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第5章

5-9 海の怪物モビュラ1

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 タイバン島の観光を終えて2日後の朝……

 ピピピ、ピピピ、ピピピ、ラファエルはいつものように朝6時にアラームをセットしていた。

「ラファエル、おはよう」
「ヒロシさん、ミサエさん、おはようございます」

「今日は珍しく早いアラームだね」
「はい、このあとプリアーポス様とボナデア様から重要なお話があります」
「ダリナさんとサブローさんも直ぐに起きてきますのでリビングに集まってください」

 ヒロシたちがリビングに集まったところでダブレットが光りだした。

「信心深き清き者たちよ」
 ヒロシのタブレットが光り輝き、3Dフォログラムのプリアーポス様とボナデア様とレート様が現れた。

「パラチ島の民たちが困っておるので至急飛んで欲しいのじゃ」
「パラチ島とはその昔、海の神ポセイドンを祀る神殿があった重要な場所でエラーダ国の海の神殿と似ておるのじゃ」
「これまでも何度か島民たちが海の魔物には襲われはしたがその都度ジェネオスとアギオスが退治してくれたのじゃ」

「ラファエル、パラチ島まで飛んでくれ」
「サブローさん、了解しました」
「パラチ島まではおよそ345キロ、飛行時間は45分です」

「絶対防御3重展開」
「魔導ジェットエンジン異常なし」
「与圧システム異常なし」
「計器類オールグリーン」
「フライトチェック、完了」

「テイクオフ」

 サブローは青いボタンを押した。4人を乗せたキャンピングカーは静かに上昇を開始した。パラチ島の港には、タイバン島から20分で到着したので港から教会へと向かった。


 パラチ島の港はサーミツ市からのガレオン船とキーナ国のジャンク船が入港していた。

 パラチ島の沖合は海の怪物モビュラが度々出没するので漁師や南蛮船の船乗りたちを驚かせていた。モビュラを見た漁船の漁師は恐ろしさの余り、腰を抜かしてしまい、精神的なダメージからしばらくの間は漁に出れないので島民の生活にも影響していた。

 パラチ島の漁業ギルドには漁師や南蛮船の船乗りからモビュラの討伐依頼が寄せられていて、海の神ポセイドンを祀る教会にもモビュラがこれ以上暴れないように海の魔物を鎮める祈祷の依頼が出されていたのだった。

「ヒロシさん、ミサエさん、ダリナさん、サブローさん、遠路はるばるありがとうございます」
「昨夜、海の神ポセイドン様から4人が来てくださる神託がありました」
「私は、このパラチ島の教会の司祭をしておりますサミール・ウスペンスキーと申します」
「どうぞ、教会横の海の家は自由にお使いください」


「サミール司祭、しばらくお世話になります」
 サミール司祭は信者に貸している海の家に案内してくれた。


 ヒロシたち4人はサミール司祭の案内で漁業ギルドに向かった。漁業ギルドの受付で冒険者カードを提示し、モビュラ討伐依頼を正式に受けた。

 熟練の漁師たちがモビュラを討伐出来ない訳はモビュラが神出鬼没で何処の海域に現れるか情報不足で実際の姿を見た漁師は僅かでしかなかった。漁業ギルドで討伐隊を組んで船を出してもモビュラを見つけられずに全て空振りに終わっていたのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 サブローとダリナは漁業ギルドから出ると直ぐに港に向かいキャンピングカーで沖合に飛び上がったが、モビュラはそう簡単に見つける訳でもなかった。とりあえず、ラファエルにモビュラの探索命令を出して沖合いを中心に円を描くようにキャンピングカーで飛行を続けていた。

 ヒロシとミサエさんも港に向かいキャンピングカーで沖合に飛び上がったが、闇雲に飛ぶだけで空中から海中のモビュラを見つける事は難しかった。

 但し、南の海は海水が澄んでいるので大きな黒く長い魚のような物体が水面近くを泳いでいた。

「ミサエさん、あの黒く長い魚がモビュラかな?」
「そうかも知れないわね」

「ラファエル、あの黒く長い魚は何だ?」
「多分、大きさからの推定になりますがリバイアサンだと思われます」

「ヒロシさん、リバイアサンが水面から首を出したら爆裂魔法エクスプロージョンで攻撃しましょう」
 キャンピングカーは水面から10メートルの超低空を飛行した。水面から黒い物体が急に首を出して襲ってきたのでヒロシはキャンピングカーの窓をあけて爆裂魔法エクスプロージョンを使った。

爆裂魔法エクスプロージョン
 チュドーン、リバイアサンは頭が半分吹き飛ばされて海面に浮かんだのでヒロシは収納した。

 サブロー、海面から10メートル位で超低空で周囲をよく見渡してくれ。黒い物体が泳いでいたら魔物リバイアサンだ。

(ヒロシさん、了解です)
(これから低空飛行に移行します)

 それから、3時間後……
 2台のキャンピングカーは島の周囲を何度も何度も低空飛行で飛行したが、この日の収穫はリバイアサン1匹だけだった。夕方になってきたのでヒロシたち4人は索敵を終わることにした。


「ダリナ、サブロー、一旦、海の家に戻るよ」
 ヒロシたち4人は海の家に戻り、サミール司祭にリバイアサンを1匹討伐したことを報告した。

「そうでしたか、あのリバイアサンを討伐されたのですね。流石は御使様です」

 ヒロシたち4人はサミール司祭に付き添われて漁業ギルドにリバイアサンを討伐したことを報告した。
 倉庫で全長20メートルのリバイアサンを収納から出した。

「こんな魔物が泳いでいたのか?」
「はい、泳いでいました」

 リバイアサンを討伐したことは漁師たちにも知らされたが、リバイアサンを見た漁師はこの魔物では無いと言い出した。

「皆んな、やっぱり違ったようだね」
「そうですね」

 がっかりしてヒロシたち4人は海の家に引き返したのだった。

 ◇ ◇ ◇ ◇


「ヒロシさん、もっと効率的にモビュラを探索する方法は無いですかね?」
 ヒロシたち4人はスパークリングワインを飲みながら、反省会と称して海鮮バーベキューの真っ最中だった。

「ヒロシさん、モビュラは探索方法についてですが、海中深く潜っているモビュラは魔物探知魔法では全く探知が出来ませんのでパラチ島の海域全体周囲100キロメートルを探るのに30日から40日程かかると思われます」


 おぼろげに分かってきたのはモビュラは滅多に海面に姿を表さない魔物だった。


「ラファエル、海中の魔物を音波で探るソナーは作れないか?」
「ヒロシさん、検索してみます」

 ラファエルはテオスシステムを活用して最適解を見つけ出した。

「ヒロシさん、対潜水艦用のソノブイを作りタブレットとリンクさせましょう」
「このシステムでしたら、海の底のモビュラが引っ掛かる可能性があります」

「ヒロシさん、ソノブイって何すか?」

「ソノブイは対潜哨戒機が海面に落とすと音波を出して海中の潜水艦を見つけるソナーの事なんだ」

 ヒロシはタブレットの画面に表示されたソノブイを見ながら漫画本で得た知識を3人に詳しく説明した。

「ヒロシさん、このシステムなら直ぐに見つかりそうですね」

「そうだね」
 ヒロシは一抹の不安が有るのも確かだった。仮にソノブイに反応しても海中深く沈んだモビュラには成すすべが無いのは分かりきった事だった。

「ヒロシさん、ダリナ、サブロー、もう遅いから寝ましょう」
「「は~い」」

(話終わり)
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