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第1章
1-6 タカマリ山のポリポリケースの採取
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シローとスミレさんは猫のあくび亭でゆっくりと朝食を食べた後で冒険者ギルドまで歩いていった。
多くの冒険者は3人から5人でパーティを組んでダンジョンに潜りお宝を見つけるのが最良だと思っていた。
トキセロ村でも最近になって偶然に粘土採掘場の跡からダンジョンが発見され初心者から中級冒険者で賑わっていた。上級冒険者は護衛任務の依頼が優先されたのでダンジョンに潜らずに嫌でも陶器納品の護衛に駆り出されていたのだった。
初心者は戦闘レベルが足りていないのでダンジョンに潜る場合は1階のみと決まっていたのだった。ダンジョンにすら潜れない冒険者は薬草採取くらいしか仕事を受けられないので落ちこぼれと見なされ何処の冒険者ギルドでも相手にされなかった。
シローとスミレさんの二人は冒険者ギルド依頼ボードに張り出された依頼書を熱心に眺めていた。
「おい、あの夫婦ヤサド・ダンジョンのことを知らないのか?」
「ジーク、余計なおせっかいはやめておけ、初心者は苦労して自分で覚えるのが常識だろう」
「オリバーそうだな、俺たちも1年前は苦労していたな」
「ああ、そうだ」
冒険者のジークとオリバーはDランク冒険者だった。最近になってメキメキと実力が付いてきたのでトキセロ村のギルドでも期待のエース扱いだった。
「スミレさん、” Eランク:タカマリ山 ポリポリケースの採取 ”にしようよ」
二人は受付でタカマリ山への行き方を詳しく聞いて依頼を受けることにした。タカマリ山へはここから歩いておよそ5キロ程度だと教えられ、直ぐに出かける事にした。
二人がタカマリ山に向かう山道を歩いていると、茂みからホーンラビットが飛び出してきたが、直ぐに反対側の茂みへと隠れた。
「きゃぁ~」
スミレさんはシローに抱きついたが、ホーンラビットはそれほど怖い魔物では無かった。
「スミレさん、怖くないから」
「シローさん、私たち刀を持っていないし、どうするの?」
スミレさんはホーンラビットが余程怖ったのかまだ震えていた。シローはスミレさんの震えが収まるまで抱いたままじっとしていた。
「シローさん、もう大丈夫よありがとう」
スミレさんはそう言って、シローに舌を絡ませてきた。シローもそれに答えて二人は立ったまま口を重ねていた。
(シローさん、今から具現化で刀を作りましょう)
(冒険者講習で借りたショートソードでもいいのですが、シローさんには日本刀がおすすめです)
「ナビ子さん、どうやって作るの?」
(頭の中で日本刀を強くイメージしてください)
シローは頭の中で時代劇チャンネルで見た侍が持っている日本刀をイメージした。ドドン、太鼓の音が鳴って空中に日本刀が現れた。
「スミレさん、刀が出来たよ」
「シローさん、何で日本刀なの?」
「スミレさん、だいぶ前に時代劇にハマっていたのを知ってるでしょ」
「そうだったわね、最近は異世界アニメばかり見てたから大っきなバスターソードを作ると思っていたわ」
「うん、俺は転生してきた日本人だから大っきなバスターソードは似合わないよ」
「そうなのね」
この後、シローはナビ子さんに手伝ってもらってスミレさんが使う大きな水晶玉が先端に付いている両手杖を具現化した。
「スミレさん、魔女みたいだね」
タカマリ山にはすぐに着いた。森の中に入っていき、スミレさんのスキル『鑑定』のおかげでポリポリケースは10株が採取できた。二人が熱心にポリポリケースを採取していると、誰かが後ろから覗いていた。
後ろから覗いていたのは1体のはぐれゴブリンだった。二人はそっと、ゴブリンから離れて間合いを取り、シローはゴブリンの脇腹に刀を刺した。
ギギィー、ゴブリンはシローに切られて倒れていた。シローはギルドに提出するためにゴブリンの両耳を削ぎ落とした。
「スミレさん、まだゴブリンがいるかも知れないね」
「シローさん、早く帰りましょうよ」
「そうだね」
ようやく森を抜けて、草原に出てきたので、二人はほっとした。
(シローさん、スミレさん、今から転移門を作りましょう)
「ナビ子さん、転移門って何?」
(はい、アニメ映画に出てくる青狸がお腹から出してくる何処にでも行けるドアのことです)
「シローさん、青狸のドアを早く出して」
シローは具現化で転移門を作ったのだった。
(最後に異空間収納の説明です。道具や倒した魔物、食料品は収納にしまうことが可能です。収納に入れた食品は腐りませんのでご安心下さい)
シローとスミレさんは、転移門を使って冒険者ギルドの裏庭に瞬間移動した。冒険者ギルドの入り口に戻り受付でポリポリケース10株とゴブリンの耳を出した。
「お疲れさまでした。もう終わったのですか?」
「はい、終わりました」
「確認が出来ましたので依頼達成です。ポリポリケース10枚、ゴブリン1体銀貨3枚、合計で金貨10枚と銀貨3枚になります」
「ありがとうございました」
「スミレさん、お昼を食べようよ」
「そうね、私お腹ぺこぺこだったの」
二人は冒険者ギルドの食堂でホーンラビットの香草焼きを注文した。ホーンラビットの味は鶏肉の胸肉のようにさっぱりして美味しかった。
「スミレさん、横の売店で冒険者の装備を見ていかない?」
「シローさん、どうして」
「後でこっそりと作るため」
「なるほどね」
シローとスミレさんは小声で喋りながら食堂横の売店で初心者用の装備を見ていた。
「スミレさん、このショルダーバッグが良さそうだね」
「シローさんの防具はどうするの?」
「俺たち二人とも魔法使いのポジションだから魔物と直接対決は避けたいね」
「そうよね、じゃぁシローさんの防具は無しでいいわね」
「スミレさん、それよりも便利な乗り物と快適な家だと思うよ」
「シローさん、何で」
「スミレさん、宿屋に泊まりながら冒険していたら直ぐにお金がなくなっちゃうよ」
「家を持っていたら自分たちで自炊が出来るし、余分なお金はかからないよ」
「そうよね」
「シローさん、乗り物はどうするの?」
「どうしようかな?」
(シローさん、スミレさん、今までの勇者と聖女が考えたキャンピングカーは直ぐに作れますよ)
「ナビ子さん、どういう事?」
(はい、詳しい説明をしますので転移門で先程のタカマリ山の草原に瞬間移動しましょう)
シローとスミレさんは冒険者ギルドの裏庭で転移門を出してタカマリ山の草原に瞬間移動した。
「シローさん、本当に一瞬だね」
「そうだね」
(話終わり)
多くの冒険者は3人から5人でパーティを組んでダンジョンに潜りお宝を見つけるのが最良だと思っていた。
トキセロ村でも最近になって偶然に粘土採掘場の跡からダンジョンが発見され初心者から中級冒険者で賑わっていた。上級冒険者は護衛任務の依頼が優先されたのでダンジョンに潜らずに嫌でも陶器納品の護衛に駆り出されていたのだった。
初心者は戦闘レベルが足りていないのでダンジョンに潜る場合は1階のみと決まっていたのだった。ダンジョンにすら潜れない冒険者は薬草採取くらいしか仕事を受けられないので落ちこぼれと見なされ何処の冒険者ギルドでも相手にされなかった。
シローとスミレさんの二人は冒険者ギルド依頼ボードに張り出された依頼書を熱心に眺めていた。
「おい、あの夫婦ヤサド・ダンジョンのことを知らないのか?」
「ジーク、余計なおせっかいはやめておけ、初心者は苦労して自分で覚えるのが常識だろう」
「オリバーそうだな、俺たちも1年前は苦労していたな」
「ああ、そうだ」
冒険者のジークとオリバーはDランク冒険者だった。最近になってメキメキと実力が付いてきたのでトキセロ村のギルドでも期待のエース扱いだった。
「スミレさん、” Eランク:タカマリ山 ポリポリケースの採取 ”にしようよ」
二人は受付でタカマリ山への行き方を詳しく聞いて依頼を受けることにした。タカマリ山へはここから歩いておよそ5キロ程度だと教えられ、直ぐに出かける事にした。
二人がタカマリ山に向かう山道を歩いていると、茂みからホーンラビットが飛び出してきたが、直ぐに反対側の茂みへと隠れた。
「きゃぁ~」
スミレさんはシローに抱きついたが、ホーンラビットはそれほど怖い魔物では無かった。
「スミレさん、怖くないから」
「シローさん、私たち刀を持っていないし、どうするの?」
スミレさんはホーンラビットが余程怖ったのかまだ震えていた。シローはスミレさんの震えが収まるまで抱いたままじっとしていた。
「シローさん、もう大丈夫よありがとう」
スミレさんはそう言って、シローに舌を絡ませてきた。シローもそれに答えて二人は立ったまま口を重ねていた。
(シローさん、今から具現化で刀を作りましょう)
(冒険者講習で借りたショートソードでもいいのですが、シローさんには日本刀がおすすめです)
「ナビ子さん、どうやって作るの?」
(頭の中で日本刀を強くイメージしてください)
シローは頭の中で時代劇チャンネルで見た侍が持っている日本刀をイメージした。ドドン、太鼓の音が鳴って空中に日本刀が現れた。
「スミレさん、刀が出来たよ」
「シローさん、何で日本刀なの?」
「スミレさん、だいぶ前に時代劇にハマっていたのを知ってるでしょ」
「そうだったわね、最近は異世界アニメばかり見てたから大っきなバスターソードを作ると思っていたわ」
「うん、俺は転生してきた日本人だから大っきなバスターソードは似合わないよ」
「そうなのね」
この後、シローはナビ子さんに手伝ってもらってスミレさんが使う大きな水晶玉が先端に付いている両手杖を具現化した。
「スミレさん、魔女みたいだね」
タカマリ山にはすぐに着いた。森の中に入っていき、スミレさんのスキル『鑑定』のおかげでポリポリケースは10株が採取できた。二人が熱心にポリポリケースを採取していると、誰かが後ろから覗いていた。
後ろから覗いていたのは1体のはぐれゴブリンだった。二人はそっと、ゴブリンから離れて間合いを取り、シローはゴブリンの脇腹に刀を刺した。
ギギィー、ゴブリンはシローに切られて倒れていた。シローはギルドに提出するためにゴブリンの両耳を削ぎ落とした。
「スミレさん、まだゴブリンがいるかも知れないね」
「シローさん、早く帰りましょうよ」
「そうだね」
ようやく森を抜けて、草原に出てきたので、二人はほっとした。
(シローさん、スミレさん、今から転移門を作りましょう)
「ナビ子さん、転移門って何?」
(はい、アニメ映画に出てくる青狸がお腹から出してくる何処にでも行けるドアのことです)
「シローさん、青狸のドアを早く出して」
シローは具現化で転移門を作ったのだった。
(最後に異空間収納の説明です。道具や倒した魔物、食料品は収納にしまうことが可能です。収納に入れた食品は腐りませんのでご安心下さい)
シローとスミレさんは、転移門を使って冒険者ギルドの裏庭に瞬間移動した。冒険者ギルドの入り口に戻り受付でポリポリケース10株とゴブリンの耳を出した。
「お疲れさまでした。もう終わったのですか?」
「はい、終わりました」
「確認が出来ましたので依頼達成です。ポリポリケース10枚、ゴブリン1体銀貨3枚、合計で金貨10枚と銀貨3枚になります」
「ありがとうございました」
「スミレさん、お昼を食べようよ」
「そうね、私お腹ぺこぺこだったの」
二人は冒険者ギルドの食堂でホーンラビットの香草焼きを注文した。ホーンラビットの味は鶏肉の胸肉のようにさっぱりして美味しかった。
「スミレさん、横の売店で冒険者の装備を見ていかない?」
「シローさん、どうして」
「後でこっそりと作るため」
「なるほどね」
シローとスミレさんは小声で喋りながら食堂横の売店で初心者用の装備を見ていた。
「スミレさん、このショルダーバッグが良さそうだね」
「シローさんの防具はどうするの?」
「俺たち二人とも魔法使いのポジションだから魔物と直接対決は避けたいね」
「そうよね、じゃぁシローさんの防具は無しでいいわね」
「スミレさん、それよりも便利な乗り物と快適な家だと思うよ」
「シローさん、何で」
「スミレさん、宿屋に泊まりながら冒険していたら直ぐにお金がなくなっちゃうよ」
「家を持っていたら自分たちで自炊が出来るし、余分なお金はかからないよ」
「そうよね」
「シローさん、乗り物はどうするの?」
「どうしようかな?」
(シローさん、スミレさん、今までの勇者と聖女が考えたキャンピングカーは直ぐに作れますよ)
「ナビ子さん、どういう事?」
(はい、詳しい説明をしますので転移門で先程のタカマリ山の草原に瞬間移動しましょう)
シローとスミレさんは冒険者ギルドの裏庭で転移門を出してタカマリ山の草原に瞬間移動した。
「シローさん、本当に一瞬だね」
「そうだね」
(話終わり)
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