改訂版 勇者と聖女の育成請け負います_みんなで育てれば怖くないね

にしのみつてる

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第6章

6-5 《仮》って何ですか?

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 サトルとクルミは怒涛の特訓から一夜明けて静かな朝を迎えていた。

「クルミさん、今朝は賢者が起こしませんでしたね」
「そうね、まだ寝ているのかしら?」
 二人は賢者のアラームで起こされる前に起きていたのだった。パパーン、昨夜からの更新作業が終わって、タブレットが立ち上がってきた。

「サトルさん、クルミさん、おはようございます」
「私は今回の更新によって、大天使ラギュエルの名をいただきました」
「これからはラギュエルとお呼び下さい」

「ラギュエルだね、よろしく」

「シローさん、タブレットも進化をするのですか?」
「そうだよ、サトルとクルミさんのレベルが上がる事が賢者の更新の条件だよ」

「サトルさん、クルミさん、それではお二人の現在のステータスの確認からです」

 ◇ ◇ ◇ ◇

【名前】サトル・ソラノ
【種族】人族
【年齢】17
【称号】薬師・錬金術師《ジェネオス・仮》
【スキル】アトラス神の加護、ニュンペー神の加護
 創造・創薬・具現化、鑑定、転移、収納、料理人、隠蔽、世界辞書、AIクリスタル脳、思念伝達、魔法付与
 
【LV】80
【MP】80000

【名前】クルミ・アガタ
【種族】人族
【年齢】18
【称号】薬師・魔女《アギオス・仮》
【スキル】アトラス神の加護、ニュンペー神の加護
 創造・創薬・具現化、鑑定、転移、収納、料理人、隠蔽、世界辞書、AIクリスタル脳、思念伝達、魔法付与
 
【LV】80
【MP】80000

 ◇ ◇ ◇ ◇

「シローさん、ジェネオス・仮って何ですか?」
「たぶん、LV99に足りていないから自動車の仮免許みたいに《仮》がついたのだと思うよ」
「ソウナンデスカ?」


「一般の冒険者だとLV70でSランク冒険者でしたよね」
「そうだよ、サトルよく覚えているね。だから俺たちもLV99で固定しているのさ」

「俺たちも固定の仲間入りですね」
「そうだな……」


「信心深き者たちよ」
「我らはモリタイラ市を統べるアトラスとニュンペーなり」
「汝ら二人はシロー殿、スミレ殿から指導を受けて早期にLV80に上げたのは大儀であった」
「よって、ジェネオス・仮とアギオス・仮に認定をする。これからも二人で精進努力し、早期にLV999の亜神になるのじゃ」

「それと、急いでおるのでシロー殿のログハウスで今直ぐにモリタイラ市まで飛んで来るのじゃ、1時間ほどで到着するはずじゃ」

 アトラス様とニュンペー様はそう言われて、タブレットの画面から消えた。

「サトル、クルミさん、アトラス様とニュンペー様が急いでいるようだから、直ぐ出発するね」

「ミカエル、離陸準備」
「了解です」

「シローさんのログハウスって、空を飛べるんでしたよね」
「ああ、そうだよ」
「そんなのありえないっす」

「レベルが上ってくると、神様から許可が出てログハウスは自分たちで作れるんだ。多分、サトルのキャンピングカーはアトラス様とポイべ様が魔改造しているからモリタイラ市で空を飛べる状態で下賜されると思うよ」

「えっ、本当ですか?」
「そうだよ」


「絶対防御5重展開」
「圧力隔壁異常無し」
「飛空システム異常なし」
「オートバランサー作動」
「オートジャイロ作動」
「計器類オールグリーン」
「フライトチェック、完了」

「テイクオフ」

「了解、テイクオフ」

 シローのログハウスは静かに上昇を始めた。

「クルミさん、俺たちも現地に付いたらキャンピングカーで早く飛びたいっすよね」
「ええ、サトル、バンバン魔物をやっつけて、それとアッチもバンバンしましょうね♡ ♡ ♡」

「クルミさん、スミレさんとシローさんが笑ってますよ」
「あっ、そうね」
 クルミは顔を赤らめた。

「サトルさん、クルミさん、コーヒーをどうぞ」
「ありがとうございます」

 ポーン、ポーン、まもなくモリタイラ市です。海側から侵入して港の空き地に着陸します。

「了解」
 シローたちのログハウスは高度を下げていた。モリタイラ市の港はガレオン船が入港していた。

「サトルさん、船よ、大きな船が停泊しているわ」
「クルミさん、海賊船みたいだね」

「サトル、ガレオン船だよ、こっちの世界では大きな魔石を取り付けた帆船でダテホコ市とモリタイラ市、王都ケトマスを結んでいるんだ」

「シローさん、モリタイラ市って、仙台の事ですか?」
「そうだよ」

「じゃぁ、ダテホコが函館でケトマスが東京ですかね」
「その通りだよ」

 ログハウスは港の空き地に着陸して4人はキャンピングカーに乗り換えた、やがて、大通りの近くに大きな森が見えてきたのでシローはキャンピングカーを停めて収納した。冒険者ギルドまでは目と鼻の先だった。

「サトル、クルミ、モリタイラ市までよく来たのじゃ。まずは冒険者ギルドに行き、倒した魔物は全て売るのじゃ。その後でギルドの裏に顔を出すのじゃ、渡すものが有るのでのう」

 そう言われて、タブレットの画面は消えた。

「言うのを忘れていたけど、タブレットは神様との通信装置を兼ねているんだよ」
「賢者はサトルとクルミさんが聞くことで、絶えず進化し続けるので最終的に大賢者に進化するけど、大天使は14人いたと思うんだ。それと、賢者の進化には魔鉱石が大量に必要なので魔鉱石の採取はレベルアップの時に必要だよ」

 サトルは冒険者ギルドの受付で、冒険者カードを出して魔物の買取をお願いした。裏の倉庫に回るように言われたので四人で回った。

「それではオークから出してもらおうか」
「はい、オークは全部で6体です」
「ついでに、これもお願いします」

「おっ、これはサーペントじゃねえか 何処で狩ってきたんだ」
「ええ、ここに来る前に山の中の洞窟です」

「次はコボルトが20体です」

「お前ら、本当に規格外のようだな」
「オークが1体金貨10枚なので6体で金貨60枚とサーペントが200枚だ。コボルトは皮しか利用価値がないが、1体1枚で20枚だな。合計で金貨270枚だ」

「えっ、そんなになるのですか?」
「オークは睾丸が精力剤になるので高いのさ、肉も市場に卸すし、サーペントも皮が高く売れるのさ」
「へぇ~、知らなかったです」

「ところで、お前ら、受付の魔力測定盤でレベルを測らせてくれ」
「分かりました」

「それでは、お二人共手を魔力測定盤の上に乗せて下さい」

 ◇ ◇ ◇ ◇

【名前】サトル・ソラノ
【種族】人族 転生者
【年齢】17
【称号】錬金術師
【スキル】
 ****
【LV】45
【MP】****

【名前】クルミ・アガタ
【種族】人族 転生者
【年齢】18
【称号】魔女
【スキル】
 **** 
【LV】45
【MP】****

 ◇ ◇ ◇ ◇

「なんだ、お前たち既にAランクの実力じゃねえか。ところで中級冒険者講習の受講がまだのようだが明日受けてみないか?」
「冒険者講習終了後に俺の権限でお前らはCランク冒険者にしてやるよ」
「分かりました。よろしくお願いします」

「ところで、こちらのお方はっと……」

「二人の冒険者カードだ」
 シローはわざと強めに覇気を出してギルドマスターに軽く威圧してみた。たちまちギルドマスターの顔が青ざめて震え、シローたちに威圧的な態度をとった事を反省した。

 ◇ ◇ ◇ ◇

【名前】シロー・ナミキ
【種族】人族
【年齢】25
【称号】錬金術師
【スキル】
 ****
【LV】99
【MP】****

【名前】スミレ・ナミキ
【種族】人族
【年齢】25
【称号】魔女
【スキル】
 ****
【LV】99
【MP】****


 ◇ ◇ ◇ ◇

「シローさん、俺が悪かった。まさかAランク冒険者様とは知らなかったので無礼を許してくれませんか」
「俺たちは別に構わないが、ギルドマスターも冒険者の上辺だけ見て威圧的な態度を取ると足元を救われますよ」 

「ギルマス、本部からの通達を見ましたか?」
「サクラちゃん、それは何だ?」

「はい、キビピーチ市の馬鹿マスターが勇者と聖女を囲おうとしてやらかした件です」
「ギルマスも邪な考えは絶対にやめてくださいね」
「私たち職員は本部に告発しますよ」

「ああ、その事は領主にも口酸っぱく言われているのでわかっているって」
「それにしてもサクラちゃん、そんな話をよく知っていたね」

「本部にいる姉から教えてもらったので知っていました」
「そうなのか」

「サトルさん、クルミさんの冒険者カードは冒険者中級講講終了後にお作りしますね」
「分かりました。では受講をお願いします」

 サトル、クルミのレベルからすれば冒険者講習など受けなくてもいいのだが、何処の冒険者ギルドでも売上のために冒険者中級講習を無理やり受けさせるのが決まりだった。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 その日の夜……シローとスミレさんは神界からの自立プログラムを受信したミカエルの提案でサトルとクルミに一芝居することにした。


「サトル、クルミ、俺たちは神様からの神託で明日から二日ほどテイーチ市がどうなったか見に行く予定だ」
「だから別行動になるけど、クルミさんと二人で頑張ってくれ」

「シローさん、分かりました。明日の講習は俺たち二人だけで大丈夫ですから」

「サトル、明後日はどうするつもりだ?」
「はい、二人でダンジョンに潜ってみるつもりです」
 ひょっとすると1週間くらい潜っているかも知れません。

「分かった、二人の実力なら大丈夫だと思うが、怪我だけは気を付けてくれ」
「「はい」」

 シローはサトル、クルミの自立プログラムが上手く働きそうな予感がしていた。

 こうして、夕食後にシローとスミレはサトル、クルミたちと別れ、港の空き地まで移動してテイーチ市に向かったのだった。

(話終わり)
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