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五十六話 【帰宅】
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王国から暫く歩きヘンリ王国に辿り着いていた。
まだ日は暮れておらず余裕があると判断したフェルは
そこで止まる事は無く歩き始め、今は草原を歩いている。
ウルエはヘンリ王国で一泊すると思っていた為、
フェルの行動に動揺してしまったが我儘を聞いてもらっている以上は
お姉ちゃんに従うと決めているので文句は言わない。
大人しく付いて来るウルエとは裏腹にフェルは常時ニヤニヤとしていた。
それもヘンリ王国を過ぎてからそのニヤつきは下品さを増していった。
その理由はと言うと――
(ウルエと野宿だなんて、考えるだけで涎が止まらないわ!
寝袋も何もない状況でクタクタなら自然と抱き合う形で寝る様になるわよね、
そして徐々に盛り上がっていって遂には夢が叶うのよ!!
さぁ、ウルエ、大人しく私に抱かれなさい!)
「はぁ、はぁはぁ」
「お、お姉ちゃん!?疲れてるの?休憩しようよ!」
興奮のあまり息を切らしてしまい、ウルエに心配されてしまった。
心配してくれるのは嬉しいが、まだ歩かないとウルエがクタクタにならないため、
必死に元気な事をアピールする。
「え、あ、大丈夫よウルエ!ちょっと興奮――じゃなかった、
汚い空気を排出していただけよ!」
「そ、そうなの?なら良いんだけど……」
ウルエは薄々気が付いていた。
(お姉ちゃん野宿で何か企んでるな……これは何としても回避しなければ!!)
フェルに従うと決めていたが、流石に肉体を差し出すつもりはまだまだ無い。
自分の身を護るには取り敢えず野宿を回避しなければならない。
一度フェルのペースに巻き込まれてしまうとそこから抜け出せる自信がないウルエは
此処から魔王城までずっと歩き続けようと決めたのであった。
今までは本能に任せて眠くなったら直ぐに寝ていたウルエだったが、
実はフェヌアヌの実を食べているウルエは数日間寝なくても何の支障は無いのだ。
治癒力が高まっているため、多少の無理をしてもそう簡単に壊れはしない。
「う、ウルエ!?」
「早く皆に会いたい!」
ウルエは作戦を悟られないようにと出来るだけ無邪気な笑顔を向けて
フェルの事を抜かし先頭を歩く。
もちろん地図など全く知らないので道はちょくちょく振り返ってフェルに聞いている。
結構早めのペースで歩く二人だったが、その顔に疲れの色は全く見えず、
かなりの長い時間歩き続け辺りは既に真っ暗だ。
ウルエは目に魔力を集中させて視界を確保しながら歩く。
フェルは悪魔の為、暗闇でも問題なく見えている。
「ウルエ、そろそろ休まない?」
「いや、まだ行こうよ!此処は危険だし、俺はお姉ちゃんに怪我しないでほしいからさ」
出来るだけフェルが喜びそうな事を言うウルエ。
その効果は抜群でフェルは顔を真っ赤にして目を蕩けさせ
ウルエの後を尻尾を振って付いていく。
二人は魔物が多く生息する森の中へと入っていく。
「っ!」
森に入った途端気配察知に幾つもの魔物の気配がひっかかる。
その多さに怯んでしまったが驚くことに魔物の気配がどんどん消えていくのだ。
興味をなくして逃げて行ってくれたと思ったウルエだが、
真実はそんなに優しいものではないのだ。
ウルエの背後ではフェルが物凄い形相で広範囲に魔法を放ち、
魔物を跡形も無く消し去っているのだ。
ウルエに敵対するものに、敵対していなくとも慈悲は無い。
一瞬にして森に生息していた魔物達の大半が消滅したのであった。
「ウルエ、そろそろ……」
夜が明け太陽が出始めた頃、フェルはウルエにそう提案したが、
「もうちょっとで着くよ!お姉ちゃん頑張って!俺も頑張るから!!」
「うぅ……そうね、そうよね!頑張りましょう!!」
ウルエに上手いように断れて歩き続けることになった。
実際にもう少しで魔王城に辿り着くのだ。
既に森は抜けており、後は暫く歩けば着く。
休みも挟んで三日かかるハズだったが、
一日と数時間ぶっ通しで歩き続けウルエ達は魔王城に辿り着いた。
「ふ、フェル様!?」
魔王城の周りを警備している下級悪魔がこちらに気が付き驚愕の声を上げていた。
それに連なり周りにいた悪魔たちも存在に気が付き続々と集まってくる。
ウルエはそんな様子を横目で見つつ、相変わらずの禍々しいバラを見て懐かしく感じていた。
まだ日は暮れておらず余裕があると判断したフェルは
そこで止まる事は無く歩き始め、今は草原を歩いている。
ウルエはヘンリ王国で一泊すると思っていた為、
フェルの行動に動揺してしまったが我儘を聞いてもらっている以上は
お姉ちゃんに従うと決めているので文句は言わない。
大人しく付いて来るウルエとは裏腹にフェルは常時ニヤニヤとしていた。
それもヘンリ王国を過ぎてからそのニヤつきは下品さを増していった。
その理由はと言うと――
(ウルエと野宿だなんて、考えるだけで涎が止まらないわ!
寝袋も何もない状況でクタクタなら自然と抱き合う形で寝る様になるわよね、
そして徐々に盛り上がっていって遂には夢が叶うのよ!!
さぁ、ウルエ、大人しく私に抱かれなさい!)
「はぁ、はぁはぁ」
「お、お姉ちゃん!?疲れてるの?休憩しようよ!」
興奮のあまり息を切らしてしまい、ウルエに心配されてしまった。
心配してくれるのは嬉しいが、まだ歩かないとウルエがクタクタにならないため、
必死に元気な事をアピールする。
「え、あ、大丈夫よウルエ!ちょっと興奮――じゃなかった、
汚い空気を排出していただけよ!」
「そ、そうなの?なら良いんだけど……」
ウルエは薄々気が付いていた。
(お姉ちゃん野宿で何か企んでるな……これは何としても回避しなければ!!)
フェルに従うと決めていたが、流石に肉体を差し出すつもりはまだまだ無い。
自分の身を護るには取り敢えず野宿を回避しなければならない。
一度フェルのペースに巻き込まれてしまうとそこから抜け出せる自信がないウルエは
此処から魔王城までずっと歩き続けようと決めたのであった。
今までは本能に任せて眠くなったら直ぐに寝ていたウルエだったが、
実はフェヌアヌの実を食べているウルエは数日間寝なくても何の支障は無いのだ。
治癒力が高まっているため、多少の無理をしてもそう簡単に壊れはしない。
「う、ウルエ!?」
「早く皆に会いたい!」
ウルエは作戦を悟られないようにと出来るだけ無邪気な笑顔を向けて
フェルの事を抜かし先頭を歩く。
もちろん地図など全く知らないので道はちょくちょく振り返ってフェルに聞いている。
結構早めのペースで歩く二人だったが、その顔に疲れの色は全く見えず、
かなりの長い時間歩き続け辺りは既に真っ暗だ。
ウルエは目に魔力を集中させて視界を確保しながら歩く。
フェルは悪魔の為、暗闇でも問題なく見えている。
「ウルエ、そろそろ休まない?」
「いや、まだ行こうよ!此処は危険だし、俺はお姉ちゃんに怪我しないでほしいからさ」
出来るだけフェルが喜びそうな事を言うウルエ。
その効果は抜群でフェルは顔を真っ赤にして目を蕩けさせ
ウルエの後を尻尾を振って付いていく。
二人は魔物が多く生息する森の中へと入っていく。
「っ!」
森に入った途端気配察知に幾つもの魔物の気配がひっかかる。
その多さに怯んでしまったが驚くことに魔物の気配がどんどん消えていくのだ。
興味をなくして逃げて行ってくれたと思ったウルエだが、
真実はそんなに優しいものではないのだ。
ウルエの背後ではフェルが物凄い形相で広範囲に魔法を放ち、
魔物を跡形も無く消し去っているのだ。
ウルエに敵対するものに、敵対していなくとも慈悲は無い。
一瞬にして森に生息していた魔物達の大半が消滅したのであった。
「ウルエ、そろそろ……」
夜が明け太陽が出始めた頃、フェルはウルエにそう提案したが、
「もうちょっとで着くよ!お姉ちゃん頑張って!俺も頑張るから!!」
「うぅ……そうね、そうよね!頑張りましょう!!」
ウルエに上手いように断れて歩き続けることになった。
実際にもう少しで魔王城に辿り着くのだ。
既に森は抜けており、後は暫く歩けば着く。
休みも挟んで三日かかるハズだったが、
一日と数時間ぶっ通しで歩き続けウルエ達は魔王城に辿り着いた。
「ふ、フェル様!?」
魔王城の周りを警備している下級悪魔がこちらに気が付き驚愕の声を上げていた。
それに連なり周りにいた悪魔たちも存在に気が付き続々と集まってくる。
ウルエはそんな様子を横目で見つつ、相変わらずの禍々しいバラを見て懐かしく感じていた。
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