改訂版 勇者と聖女の育成請け負います_みんなで育てれば怖くないね

にしのみつてる

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第6章

6-6 冒険者中級講習を受けてみた

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 翌朝、サトルとクルミは冒険者中級講習を受けている真っ最中だった。

 タブレットはキャンピングカーに置いてきたし、短剣型魔導銃とクルミさんの杖もキャンピングカーの中に置いてきた。最後にサトルがキャンピングカーを収納をした。
 
 冒険者中級講習の受講料金は一人銀貨2枚と全国一律で金額は決まっていた。冒険者ギルドの受付で二人分の銀貨4枚を払った。

「講習は,午前の鐘の後で別館の講習室で行われますのでお急ぎください」
 受付嬢に急かされて二人は別館の講習室へと向かった。

 冒険者中級講習の座学1限目は普段使っている生活魔法を発展させると攻撃魔法になることを講師から丁寧に教えてもらった。2時間目は主にダンジョンに潜る場合の生活方法の応用だったが、講習内容は主に講師の先生の裁量に任されていた。講師の先生は引退した女性冒険者でCランク以上の魔女または魔道士のスキル持ち、または剣士のスキルを持っていることが講師の資格対象だった。

 受講生はサトル、クルミの二人だけだったので、リンダ先生の計らいで午前中の講習は少し早く終わった。二人は冒険者ギルドの食堂で”冒険者定食”を注文した。

 冒険者定食とはここのギルドの新メニューだそうで、揚げ芋フライドポテトと新鮮サラダにミノタウロスのトマト煮込みと書いてあったが、ミノタウロスは普通の牛肉の味だった。それと田舎パンが付いていた。

「クルミさん、トマト煮込みって美味しいっすね」
「ええ、サラダも付いているのが女子的にはイイと思うわ」
 クルミさんのランチの食レポは的確であった。

「ところで、シローさんたちは何処に行かれたのですか?」
「多分、スミレさんが言い出しっぺでテイーチ市に行くついでにスイーツ探訪に行ったと思うわ、何しろ忙しい人達だから」

「クルミさん、俺たちも早くキャンピングカーで空を飛びたいですよね」
「サトル頑張って、もちろん、私も応援するから ♡ ♡ ♡」

「クルミさん、そろそろ訓練場に行きましょうか」
「そうしましょう」

 午後の授業は攻撃魔法の基礎講習なので屋外の訓練場で行われた。魔導師のリンダ先生と剣士エリック先生は元B級冒険者で、より実践的な講習になった。

「サトル、魔素を剣に充分に溜めてから魔法を発射するのだ」
 エリック先生は剣に魔力を載せる方法を教えてくれたが、サトル始めは剣に上手く魔法を乗せれなかったが、練習する内に雷と炎が使えるようになってきた。

「クルミ、魔力が切れる前にサトルに回復魔法をかけるのが定石よ」
 ハァハァハァハァ、サトルは魔力が切れそうでなって息が上がっていた。

「ヒール」
 クルミさんはリンダ先生のアドバイスで、回復役に徹し、回復魔法を直ぐに習得していた。

 攻撃ゴーレムは向こうからは向かってこなかったが、魔素を溜めてから魔法を放出しないと点数が全く上がらなかった。

「サトル、攻撃ゴーレムに連続攻撃して点数を稼ぐんだ」
「はい、分かりました」

「クルミ、回復魔法よ」
「ヒール」

 攻撃ゴーレムは合格点ラインの300点を大幅に越して350点に達していた。

「二人ともよくやった、合格だよ」
「クルミもお疲れさまでした」

「リンダ先生、エリック先生、ありがとうございました」

「それから、クルミは本屋で魔導書を買って読むといいわ。貴女の魔力量なら教わらなくても回復ポーションが直ぐに作れるはずよ」

「えっ、リンダ先生、そうなんですか?」
「ええ、そうよ、本だけで下級ポーションは作れるわ」

「サトルは具現化で魔剣を作るといいぞ。普通は魔力を載せた魔導剣が武器屋に売っているが、とても高価だからな、自分で魔力を載せればいつでも魔剣を作れるからな」

「マジっすか、エリック先生、ありがとうございました」
「明日はダンジョンで復習を兼ねて腕試しをするといいよ、サトルたちなら5階層まで楽勝のはずだからね」
「ありがとうございました」

 サトルとクルミは冒険者ギルドの受付で冒険者中級講習が終わったことを報告した。新しい冒険者カードは既に出来上がっており、二人はCランク冒険者として正式に登録してもらった。

「お二人は明日からダンジョンに潜ることが出来ます。モリタイラ市のダンジョンはピリス川河口にダンジョンがありますのでよろしければ行ってみて下さい」


「その他の依頼は掲示板に張り出してありますので御覧ください」
「ありがとうございます」


「とりあえず、シローさんとスミレさんを待とうよ」
「ええ、食堂で休憩ね」

(信心深き者たちよ)
 頭の中にアトラス様とニュンペー様の声が響いた。
(冒険者中級講習は大義で有った。シロー、スミレ夫婦はゼウス様の神託を受けてテイーチ市の様子を見に行っており、2、3日はティーチ市に留まるかもしれぬ)

(明後日、シロー、スミレ夫婦と合流するまでは二人だけで考え慎重に行動をするのじゃ)

(明日より2日間はピリス・ダンジョンに潜り、実践で腕試しをするのじゃ、既存の短剣と両手杖だけでどこまで戦えるか二人で力を試すのじゃ)

(それから、クルミはスキルとして創薬を授かっているので『サンクチュアリ』と唱えれば直ぐにポーションが出来るわ。一般的なポーションの作り方を書いたグリモワールは市内の古書店に置いてあるので直ぐに探しなさい)

 そう言われて、アトラス様とニュンペー様の声は聞こえなくなった。

「サトル、古本屋さんに連れて行って、今直ぐよ」
「クルミさん、分かりました。急いで行きましょう」

 サトルたちは大通りを抜けて裏通りの専門店エリアまで早足で歩いていた。魔導書を扱う古書店は直ぐに見つかり、洋品店の隣に看板が出ていた。

「サトル、ほら可愛いい洋服よ」
「クルミさん、買うのはグリモワールじゃなかったの」

「ええそうだけど、ちょっとぐらい見てもいいじゃない」
「もう、サトルのバカ」

 クルミさんはプンプン怒って古書店に入って行った。古書店は魔導書の他にも色々と本が並んでいた。書店の店員に教えられて、魔導書のコーナーで魔導書を手に取ろうと手を伸ばした途端にグリモワールの背表紙が薄っすら光ったのだった。

「サトル、本の背表紙が光ったのよ」
「クルミさん不思議ですね、それで本の内容は分かるのですか?」

「ええ、リンダ先生が言っていた下級ポーションの作り方が書いてあるわ」
「それと中級ポーションの内容も分かるから直ぐに作れるわ」

「じゃぁ、買って帰りましょう」
「サトル、ありがとう」

 魔導書は金貨7枚と少し高かったが、冒険に必要な道具なのでサトルは無理をして買った。

「クルミさん、隣の洋服屋さんに行きましょう」
「えっ、サトル買ってくれるの」

「まぁお嬢様、とっても良くお似合いですわ」

 クルミは店頭に飾ってあったドレスを着て、店員に褒められてすっかりご機嫌に戻ったのだった。サトルは金貨3枚を店員に支払って店を後にした。よく考えれば、サトルとクルミの創造魔法で洋服は何でも作れるのだが、その事に気付くのはもう少し後の事だった。

「ねえサトル、お店に連れて行って」
「えっ、何でなの」

「だって、シローさんとスミレさんは自炊をしていたから、私もこれからは料理を作ろうと思ったの」
「わかりました。今からクルミさんの思うように買ってみてください」

 クルミさんは、田舎パン、卵、牛乳、人参、玉ねぎ、馬鈴薯、白米、味噌、醤油、塩、それに胡椒、お茶、コーヒーと色々と買ってくれた。サトルは全てを収納にしまったので荷物にはなっていなかった。

「後は冒険に備えて鍋と食器と魔導コンロは具現化で作ればいいよね」
「そうね、一旦キャンピングカーに戻りましょう」


(話終わり)

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