改訂版 愛のエキスと聖女さま

にしのみつてる

文字の大きさ
上 下
38 / 70
第4章

4-5 シャシリクの美味しい店

しおりを挟む
 イルクスカの冒険者ギルドで全員がAランク冒険者に冒険者カードを書き換えてもらったヒロシとミサエさん、ダリナとサブローの4人は冒険者ギルド裏にある串焼き肉シャシリクの美味しい店を教えてもらったので食事に行くことにした。

 串焼き肉の店は表通りからは反対側にあり、広い店内は大勢の地元民で賑わっていた。4人は店内に入って壁のメニューを眺めた。ヒロシはシャシリクを40本と他にビーフストロガノフを注文した。地元の人たちの飲み物はウォッカだったが、ヒロシとサブローはウォッカに慣れていないのでビールに似たクワスを注文したのだった。ダリナは赤い色のモルスを注文し、ミサエさんは蜂蜜酒メドヴーハを注文していた。黒パンはビーフストロガノフと一緒に付いてきた。

 店員が焼きたての串焼き肉シャリクを直ぐに運んで来てくれたのでサブローとダリナは早々にかぶりついた。
  
  「うまっ!」
   ダリナは、シャシリクを片手に2本ずつ、両手で4本を持って頬張っていた。

「サブロー、こっちのお肉も美味しいよ!」
 サブローもダリナと同じようにシャシリク4本を両手に持って頬張っていた。

「ほんとうだ!うまっ!」
「 ダリナさん、少し脂っこいけどいけるね」

 ヒロシは気を効かせてグランドシープとコカトリスにオークの三種類のシャシリクを注文したが、味は普通にマトンと鶏肉と豚肉のように感じた。

   サブローとダリナはシャシリクを食べ終わったので、メインディッシュのビーフストロガノフに手を伸ばした。
  「あーっ、これも美味しいや」 トロトロのビーフストロガノフをスプーンですくってサブローとダリナは幸せそうな顔していた。


「ミサエさん、この店の黒パンは少し酸っぱいよね」
「そうね、ソタイン村の田舎パンとは小麦粉と酵母の種類が違うと思うわ」

 ヒロシは直ぐに気づかなかったが、ミサエさんは鑑定でサワー種を分析してリンゴを発酵して作られていることが分かっていた。

「ミサエさん、このクワスはさっぱりしていて飲みやすいね」
「ヒロシさん、飲みすぎて足元をすくわれないように気を付けてね」

 ヒロシはダリナとサブローのメニューとは別にオムーリ料理を注文していた。

「ヒロシさん、その魚は何と言う名前ですか?」

「おばさんたちは『オムーリ』と呼んでいたね、鱒に似てさっぱりした味で食べやすいよ」

「へぇ~、そうなんですね。僕は魚よりも串焼き肉が一番です」

 サブローとダリナはシャリクを20本追加注文していた。
「すみません、シャリクを20本、追加で注文お願いします」
「は~い」
 店員は要領よく注文を聞いて回った。

「ミサエさん、さっきから飲んでいるその飲み物は何ですか?」

「メドヴーハ、蜂蜜酒のことよ、さっぱりした味で飲みやすいわよ」

「ミサエさん、私たちもメドヴーハを注文してもいいですか?」
「ええ、構わないわ」

「すみません、メドヴーハを2つお願いします」

 ダリナは店員にメドヴーハを注文をした。ロキシア国では15歳になれば成人としてみなされるのでダリナとサブローの飲酒は全く問題なかった。

「すみません、ドラニキ2つ下さい」

「ヒロシさん、ドラニキって何ですか?」

「ジャガイモを細かく切って揚げた料理だよ」
「オカロダ町で食べたオタク焼きじゃ無いのですか?」

「オタク焼きは小麦粉で作るけど、ドラニキはジャガイモのお好み焼きだよ」
「じゃあ、芋のオクタ焼きなのですね」

「そうとも言うね」

 サブローとダリナは世界辞書のおかげでドラニキは理解できたようだった。


(ヒロシさん、ミサエさん、オカロダ町のマリティレスが解散して国外追放になるそうです)
(ラファエル、本当か?)

(はい、先ほどテオスシステムから配信されたイポニアの最新情報なので本当です)

「ミサエさん、マリティレスが解散してオカロダ町が変わるかも知れないね」
「そうね、次の勇者と聖女は優しい人たちだといいね」

「そうだね」

「ヒロシさん、ミサエさん、さっきから二人で見つめ合ってラブラブな雰囲気なのですか?」
「もう、ダリナったら冷やかさないで」

「サブロー、私たちもログハウスに戻ってラブラブの続きをしようか?」
「そうですね、ダリナさん」

 ダリナとサブローは手をつないでさっさと店を出ていった。二人は転移門を出してケリクスグル湖に設置したログハウスに帰ってきてラブラブの続きを始めたのだった。

「ヒロシさん、私たちもログハウスに戻りましょうか?」
「ミサエさん、そうだね」

 ヒロシとミサエさんは4人分の食事代金を冒険者カードで支払ってシャシリクの店を出たのだった。食堂から続く通路は両側が市場になっており色々な商品が店先に並んでいた。

「ミサエさん、アザラシのコートを買おうか」
「ヒロシさん、ダリナとサブローの分も買って帰りましょう」

 ヒロシはアザラシのコートを4枚買った。店主と女将さんは毛皮の帽子とブーツも一緒に勧めてくれたのだが……困ったことにヒロシはダリナとサブローの足のサイズが分からなかった。

(ヒロシさん、サブローさんの足のサイズはヒロシさんと同じ26センチ、ダリナさんはミサエさんと同じ23.5センチです)

(じゃぁ、俺たちと同じサイズでいいね)
(はい、そのとおりです)

 ラファエルの適切なアドバイスでヒロシとミサエさんは同じサイズのブーツを2足ずつを購入したのだった。店主にコートと帽子とブーツの代金として金貨4枚を冒険者カードで払ったのだった。

「ミサエさん、俺たちもログハウスに戻りましょうか?」
「ヒロシさん、そうしましょう」

 この時、ヒロシとミサエさんは気付いていなかったが、イルクスカの町は祭りに向けて準備で大忙しだったのだ。


(話終わり)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

処理中です...