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六月末日、放雷旅館
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八嶋の三文文士、坂本良行が南洋の大都市『星海』に流れ着いて、そろそろ三度目の夏が来る。
一年目は、暑いと言われた生まれ故郷をさらに上回る湿度にへたばっていた。
二年目は、土地っ子に教えて貰った避暑を行いつつ、それでも何度も暑気当りを起こしていた。
さて、三年目の今年こそは、と思っている矢先に、古巣の出版社から小包が届いた。
中身は、原稿用紙二綴りと昔の担当であった女流編集者と、現在行きがかり上現担当となった編集者からの手紙が入っていた。
手紙は時候の挨拶から、各々自身の近況を伝える内容だった。が、二人ともはっきりとは書かないものの、文の端々に次回作を促す空気がほの見えていた。
「あん人達は……」
苦笑いを浮かべ、良行は華国風の細工で飾られた文卓に向き直った。
その引き出しに入れていた、真黒に書き込みされた手帳を取り出し、記憶を辿るようにページを繰った。
昨年の晩夏、『星海』の沖に浮かぶとある島に起きた事件を思い出す為に。
一年目は、暑いと言われた生まれ故郷をさらに上回る湿度にへたばっていた。
二年目は、土地っ子に教えて貰った避暑を行いつつ、それでも何度も暑気当りを起こしていた。
さて、三年目の今年こそは、と思っている矢先に、古巣の出版社から小包が届いた。
中身は、原稿用紙二綴りと昔の担当であった女流編集者と、現在行きがかり上現担当となった編集者からの手紙が入っていた。
手紙は時候の挨拶から、各々自身の近況を伝える内容だった。が、二人ともはっきりとは書かないものの、文の端々に次回作を促す空気がほの見えていた。
「あん人達は……」
苦笑いを浮かべ、良行は華国風の細工で飾られた文卓に向き直った。
その引き出しに入れていた、真黒に書き込みされた手帳を取り出し、記憶を辿るようにページを繰った。
昨年の晩夏、『星海』の沖に浮かぶとある島に起きた事件を思い出す為に。
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