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1章

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 ここの離宮の庭園は広い。
 王宮や王族が管理している他の離宮と比べても、一番の大きさを誇る。

 結構な距離を歩いて、やっと庭園の中心に着くというところで、とある音が聴こえてきた。


 透き通るような歌声と綺麗な音色

 自然と心が落ち着くような感じがすると同時に何故か私はその音に強く引かれた。


 確かこの音色は、ピアノという楽器のもののはずだ。
 美希が昔、弾けるようになりたいと思って挑戦していたが、楽器の難易度の高さと公務があり断念したと言っていたのを思い出す。
 それに、こんなにも繊細で綺麗な音色は聴いたことがない。

 この歌声だってそうだ。
 どこまでも届くような透き通った声は、

 一体、誰がこの音を奏でているのだ?




 庭園の中心が見えてきた。


「……っ!!」


 そこにいたのは、1年前と同じようにベットに寝ているはずであり、ここにはいるはずのない、私の子供たちだった。


 ───────────────


 あー、驚いてる。
 仮にも、王なのにそんなに感情を表に出していいのかな?
 心配になっちゃうね。

 ところで、僕らの歌は気に入って貰えたかな?
 王と第1王妃と執事長は、僕らの姿を見てすごく驚いていて今は歌を気にする余裕もないようだけれど、その他の王妃や王子、王女や使用人までもが目を見開いて歌に聴き入ってくれているから、それは気に入ったと受け取ってもいいのかな?
 もし、気に入ってくれたなら輝夜を無理やり連れてきた意味があるね。

 実は今日、まだ日が昇っていて明るい時間帯に起こされた僕はあまり機嫌が良くなかったの。
 だって、こんなに日が出てる時間に起こされて、寝起きは最悪だし、いざ会うってなってなんか面倒くさくなっちゃった。

 そういうことで離宮から脱走したの!
 春夜たちも、僕の思ってることをわかってるらしくて追いかけてこないし、輝夜に至っては、あとは俺がやっとくからゆっくりお昼寝してきてねって頭なでなでしてくれた!
 もう僕、おにい大好きすぎて困っちゃう!

 離宮から脱走してから僕は、王族家族たちが用を済ませて帰るまで庭園の大きな木の上でお昼寝する予定で、実際にお昼寝してたんだけど、その人たちが来た時に予想よりも大人数だったから驚いて起きちゃった。
 もう一度、お昼寝しようと思ったんだけど人間たちの声や気配が騒がしくて寝れなかったの…。
 騒がしいことやお昼寝を邪魔されたこともあって、僕さらに機嫌悪くしちゃってね。
 急に輝夜に抱きしめて貰いたくなって、輝夜に会いに行ったの。
 輝夜はテラスで本を読んでて、人間たちを待ってる状態だったけど、僕を見てすぐに本を読むのをやめてくれたの。
 それからいっぱい抱きしめて貰って、僕がお昼寝できないことを知ったら、「じゃあ、久々に遊ぶ?」って言われて、一緒に演奏を庭園ですることになったのね。



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