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6章 見習いの青年
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驚愕の事実だ。10歳の蓮也はちょっと生意気なかわいい少年だった。恋愛感情なんてまだまだ持ち合わせていなさそうだったのに。
「中三のときにもう一度会えて、すごく嬉しかった。父さんと仲良くしてるのを見て嫉妬もした。十羽さんが消えたときはマジで泣きそうだったよ。女とか男とか関係ない。俺が好きなのは十羽さんなんだ」
なんと10年も十羽を想ってくれていたことになる。
くらくらしていると、蓮也が少し悲しげな表情になった。
「やっぱり、10年も好きだったなんて重いよな……。さっきレストランで話そうとしたんだけど、怖がられそうで怖じ気づいちまった」
十羽は慌ててかぶりを振った。
「怖くないよ! びっくりしただけ」
「それじゃ、つき合ってくれる?」
期待に満ちた目を向けられる。十羽とつき合いたいと必死に願っている、良い返事を待っている目だ。
十羽の胸がきゅうんと甘く疼いた。こんなの、嬉しくないわけがない。
「僕、未来人なんだけど……いいのかな」
「明日、イチョウの神様のところへお願いをしに行こう。十羽さんがずっとここで暮らせますようにって。ていうか実は俺、この前十羽さんが来てから毎日、お願いに行ってた」
「毎日!?」
「ちょ、ちょっと待て! 怖がらないでくれ!」
「も、もう、びっくりしすぎて」
ふらふらして倒れそうな十羽の細い体を、蓮也が支えてくれた。
「十羽さん、好きです。どうか俺と、つき合ってください」
真剣な告白と必死の願いに、心が大きく揺さぶられる。体中が熱くなる。唇が震え、大きな瞳に涙が浮かんだ。好きな人から告白されて、ノーなんて言えるわけがない。
「は、はい」
そう答えた瞬間、蓮也が大きく息を吸った。
「ありがとう……! すげえ嬉しい!」
ギュッと強く抱きしめられる。熱い体温と速い心音から、歓喜の気持ちが伝わってきた。心臓が破裂しそうなほど脈打つ。信じられない。嬉しくて失神しそうだ。
怖ず怖ずと顔を上げると、彼がとろけるように目を細めた。大きな手で頬を包み込まれ、優しく髪を梳かれる。
「キス、してもいい?」
「……!」
卒倒しそうになったが、なんとか堪えてコクンと頷いた。
おとがいを取られ、眉目秀麗な顔がゆっくりと近づく。十羽の桃色の唇に、蓮也の薄い唇が重なった。
唇と一緒に、好き、という気持ちまでぴたりと重なったようなキス。
心が恋のドキドキで埋め尽くされる。初めて感じる、甘く優しい感触。
本当に好きな人とのキスは、体中が幸せで満たされるのだと知った。昔、無理矢理奪われたキスは、キスではなかったのだ。胸がいっぱいになり、彼の広い背中に腕を回した。もう片時も離れたくない。
蓮也が耳元で囁くように言う。
「なあ、あのでかいベッドで一緒に……寝る? あ、いや、十羽さんが嫌なら何もしないよ」
鼓動が跳ねた。
「嫌だなんて……」
好きな人と触れ合いたい、体を重ねたいという欲望は十羽にもある。
耳を赤くして、小声で「思わないよ」と言った。
「マ、マジか」
蓮也がゴクリと唾を飲む。
「マジで、いいのか?」
「うん……」
十羽はこの世界からいつ消えるかわからない存在である。消えてしまう前に、悔いが残らないよう心も体も深く繋がりたい。だけど一番の本音は、今すぐ何もかも忘れて蓮也に愛されたい。ただそれだけだ。
「中三のときにもう一度会えて、すごく嬉しかった。父さんと仲良くしてるのを見て嫉妬もした。十羽さんが消えたときはマジで泣きそうだったよ。女とか男とか関係ない。俺が好きなのは十羽さんなんだ」
なんと10年も十羽を想ってくれていたことになる。
くらくらしていると、蓮也が少し悲しげな表情になった。
「やっぱり、10年も好きだったなんて重いよな……。さっきレストランで話そうとしたんだけど、怖がられそうで怖じ気づいちまった」
十羽は慌ててかぶりを振った。
「怖くないよ! びっくりしただけ」
「それじゃ、つき合ってくれる?」
期待に満ちた目を向けられる。十羽とつき合いたいと必死に願っている、良い返事を待っている目だ。
十羽の胸がきゅうんと甘く疼いた。こんなの、嬉しくないわけがない。
「僕、未来人なんだけど……いいのかな」
「明日、イチョウの神様のところへお願いをしに行こう。十羽さんがずっとここで暮らせますようにって。ていうか実は俺、この前十羽さんが来てから毎日、お願いに行ってた」
「毎日!?」
「ちょ、ちょっと待て! 怖がらないでくれ!」
「も、もう、びっくりしすぎて」
ふらふらして倒れそうな十羽の細い体を、蓮也が支えてくれた。
「十羽さん、好きです。どうか俺と、つき合ってください」
真剣な告白と必死の願いに、心が大きく揺さぶられる。体中が熱くなる。唇が震え、大きな瞳に涙が浮かんだ。好きな人から告白されて、ノーなんて言えるわけがない。
「は、はい」
そう答えた瞬間、蓮也が大きく息を吸った。
「ありがとう……! すげえ嬉しい!」
ギュッと強く抱きしめられる。熱い体温と速い心音から、歓喜の気持ちが伝わってきた。心臓が破裂しそうなほど脈打つ。信じられない。嬉しくて失神しそうだ。
怖ず怖ずと顔を上げると、彼がとろけるように目を細めた。大きな手で頬を包み込まれ、優しく髪を梳かれる。
「キス、してもいい?」
「……!」
卒倒しそうになったが、なんとか堪えてコクンと頷いた。
おとがいを取られ、眉目秀麗な顔がゆっくりと近づく。十羽の桃色の唇に、蓮也の薄い唇が重なった。
唇と一緒に、好き、という気持ちまでぴたりと重なったようなキス。
心が恋のドキドキで埋め尽くされる。初めて感じる、甘く優しい感触。
本当に好きな人とのキスは、体中が幸せで満たされるのだと知った。昔、無理矢理奪われたキスは、キスではなかったのだ。胸がいっぱいになり、彼の広い背中に腕を回した。もう片時も離れたくない。
蓮也が耳元で囁くように言う。
「なあ、あのでかいベッドで一緒に……寝る? あ、いや、十羽さんが嫌なら何もしないよ」
鼓動が跳ねた。
「嫌だなんて……」
好きな人と触れ合いたい、体を重ねたいという欲望は十羽にもある。
耳を赤くして、小声で「思わないよ」と言った。
「マ、マジか」
蓮也がゴクリと唾を飲む。
「マジで、いいのか?」
「うん……」
十羽はこの世界からいつ消えるかわからない存在である。消えてしまう前に、悔いが残らないよう心も体も深く繋がりたい。だけど一番の本音は、今すぐ何もかも忘れて蓮也に愛されたい。ただそれだけだ。
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