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探索者ライフ②パーティーハウスを建てよう!
リゼット、マガツの提案
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さて、残るはリゼットとマガツがどんな家に住みたいかだ。
「次はリゼットの……な、なんだかすごい量の提案だね……」
これまでの二人は一枚の紙に意見をまとめていたが、リゼットは五枚にもわたる要望を書きしたためていた。
例えば、玄関の位置は端よりも中央がいいとか。
例えば、窓は大きくして陽の光を取り入れたいとか。
貴族らしくきれいな字で記されているのは、意外にもどれも真っ当な意見だ。
「わたくしとクリス様、その他諸々の住まう家ですもの。何事にも妥協をしないというのは、ラウンドローグ家の家訓の一つですの」
ふんす、と大きく鼻を鳴らしてから、リゼットはクリスに微笑んだ。
「もちろん、取捨選択はクリス様に委ねます。できる妻は、夫を立てるものですわ」
「お、夫なんて……俺にはまだ早いよ、そういうのは」
はにかむクリスのうっかり発言を、リゼットは聞き逃さなかった。
テーブルを乱暴に叩くほど興奮した彼女の目は、肉食獣のようにたちまち輝いた。
「まだ! 今、まだと言いましたわね! 言質取りましたわ、クリス様は将来ならわたくしと一緒になってもいいという証拠ですわーっ!」
「ええっ!? いやいや、ちょっと待って……」
戸惑うクリスをかばうように、カムナが呆れた調子でため息をついた。
「寝言言ってんじゃないわよ、恋愛脳のアホ幽霊」
「よぉーし! バラバラにしてやるから表出やがれですわ鉄クズ!」
「ストップ、二人ともストップ! とりあえず一つずつ見ていこうか!」
毎度のことながら、カムナとリゼットはちょっと会話をしただけでも喧嘩に発展する。
なのに、勝負事となると手を組んで強くなるのだから、不思議な関係だ。
(喧嘩するほど仲が良いってのは羨ましいかな、ははは……)
とりあえず二人を落ち着かせて、クリスは意見書をめくってゆく。
「ええと、まずは食堂……うん、皆揃って食事をする場所は必要だね。バルコニーも欲しいな、たまに外で作業したくなるし、庭もいいかも……あれ?」
真っ当な意見がいくつか並んでいたが、その中にはおかしなものもある。
「浴場が、とんでもなく広いね? 予定してる敷地の三割近くあるよ?」
「心の掃除ができる湯船は、どれほど大きくても困ることはありませんわ」
貴族のリゼットが言うのだから、きっと間違いないだろう。
「そ、そうかも……でもこの天蓋付きベッドと最高級ダンジョンウッド製のテーブルと椅子、完全撥水防水コーティングの屋根はちょっと難しいかな……流石に予算が追い付かないと思うよ……?」
「クリス様、家は住まう者の最後の砦ですわ。心と体の平穏のためにも、豪華でありすぎるということはありませんの。もっと贅沢してもいいですのよ!」
良い暮らしをしていた者のアドバイスなのだから、正しいのだろう。
「そ、そうかも……?」
「んなわけないでしょーがっ! クリス、流されすぎよ!」
とうとうカムナがクリスの襟首を引っ張り、やっと彼を正気に戻した。
こうでもしないと、きっととんでもない豪邸が完成していたはずだ。もちろん、予算などとても追いつかない、空想上の豪邸だが。
「最初の三つ以外は却下だなっ! いくら予算があっても足りないぞっ!」
フレイヤからも反対されたとあっては、流石のリゼットも譲歩せざるを得ない。
「仕方ありませんわね……ではクリス様、どのアイデアを取るかはお任せしますわ」
「ありがとう、リゼット。そういえばマガツは、何か意見はあるかな?」
クリスに話題をふられたマガツだけは、意見書を白紙で提出していた。
というのも、彼女は見た目こそ人間だが中身は魔獣だ。
会話はできるものの、文字の読み書きはとても難しいのではないかと、クリス達は意見書を渡してから気づいたのだ。
だから、クリスは直に意見をもらうことにした。
マガツはちょっとだけ考えこんでから言った。
「おやすみするお部屋がほしいの。マガツ、よく眠たくなるから」
「専用の仮眠室か……休憩室って言い換えた方がいいかな? 観葉植物を置いて、日当りをよくすればマガツもリラックスできるかもね」
ゴロゴロと喉を鳴らすマガツの様子は、提案も含めて猫のようだ。
「そこでクリスと寝るの。何もない日は、ずっと、ずーっと」
「あはは、一緒にお昼寝するのもいいね!」
愛らしい子猫のおねだりとあれば、クリスも断れない。
マガツが彼にすり寄るのも、親愛のアピール程度にしか思っていないのだ。
(ま、マガツの提案にはあっさり乗るのね)
(無欲の勝利ってやつかもしれませんわ)
飼い主とペットのような仲睦まじさを、カムナとリゼットはじっとりと見つめていた。
とにもかくにも、これでパーティーハウスのプランはおおむね決定した。
カムナの整備室にフレイヤのワインセラー、リゼットの食堂やバルコニー、マガツの仮眠室。すべてが揃った家は、きっと素晴らしい家になるだろう。
「うん、アイデアは大分固まった! じゃあ明日から早速、作業に取り掛かるよ!」
「じゃあ、あたし達も手伝うわ!」
カムナが手を挙げたが、クリスは少し申し訳なさそうに答えた。
「……そこなんだけど、カムナ達はしばらく宿で待機しててほしいな。完成した宿を見て驚いた顔が楽しみで……ってのは、ちょっとワガママかな?」
どうやらクリスなりに、一同にサプライズを用意したいらしい。
こんな提案を彼がしてくるのは初めてだった。
本当にいつになく、クリスは童心に帰っているようだ。助けたい気持ちはあるが、ここまでうきうきしている彼の気持ちに水を差すのは失礼だろう。
「そんなことないわよ! パーティーハウス、楽しみにしてるわね!」
四人が笑顔を見せると、クリスはサムズアップで応えた。
こうして、クリスのパーティーハウス建築が始まるのだった。
「次はリゼットの……な、なんだかすごい量の提案だね……」
これまでの二人は一枚の紙に意見をまとめていたが、リゼットは五枚にもわたる要望を書きしたためていた。
例えば、玄関の位置は端よりも中央がいいとか。
例えば、窓は大きくして陽の光を取り入れたいとか。
貴族らしくきれいな字で記されているのは、意外にもどれも真っ当な意見だ。
「わたくしとクリス様、その他諸々の住まう家ですもの。何事にも妥協をしないというのは、ラウンドローグ家の家訓の一つですの」
ふんす、と大きく鼻を鳴らしてから、リゼットはクリスに微笑んだ。
「もちろん、取捨選択はクリス様に委ねます。できる妻は、夫を立てるものですわ」
「お、夫なんて……俺にはまだ早いよ、そういうのは」
はにかむクリスのうっかり発言を、リゼットは聞き逃さなかった。
テーブルを乱暴に叩くほど興奮した彼女の目は、肉食獣のようにたちまち輝いた。
「まだ! 今、まだと言いましたわね! 言質取りましたわ、クリス様は将来ならわたくしと一緒になってもいいという証拠ですわーっ!」
「ええっ!? いやいや、ちょっと待って……」
戸惑うクリスをかばうように、カムナが呆れた調子でため息をついた。
「寝言言ってんじゃないわよ、恋愛脳のアホ幽霊」
「よぉーし! バラバラにしてやるから表出やがれですわ鉄クズ!」
「ストップ、二人ともストップ! とりあえず一つずつ見ていこうか!」
毎度のことながら、カムナとリゼットはちょっと会話をしただけでも喧嘩に発展する。
なのに、勝負事となると手を組んで強くなるのだから、不思議な関係だ。
(喧嘩するほど仲が良いってのは羨ましいかな、ははは……)
とりあえず二人を落ち着かせて、クリスは意見書をめくってゆく。
「ええと、まずは食堂……うん、皆揃って食事をする場所は必要だね。バルコニーも欲しいな、たまに外で作業したくなるし、庭もいいかも……あれ?」
真っ当な意見がいくつか並んでいたが、その中にはおかしなものもある。
「浴場が、とんでもなく広いね? 予定してる敷地の三割近くあるよ?」
「心の掃除ができる湯船は、どれほど大きくても困ることはありませんわ」
貴族のリゼットが言うのだから、きっと間違いないだろう。
「そ、そうかも……でもこの天蓋付きベッドと最高級ダンジョンウッド製のテーブルと椅子、完全撥水防水コーティングの屋根はちょっと難しいかな……流石に予算が追い付かないと思うよ……?」
「クリス様、家は住まう者の最後の砦ですわ。心と体の平穏のためにも、豪華でありすぎるということはありませんの。もっと贅沢してもいいですのよ!」
良い暮らしをしていた者のアドバイスなのだから、正しいのだろう。
「そ、そうかも……?」
「んなわけないでしょーがっ! クリス、流されすぎよ!」
とうとうカムナがクリスの襟首を引っ張り、やっと彼を正気に戻した。
こうでもしないと、きっととんでもない豪邸が完成していたはずだ。もちろん、予算などとても追いつかない、空想上の豪邸だが。
「最初の三つ以外は却下だなっ! いくら予算があっても足りないぞっ!」
フレイヤからも反対されたとあっては、流石のリゼットも譲歩せざるを得ない。
「仕方ありませんわね……ではクリス様、どのアイデアを取るかはお任せしますわ」
「ありがとう、リゼット。そういえばマガツは、何か意見はあるかな?」
クリスに話題をふられたマガツだけは、意見書を白紙で提出していた。
というのも、彼女は見た目こそ人間だが中身は魔獣だ。
会話はできるものの、文字の読み書きはとても難しいのではないかと、クリス達は意見書を渡してから気づいたのだ。
だから、クリスは直に意見をもらうことにした。
マガツはちょっとだけ考えこんでから言った。
「おやすみするお部屋がほしいの。マガツ、よく眠たくなるから」
「専用の仮眠室か……休憩室って言い換えた方がいいかな? 観葉植物を置いて、日当りをよくすればマガツもリラックスできるかもね」
ゴロゴロと喉を鳴らすマガツの様子は、提案も含めて猫のようだ。
「そこでクリスと寝るの。何もない日は、ずっと、ずーっと」
「あはは、一緒にお昼寝するのもいいね!」
愛らしい子猫のおねだりとあれば、クリスも断れない。
マガツが彼にすり寄るのも、親愛のアピール程度にしか思っていないのだ。
(ま、マガツの提案にはあっさり乗るのね)
(無欲の勝利ってやつかもしれませんわ)
飼い主とペットのような仲睦まじさを、カムナとリゼットはじっとりと見つめていた。
とにもかくにも、これでパーティーハウスのプランはおおむね決定した。
カムナの整備室にフレイヤのワインセラー、リゼットの食堂やバルコニー、マガツの仮眠室。すべてが揃った家は、きっと素晴らしい家になるだろう。
「うん、アイデアは大分固まった! じゃあ明日から早速、作業に取り掛かるよ!」
「じゃあ、あたし達も手伝うわ!」
カムナが手を挙げたが、クリスは少し申し訳なさそうに答えた。
「……そこなんだけど、カムナ達はしばらく宿で待機しててほしいな。完成した宿を見て驚いた顔が楽しみで……ってのは、ちょっとワガママかな?」
どうやらクリスなりに、一同にサプライズを用意したいらしい。
こんな提案を彼がしてくるのは初めてだった。
本当にいつになく、クリスは童心に帰っているようだ。助けたい気持ちはあるが、ここまでうきうきしている彼の気持ちに水を差すのは失礼だろう。
「そんなことないわよ! パーティーハウス、楽しみにしてるわね!」
四人が笑顔を見せると、クリスはサムズアップで応えた。
こうして、クリスのパーティーハウス建築が始まるのだった。
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