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三十五点五話 【女神エミ】
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女神エミは今日も今日とてウルエの行動を観察する。
観察すると言ってもそこまでハッキリとみえるわけではない。
ぼんやりと何かをしているな~程度しか認識が出来ないのである。
それも女神の魔力を最大限に使ってやっとのことだ。
「ウルエ、今日もコール使わない……つまんない」
そうお気に入りのぬいぐるみを動かしながら
不満を口にするが本音を言うと、
こうしてウルエのことを観ていられるだけで満足だった。
自分の事を覚えていてくれる存在がいるだけで満足だった。
女神エミは数々の転生者をこの世界に送ってきたのだが、
彼女の存在をおぼえている人物は一人たりともいなかった。
女神エミの特殊能力――他人の欲する能力を与える代わりに
相手から自分の存在が消えるというものだ。
幾らエミに好意を向けても欲するのは所詮、力。
皆皆そうだった。
上辺だけの好意を向けて内心は別。
誰からも存在を認められない、知られない。
誰からも見つけてもらえない彼女はそんな日々に嫌気が指し、
徐々に心を閉ざしていき、転生者に送る言葉も力やハーレムを押す様になり
――そんなある日の出来事だった。
「君は誰なんだい?
こんな何もない所にいるけど退屈じゃないの?」
上辺だけの言葉じゃない、それは彼の本心からの言葉だとエミは理解できた。
初めてだった、自分自身を優先するよりも先に此方のことを気にする人間は。
だから、少しだけ夢を見た。
少しで良い。少しだけで良いから自分の存在を認めてくれる相手がいる時間を、
少しだけで良いから見たかったのだ。
だが、彼は夢をかなえてくれたのだ。
無責任な一言で――
「じゃあ、エミに任せるよ」
その言葉を聞きエミは泣きそうになってしまった。
今までに掛けられたことにない言葉。
弱っていた彼女にはその言葉が本当にうれしくてたまらなかった。
だから、エミは最後の希望を、我儘を彼にぶつける。
「新太にはコールを授ける」
(嫌われたくない、だけど我儘だってわかってる。
でも、どうか、私の希望を、私の我儘をどうか、どうか聞いてください)
「コ、こーる?」
彼は明らかに不振がっていた。
その表情を見てエミは今にも泣き崩れそうになっていた。
だが、必死に堪え女神の役目を果たす。
「そう、コール。
コールを使えば何時でも私を呼び出すことができる」
コールにはもう一つの能力があり、
女神エミの存在を何があっても一生忘れないというものだ。
これは彼女の希望が作り出した能力。最後の我儘だ。
「は?」
彼の口から自然とその言葉が出た。当然だ。
エミは今にも消えてしまいたい気持ちになりながらも堪える。
(やっぱり、無理だよね……)
「どうしてそんな能力を?」
「新太、他の人と違う。
自分の事だけじゃなくて私の事まで気に掛けてくれた……
私は何時も暇だから新太に構ってほしい……から。」
女神として転生者の問いは答えなくてはいけない。
涙をぐっと堪えて女神エミの最後の希望であり我儘の説明をする。
(もう、やめたいな。女神なんて――)
そう思ったとき――
「そっか、まぁ俺は平和に暮らすだけだから
それぐらいの能力がピッタリだな。
うん、ありがとう、それで行くよ。」
「え、……う、うん、じゃあ最後に転生する場所を選んで。」
今までに見たことも無いくらいの眩しいほどの笑みを浮べた。
これまでの全ての悲しみが消える程の。
何もかもがどうでもよくなる程の嬉しさ。
このとき彼女は決意したのだ。彼に全てを捧げようと――
そんな運命の瞬間から数年がたった今でも
女神エミは新太――ウルエに対する絶対的な好意がある。
そんな彼女に更にウルエは無意識にだが幸せを捧げる。
『俺は可愛い可愛い女神エミにこれからもこれまでも一生分の誓いを捧げる。
最近コールを使わなくてごめんなさい。近いうちに必ずつかいますので、
どうか怒らないでください。エミの事を忘れたりはしませんから!』
「あぁ、ウルエ。私も……これからもこれまでも――私の全てを捧げる」
こうしてウルエの知らない間にエミとの絆が更に深まっていたのである。
観察すると言ってもそこまでハッキリとみえるわけではない。
ぼんやりと何かをしているな~程度しか認識が出来ないのである。
それも女神の魔力を最大限に使ってやっとのことだ。
「ウルエ、今日もコール使わない……つまんない」
そうお気に入りのぬいぐるみを動かしながら
不満を口にするが本音を言うと、
こうしてウルエのことを観ていられるだけで満足だった。
自分の事を覚えていてくれる存在がいるだけで満足だった。
女神エミは数々の転生者をこの世界に送ってきたのだが、
彼女の存在をおぼえている人物は一人たりともいなかった。
女神エミの特殊能力――他人の欲する能力を与える代わりに
相手から自分の存在が消えるというものだ。
幾らエミに好意を向けても欲するのは所詮、力。
皆皆そうだった。
上辺だけの好意を向けて内心は別。
誰からも存在を認められない、知られない。
誰からも見つけてもらえない彼女はそんな日々に嫌気が指し、
徐々に心を閉ざしていき、転生者に送る言葉も力やハーレムを押す様になり
――そんなある日の出来事だった。
「君は誰なんだい?
こんな何もない所にいるけど退屈じゃないの?」
上辺だけの言葉じゃない、それは彼の本心からの言葉だとエミは理解できた。
初めてだった、自分自身を優先するよりも先に此方のことを気にする人間は。
だから、少しだけ夢を見た。
少しで良い。少しだけで良いから自分の存在を認めてくれる相手がいる時間を、
少しだけで良いから見たかったのだ。
だが、彼は夢をかなえてくれたのだ。
無責任な一言で――
「じゃあ、エミに任せるよ」
その言葉を聞きエミは泣きそうになってしまった。
今までに掛けられたことにない言葉。
弱っていた彼女にはその言葉が本当にうれしくてたまらなかった。
だから、エミは最後の希望を、我儘を彼にぶつける。
「新太にはコールを授ける」
(嫌われたくない、だけど我儘だってわかってる。
でも、どうか、私の希望を、私の我儘をどうか、どうか聞いてください)
「コ、こーる?」
彼は明らかに不振がっていた。
その表情を見てエミは今にも泣き崩れそうになっていた。
だが、必死に堪え女神の役目を果たす。
「そう、コール。
コールを使えば何時でも私を呼び出すことができる」
コールにはもう一つの能力があり、
女神エミの存在を何があっても一生忘れないというものだ。
これは彼女の希望が作り出した能力。最後の我儘だ。
「は?」
彼の口から自然とその言葉が出た。当然だ。
エミは今にも消えてしまいたい気持ちになりながらも堪える。
(やっぱり、無理だよね……)
「どうしてそんな能力を?」
「新太、他の人と違う。
自分の事だけじゃなくて私の事まで気に掛けてくれた……
私は何時も暇だから新太に構ってほしい……から。」
女神として転生者の問いは答えなくてはいけない。
涙をぐっと堪えて女神エミの最後の希望であり我儘の説明をする。
(もう、やめたいな。女神なんて――)
そう思ったとき――
「そっか、まぁ俺は平和に暮らすだけだから
それぐらいの能力がピッタリだな。
うん、ありがとう、それで行くよ。」
「え、……う、うん、じゃあ最後に転生する場所を選んで。」
今までに見たことも無いくらいの眩しいほどの笑みを浮べた。
これまでの全ての悲しみが消える程の。
何もかもがどうでもよくなる程の嬉しさ。
このとき彼女は決意したのだ。彼に全てを捧げようと――
そんな運命の瞬間から数年がたった今でも
女神エミは新太――ウルエに対する絶対的な好意がある。
そんな彼女に更にウルエは無意識にだが幸せを捧げる。
『俺は可愛い可愛い女神エミにこれからもこれまでも一生分の誓いを捧げる。
最近コールを使わなくてごめんなさい。近いうちに必ずつかいますので、
どうか怒らないでください。エミの事を忘れたりはしませんから!』
「あぁ、ウルエ。私も……これからもこれまでも――私の全てを捧げる」
こうしてウルエの知らない間にエミとの絆が更に深まっていたのである。
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