だったんですね」
高級レストランの中庭のような風景と、白みつつある夜空の美しさと、程よく体を温めてくれる温泉。
特に、修業時代から水浴びを好んでいたオフィーリアにとっては、まさに至福の体現だ。
これほどの贅沢を味わってよいものかと、彼女は思っていた。
「隣にはかけ流しの湯もありますし、泡が出てくる湯船もあるみたいです。どうですか、ここを堪能したら、次はそちらに……」
ただ、彼女と一緒にいるはずの3人は、どうにも複雑な顔をしていた。
同じように白い湯に浸かっているのだが、満足感を表情から感じ取れないのだ。
「……あの、どうかしましたか……?」
おずおずとオフィーリアが問いかけると、セレナが口を開いた。
「……ずるい」
「え?」
「オフィーリア、ずるいよ! なんでそんなに、おっぱいがおっきいのさーっ!」
あまりに唐突なセレナの言い分に、オフィーリアは目を丸くした。
「ちょ、ちょっとセレナさん!? 女の子がお、おっぱいとか、気軽に言うものでは……」
「とぼけちゃって! リン裁判長、被告はごまかすつもりだよ!」
「そうはいかない。証拠があるからね、ほら」
セレナとリンが、両隣からオフィーリアの乳房を持ち上げた。
「きゃああっ!?」
湯の中から出てきたそれは、ふたりが両手で持ち上げないと零れてしまうほど大きい。
信じられないくらい大きなものを目の当たりにしたふたりの瞳孔が開き、オフィーリアが顔を真っ赤にした。
「見てよこれ、あたしとリンのふたりがかりじゃないと持ち上がらないって、そんなことある!? ぶるんぶるんのばるんばるんじゃん!」
わざとらしくセレナが手を上下すると、抱えたものも追従する。
オフィーリアからすれば、とんだ羞恥プレイだ。
「重さだってほら、片方でメロンと同じくらいずっしりくるよ!」
「ボクの顔よりおっきい。ずるいよ、オフィーリア」
「ず、ずるいと言われましても困ります!」
セレナ達からそそくさと離れたオフィーリアの顔は、別の意味で真っ赤だ。
「何か秘訣とかあるの? 食べてるものとか、毎日やってるルーティンとか?」
「特に皆さんと変わったことは、してないですが……」
オフィーリアの胸が大きい理由はいろいろあるだろうが、生まれつきと言ってしまえばそこまでだし、セレナやリンにはどうこうできないだろう。
ただ、正直に話したところで、またも怒りを買うに違いない。
だから彼女は、セレナ達にもいいところがあるのだと教えて、目を覚まさせることにした。
「それはそうと、私は皆さんの可愛らしいところが、とても良いと思いますよ?」
「なにぃ~っ?」
「第一、大きくても困ることばかりで、いいことなんてありません! 足元は見えませんし、肩はこります! 服や下着だって地味なものしか買えませんし、男性の視線は集まりますし! セレナさん達がとても羨ましいです!」
ところが、彼女の言葉選びは、完全に過ちであった。
「「イヤミかこんにゃろーっ!」」
「ひゃあああああ!」
怒り心頭のセレナとリンに、前後左右から胸をもみくちゃにされるオフィーリア。
女性同士だから笑っていられる光景であって、いくら彼女が優しいからと言って、異性がやれば聖霊の鉄拳の餌食になると男性諸氏は覚えておいてほしい。
「……はあ、くだらないことでいつまでも騒がないでほしいですわね」
そんな3人のやり取りを、少し離れたところでハイデマリーが見ていた。
言葉遣いから察せるように、すっかり児戯に呆れているようだ。
「ここはユドノー、品位ある方が心身ともに癒されに来る場所ですのよ。子供のお遊びがしたいのなら、湯船を出て街の外の川で、水のかけあいでもしてなさいな」
「ぐぬぬ、さっきまでダンテとお風呂に入りたいってごねてたでしょ!」
「ハイデマリーだって、オフィーリアのおっぱいが気になるくせに」
セレナ達に指摘されると、ハイデマリーはざばーん、と立ち上がった。
「そんなことはありませんわ! わたくしは貴方達と違って、おじ様もメロメロになる立派なものがありましてよ!」
確かにハイデマリーは、背丈こそセレナとそう変わらないが、バストに関しては彼女よりもずっと大きい。
いわゆるトランジスタグラマー的な体系であるハイデマリーからすれば、ふたりほどオフィーリアに嫉妬する必要もないのだろう。
「……だ、だから、ちっともうらやましくなんて……」
しかし、彼女はざばざばと湯を横切って歩いてきたオフィーリアを見てしまった。
自分より高い背に、自分よりふたまわりほど巨大な――規格外。
なのにそれをひけらかさず、むしろ邪魔だと言い張る無自覚さ。
「どうかしましたか、ハイデマリーさん?」
「なんでもありませんわ! ふんっ!」
なんとなく敗北感を覚えてしまったハイデマリーは、つっけんどんな態度のまま、背を向けて肩まで湯に沈み込んでしまった。
(お、おじ様は胸の大きさだけで人を評価するようなお方ではありませんわ! でも、もしもあんなので誘惑されたら……うぅ~!)
そんな彼女の変化に気付かないふりをしてやるほど、セレナは善人ではない。
「絶対気にしてるでしょ~? ひひひ~!」
「下品な笑い方をしないでくださいましっ!」
口に手を当ててにやにやと笑うセレナに、ハイデマリーが湯をかけた。
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