改訂版 勇者と聖女の育成請け負います_みんなで育てれば怖くないね

にしのみつてる

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第4章

4-10 ハリマヤナカ市に行こう

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 約束の1週間後……

 4人は遅めの朝食を食べた後に転移門でセレス温泉からマツイヨ市の冒険者ギルドに瞬間移動をしてきた。

「よく来てくれた。そこにかけてくれ」
 2階の応接室に案内され、椅子に腰掛けて女子職員から出された紅茶を飲んでいた。

「それで報酬だが、金鉱山の買い取りが金貨8000枚、70体のゴーレムの討伐報酬が1000枚で合計で金貨9000枚を領主から預かった」

 ギルドマスターの説明では金鉱山は国と領主が管理すると教えられた。ゴーレムの討伐報酬1000枚は破格だと言われたが、領主が飛空石を管理することになり、既に外国に技師の要請をしたそうだ。本来は飛空石だけで金貨5000枚もらってもバチは当たらない筈だが、シローたち4人は残念な事に飛空石の価値を全く知らなかったのだった。

「「「「ありがとうございます」」」」

 4人は冒険者冒険者ギルドの裏で転移門を出してユーリー島に戻ってきていた。

「ハニエル、次の目的地は、どこに向かうんだ?」
「まだ決まっていませんが、次はハリマヤナカ市の冒険者ギルドに行ってみませんか?」

 ハニエルはコーヘーとチハールに詳しく説明していなかったが、自立プログラムが作動して今後はコーヘーとチハール二人だけで対処する予定になっていた。

「そうだね、ハリマヤナカ市は夢の中で出てきたね」
「チハール、どうする?」

「コーヘー、迷ってないで二人でハリマヤナカ市に行ってみましょうよ」
「チハールの言う通りだな」

「シローさん、スミレさん、俺たちは一足先にハリマヤナカ市の冒険者ギルドに飛びます」
「ああそうだね、自発的に行くならやぶさかではないね」

「シローさんたちはこれからどうするのですか?」

「俺たちは神様からの指示が出るまでもうしばらくユーリー島で待機するよ」
「そうですか」

「シローさん、スミレさん、本当にお世話になりました」
「また、何処かでお会いしましょう」

「スミレさんもお元で」

 コーヘーとチハールとはお礼を言って、シロースミレ夫婦のもとを離れた。
 コーヘーは収納からキャンピングカーを出して旅の準備をした。

「ハリマヤナカ市までのフライト時間は約12分ですが、少し大回りをして海側のカトーラ浜に着陸します」


 ◇ ◇ ◇ ◇

「ハリマヤナカ市の冒険者ギルドにようこそ、今日はどのようなご要件でしょうか?」

「俺たちはマツイヨ市から来た冒険者ですが依頼や情報がありますでしょうか?」

 ハリマヤナカ市の冒険者ギルドに到着したコーヘーとチハールは、2階の応接室に案内されたのだった。ギルドのスタッフが丁寧に出迎え、彼らに席を用意した。



「ハリーセンだ、お前たちの事はマツイヨ市のギルドマスターから聞いているよ」
「よく来てくれた。まぁ楽にしてくれ」と、ギルドマスターのハリーセンさんはお茶を勧めてくれた。


「お前たちはマツイヨ市のシネキス連山でゴーレムロードを倒した冒険者だったな」

「はいそうです」
 コーヘーとチハールはうなづいた。

「ハリマヤナカ市の冒険者ギルドでお前たち二人にお願いしたいのは海岸沿いの調査してくれないか」

 ハリマヤナカ市のギルドマスターのハリーセンさんはコーヘーたちに地図を見ながら依頼内容を説明を始めた。

 1つ目は最近ドマティオ岬付近で難破する船が増えてきていることだ。
 2つ目はドマティオ岬で怪奇現象が起きているとのことだ。
 3つ目は、ドマティオ岬に向かう海岸線で得体の知れないものが現れるとの噂がある。

「お前たちにお願いしたいのは、ドマティオ岬の調査だ」

 ハリーセンさんの説明ではコーヘーとチハールにドマティオ岬を調査をして欲しいとのことだった。

 その怪奇現象とは船が難破する事件にも絡んでいるらしいが、詳細は不明で現地に行って確かめてきてほしいとのことだった。

 コーヘーとチハールはハリマヤナカ市のハリマヤナカ市のギルドマスターのハリーセンさんからの依頼を聞きながら、興奮と緊張が入り混じった表情をしていた。


「了解しました」
「ハリーセンさん、ドマティオ岬の調査を二人で行いますので2週間の期間を下さい」
 コーヘーとチハールは依頼を受けたのだった。ハリマヤナカ市からドマティオ岬までは交通手段が無いので徒歩で3日と聞いた。

「それでは頼んだぞ。詳細な情報が手に入ったらすぐに冒険者ギルドに報告してくれ」

「「はい、行ってきます」」

 ハリーセンさんとギルド職員に見送られて二人はハリマヤナカ市の冒険者ギルドを出発したのだった。二人はカトーラ浜に瞬間移動をしてキャンピングカーに乗り込んだ。

「ハニエル、ドマティオ岬まで魔物探知をしながら海上をゆっくりと飛んでくれ」
「了解です」

 キャンピングカーはゆっくりと海岸線に沿って低空飛行を続けていた。途中、魔物の気配も何も感じずに目的地のドマティオ岬に着陸したのだった。

 二人の眼の前には大海原の風景が広がっていた。ここから見る限りは普通の海岸で船が難破する危険海域には全く見えなかった。

「チハール、今夜はここでキャンプだね」

「コーヘー、ログハウスを出してよ」
「そうだな」

 コーヘーは収納からログハウスを出して空中に浮かべた。

 夕方になって、チハールはスミレさんから習った筑前煮を作ってくれた。スミレさんはハカトン市の聖女から習ったと言っていた。

「チハール、この煮物は美味しいな」
「そうね、おふくろの味ね」

 二人は懐かしいおふくろの味に元の世界を思い出していた。


「今回の調査はなんだか不気味な感じがするな」
「そうね、星明りだけでは辺りが暗すぎるわ」

 二人で夕食を取りながら、コーヘーはハリーセンさんから聞いた依頼内容について考えを巡らせていた。

「冒険者ギルドはドマティオ岬に関する情報はあまり得られていないみたいだな。この辺りで何かしらの手がかりが見つかるかもしれない」

「そうね。船が難破する事件と怪奇現象が絡んでいるとなると、何かしらの魔物がいる可能性が高いわ」

 二人は明日からのドマティオ岬の周辺を徹底的に探索することを決めたその時だった。海上に不気味な光を放つ存在が漂っていた。

「コーヘー、窓の外が光ってる」

「あっ、本当だ」
「これが…怪奇現象の原因なのか?」

二人はキャンピングカーに乗り込んで、沖合の不気味な光を放つ場所にゆっくりと近づいたその時だった。


(話終わり)
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