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1章

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 ルーゼルは輝夜たちの威圧から解放された瞬間、ソファーに脱力した。
 息苦しさもなくなり、ルーゼルは必死に息をする。
 騎士団長であるルーゼルがここまで息苦しさを感じることは異常だ。

 それを月を除いた輝夜たちは、冷たい目でルーゼルをみている。
 月は無表情だ。

 ルーゼルは必死に息をしながら考えた。

 強い。

 まだ息苦しさも残っているルーゼルの頭は、ただそれだけしか考えることが出来なかった。

 やっと呼吸も治まってきた頃、ドアは叩かれた。

「入れ。」

 気持ちを落ち着けたルーゼルが入室を許可した。

「失礼します。
 検査の準備が完了しました。
 ご案内致します。」

「よろしく頼む。」

 ルーゼルは立ち上がり、扉へ向かった。
 輝夜は月を抱いたまま立ち上がり、ルーゼルに続いた。
 もちろん、春夜と冬夜も一緒だ。

 部屋から出て、教会の中を進んでいく。


 静かな空間に足音だけが響く。


 しばらく歩いていると、前方に大きな扉が見えてきた。

「こちらです。
 中にお入りください。」

 中に入ると、部屋の中は意外にも広かった。
 部屋の中央には大きな機械がある。

 大司教はそのまま機械の前へと進んでいく。

 ちょっと歩いて、機械の前に来た。

「こちらで検査、させていただきます。
 こちらの中央の板に魔力を流してください。」

 大司教は説明を終えると、一歩下がった。

「さあ、やってくれ。」

 ルーゼルは言った。
 ルーゼルは先程、あんなことをさせられたにも関わらず、とても楽しみにしていた。
 おそらく、自分よりも強い存在に期待していたのだろう。

『ねぇ、輝夜。
 どのくらいの魔力を出せばいいの?』

『あ、確かに。
 ん~、どのくらいなんだろう…?』

『てきとーにやっちゃだめなの?』

『だめですよ、春夜。
 そんなことしたら、機械が壊れます。』

 上から、月、輝夜、春夜、冬夜の順に他の人に聞こえないように、頭の中で話していた。

『緑くらいの魔力でいいかな?』

『あ~、いいと思う。』

『決まり~。』

『それくらいならいいと思います。』

 こうしてゆる~い感じで決まったことだが、これは後々世界を変えていくことになる。


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