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第2章
2-11 ココニク魔導具工房
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▽ ▽ ▽
ダリナとサブローへ
わたしたちはオカロダまちにいってきます
なにかあれば、ねんわでれんらくしてください
ヒロシ ミサエ
△ △ △
「ヒロシさん、テーブルの上にダリナとサブローに書き置きのメモを置いたから、いつでもいいわよ」
「ミサエさん、行こうか」
「ええ」
ヒロシは収納から転移門を取り出した。転移門のドアを開けると直ぐにアチヤ川の堤防に移動していた。
「ミサエさん、用心のために短剣型魔導銃を帯剣していこうよ」
「それと防御魔法をかけておくね」
「ありがとう」
オカロダ町の大通りは夕方近くなって仕事を終えて家路を急ぐ人々で混雑していた。オカロダの大通りはテンプル通りと呼ばれ、東西の二つの教会へ続く大通りの店は夕食と明日の食材を買う客で賑っていた。大通りに立ち並ぶ食堂と屋台は夕食のいい匂いが漂って店内は一日の疲れを癒す酔客で賑わっていた。
ヒロシとミサエさんは冒険者講習で泊まった髭の酒蔵亭の前を通り過ぎて酔客に混じっていつの間にか専門店が並ぶ裏通りを歩いていたのだった。裏通りは二階に住居が付いた小さな店が立ち並び、それぞれの店では独自の商品を売っていた。
「ミサエさん、裏通りは小さなお店が多いね」
「そうね、小さな専門店が立ち並ぶ区画のようね」
「ミサエさん、変わった看板の魔道具店だね、ちょっと覗いていこうか?」
「そうしましょう」
ココニク魔導具工房は大通りから外れた専門店が立ち並ぶ一角に建っていた。看板にはロキシア国の髪飾りの絵が描かれていた。
「ヒロシさん、ポーションの材料が売っているよ」
「本当だ、店で売っているのを初めて見たね」
小さな店内には所狭しと薬草や鉱物が置かれていた。その傍らに魔導具と主に女性用のアクセサリーが並んでいた。壁には冒険者が使う武器がかけてあり何でも扱う店のようであった。
「こんばんは」
「いらっしゃい、駆け出しの薬師さんかい」
「あ、はいそうです」
「これは、マグワートと言って下級ポーションの材料だよ」
「うちは、魔道具と髪飾りを主に扱っているけど、本業は薬屋でポーションを作る薬草を扱っているよ」
「ミサエさん、俺たちが採っていたウルフベリーの赤い実だね」
「ヒロシさん、こっちは、ロウレルの葉っぱよ」
ウルフベリーの実は干して解熱の薬、ラウレルの葉も干して健胃作用と解毒効果があると教えてもらった。
「すみません、どうして駆け出しの薬師と分ったのですか?」
「そうだね、あんた達が武器に興味を示さずに最初から薬草に興味を示したから感みたいなものだよ」
「それと、あんた達の魔力量が普通の人と比べたらかなり多いのと、わざわざ防御魔法をかけて店に入って来るのはおそらく魔法使いだろうと思ったのさ」
「その腰に下げている頼りない短剣も魔道具だね」
「凄いですね、何で分かるのですか?」
「鑑定魔法を使ったのさ」
「申し遅れました、私たちはソタイン村のヒロシとミサエです」
「私は店主のエレーナだよ」
「夫は昨日からケトマスに仕入れに行ったので、今夜は一人で店番なのさ」
「表の看板の髪飾りの絵は少し変わっていますね」
「そうだね、こっちの国では使わないけど、ロキシアの伝統的な髪飾りでココニクと言うよ」
「西の大陸、マケドニアではティアラと呼んでいるね」
「へえ~、そうなんですか」
「ヒロシさん、カチューシャよ」
ミサエさんは小さな花飾りの付いたカチューシャを手に取った。
「ヒロシさん、ダリナにカチューシャを買ってあげましょうよ」
「そうだね、頑張ったご褒美だな」
「その花飾りのカチューシャはナニサカ市の女性冒険者の間で流行っているもので銀貨6枚だけど、二つ買ってくれるなら金貨1枚に負けてあげるよ」
ミサエさんは少し考えてから、小さな花飾りの付いたカチューシャと葉っぱに色ガラスがはめ込まれたカチューシャの二つを選んだ。
「ありがとうよ」
ヒロシはエレーナさんに金貨1枚を支払った。
「サブローにも何か買ってあげないといけないね」
「そうね、ヒロシさん、その笛はどうなの?」
「それは、ダンジョンで出てきたゴブリンの笛だよ」
「その笛を吹くとゴブリンが集まってくるのさ」
「銀貨5枚だけど、買っていくかい?」
「はい、買います」
ヒロシはエレーナさんに銀貨5枚を支払った。
「あんたたち、今度は薬草を持っておいで、ギルドより高く買ってあげるよ」
「はい、エレーナさん、分かりました。近い内に必ずおじゃまします」
「ミサエさん、ソタイン村の家に帰ろうか」
「そうね、遅くなってしまったね」
「今からソタイン村に帰るのかい?」
「はい、二人とも身体強化魔法が使えるので走って帰れば夜中には到着すると思います」
「気をつけて帰りなよ」
「はい、ありがとうございました」
ヒロシとミサエさんは転移門でソタイン村の家に帰ってきた。ダリナとサブローは”おせっせ”に疲れてぐっすり眠っているらしく2階は物音一つしなかった。タブレットの更新作業はまだ終わっていないので画面は『更新中』の表示のままだった。
「ミサエさん、俺たちも”おせっせ”してから寝ようか」
「ヒロシさん、改めて言わなくても毎日の日課でしょ」
「うん、それもそうだね」
(話終わり)
ダリナとサブローへ
わたしたちはオカロダまちにいってきます
なにかあれば、ねんわでれんらくしてください
ヒロシ ミサエ
△ △ △
「ヒロシさん、テーブルの上にダリナとサブローに書き置きのメモを置いたから、いつでもいいわよ」
「ミサエさん、行こうか」
「ええ」
ヒロシは収納から転移門を取り出した。転移門のドアを開けると直ぐにアチヤ川の堤防に移動していた。
「ミサエさん、用心のために短剣型魔導銃を帯剣していこうよ」
「それと防御魔法をかけておくね」
「ありがとう」
オカロダ町の大通りは夕方近くなって仕事を終えて家路を急ぐ人々で混雑していた。オカロダの大通りはテンプル通りと呼ばれ、東西の二つの教会へ続く大通りの店は夕食と明日の食材を買う客で賑っていた。大通りに立ち並ぶ食堂と屋台は夕食のいい匂いが漂って店内は一日の疲れを癒す酔客で賑わっていた。
ヒロシとミサエさんは冒険者講習で泊まった髭の酒蔵亭の前を通り過ぎて酔客に混じっていつの間にか専門店が並ぶ裏通りを歩いていたのだった。裏通りは二階に住居が付いた小さな店が立ち並び、それぞれの店では独自の商品を売っていた。
「ミサエさん、裏通りは小さなお店が多いね」
「そうね、小さな専門店が立ち並ぶ区画のようね」
「ミサエさん、変わった看板の魔道具店だね、ちょっと覗いていこうか?」
「そうしましょう」
ココニク魔導具工房は大通りから外れた専門店が立ち並ぶ一角に建っていた。看板にはロキシア国の髪飾りの絵が描かれていた。
「ヒロシさん、ポーションの材料が売っているよ」
「本当だ、店で売っているのを初めて見たね」
小さな店内には所狭しと薬草や鉱物が置かれていた。その傍らに魔導具と主に女性用のアクセサリーが並んでいた。壁には冒険者が使う武器がかけてあり何でも扱う店のようであった。
「こんばんは」
「いらっしゃい、駆け出しの薬師さんかい」
「あ、はいそうです」
「これは、マグワートと言って下級ポーションの材料だよ」
「うちは、魔道具と髪飾りを主に扱っているけど、本業は薬屋でポーションを作る薬草を扱っているよ」
「ミサエさん、俺たちが採っていたウルフベリーの赤い実だね」
「ヒロシさん、こっちは、ロウレルの葉っぱよ」
ウルフベリーの実は干して解熱の薬、ラウレルの葉も干して健胃作用と解毒効果があると教えてもらった。
「すみません、どうして駆け出しの薬師と分ったのですか?」
「そうだね、あんた達が武器に興味を示さずに最初から薬草に興味を示したから感みたいなものだよ」
「それと、あんた達の魔力量が普通の人と比べたらかなり多いのと、わざわざ防御魔法をかけて店に入って来るのはおそらく魔法使いだろうと思ったのさ」
「その腰に下げている頼りない短剣も魔道具だね」
「凄いですね、何で分かるのですか?」
「鑑定魔法を使ったのさ」
「申し遅れました、私たちはソタイン村のヒロシとミサエです」
「私は店主のエレーナだよ」
「夫は昨日からケトマスに仕入れに行ったので、今夜は一人で店番なのさ」
「表の看板の髪飾りの絵は少し変わっていますね」
「そうだね、こっちの国では使わないけど、ロキシアの伝統的な髪飾りでココニクと言うよ」
「西の大陸、マケドニアではティアラと呼んでいるね」
「へえ~、そうなんですか」
「ヒロシさん、カチューシャよ」
ミサエさんは小さな花飾りの付いたカチューシャを手に取った。
「ヒロシさん、ダリナにカチューシャを買ってあげましょうよ」
「そうだね、頑張ったご褒美だな」
「その花飾りのカチューシャはナニサカ市の女性冒険者の間で流行っているもので銀貨6枚だけど、二つ買ってくれるなら金貨1枚に負けてあげるよ」
ミサエさんは少し考えてから、小さな花飾りの付いたカチューシャと葉っぱに色ガラスがはめ込まれたカチューシャの二つを選んだ。
「ありがとうよ」
ヒロシはエレーナさんに金貨1枚を支払った。
「サブローにも何か買ってあげないといけないね」
「そうね、ヒロシさん、その笛はどうなの?」
「それは、ダンジョンで出てきたゴブリンの笛だよ」
「その笛を吹くとゴブリンが集まってくるのさ」
「銀貨5枚だけど、買っていくかい?」
「はい、買います」
ヒロシはエレーナさんに銀貨5枚を支払った。
「あんたたち、今度は薬草を持っておいで、ギルドより高く買ってあげるよ」
「はい、エレーナさん、分かりました。近い内に必ずおじゃまします」
「ミサエさん、ソタイン村の家に帰ろうか」
「そうね、遅くなってしまったね」
「今からソタイン村に帰るのかい?」
「はい、二人とも身体強化魔法が使えるので走って帰れば夜中には到着すると思います」
「気をつけて帰りなよ」
「はい、ありがとうございました」
ヒロシとミサエさんは転移門でソタイン村の家に帰ってきた。ダリナとサブローは”おせっせ”に疲れてぐっすり眠っているらしく2階は物音一つしなかった。タブレットの更新作業はまだ終わっていないので画面は『更新中』の表示のままだった。
「ミサエさん、俺たちも”おせっせ”してから寝ようか」
「ヒロシさん、改めて言わなくても毎日の日課でしょ」
「うん、それもそうだね」
(話終わり)
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