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第4章
4-1 マツイヨ市のコーへーとチハール1 貧しいダンジョン清掃員
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コーへーとチハールはナニサカ市のダンジョンの清掃員だった。名前から察すると日本人の転生者だろうと思われるが、まだジェネオス・アギオスとして華々しいデビューする前の貧しい下積時代の話であった。
本当の名前は航平と千春だったが、こちらの世界ではコーへー、チハールと呼ばれていた。二人は半年前にマツイヨ市からガレオン船でナニサカ市に出てきたのだった。
幸いにも二人の仕事は直ぐに見つかり、コーへーとチハールの二人はナニサカ市の堤防ダンジョンを管理する臨時職員として採用されていた。家を持っていない二人は、妻帯者用の簡易住宅を冒険者ギルドから安く借りていたのだった。
ダンジョン清掃員の仕事は冒険者たちが帰った後に、主に夕方から深夜にかけて清掃業務が主な仕事だった。時には絶対に見たくないような汚物が落ちていたが、リバースを唱えれば、汚物は何処か彼方に粒子になって消えていくので、これを見た上司は驚いていた。
「コーヘー、今日も仕事が終わったね」
「チハール、今からオタク焼きを食べに行こうか?」
「コーヘー、こんな時間にお店が開いているの?」
「中心部に行けば店は24時間営業だから大丈夫だと思うよ」
「それじゃ、早く行きましょうよ」
ナニサカ市の繁華街は北と南の教会を中心に4キロに渡って大通りが続き、真夜中でも人通りは途切れなかった。酒類を提供する酒場と、食事が出来る食堂、吟遊詩人たちが繰り広げる面白おかしい娯楽は特別条例で市に深夜営業の許可を貰えば終日営業が許可されていた。
コーへーとチハールはオタク焼きの店に入って、コーヘーはナニサカ・エールとチハールは甘口ポートワインでオタク焼きを2枚を注文した。オタク焼きとは、元の世界のお好み焼きの事だが、50年前に転生してきた勇者と聖女が伝えたナニサカ市名物だと教えてもらった。
「チハール、今日で仕事を辞めてウズシオ市に行ってみないか?」
「コーヘー、明日からの仕事はどうするの」
「また冒険者に転職するのさ」
「コーヘーがなりたいなら私は反対しないけど、コーヘー、リバース以外のスキルって持っているの?」
「いや、何も無いんだ」
「でも、俺に本当に素質があるか、もう一度試してみたいんだ」
コーヘーはチハールにお願いのポーズをして頭を下げた。
◇ ◇ ◇ ◇
天界では、アフロディテは真剣に悩んでいた。先月の神々の緊急会議が終わった後でヘーラーから無茶振りをされて、勇者と聖女の候補を見つけられなかったので、サイカワ市の守護神を外されてしまったのだった。
気晴らしに、天界の泉で外界の様子を眺めているとナニサカ市の一組の夫婦の行動が目についたのだった。
他の神に見つからないように、ヘパイストスを呼びに行って、二人で注意深く観察をしたのだった……
「ヘパイストス様、あの者たちに、勇者と聖女の恩恵を与えましょう。妾はヘーラー様の無茶振りにもう耐えれません」
「アフロディテよ、まぁ待て、あの夫婦に勇者と聖女の素質があるかを充分に見極めるのだ」
「そうでないと、今度は我がゼウス様からお叱りを受けて、それこそ何処かの村神になって飛ばされてしまうかも知れん」
「ええ、貴方がそのお考えなら、妾は待ちます」
コーへーとチハールはウズシオ市のダンジョンに入っていた。
彼らのレベルから、地下1階から5階までは楽勝で、地下5階の魔物はコボルトの階層だった。
「さて、どんな技を彼らは繰り出すのだ」
「貴方、コボルトの胴体が一瞬で下半身が無くなったわ。あれは何のスキルを使ったの?」
「どうやら、生まれ持ったリバースを改良して使っているようじゃな。彼らはそれ以外、何もスキルを持っていないし、神の加護も付いておらんのじゃ」
「じゃあ、我らの加護を授けても大丈夫ですね」
「ああ、大丈夫じゃ」
「ヘパイストス様、外界に降りますよ」
「分かった」
「信心深き者たちよ」
ダンジョン内部が金色に光りだし、他から不用意に入って来ないように全ての空間が閉じられた。
「我らは、マツイヨ市を統べる、ヘパイストスとアフロディテなり」
「コーへーとチハールは、今から勇者と聖女のスキルを授けるので、我らと共にマツイヨ市へと向かうのじゃ」
「汝らが我らの願いを受け入れぬ場合は、我らも無理強いはせぬので安心するが良い」
「コーへーは勇者になることを誓うか?」
「はい、誓います」
「チハールは聖女になることを誓うか?」
「はい、コーヘーさんと一緒に聖女として働くことを誓います」
「よろしい、ではステータスと唱えるのじゃ」
「ステータス・オープン」
◇ ◇ ◇ ◇
【名前】コーへー・ペリー
【種族】人族
【年齢】20
【称号】鍛冶師
【スキル】
ヘパイストス神の加護
具現化、収納、AIクリスタル脳、リバース
【LV】25
【MP】25000
【名前】チハール・ペリー
【種族】人族
【年齢】20
【称号】薬師
【スキル】
アフロディテ神の加護
創薬、鑑定、AIクリスタル脳、リバース
【LV】25
【MP】25000
◇ ◇ ◇ ◇
「神様、レベルが大幅に上がりありがとうございます」
「ところで、具現化とは何のスキルですか?」
「頭の中で思ったことが現実化して道具が作れる便利なスキルである」
「近々、そなたたちの前に適切な指導者が現れるので、それまではマツイヨ市で待機するのじゃゃ」
「わかりました」
「当座の生活費を我らより授けるので大切に使うと良いのじゃ、今からマツイヨ市の冒険者ギルドに転送をするが、汝らの記憶は全て忘却されるのじゃ」
◇ ◇ ◇ ◇
ヘパイストスとアフロディテが言い終わると、金色の光が収まって、マツイヨ市の冒険者ギルドに立っていた。
「チハール、俺たちは夢を見ていたのか?」
「いいえ、夢では無いけど、記憶の一部が完全に飛んでしまったのよ」
「まぁ、深く考えても仕方ないので、冒険者として新規登録をしようか」
「すみません、冒険者として新規登録をお願いします」
「こちらの申込書にご記入願います。分かる範囲で結構です」
「では、お名前はコーへー・ペリー様とチハール・ペリー様ですね」
「種族は人族で、年齢は20歳ですね」
「現在、マツイヨ市では主にダンジョンに潜って魔物を退治する冒険者か、薬草採取、鉱物採取の仕事が一般的です」
「チハール、創薬と鑑定のスキルを新たに神様にもらっていたな。そのスキルを活かして薬草採取から始てお金をかせごうよ」
「そうしましょう」
何処の冒険者ギルドでも薬草採取は見習い冒険者がやる仕事で単価も安く誰もやらないので全く人気が無かったのだ。
コーヘーはヘパイストス神から具現化と収納のスキルをもらったし、チハールはアフロディテ神から創薬と鑑定のスキルをもらっていた。二人で頑張れば生活費くらいは直ぐにを稼げるとコーヘーは思ったからだ。
薬草採取の依頼はチドメソウ100本を1束で買取価格は銅貨1枚だった。冒険者ギルドの受付で、近くの川の土手を探すように言われたので土手に向かったのだった。
「コーヘーさん、土手一面がチドメ草の群生地だね」
「そうだね、とにかく収穫しまくって、100本の束にしようよ」
「ええ、コーヘーさん、シスルも沢山あるから採取していきましょうよ」
「分かった、紫色の花を付けている草だね」
「ええ、そうよ」
チドメソウは頑張ったので、100束は直ぐに出来たのだった。収納で異空間にしまえるので本当に便利なスキルだった。シスルは10本を1束にして50束が出来た。
夕方近くになってきたので、冒険者ギルドに戻り、受付でチドメソウの採取が終了したことを伝えた。
「チドメソウは全部で100束ですので、金貨1枚になります。シスルは1束が銀貨1枚ですから、金貨5枚です」
「合計で、金貨6枚になりますので、お確かめ下さい」
「ありがとう」
「コーヘーさん、良かったね」
「ところで、私達が住んでいた以前の家を思い出せないね」
「うん、俺も記憶が飛んでいるんだ」
「そう言えば、神様が生活費って言っていなかった?」
「うん、言っていたよ」
「あっ、革袋が出てきた」
「コーヘーさん、冒険者ギルドに戻って安い宿屋を聞いてみましょうよ」
「うん、そうしよう」
「すみません、長期滞在できる宿屋はないですか?」
「出来れば、一軒家をお借りできるとありがたいのですが」
「それならば、一月銀貨2枚の家賃で簡易住宅が有りますのでご案内出来ますよ」
「よろしくお願いします」
簡易住宅は冒険者ギルドから歩いて30分の距離だった。冒険者ギルドまで少し遠く感じたが、静かな感じの場所だったので即決で契約した。食品店は直ぐ近くにあったので とりあえずは自炊をしようと2日分の食品を買ったのだ。
コーヘーとチハールの借りた簡易住宅は家財道具も何も無かった。がっかりした二人は今夜は何も食べないで一夜を過ごそうとしていたのだった。
「コーヘーさん、真っ暗になったし、具現化のスキルでランプは作れないの?」
「うん、ランプよ出てこい、チチンプイプイ」
「コーヘーさん、そんな出鱈目な呪文では駄目よ」
「多分、頭の中でランプを強く思い浮かべるのよ」
「チハール、ちょっと待ってね」
コーヘーは目を閉じて、魔導ランプのイメージを思い浮かべた。
「コーヘーさん、ランプが出てきたわ」
「やったね、これでランプを買わなくても済むね」
(AIクリスタル脳、具現化発動成功)
「チハール、何か言った?」
「次は、鍋と魔導コンロ」
「鍋が出てきたわ、フライパンもお願いします」
「はい、フライパンと食器の皿とスプーンとフォーク、コップ」
「凄いね、どんどん出てくるけどコーヘーさんは魔力切れで疲れないの?」
「うん、今は大丈夫だよ」
「これで、ようやく夕食が食べれるね」
「ええ、今から作るわね」
コーヘーとチハールはささやかな食事を一緒に食べた。
(話終わり)
本当の名前は航平と千春だったが、こちらの世界ではコーへー、チハールと呼ばれていた。二人は半年前にマツイヨ市からガレオン船でナニサカ市に出てきたのだった。
幸いにも二人の仕事は直ぐに見つかり、コーへーとチハールの二人はナニサカ市の堤防ダンジョンを管理する臨時職員として採用されていた。家を持っていない二人は、妻帯者用の簡易住宅を冒険者ギルドから安く借りていたのだった。
ダンジョン清掃員の仕事は冒険者たちが帰った後に、主に夕方から深夜にかけて清掃業務が主な仕事だった。時には絶対に見たくないような汚物が落ちていたが、リバースを唱えれば、汚物は何処か彼方に粒子になって消えていくので、これを見た上司は驚いていた。
「コーヘー、今日も仕事が終わったね」
「チハール、今からオタク焼きを食べに行こうか?」
「コーヘー、こんな時間にお店が開いているの?」
「中心部に行けば店は24時間営業だから大丈夫だと思うよ」
「それじゃ、早く行きましょうよ」
ナニサカ市の繁華街は北と南の教会を中心に4キロに渡って大通りが続き、真夜中でも人通りは途切れなかった。酒類を提供する酒場と、食事が出来る食堂、吟遊詩人たちが繰り広げる面白おかしい娯楽は特別条例で市に深夜営業の許可を貰えば終日営業が許可されていた。
コーへーとチハールはオタク焼きの店に入って、コーヘーはナニサカ・エールとチハールは甘口ポートワインでオタク焼きを2枚を注文した。オタク焼きとは、元の世界のお好み焼きの事だが、50年前に転生してきた勇者と聖女が伝えたナニサカ市名物だと教えてもらった。
「チハール、今日で仕事を辞めてウズシオ市に行ってみないか?」
「コーヘー、明日からの仕事はどうするの」
「また冒険者に転職するのさ」
「コーヘーがなりたいなら私は反対しないけど、コーヘー、リバース以外のスキルって持っているの?」
「いや、何も無いんだ」
「でも、俺に本当に素質があるか、もう一度試してみたいんだ」
コーヘーはチハールにお願いのポーズをして頭を下げた。
◇ ◇ ◇ ◇
天界では、アフロディテは真剣に悩んでいた。先月の神々の緊急会議が終わった後でヘーラーから無茶振りをされて、勇者と聖女の候補を見つけられなかったので、サイカワ市の守護神を外されてしまったのだった。
気晴らしに、天界の泉で外界の様子を眺めているとナニサカ市の一組の夫婦の行動が目についたのだった。
他の神に見つからないように、ヘパイストスを呼びに行って、二人で注意深く観察をしたのだった……
「ヘパイストス様、あの者たちに、勇者と聖女の恩恵を与えましょう。妾はヘーラー様の無茶振りにもう耐えれません」
「アフロディテよ、まぁ待て、あの夫婦に勇者と聖女の素質があるかを充分に見極めるのだ」
「そうでないと、今度は我がゼウス様からお叱りを受けて、それこそ何処かの村神になって飛ばされてしまうかも知れん」
「ええ、貴方がそのお考えなら、妾は待ちます」
コーへーとチハールはウズシオ市のダンジョンに入っていた。
彼らのレベルから、地下1階から5階までは楽勝で、地下5階の魔物はコボルトの階層だった。
「さて、どんな技を彼らは繰り出すのだ」
「貴方、コボルトの胴体が一瞬で下半身が無くなったわ。あれは何のスキルを使ったの?」
「どうやら、生まれ持ったリバースを改良して使っているようじゃな。彼らはそれ以外、何もスキルを持っていないし、神の加護も付いておらんのじゃ」
「じゃあ、我らの加護を授けても大丈夫ですね」
「ああ、大丈夫じゃ」
「ヘパイストス様、外界に降りますよ」
「分かった」
「信心深き者たちよ」
ダンジョン内部が金色に光りだし、他から不用意に入って来ないように全ての空間が閉じられた。
「我らは、マツイヨ市を統べる、ヘパイストスとアフロディテなり」
「コーへーとチハールは、今から勇者と聖女のスキルを授けるので、我らと共にマツイヨ市へと向かうのじゃ」
「汝らが我らの願いを受け入れぬ場合は、我らも無理強いはせぬので安心するが良い」
「コーへーは勇者になることを誓うか?」
「はい、誓います」
「チハールは聖女になることを誓うか?」
「はい、コーヘーさんと一緒に聖女として働くことを誓います」
「よろしい、ではステータスと唱えるのじゃ」
「ステータス・オープン」
◇ ◇ ◇ ◇
【名前】コーへー・ペリー
【種族】人族
【年齢】20
【称号】鍛冶師
【スキル】
ヘパイストス神の加護
具現化、収納、AIクリスタル脳、リバース
【LV】25
【MP】25000
【名前】チハール・ペリー
【種族】人族
【年齢】20
【称号】薬師
【スキル】
アフロディテ神の加護
創薬、鑑定、AIクリスタル脳、リバース
【LV】25
【MP】25000
◇ ◇ ◇ ◇
「神様、レベルが大幅に上がりありがとうございます」
「ところで、具現化とは何のスキルですか?」
「頭の中で思ったことが現実化して道具が作れる便利なスキルである」
「近々、そなたたちの前に適切な指導者が現れるので、それまではマツイヨ市で待機するのじゃゃ」
「わかりました」
「当座の生活費を我らより授けるので大切に使うと良いのじゃ、今からマツイヨ市の冒険者ギルドに転送をするが、汝らの記憶は全て忘却されるのじゃ」
◇ ◇ ◇ ◇
ヘパイストスとアフロディテが言い終わると、金色の光が収まって、マツイヨ市の冒険者ギルドに立っていた。
「チハール、俺たちは夢を見ていたのか?」
「いいえ、夢では無いけど、記憶の一部が完全に飛んでしまったのよ」
「まぁ、深く考えても仕方ないので、冒険者として新規登録をしようか」
「すみません、冒険者として新規登録をお願いします」
「こちらの申込書にご記入願います。分かる範囲で結構です」
「では、お名前はコーへー・ペリー様とチハール・ペリー様ですね」
「種族は人族で、年齢は20歳ですね」
「現在、マツイヨ市では主にダンジョンに潜って魔物を退治する冒険者か、薬草採取、鉱物採取の仕事が一般的です」
「チハール、創薬と鑑定のスキルを新たに神様にもらっていたな。そのスキルを活かして薬草採取から始てお金をかせごうよ」
「そうしましょう」
何処の冒険者ギルドでも薬草採取は見習い冒険者がやる仕事で単価も安く誰もやらないので全く人気が無かったのだ。
コーヘーはヘパイストス神から具現化と収納のスキルをもらったし、チハールはアフロディテ神から創薬と鑑定のスキルをもらっていた。二人で頑張れば生活費くらいは直ぐにを稼げるとコーヘーは思ったからだ。
薬草採取の依頼はチドメソウ100本を1束で買取価格は銅貨1枚だった。冒険者ギルドの受付で、近くの川の土手を探すように言われたので土手に向かったのだった。
「コーヘーさん、土手一面がチドメ草の群生地だね」
「そうだね、とにかく収穫しまくって、100本の束にしようよ」
「ええ、コーヘーさん、シスルも沢山あるから採取していきましょうよ」
「分かった、紫色の花を付けている草だね」
「ええ、そうよ」
チドメソウは頑張ったので、100束は直ぐに出来たのだった。収納で異空間にしまえるので本当に便利なスキルだった。シスルは10本を1束にして50束が出来た。
夕方近くになってきたので、冒険者ギルドに戻り、受付でチドメソウの採取が終了したことを伝えた。
「チドメソウは全部で100束ですので、金貨1枚になります。シスルは1束が銀貨1枚ですから、金貨5枚です」
「合計で、金貨6枚になりますので、お確かめ下さい」
「ありがとう」
「コーヘーさん、良かったね」
「ところで、私達が住んでいた以前の家を思い出せないね」
「うん、俺も記憶が飛んでいるんだ」
「そう言えば、神様が生活費って言っていなかった?」
「うん、言っていたよ」
「あっ、革袋が出てきた」
「コーヘーさん、冒険者ギルドに戻って安い宿屋を聞いてみましょうよ」
「うん、そうしよう」
「すみません、長期滞在できる宿屋はないですか?」
「出来れば、一軒家をお借りできるとありがたいのですが」
「それならば、一月銀貨2枚の家賃で簡易住宅が有りますのでご案内出来ますよ」
「よろしくお願いします」
簡易住宅は冒険者ギルドから歩いて30分の距離だった。冒険者ギルドまで少し遠く感じたが、静かな感じの場所だったので即決で契約した。食品店は直ぐ近くにあったので とりあえずは自炊をしようと2日分の食品を買ったのだ。
コーヘーとチハールの借りた簡易住宅は家財道具も何も無かった。がっかりした二人は今夜は何も食べないで一夜を過ごそうとしていたのだった。
「コーヘーさん、真っ暗になったし、具現化のスキルでランプは作れないの?」
「うん、ランプよ出てこい、チチンプイプイ」
「コーヘーさん、そんな出鱈目な呪文では駄目よ」
「多分、頭の中でランプを強く思い浮かべるのよ」
「チハール、ちょっと待ってね」
コーヘーは目を閉じて、魔導ランプのイメージを思い浮かべた。
「コーヘーさん、ランプが出てきたわ」
「やったね、これでランプを買わなくても済むね」
(AIクリスタル脳、具現化発動成功)
「チハール、何か言った?」
「次は、鍋と魔導コンロ」
「鍋が出てきたわ、フライパンもお願いします」
「はい、フライパンと食器の皿とスプーンとフォーク、コップ」
「凄いね、どんどん出てくるけどコーヘーさんは魔力切れで疲れないの?」
「うん、今は大丈夫だよ」
「これで、ようやく夕食が食べれるね」
「ええ、今から作るわね」
コーヘーとチハールはささやかな食事を一緒に食べた。
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