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おっさん、A級冒険者の闇を暴く
やり直しなどない
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「その両腕じゃあ、もう冒険者復帰はできないな」
「あひっ、はひ、ひいぃッ!」
両腕を失ったアポロスはのたうち回りながら逃げようとするが、うまくいくわけがない。
「今更逃げるのか。判断が遅い」
「ぶっぎゃあああああああッ!?」
ダンテがナイフを振り下ろすと、今度はアポロスの両足が斬り落とされた。
相変わらず血はさほど噴き出ていないが、代わりにアポロスの額からは信じられない量の汗が流れ、口からは涎をまき散らしている。
「あし、あ、あ、あしがあああああああ!」
「安心しろ、俺はどこを斬られても出血で死なない斬り方を知ってる。つまり、お前にはまだ、楽になれる時間も与えられないわけだ……さて、と」
じたばたの芋虫の如く身をよじらせるアポロスの腹を、ダンテが踏みつけた。
「お前が見殺しにした仲間や試し切りに使ったやつ、診療所で待ってるエヴリンは、アポロスって冒険者を信じてるぞ。お前、本当に何とも思わないのか?」
ダンテの問いに対し、アポロスはおぞましい形相で叫んだ。
「うるざいいいいいッ! 俺は、俺様はやり直すんだああああああッ!」
その途端、ダンテの目がかっと見開いた。
「……やり直しなんてないんだよ」
「ひッ……!」
ドラゴンより鋭く、デーモンより恐ろしい目。
ぎらりと光る目と視線が合った瞬間、アポロスは恐怖でもりもりと便を垂れ流した。
モンスターを視線だけで殺しかけないその目は、もはや人間のそれではない。
「それが許されるのは、自分の罪と、弱さと向き合った人間だけだ。お前みたいな救いようのない小悪党に待ってるのはな、いいか、破滅だけだ」
それくらい、ダンテにとってアポロスの言葉は許されるものではなかった。
セレナやリンのように己を信じた者や、オフィーリアのように罪を認めて戦った者と同じように扱い、自分が許されると思っている。
その態度を、ダンテはとても許せなかった。
「話は終わりだ。最後に何か、言い残すことはあるか」
彼が静かにナイフを突きつけると、アポロスはもう、命乞いはしなかった。
「……殺してやる……テメェも……女も……犯して、嬲って……殺してやる……」
代わりに漏れだしたのは、やぶれかぶれの罵倒だ。
そして、彼の誤った判断は、ダンテの逆鱗に触れるには十分すぎる行いだった。
「……そうか」
次の瞬間、ダンテはナイフの先端をアポロスの口に押し込んだ。
「むぐおぁッ!?」
塞がりかけていた口の傷が開き、血がしたたる。
痛みに悶えるアポロスだが、悲鳴を上げるとナイフが顎と頭蓋骨を引き裂いてしまいそうで、とても声を出せない。
「……! ……!」
猿ぐつわを噛まされたような、みっともない声しか出せないアポロスがもがいていると、広間の入り口の方から声が聞こえてきた。
「ダンテーっ! まだそこにいるのーっ?」
セレナの声だ。
「あいつら、あの様子だとテミスを倒して、皆を助けたんだな」
仲間が近づいてきたのを察し、ダンテの視線が広間の入り口である通路に向いた。
そして、信じられない言葉を放った。
「セレナ、来ないほうがいい。アポロスはひどいさまになって死んだ」
――まだ生きているはずのアポロスが、死んだと言ったのだ。
「……!?」
まだ死んでいないと言いたいが、ナイフを口に差し込まれているせいでまったく話せないアポロスの上で、ダンテはとんでもない話を続けてゆく。
「あいつから闇ギルドの情報を聞こうとしたら、毒を飲んで死んだんだ。体が内側から溶けて、骨も肉もグズグズのシチューみたいになってるぜ」
「え、ええっ……!」
「キモ……」
これから何をされるのかを察し、アポロスの顔が青くなってゆく。
「きっと、闇ギルドからの報復を恐れたんだろうな。オフィーリア、セレナとリンを連れて外で待ってろ。死体を片付けたら戻る」
「分かりました。ふたりとも、こちらへ」
オフィーリアが仲間を連れてゆき、足音が聞こえなくなって、やっとダンテはアポロスを見た。
「……待たせたな。助けは来ないから、たっぷり苦しんでくれ」
ダンテは突き刺さったままの大剣に、もうひと振りのナイフをあてがい、流れっぱなしになっている毒を掬い取る。
しかも彼のナイフは、毒に触れているのに、ちっとも溶けていない。
「むーっ! んむ、むぅーっ!」
「俺のナイフが熔けてないのが、そんなにおかしいか? たかが毒くらいで、『アザトートクロム』製の刃がどうにかできるわけがないだろ?」
淡々と返事をしながら、ダンテが毒付きのナイフを、もう片方の刃にあてがう。
つう、と毒が刃を伝い、アポロスの口に向かって垂れてゆく。
「お前は仲間も、自分を信じてくれた人も裏切った。あまつさえ、俺の仲間を殺すと言った」
「む……む、むが……!」
「だから、体と魂に刻み込んでやる。永遠に忘れられない恐怖と絶望をな」
そしてついに、毒がナイフを渡り、アポロスの口に流れ込んだ。
「~~~~~~~~ッ!?」
その刹那、アポロスの全身を、形容しがたい激痛が襲った。
当然だ――彼は今、触れるだけで痛みを伴いながら体が熔けるほどの猛毒を、口を通じて全身で味わっているのだから。
「ん~~~~~~~ッ! ぶぐ~~むぐ~~~ッ!」
舌が熔けて、言葉が発せない。
喉が焼けて、声が出ない。
胸や肺が爛れて、呼吸もできない。
全身が内側から溶けて――痛い、痛い、痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!
「~~~……~~…………」
ついに毒が心臓を溶かしきるまで、たっぷりと時間がかかった。
アポロスはそれまで、無限に感じるほどの間、ショックで何百回死んでもおかしくないほどの痛みを味わい続けた。
果たして彼の体は、完全に消失していた。
残っているのは、ぐずぐずに溶けた体の中で唯一、ダンテを睨み続ける目だけだ。
「……そんなに憎いなら、化けて出て来い。お前の死を、やり直させてやるよ」
冷たく言い放ち、ダンテは彼の頭を踏みつぶした。
「ただし――結果は同じだろうけどな。何度でも、殺してやるさ」
大剣だけが惨めに残った広間で、ダンテは毒を払い、ナイフをしまった。
かくして、アポロスという偽りのA級冒険者は、自らの犯した罪にふさわしい罰を受けたのであった。
「あひっ、はひ、ひいぃッ!」
両腕を失ったアポロスはのたうち回りながら逃げようとするが、うまくいくわけがない。
「今更逃げるのか。判断が遅い」
「ぶっぎゃあああああああッ!?」
ダンテがナイフを振り下ろすと、今度はアポロスの両足が斬り落とされた。
相変わらず血はさほど噴き出ていないが、代わりにアポロスの額からは信じられない量の汗が流れ、口からは涎をまき散らしている。
「あし、あ、あ、あしがあああああああ!」
「安心しろ、俺はどこを斬られても出血で死なない斬り方を知ってる。つまり、お前にはまだ、楽になれる時間も与えられないわけだ……さて、と」
じたばたの芋虫の如く身をよじらせるアポロスの腹を、ダンテが踏みつけた。
「お前が見殺しにした仲間や試し切りに使ったやつ、診療所で待ってるエヴリンは、アポロスって冒険者を信じてるぞ。お前、本当に何とも思わないのか?」
ダンテの問いに対し、アポロスはおぞましい形相で叫んだ。
「うるざいいいいいッ! 俺は、俺様はやり直すんだああああああッ!」
その途端、ダンテの目がかっと見開いた。
「……やり直しなんてないんだよ」
「ひッ……!」
ドラゴンより鋭く、デーモンより恐ろしい目。
ぎらりと光る目と視線が合った瞬間、アポロスは恐怖でもりもりと便を垂れ流した。
モンスターを視線だけで殺しかけないその目は、もはや人間のそれではない。
「それが許されるのは、自分の罪と、弱さと向き合った人間だけだ。お前みたいな救いようのない小悪党に待ってるのはな、いいか、破滅だけだ」
それくらい、ダンテにとってアポロスの言葉は許されるものではなかった。
セレナやリンのように己を信じた者や、オフィーリアのように罪を認めて戦った者と同じように扱い、自分が許されると思っている。
その態度を、ダンテはとても許せなかった。
「話は終わりだ。最後に何か、言い残すことはあるか」
彼が静かにナイフを突きつけると、アポロスはもう、命乞いはしなかった。
「……殺してやる……テメェも……女も……犯して、嬲って……殺してやる……」
代わりに漏れだしたのは、やぶれかぶれの罵倒だ。
そして、彼の誤った判断は、ダンテの逆鱗に触れるには十分すぎる行いだった。
「……そうか」
次の瞬間、ダンテはナイフの先端をアポロスの口に押し込んだ。
「むぐおぁッ!?」
塞がりかけていた口の傷が開き、血がしたたる。
痛みに悶えるアポロスだが、悲鳴を上げるとナイフが顎と頭蓋骨を引き裂いてしまいそうで、とても声を出せない。
「……! ……!」
猿ぐつわを噛まされたような、みっともない声しか出せないアポロスがもがいていると、広間の入り口の方から声が聞こえてきた。
「ダンテーっ! まだそこにいるのーっ?」
セレナの声だ。
「あいつら、あの様子だとテミスを倒して、皆を助けたんだな」
仲間が近づいてきたのを察し、ダンテの視線が広間の入り口である通路に向いた。
そして、信じられない言葉を放った。
「セレナ、来ないほうがいい。アポロスはひどいさまになって死んだ」
――まだ生きているはずのアポロスが、死んだと言ったのだ。
「……!?」
まだ死んでいないと言いたいが、ナイフを口に差し込まれているせいでまったく話せないアポロスの上で、ダンテはとんでもない話を続けてゆく。
「あいつから闇ギルドの情報を聞こうとしたら、毒を飲んで死んだんだ。体が内側から溶けて、骨も肉もグズグズのシチューみたいになってるぜ」
「え、ええっ……!」
「キモ……」
これから何をされるのかを察し、アポロスの顔が青くなってゆく。
「きっと、闇ギルドからの報復を恐れたんだろうな。オフィーリア、セレナとリンを連れて外で待ってろ。死体を片付けたら戻る」
「分かりました。ふたりとも、こちらへ」
オフィーリアが仲間を連れてゆき、足音が聞こえなくなって、やっとダンテはアポロスを見た。
「……待たせたな。助けは来ないから、たっぷり苦しんでくれ」
ダンテは突き刺さったままの大剣に、もうひと振りのナイフをあてがい、流れっぱなしになっている毒を掬い取る。
しかも彼のナイフは、毒に触れているのに、ちっとも溶けていない。
「むーっ! んむ、むぅーっ!」
「俺のナイフが熔けてないのが、そんなにおかしいか? たかが毒くらいで、『アザトートクロム』製の刃がどうにかできるわけがないだろ?」
淡々と返事をしながら、ダンテが毒付きのナイフを、もう片方の刃にあてがう。
つう、と毒が刃を伝い、アポロスの口に向かって垂れてゆく。
「お前は仲間も、自分を信じてくれた人も裏切った。あまつさえ、俺の仲間を殺すと言った」
「む……む、むが……!」
「だから、体と魂に刻み込んでやる。永遠に忘れられない恐怖と絶望をな」
そしてついに、毒がナイフを渡り、アポロスの口に流れ込んだ。
「~~~~~~~~ッ!?」
その刹那、アポロスの全身を、形容しがたい激痛が襲った。
当然だ――彼は今、触れるだけで痛みを伴いながら体が熔けるほどの猛毒を、口を通じて全身で味わっているのだから。
「ん~~~~~~~ッ! ぶぐ~~むぐ~~~ッ!」
舌が熔けて、言葉が発せない。
喉が焼けて、声が出ない。
胸や肺が爛れて、呼吸もできない。
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痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!
「~~~……~~…………」
ついに毒が心臓を溶かしきるまで、たっぷりと時間がかかった。
アポロスはそれまで、無限に感じるほどの間、ショックで何百回死んでもおかしくないほどの痛みを味わい続けた。
果たして彼の体は、完全に消失していた。
残っているのは、ぐずぐずに溶けた体の中で唯一、ダンテを睨み続ける目だけだ。
「……そんなに憎いなら、化けて出て来い。お前の死を、やり直させてやるよ」
冷たく言い放ち、ダンテは彼の頭を踏みつぶした。
「ただし――結果は同じだろうけどな。何度でも、殺してやるさ」
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