改訂版 勇者と聖女の育成請け負います_みんなで育てれば怖くないね

にしのみつてる

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第4章

4-8 空の青き塔のドラゴン

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 ポーン、まもなくユーリー島です。島の西側に着陸します。

 コーヘーのログハウスの試験飛行を終えて、シローとスミレ夫婦、コーヘーとチハール夫婦の4人は空飛ぶログハウスから降りてユーリー島に降り立った。

「さぁ、着いたよ。今日からここで暮らそうよ」
「「「は~い」」」

 シローたち4人は海岸でBBQを始めた。コーヘーとチハールもシローとスミレさんも珍しく全員がスパークリングワインで直ぐに酔っ払って寝落ちしてしまった。

 ◇ ◇ ◇ ◇

「コーヘーさん、シローさん、たった今神様からの神託が降りてハリマヤナカ市に飛んで幻の金の壺を探して欲しいそうです」

「ハニエル本当か?」
「はい、金の壺の埋まっている山はアース・ドラゴンが守護しているそうです」
「シローさん、どうしますか?」

「今夜はここでキャンプして、明日の朝早くにキャンピングカーでハリマヤナカ市に飛ぼう」
「先にハリマヤナカ市の冒険者ギルドで情報収集が先だね」
「分かりました」

 翌朝、シローとスミレさんはコーヘーのキャンピングカーでハリマヤナカ市の冒険者ギルドに着いた。受付の女性に幻の金の壺について聞くと、すぐに答えが返ってきた。

「幻の金の壺ですか?1つだけあるらしいですが、こちらは現在Aランク冒険者チームが捜索中です。2週間ほどで発見されれば、買い取り手が現れるかもしれません」

「幻の金の壺はAランク冒険者でも発見が難しいのですか?」
「はい、幻の銀の壺や幻の銅の壺、空の青き塔にはたくさんの財宝が眠っていると言われていますが、この金の壺だけは、空の青き塔に行った冒険者が誰一人戻って来ないため、幻の財宝と呼ばれているんですよ」

「空の青き塔のどの辺にあるか分かっているんですか?」

「こちらの地図を見てください。赤いマークで印したところですね。ここに空に浮かぶ島があります。ここは古代文明時代の廃墟で、ドラゴンが守護しているそうです。アース・ドラゴンは財宝を護る守護者として言い伝えられています」

「黄金の壺がある島はそこですか?」
「はい、そうです」

「貴重な情報をありがとうございました。私たちも幻の金の壺に挑戦してもいいのですか?」

「はい、先に見つけたものが勝ちとなりますので構いません。ただし、皆様の命は皆様ご自身でお守りください。高ランクの依頼ですので命の保証はありません」

「わかりました」

 冒険者ギルドで情報収集を終えたシロー達はキャンピングカーで飛び、カツラギ浜の草原に降りたった。

「皆んな、早速、ドラゴンの住処を探そう」
 シロー達がカツラギ浜の草原をしばらく歩くと、遠くに空に浮かぶ島が見えてきた。

「あれが幻の空に浮かぶ島か?ハリマヤナカ市からはかなり距離があるようだね?」
「シローさん、飛んでいる時は見えなかったですよ」

「ドラゴンがいるから空から迂闊には近づけないですね。コーヘー、チハール、何か良い方法を考えようよ」
「シローさん、ドラゴン相手に空からの攻撃は難しいのですか?」

「ああ、通常の魔法では駄目だろうな」
「コーヘー、チハール、空で戦うのは不利かも知れない。今回は地味に地上から攻めていこう」

 草原に降り立った4人は周辺を魔物探知で警戒した。幸いに地上にドラゴンはいないことを確認したシロー達は幻の空に浮かぶ島にキャンピングカーで向かった。

「シローさん、あれが幻の空に浮かぶ島ですか?」
「あぁ、あそこにアース・ドラゴンが住んでいる」

「アース・ドラゴンって、幻の金の壺を守っているんですよね?」
「そうだよ」

「シローさん、行きましょう!」
 空に浮かぶ島に上陸した4人は、アースドラゴンが住む島の中央にある廃墟を目指して歩いた。途中、襲ってくるドラゴネットはコーヘーとチハールが全て倒していった。

「チハール、ドラゴネットって弱くねぇ?」
「コーヘーさん、私たちの魔力が上ったからよ」

「シローさん、幻と言われる場所にこんなに簡単にドラゴンの拠点に辿り着けるとは驚きですよ」
「アース・ドラゴンが守護しているって言っていたよね?」

 4人は廃墟の奥に進むと、赤いドラゴネットが現れた。どうやら、この島のボスのようです。4人に襲いかかってきたのですが、コーヘーとチハールが魔法で倒しました。しかし、ドラゴネットは復活していきます。

「シローさん、このドラゴネットおかしいわ」
「そうだね。俺もこんな敵は初めてだ」

 すると、今度は黄色いドラゴンが現れて、4人に火のブレスを吐いてきた。急いでバリアーを張りましたが、防ぐだけで精一杯でした。

「アース・ドラゴンが守護しているというのは本当みたいだね」
「アース・ドラゴンに攻撃魔法は効きにくいから、ブレスを封じるしかないですね。シローさん、アース・ドラゴンの相手は俺たちに任せてもらえませんか?」


「そうだね。コーヘーとチハールが黄色い奴と戦うよ」

 4人は作戦を立て直して、黄色いドラゴンと戦うことになりました。アース・ドラゴンが守護する幻の島の上空には金色のドラゴネットと赤いドラゴネットが現れ、地上に向けてブレスで攻撃をしてきます。その都度、シロー達がバリアーを張って防いでいましたが、一向にドラゴネットに攻撃が通る気配が無かった。

「シローさん、この金色のドラゴネットと赤いドラゴネットは不死身なのかしら?」
「スミレさん、そうかもしれないよ。コーヘー、チハール、何か方法はあるか?」

「そうですね、全員が雷魔法で巨大な雷を落とすとかどうですか?」
「それだ、早速実行しよう」

 4人は廃墟を飛び出し、飛翔魔法で上空に飛び上がると一斉にタケミカヅチの呪文を唱えました。

「「「「タケミカヅチ」」」」
 シローとスミレが魔法を唱えると、雷がドラゴネットに向けて降り注ぎ、黄色いドラゴンは消滅しました。アース・ドラゴンもコーヘーとチハールがタケミカヅチで撃退したようです。

「シローさん、見事だったね」
「まだ終わりじゃないよ」

「そうですね、幻の金の壺を見つけないといけません」
 4人は廃墟の奥に進み、幻の壺を探し始めました。シローはアース・ドラゴンが守る赤いドラゴネットを撃破し、黄色いドラゴンは飛び去りました。

「黄色いドラゴンはどこかへ飛んで行ったようだな」
「シローさん、この廃墟にも幻の壺が隠されている可能性があるわ」
「その通り。探してみようか?」

 4人は廃墟の中を探索しましたが、幻の壺は見つかりませんでした。

「シローさん、なかなか見つからないですね」
「そうだな、ここにはなさそうだ」

 4人が帰る準備をしていた時、振り返ると赤いドラゴネットが立ちふさがっていました。ドラゴンが近づくと、黄色いドラゴンが消え、巨大なアースドラゴンが出現しました。

「これがアース・ドラゴンか?」
「シローさん、まずは幻の壺を見つけましょう」
 4人は壺を見つけることに専念しました。そして、大きな岩の間に紫色の壺を見つけました。

「見つけた!」
 4人は紫の壺を開けると、赤いドラゴネットが襲いかかってきました。

「アース・ドラゴンは後回しにしましょう!」
 4人は壺を解放し、蓋を開けて中を覗き込みました。中には黄金の茶筒が入っていました。シロー達は幻の金の茶筒を手にし、廃墟を後にすることにしました。

「シローさん、この茶筒に何が書かれているのでしょう?」
「それは俺にもわからないんだ」

「シローさん、あなたは以前神界にいたそうですね?神様からの指示はなかったんですか?」
「指示は無かったよ。これは俺とアース・ドラゴンの対決だからね。神様の意向も関係なく、やるべきことかな」

 4人は幻の島の中央に戻りました。アース・ドラゴンが翼を広げて襲いかかってくる瞬間、シローは茶筒を振ってみました。

「金よ出でよ!、銀よ出でよ!」
 その言葉とともに、地面から巨大な金のドラゴンが現れ、アース・ドラゴンに襲いかかりました。金色と銀色のドラゴンはこの幻の島の守護者であり、金のドラゴンがアース・ドラゴンを圧倒し、ついに撃破したのです。

「シローさん、素晴らしいじゃない!」
「ああ、スミレさん、まだ終わりじゃないよ」

「そうね、幻の壺を見つけないといけませんね」
 4人は再び廃墟の奥に進み、幻の壺を探しました。しかし、なかなか見つからずにいました。

「シローさん、これ以上探すのは難しいかもしれません」
「そうだな、ここにはなさそうだね」

 このままでは幻の壺を見つけることはできないようですが、4人はあることに気づきます。そして、彼らはその気づきを活かして幻の壺の行方を探し続けました。

「冒険者ギルドにはこの紫の壺を提出して金の茶筒と銀の茶筒は永久封印だね」
「そうしましょう、話がややこしくなるからね」

 ◇ ◇ ◇ ◇
 

 パシュ、パシュ、パシュ、パシュ、

(セイレーンの幻夢解除に成功)
(バイタルチェック正常、キュアポイズン、エリアヒール発動)

「あれ、ミカエルおはよう、俺たちどうしてた?」
「シローさん、4人ともセイレーンの魔法とワインで幻の夢を見ていたのです」

「ああ、そう言えば黄金の壺が何とかって言ってたな」
「はい、それがセイレーンが見せた幻の夢なのです」

「スミレさん、妙にリアルだったよね」
「そうだったわね」

「プファ~、チハール、大丈夫か?」
「コーヘー、俺たちは夢を見ていたんだよ」

「えっ、ドラゴンが襲ってきましたよ」
「コーヘーさん、夢は全てセイレーンが見せた幻の夢なのです」

「それから、島の周りに結界石を置きましたので今後はセイレーンは入ってきません」
「ミカエル、ありがとう」

(話終わり)

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 夢から覚めたら夢だったというオチでした。


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