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おっさん、A級冒険者の闇を暴く
A級冒険者VS特級冒険者
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「――しゃぎゃああああッ!」
セレナ達がテミスを撃破して『龍王の冠』の面々を助け出している頃、アポロスは凄まじい連撃をダンテめがけて放っていた。
巨大な刃に似つかわしくない、素早い斬撃が洞窟の広間に傷をつけてゆく。
「はーっはっはは! どうしたどうした、避けてばっかりじゃねえかァ!」
「……チッ」
アポロスの大剣がダンテの頭めがけて振り下ろされると、ついに彼もナイフを抜いた。
ナイフの鉤の部分で刃を止めるダンテだが、アポロスがそのさまを見てにやりと笑う。
「やっとやり合う気になったか? でもなァ、俺様のそばにいたら、火傷するぜェ!」
嫌な予感を覚えたダンテは、大剣を振り払うように弾き、距離を取った。
彼の予想は当たっていた。大剣に刻まれた切れ込みからしたたる紫色の液体が地面に落ちると、そこが煙を立てて、溶け始めたのだ。
「……毒か」
「見りゃ分かるだろ、毒だ! ただの毒じゃねえがな!」
毒を分泌する剣を地面に突き立てて、アポロスは舌を出して笑った。
「テングドクツルダケの胞子と50種類の毒虫、デストリカブトとヘルトリカブト、ハメツカエンタケの毒を混ぜ込んだ、テミス特製の猛毒だァ!」
「大剣の刃に、わざわざ毒を仕込んだか」
「大当たりだァ! ご褒美にテメェには毒の塊をプレゼントしてやるぜェ!」
猿の叫び声にも似た絶叫を轟かせ、アポロスは再びダンテに斬りかかる。
ダンテを一刀両断するという強い気迫を込めた斬撃は、剣士のそれというよりは、気が触れたバケモノのようなものだ。
しかもアポロスの血走った眼が、一層異常性をかき立てているのだ。
「作った本人のあいつすら使うのをためらった毒はな、肉や骨どころか、武器すら溶かすんだぜ! 『竜王の冠』の連中で試したから、効果はお墨付きだッ!」
そんなアポロスの言葉を聞き、ダンテの目が細くなる。
「ああ、言っておくが、俺様の剣は溶けねえぞ! しっかりとコーティングして、対毒性を限界まで上げてあるからな!」
後方に飛び退いて距離を取ったダンテが言った。
「仲間を試し切りに使ったのか」
「おいおいおい、仲間だの何だのと、ひとりぼっちのダンテちゃんが言ってんじゃねえよ!」
どうやらダンテが思っていたよりもずっと、アポロスは下劣な人間らしい。
仲間を見捨てるどころか、武器の試し切りに使うなど、セレナが聞いたらどれほど怒るだろうか。
「これまでずーっと誰とも組まずに、陰気な顔してギルドに通って、採取クエストしか受けないような根暗が、今更俺様の前に立ちはだかってんじゃねえぞォ!」
そしてもちろん、ダンテの心臓の奥からも、怒りの感情が湧きあがってくる。
セレナ達と一緒にい続けたからこそ生まれた、仲間への思いやりを込めた怒りだ。
「その根暗に手こずっているのがA級冒険者とは、笑えるな」
「んだとォ!?」
大剣にナイフで鍔迫り合うダンテは、歯を剥き出しにするアポロスを嘲笑う。
「ぎゃあぎゃあ騒いでるのは、自分の不安をごまかしてるからか? それとも本当は現実を理解していて、認めたくないだけか?」
「何が、何が言いてえんだよ! はっきり言いやがれ!」
「お前の実力は、どう見てもA級冒険者には達してない。テミスの協力がなけりゃ、B級に届くかも怪しいし、セレナ達にはどうやっても勝てないぜ」
「黙りやがれ、おっさんがあああァッ!」
「言えか黙れか、どっちかにしろよ」
ダンテがナイフで大剣を振り払うと、アポロスはよろめいた。
明らかにパワーの差があるというのに、アポロスはその事実を認めたくないのか、喚き散らしながら毒付きの大剣を構える。
「いいか、これから俺様はテメェと、テメェの仲間を殺して、すべての証拠を消す! 捕まえてる連中も殺して、俺様の秘密を知る奴を全員殺して、もう一度やり直すんだよ!」
何かの中毒になったかのように、アポロスが震える手で剣を握り締めて吼える。
開いた瞳孔、震える歯、荒い鼻息、すべてが彼の必死さと異常性を示している。
この男を放っておけば、必ず仲間や他者に危害を及ぼす。
アポロス・ハービンジャーとは、恐らくそうしないと生きていけない人間だ。
「だからダンテ、テメェだけは生かしちゃおけねえんだ! 死ね、死にやがれえェッ!」
ならばどうするか。
突進してくるアポロスを見据えるダンテの答えは決まっている。
『『竜王の冠』の仲間を――助けてあげて』
依頼主は、自分と同じパーティーの仲間を救ってほしいと言っていた。
「……エヴリン、お前の願いを叶えてやる」
果たしてダンテは、エヴリンに嘘をつくつもりも、約束を反故にするつもりもなかった。
ただし――彼女達を裏切る外道を許してやるつもりもなかった。
「――あッ」
わずかに声が漏れた、その刹那。
剣を握り締めていたアポロスの両腕は、ダンテに斬り落とされた。
「アポロスは、もう――お前らの仲間じゃないさ」
ダンテの冷たい声を聞いた瞬間、アポロスはやっと、自分の腕がないのに気づいたようだ。
「ぎゃあああああああああああッ!?」
宙を舞い、地面に刺さった大剣のそばで、アポロスは仰向けに倒れて叫ぶ。
普通ならとんでもない量の血が吹き出すはずだが、どういうわけか、断面からぴゅう、ぴゅう、と勢いの弱い噴水のように漏れ出すだけだ。
代わりにアポロスに押し寄せてくるのは、脳が処理できないほどの激痛である。
「お、お、おお、俺様の、あ、手がッ!? 手が、ない、ないいィ!?」
「腕を斬り落とされたくらいで騒ぐな」
涙を流して騒ぐアポロスの前に、ダンテが立つ。
彼の顔を見た途端、A級冒険者の顔が絶望に染まった。
「お前にはしっかり教えてやるよ。毒も、大剣も及ばない――本当の恐怖、ってやつをな」
アポロスは知ってしまったのだ。
これから自分は、ダンテ・ウォーレンによって殺されるのだと。
セレナ達がテミスを撃破して『龍王の冠』の面々を助け出している頃、アポロスは凄まじい連撃をダンテめがけて放っていた。
巨大な刃に似つかわしくない、素早い斬撃が洞窟の広間に傷をつけてゆく。
「はーっはっはは! どうしたどうした、避けてばっかりじゃねえかァ!」
「……チッ」
アポロスの大剣がダンテの頭めがけて振り下ろされると、ついに彼もナイフを抜いた。
ナイフの鉤の部分で刃を止めるダンテだが、アポロスがそのさまを見てにやりと笑う。
「やっとやり合う気になったか? でもなァ、俺様のそばにいたら、火傷するぜェ!」
嫌な予感を覚えたダンテは、大剣を振り払うように弾き、距離を取った。
彼の予想は当たっていた。大剣に刻まれた切れ込みからしたたる紫色の液体が地面に落ちると、そこが煙を立てて、溶け始めたのだ。
「……毒か」
「見りゃ分かるだろ、毒だ! ただの毒じゃねえがな!」
毒を分泌する剣を地面に突き立てて、アポロスは舌を出して笑った。
「テングドクツルダケの胞子と50種類の毒虫、デストリカブトとヘルトリカブト、ハメツカエンタケの毒を混ぜ込んだ、テミス特製の猛毒だァ!」
「大剣の刃に、わざわざ毒を仕込んだか」
「大当たりだァ! ご褒美にテメェには毒の塊をプレゼントしてやるぜェ!」
猿の叫び声にも似た絶叫を轟かせ、アポロスは再びダンテに斬りかかる。
ダンテを一刀両断するという強い気迫を込めた斬撃は、剣士のそれというよりは、気が触れたバケモノのようなものだ。
しかもアポロスの血走った眼が、一層異常性をかき立てているのだ。
「作った本人のあいつすら使うのをためらった毒はな、肉や骨どころか、武器すら溶かすんだぜ! 『竜王の冠』の連中で試したから、効果はお墨付きだッ!」
そんなアポロスの言葉を聞き、ダンテの目が細くなる。
「ああ、言っておくが、俺様の剣は溶けねえぞ! しっかりとコーティングして、対毒性を限界まで上げてあるからな!」
後方に飛び退いて距離を取ったダンテが言った。
「仲間を試し切りに使ったのか」
「おいおいおい、仲間だの何だのと、ひとりぼっちのダンテちゃんが言ってんじゃねえよ!」
どうやらダンテが思っていたよりもずっと、アポロスは下劣な人間らしい。
仲間を見捨てるどころか、武器の試し切りに使うなど、セレナが聞いたらどれほど怒るだろうか。
「これまでずーっと誰とも組まずに、陰気な顔してギルドに通って、採取クエストしか受けないような根暗が、今更俺様の前に立ちはだかってんじゃねえぞォ!」
そしてもちろん、ダンテの心臓の奥からも、怒りの感情が湧きあがってくる。
セレナ達と一緒にい続けたからこそ生まれた、仲間への思いやりを込めた怒りだ。
「その根暗に手こずっているのがA級冒険者とは、笑えるな」
「んだとォ!?」
大剣にナイフで鍔迫り合うダンテは、歯を剥き出しにするアポロスを嘲笑う。
「ぎゃあぎゃあ騒いでるのは、自分の不安をごまかしてるからか? それとも本当は現実を理解していて、認めたくないだけか?」
「何が、何が言いてえんだよ! はっきり言いやがれ!」
「お前の実力は、どう見てもA級冒険者には達してない。テミスの協力がなけりゃ、B級に届くかも怪しいし、セレナ達にはどうやっても勝てないぜ」
「黙りやがれ、おっさんがあああァッ!」
「言えか黙れか、どっちかにしろよ」
ダンテがナイフで大剣を振り払うと、アポロスはよろめいた。
明らかにパワーの差があるというのに、アポロスはその事実を認めたくないのか、喚き散らしながら毒付きの大剣を構える。
「いいか、これから俺様はテメェと、テメェの仲間を殺して、すべての証拠を消す! 捕まえてる連中も殺して、俺様の秘密を知る奴を全員殺して、もう一度やり直すんだよ!」
何かの中毒になったかのように、アポロスが震える手で剣を握り締めて吼える。
開いた瞳孔、震える歯、荒い鼻息、すべてが彼の必死さと異常性を示している。
この男を放っておけば、必ず仲間や他者に危害を及ぼす。
アポロス・ハービンジャーとは、恐らくそうしないと生きていけない人間だ。
「だからダンテ、テメェだけは生かしちゃおけねえんだ! 死ね、死にやがれえェッ!」
ならばどうするか。
突進してくるアポロスを見据えるダンテの答えは決まっている。
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果たしてダンテは、エヴリンに嘘をつくつもりも、約束を反故にするつもりもなかった。
ただし――彼女達を裏切る外道を許してやるつもりもなかった。
「――あッ」
わずかに声が漏れた、その刹那。
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「アポロスは、もう――お前らの仲間じゃないさ」
ダンテの冷たい声を聞いた瞬間、アポロスはやっと、自分の腕がないのに気づいたようだ。
「ぎゃあああああああああああッ!?」
宙を舞い、地面に刺さった大剣のそばで、アポロスは仰向けに倒れて叫ぶ。
普通ならとんでもない量の血が吹き出すはずだが、どういうわけか、断面からぴゅう、ぴゅう、と勢いの弱い噴水のように漏れ出すだけだ。
代わりにアポロスに押し寄せてくるのは、脳が処理できないほどの激痛である。
「お、お、おお、俺様の、あ、手がッ!? 手が、ない、ないいィ!?」
「腕を斬り落とされたくらいで騒ぐな」
涙を流して騒ぐアポロスの前に、ダンテが立つ。
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「お前にはしっかり教えてやるよ。毒も、大剣も及ばない――本当の恐怖、ってやつをな」
アポロスは知ってしまったのだ。
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