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探索者ライフ②パーティーハウスを建てよう!
ドタバタの果てに
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「――カムナ、フレイヤ、リゼット、マガツ……本当にごめんっ!」
くろがねの巨人が空で爆発してから、まるっと一週間。
ぴかぴかのパーティーハウスのリビングで、クリスは仲間達にぺこぺこと頭を下げていた。
あの後、ローズマリーにこってりと絞られたクリスは無理矢理休養を取らされて、パーティーハウスの建築に関われなかった。
ならば誰がこの綺麗な家を建てたのかというと、クリスに何かとお世話になっていた大工や同業者、その他諸々だ。
家が完成した頃にクリスが目覚めて、今に至るというわけだ。
「もっといい家を作れるんじゃないかって、俺にならもっとすごい家が作れるはずだって思ってるうちに、なんだか気がおかしくなってきちゃって……ギルドにも迷惑をかけちゃったし、その、ごめんっ!」
平謝りするクリスの前で、カムナ達もちょっぴり申し訳なさそうにはにかむ。
「気にしなくていいわよ。もとはと言えば、あたしの一言が原因だし……」
「クリス様が何かに夢中になると周りが見えなくなるのは、今に始まった話ではありませんわ。そういうところも含めて、貴方を素敵だと思っていますのよ」
「そうそう! あんたは真面目なのがカッコいいのよ!」
今回はクリスの暴走もそうだが、カムナ達の無茶な提案やリテイクにも原因がある。
要するに、双方真面目になりすぎた結果、とでも言った方が良いだろう。
「それに、二代目のパーティーハウスもいいものじゃないかっ! 私はとても気に入っているし、マガツもあそこで幸せそうにしているぞっ!」
「ごろごろ……にゃあ」
陽の当たるリビングで転がるマガツを見て、クリスもやっと笑顔を取り戻した。
「……よかった。すごく嬉しいよ……」
ほっと胸をなでおろす彼だが、いつもと様子が違う。
「ただ、ローズマリーのお仕置きだけはちょっとこたえるかもしれないわね」
カムナの言う通り、クリスは普段持っているツールや修理用のアイテムのすべてを、エクスペディション・ギルドに没収されていたのだ。
素手でも何かしらの修理・解体をこなしてしまうのがクリスだが、ローズマリーの監視の目が光っている以上、それを無視してまで仕事を始めたりはしないだろう。
「まさか『三日間のツール所持禁止』『修理、調整禁止』なんてお仕置きがあるなんて思ってもみなかったね……カムナの言う通り、これはむずむずして仕方ないよ」
「三代目パーティーハウスの破片が、街の外に落ちたからラッキーだったわ。あれがもし広場で爆発してたら、おかんむりじゃすまなかったわよ?」
「もしそうなってたなら、俺は今頃本部長に半殺しにされてるね」
クリスが察しているかはともかくとして、ローズマリーが彼を休ませているのは、単に罰則だけが理由ではない。
何日か熟睡していたのに、彼の目の下はまだ黒く汚れていて、ややげっそりしている。
明らかにまだクリスには休養が必要だと、カムナやフレイヤ、リゼット、マガツだけでなく、街の誰もが気づいていた。
「とりあえず、クリスは三日間ゆっくりしてなさい。ほら、そこに座って!」
だから、カムナはソファーに乱暴にクリスを座らせた。
当然からは何が起きたのか理解できていないが、フレイヤやリゼットもカムナと一緒になって、彼をごろりと横にさせた。
「三代目パーティーハウスが爆発してから、まだ一度も眠っていないんでしょう? 幽霊だって眠るんですから、クリス様もお休みになるべきですわ!」
「う、うん……ありが、と……」
すると、クリスは驚くほどあっさりと目を閉じ、そのまま寝息を立ててしまった。
彼自身は回復しているつもりだったのだろうが、やはり体は限界を超えていたようだ。
「あっという間に寝ちゃったわね。よっぽど疲れがたまってたみたい」
子供のように眠るクリスの頭をカムナが撫でていると、不意に外が騒がしくなった。
何が起きたのか、と一同が玄関を見ると、ホープ・タウンで暮らす様々な住民が、何やら手に抱えてわいわいとパーティーハウスに入ってきたのだ。
「よお、オロックリンはいるか?」
「今、お休みになったところですわ。どうかなさいましたの?」
一番前にいる中年の男は、籠に入った両手いっぱいのパンを見せて笑った。
「ああ、いや、近頃無茶してたみたいだしよ……うちのおかみが、元気になるメシでも持ってってやれっていうからよ、ほら!」
彼に続いて、街中の人々が思い思いのプレゼントを持ってクリスを囲む。
「あたしもそうなのよ、包丁研ぎのお礼で、ダンジョン産のリラックス・グッズよ!」
「クリスにーちゃんに、これ! 街の外で採ってきた、木の実だよ!」
「修理してもらってた礼だぜ!」
「たまにはゆっくりしろよな!」
最初は目を丸くしていたカムナ達も、住民達が何をしたがっているのかを察すると、互いに顔を見合わせて微笑んだ。
この街で、クリスは誰かを助けてばかりではない。
彼が苦しい時や辛い時、同じように助けの手が差し伸べられるのだ。
「クリス? あんたが思ってる以上に、あんたは人に支えられてるのよ」
もう一度頭を撫でて、眠ったままのクリスにカムナが言った。
「そのこと――目が覚めたら、うんと教えてあげなくちゃね♪」
こうして、クリスの暴走に続く騒動は幕を閉じた。
くろがねの巨人が空で爆発してから、まるっと一週間。
ぴかぴかのパーティーハウスのリビングで、クリスは仲間達にぺこぺこと頭を下げていた。
あの後、ローズマリーにこってりと絞られたクリスは無理矢理休養を取らされて、パーティーハウスの建築に関われなかった。
ならば誰がこの綺麗な家を建てたのかというと、クリスに何かとお世話になっていた大工や同業者、その他諸々だ。
家が完成した頃にクリスが目覚めて、今に至るというわけだ。
「もっといい家を作れるんじゃないかって、俺にならもっとすごい家が作れるはずだって思ってるうちに、なんだか気がおかしくなってきちゃって……ギルドにも迷惑をかけちゃったし、その、ごめんっ!」
平謝りするクリスの前で、カムナ達もちょっぴり申し訳なさそうにはにかむ。
「気にしなくていいわよ。もとはと言えば、あたしの一言が原因だし……」
「クリス様が何かに夢中になると周りが見えなくなるのは、今に始まった話ではありませんわ。そういうところも含めて、貴方を素敵だと思っていますのよ」
「そうそう! あんたは真面目なのがカッコいいのよ!」
今回はクリスの暴走もそうだが、カムナ達の無茶な提案やリテイクにも原因がある。
要するに、双方真面目になりすぎた結果、とでも言った方が良いだろう。
「それに、二代目のパーティーハウスもいいものじゃないかっ! 私はとても気に入っているし、マガツもあそこで幸せそうにしているぞっ!」
「ごろごろ……にゃあ」
陽の当たるリビングで転がるマガツを見て、クリスもやっと笑顔を取り戻した。
「……よかった。すごく嬉しいよ……」
ほっと胸をなでおろす彼だが、いつもと様子が違う。
「ただ、ローズマリーのお仕置きだけはちょっとこたえるかもしれないわね」
カムナの言う通り、クリスは普段持っているツールや修理用のアイテムのすべてを、エクスペディション・ギルドに没収されていたのだ。
素手でも何かしらの修理・解体をこなしてしまうのがクリスだが、ローズマリーの監視の目が光っている以上、それを無視してまで仕事を始めたりはしないだろう。
「まさか『三日間のツール所持禁止』『修理、調整禁止』なんてお仕置きがあるなんて思ってもみなかったね……カムナの言う通り、これはむずむずして仕方ないよ」
「三代目パーティーハウスの破片が、街の外に落ちたからラッキーだったわ。あれがもし広場で爆発してたら、おかんむりじゃすまなかったわよ?」
「もしそうなってたなら、俺は今頃本部長に半殺しにされてるね」
クリスが察しているかはともかくとして、ローズマリーが彼を休ませているのは、単に罰則だけが理由ではない。
何日か熟睡していたのに、彼の目の下はまだ黒く汚れていて、ややげっそりしている。
明らかにまだクリスには休養が必要だと、カムナやフレイヤ、リゼット、マガツだけでなく、街の誰もが気づいていた。
「とりあえず、クリスは三日間ゆっくりしてなさい。ほら、そこに座って!」
だから、カムナはソファーに乱暴にクリスを座らせた。
当然からは何が起きたのか理解できていないが、フレイヤやリゼットもカムナと一緒になって、彼をごろりと横にさせた。
「三代目パーティーハウスが爆発してから、まだ一度も眠っていないんでしょう? 幽霊だって眠るんですから、クリス様もお休みになるべきですわ!」
「う、うん……ありが、と……」
すると、クリスは驚くほどあっさりと目を閉じ、そのまま寝息を立ててしまった。
彼自身は回復しているつもりだったのだろうが、やはり体は限界を超えていたようだ。
「あっという間に寝ちゃったわね。よっぽど疲れがたまってたみたい」
子供のように眠るクリスの頭をカムナが撫でていると、不意に外が騒がしくなった。
何が起きたのか、と一同が玄関を見ると、ホープ・タウンで暮らす様々な住民が、何やら手に抱えてわいわいとパーティーハウスに入ってきたのだ。
「よお、オロックリンはいるか?」
「今、お休みになったところですわ。どうかなさいましたの?」
一番前にいる中年の男は、籠に入った両手いっぱいのパンを見せて笑った。
「ああ、いや、近頃無茶してたみたいだしよ……うちのおかみが、元気になるメシでも持ってってやれっていうからよ、ほら!」
彼に続いて、街中の人々が思い思いのプレゼントを持ってクリスを囲む。
「あたしもそうなのよ、包丁研ぎのお礼で、ダンジョン産のリラックス・グッズよ!」
「クリスにーちゃんに、これ! 街の外で採ってきた、木の実だよ!」
「修理してもらってた礼だぜ!」
「たまにはゆっくりしろよな!」
最初は目を丸くしていたカムナ達も、住民達が何をしたがっているのかを察すると、互いに顔を見合わせて微笑んだ。
この街で、クリスは誰かを助けてばかりではない。
彼が苦しい時や辛い時、同じように助けの手が差し伸べられるのだ。
「クリス? あんたが思ってる以上に、あんたは人に支えられてるのよ」
もう一度頭を撫でて、眠ったままのクリスにカムナが言った。
「そのこと――目が覚めたら、うんと教えてあげなくちゃね♪」
こうして、クリスの暴走に続く騒動は幕を閉じた。
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